横組みと縦組みのどちらにも対応する可変字幅のバリアブルフォントによる実現方法

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(翻訳:Adobe Type チーム 山本太郎)

グリフの可変字幅を可能にしながら、縦組みでのグリフの回転が必要となる欧文や和文組版における縦中横(縦組み行の中に横組みの要素が入る)の組み方も取り扱えるモデルを、最近考案しました。

本記事の目的は、私が開発したオープンソースのフォントと、その動作モデルの記述に関心を寄せていただくことにあります。そのフォントに対応するアプリケーションソフトウェアとレイアウトエンジンを実装する開発者に活用していただくことを意図したものです。

テストフォント

テストフォントは二つの軸をもつバリアブルフォントで、1,111,998 個の Unicode のコードポイントを、UAX #50Unicode Vertical Text Layout)のデータファイル「VerticalOrientation.txt」の Unicode 12.1 のバージョンに基づいて、次のグリフのどちらか一方に対応づけています。

  • Vertical_Orientation(「vo」)の属性値に「R」または「Tr」が割り当てられている 785,553 個のコードポイントは欧文グリフに対応づけます。
  • 「vo」属性値に「U」あるいは「Tu」が割り当てられている 326,445 個のコードポイントは CJK のグリフに対応づけます。

縦組みのレイアウトでは、姿勢が直立か、回転させたものかの違いが重要となるため、上記のコードポイントとグリフとの対応づけは妥当と考えられます。

ここで紹介するテストフォントには、欧文と CJK のグリフそれぞれ 256 個のインスタンスが含まれ、GID は 1 から 256 までと GID が 257 から 512 になります。その形とパラメータは下記のとおりです。

  • 欧文のグリフは中空の矩形で、デフォルトの字幅は 600 ユニットで、欧文のベースライン(y = 0)に乗っていて、可変字幅の範囲は 450 から 750 までで、デフォルトの字幅から 25% まで狭いか広い字幅が可能です。
  • CJK のグリフは全角の正方形で、デフォルトの字幅は 1000 ユニットで、欧文のベースラインより 12% 下方の位置にあります(Y = −120 から Y = 880 まで)。可変字幅の範囲は 750 から 1250 まで、デフォルトの字幅から 25% まで狭いか広い字幅が可能です。

それぞれのグリフに 256 のインスタンスを持たせている理由は、それによって「cmap」テーブルで指定される Unicode の対応づけを簡略化できるからです。このことは、対応関係が百万を超えるような場合に重要となります。

GID+513 は、縦中横で用いられる明示的に字幅が半角のグリフで、「hwid」(Half Widths—字幅半角)の GSUB フィーチャーを用いて欧文のグリフを置換するために用いられます。

このテストフォントには既に登録済みの「wdth」(Width—字幅)と未登録の「VWID」(Vertical Width—縦組み用字幅)のデザインのバリエーションの軸が含まれます。「縦組み用字幅」という訳語については、むしろ「垂直字送り量」という呼称が技術的にはより正確だとは認識していましたが、「字幅」の方が「wdth」軸との組み合わせという点では良いと思います。この両方の軸について、デフォルトの設定は 500 となっています。それは、横組みの欧文グリフの字送り量が 600 ユニットであることと、CJK グリフの 1000×1000 の正方形(字幅全角)のボディに対応したものです。設定値の最小値は 1 で、最大値は 1000 となっており、それぞれが 25% 狭い字幅と 25% 広い字幅とに対応します。

このテストフォントは GitHub 上のオープンソースの「Width & Vertical Width VF」プロジェクトにおいて、OpenType/CFF2 と TrueType の両方の形式で入手可能になっています。

横組みでの可変字幅のレイアウト

横組みのレイアウトを行う場合には、この記事の中で記述されているモデルは比較的単純です。「wdth」軸がグリフを望み通りに X 軸に沿って狭くしたり広げたりするために利用されます。「VWID」軸はそのデフォルトの設定に固定され、CJK のグリフ用の全角の字幅または 1000 ユニットに対応しています。言いかえれば、相対的なグリフの高さは横組みでは変化しないということです。

次に示す GIF アニメーションは、このテストフォントを用いて作成したもので、可変字幅の横組みのレイアウトを示したものです(ここで使った文字コード列は実は「かなABC漢字」に対応していますが、矩形グリフだけで表示されているので、それは明示されません)。

可変字幅が狭くなるときも、広くなるときも、グリフの高さが変化しないのは、「VWID」軸がデフォルトの設定に固定されているからです。アニメーションの時間設定については、デフォルトの設定が 5 秒間、二つの両極に 2 秒間、中間の設定に 1 秒間を割り当てています。

縦組みでの可変字幅のレイアウト

縦組みのレイアウトを行うときには、縦組みでも直立の姿勢で変化しない CJK のグリフについては、比較的単純明快です。垂直の Y 軸に沿って可変字幅を好みに合わせて狭くしたり広げたりするために「VWID」軸が利用され、「wdth」軸は CJK グリフの全角の字幅または 1000 ユニットのデフォルトの設定に固定されます。特別な取り扱いが必要な場合には次の二つの場合があります。

  • 縦組みで回転する必要のある欧文などのグリフの取り扱いは複雑です。「VWID」軸の設定が「wdth」軸に対して適用され、「VWID」軸はデフォルトの設定に固定されます。言いかえれば、横組みで配列したテクストを単純に回転したものと等しくなるということです。回転されたグリフは縦組みの中で狭くなったり広くなったりできますが、相対的な高さは変化しません。
  • 縦中横を取り扱うのは、特殊な場合であって、「VWID」軸の設定がそのまま利用され、「wdth」軸はデフォルトの設定に固定されます。言いかえれば、縦中横は CJK グリフと同じように動作し、グリフは縦組みのレイアウト中で低くなったり、高くなったりしますが、幅は固定で変化しません。このテストフォントには、「hwid」GSUB フィーチャーが含まれており、欧文グリフを用いて 2 文字の縦中横をシミュレートすることができます。

次に示す GIF アニメーションは、このテストフォントを用いて作成したもので、可変字幅の縦組みのレイアウトを示したもので、回転した文字列と縦中横を含んでいます。(先の例と同様、ここで使った文字コード列は「あAB漢字12国」に対応したものですが、矩形グリフだけで表示されているので、それは明示されません)。

回転した欧文グリフが狭くなるときも、広くなるときも、相対的な高さは変化しません。回転した欧文グリフの相対的な高さは、CJK グリフの字幅に固定されています。同様に、縦中横のグリフの高さは、低くなったり、高くなったりしますが、その字幅は[縦中横の対象が 2 文字に限られる場合には]CJK グリフの字幅に固定されます。アニメーションの時間設定については、上記の横組み用のものと同じです。

モデルの要約

次の表は、このモデルに関して、上述の二つのセクションで述べたレイアウト上の諸条件で、二つのデザインのバリエーションの軸の設定と設定範囲を要約したものです。

横組み 縦組み直立 縦組み回転形 縦組み縦中横
wdth 1〜1000 500 1〜1000 500
VWID 500 1〜1000 500 1〜1000

もちろん、ここで実際に使われている設定と設定範囲は、私が開発したテストフォントを基にしたもので、このモデルに従って作られた他のバリアブルフォントが少し異なる値を使用することはありえます。ここで肝要なことは、複数の軸の内の一つはデフォルトの設定に固定されることで、私が開発したフォントの場合には 500 になるということです。

UI において考慮すべき点

「wdth」と「VWID」のデザインのバリエーションの軸は、一つのバリアブルフォント中では別個の軸として実装され、それらの軸のうち一つは上述のように固定される必要がありますが、UI は「可変字幅」という名前をつけた、機能している一つの軸だけを表示するのが適切でしょう。横組みか縦組みかというレイアウトの方向、または文字が回転されるか縦中横の文脈で用いられるかに依存して、そこでの設定が適切な軸に適用されることが肝要です。もう一つ別のありうる方法は、デフォルトでは複数の軸のうちの一つを固定しますが、そのデフォルトの動作を上書きして、その固定を外すことができるようにするというものです。

どちらの場合でも、これら複数の軸がどのようにアプリケーションの UI 上で表示されるかは、アプリケーション自体がどれだけ洗練されたものであるかに大きく依存するかもしれません。あまり洗練されていないアプリケーションの場合には、機能的な軸を一つだけ表示するのが好ましいでしょうし、より洗練されたアプリケーションの場合には、上で述べたように、どちらの軸も表示してデフォルトの動作を上書きすることができるようにすることも可能でしょう。

デザインのバリエーションの軸の登録

もしこの記事で説明したモデルが一般に受け入れられるなら、「VWID」というデザインのバリエーション軸を登録することが必要になるでしょう。そうすれば、「vwid」や「vadv」などと同様に、すべて小文字で表記された名前を持つことになります。

最後に、この記事に書かれている事柄はすべて、現時点ではまだ、横組みにおいても縦組みにおいても可変字幅(狭い字幅・広い字幅あるいはその両方)に対応できる CJK バリアブルフォントを実装する場合の標準的な方法になればよいと私が考えているモデルの提案の段階にあります。

ぜひ、コメントをお持ちの場合には、お知らせください。

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