マーケティング部門とIT部門は見えている風景が違う?両者で相乗効果を生み出すには

モバイル、IoTなどのテクノロジー発展により、顧客接点はますます多様化している。企業はデジタル変革を推進し、リアルとデジタルを高度に組み合わせた顧客対応を行っていかなければ、顧客の期待に応えることはできない。なかでもマーケティング部門が担当するべき業務や、検討するべきテクノロジーの種類は増加している。マーケター個人としても、テクノロジーを活用したデータ分析や顧客体験の設計など、新しいスキルが求められている。

テクノロジーはIT部門の得意分野だが、自社のマーケティング戦略に最適なテクノロジーを選択/活用する際、マーケティング部門とIT部門はどのような関係が望ましいだろうか。この記事では両部門の新しい協働のあり方を考えてみたい。

マーケティング部門とIT部門の「価値観の相違」という問題

日本企業がCMOを設置し、デジタルを活用したマーケティングに組織的な取り組みを始めたのは比較的最近のことである。そんな日本企業から見れば、米国や欧州などにおけるデジタルマーケティング先進企業は、マーケティング部門がテクノロジーを活用する上でIT部門と円滑な関係を築いていると思うかもしれない。ところが、マーケティング部門とIT部門の組織的連携は、まだまだ世界共通の解決すべき課題だという。

そう分析しているのは調査会社ガートナー(Gartner)だ。同社は、テクノロジー活用におけるアプローチ/ガバナンス/対応速度などについての価値観が、マーケティング部門とIT部門では全く異なることが課題の背景にあると指摘している。この課題は、企業がテクノロジー投資から得られる効果を最大化したいならばなおのこと、企業全体の問題として解決しなければならない。両部門は、互いの価値観の相違を認識し、相互理解を深めることが組織的連携に向けての大前提となる。

では、IT部門の価値観はどのようなものか。IT部門は、自社にとってあるべき情報システムとは何か(エンタープライズ アーキテクチャー:EA)を構想、計画的に導入し、安定運用させることを最善とする価値観を持つ。そんなIT部門が最も忌避するのが、システムの不連続性、無理のある要件への対応、業務の中断につながるシステム障害である。

そのため、例外対応や仕様変更の要望があると、それがどんなに軽微なものであっても、変更によるシステム影響範囲を分析し、安定稼働に悪い影響が及ばないよう慎重に進めようとする。迅速に動きたいマーケティング部門にとっては、このようなIT部門の価値観は苛立ちの種かもしれないが、IT部門はマーケティング部門の足を引っ張るつもりで行動している訳ではない。

マーケティング部門はIT部門にとって「社内顧客」である

IT部門にとって、マーケティングをはじめ各ユーザー部門は「社内顧客」にあたる。これまでのIT部門は、財務などの間接部門や、製造などの事業部門/BUの要望を理解し、IT化を進めてきた。もちろんマーケティング部門に対しても要望を理解し、IT化のサポートを行いたいと考えている。

しかし、IT部門がこれまで蓄積してきた経験を活かすことが難しい「社内顧客」がマーケティング部門なのだ。顧客に直接対峙する部門であるため、どの部門よりも「変化に素早くかつ柔軟に対応したい」という価値観が強い。
一方で日本企業のIT部門は、「一度開発したシステムをできるだけ長く使い続けたい」と考えることが多い。

市場機会損失を懸念するマーケティング部門から見ると、このようなIT部門の保守的な姿勢を不満に思うことも無理からぬことだ。 ただ、「理解のないIT部門に頼らず、マーケティング部門だけでテクノロジーを調達しよう」と判断するのは待ってほしい。なぜなら、今や部門ごとではなく、全社レベルでのデータ活用が必須であるからだ。それにはIT部門の支援が欠かせない。

マーケティング先進企業が実現させている、マーケティング部門とIT部門の連携とは

ガートナーによれば、デジタルマーケティングで成功している企業では、マーケティング部門とIT部門は良好な連携関係を構築しており、IT部門がマーケティング部門の価値観を尊重してサポートすることが可能な土壌を育てている。

IT部門の強みは、ユーザー部門が利用する情報システム構築によってこれまで蓄積してきた、全社ITに関する知識である。企業規模が大きくなるほど、IT部門は多種多様な業務システムを運用しており、各システムを連携させた大規模なビジネス基盤を社内ユーザーに提供している。

マーケティング先進企業では、多様な顧客データをもとにした意思決定をマーケターが日常的に行える体制をとっている。これはマーケティング部門で管理している顧客データの他、販売部門、カスタマーサポート部門、プロダクト開発部門など、全社を横断したデータ活用によってはじめて実現されることだ。

マーケティング部門は、他部門の持つデータを自部門との関連性が薄いものだと短絡的に判断するべきではない。全社レベルでのデータ活用の価値とリスクを判断できるIT部門を巻き込み、テクノロジー活用を推進するのが得策だ。

特性の異なる二つのIT―「守りのIT」「攻めのIT」

マーケティング部門に意識改革が必要であるのと同じく、多くの企業のIT部門も、これまでの保守的な姿勢を改める必要性を感じているだろう。

デジタル変革に取り組まなくては他社との競争力を保てない現在、CIOは企業ITに二つの特性があることを理解し、それぞれの特性に応じた方法でテクノロジーを調達/運用することが求められている。

それは次の二つである:

  • 業務効率化のための情報システム(SoR:System of Record)
  • 新しい価値を創出するための情報システム(SoE:System of Engagement)

多くのIT部門は、前者SoRを「守りのIT」、後者SoEを「攻めのIT」と理解し、従来の「守りのIT」から「攻めのIT」へ投資をシフトすることで経営に貢献したいと考えている。

ガートナーでは「守りのIT」に適用するのが「モード1」、「攻めのIT」に適用するのが「モード2」とし、これからのIT部門は二つのモードを併用する「バイモーダル」をとるべきであると提唱している。もちろんデジタルマーケティングは「モード2」のアプローチが求められる分野の代表例だ。

ITの特性にかかわらず、テクノロジーの調達や活用はユーザー部門とIT部門が一体になって行うべきものであるが、マーケティング分野の「モード2」に関しては、先述のとおり、マーケティング先進企業が最善のやり方を進めようとしている。

IT部門に期待される「アジャイル」という考え方

マーケティング部門に対するIT化支援をはじめ「攻めのIT」で日本企業が参考にできる国内事例が少ないのは、「SoR/SoE」や「バイモーダル」に相当する考え方が比較的新しく、特性の異なる二つのITに別々のアプローチを適用することの利点が十分に認識されていなかったことが影響している。

これまでIT部門で主流だった「ウォーターフォール」アプローチは、作業全体を複数のフェーズに分割し、前フェーズが完了すると次のフェーズに取りかかることができるという進め方だ。最初のフェーズは、システム化に必要な条件や要望を明確にする「要求定義」なので、次のフェーズに移ったときに市場環境が変化していても、タイムリーに対応できないという問題があった。

これを踏まえて登場したのが「アジャイル」アプローチである。アジャイルアプローチは、ユーザー部門とIT部門がチームで作業を進めることを前提としており、短期間にプロセスを反復することで、環境変化によるリスクを低減できる。アジャイルは、「Time to Market」が重視されるマーケティングのように、変化の速い業務領域に最適なアプローチと言えるだろう。

マーケティング部門とIT部門の連携を高めるために行うべきこと

すぐにアジャイルアプローチを適用できるかどうか、IT部門が支援できるかどうかはそれぞれの企業により事情が異なる。そこでガートナーは、まず両部門が互いの価値観を理解するため、現状分析を行うことを推奨している。

これは、はじめからいきなり高い理想を掲げて大きな負担を強いるよりも、比較的容易な情報交換や交流を活発化する足固めから始める方が着手しやすいからだ。

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