知ってるようで知らない。「エクスペリエンス」って何?

アドビのコンサルタントが語る“My Experience”

アドビのコンサルタントが、仕事や暮らしのなかで大切にしているエクスペリエンスについて語るコーナーの第二弾です。今回は、「アドビがよくいうエクスペリエンスって何?」「そもそも、マーケティング業界で使われるエクスペリエンスってどういう意味なの?」という疑問にビジネスコンサルティング本部 本部長 祖谷考克がお答えします。

聞き手:フリーライター 岩崎 史絵 

 

「エクスペリエンス」とは何か?

 

祖谷さんはビジネスコンサルティング本部に所属していらっしゃるとのことですが、具体的な仕事内容を教えてください。

 

祖谷 私が所属しているビジネスコンサルティング本部はエクスペリエンス ビジネス コンサルティング部とデジタル ストラテジーグループで構成されており、クライアント企業の戦略策定のお手伝いからその戦略実行の支援、そしてオペレーションのサポートまで、包括的に企業をバックアップする部隊です。いわば、アドビのコンサルティングサービスのビジネス支援領域を担当しています。

コンサルティングを行ううえで大切にしているのは、企業目線ではなく、受け手側の視点に立ってエクスペリエンスを設計すること。受け手、つまり生活者や消費者の視点に重点を置いています。

また、私たちはテクノロジーカンパニーなので、戦略立案だけでなく、その戦略をテクノロジーで実行するところまで、すべてをカバーします。実際にクライアント企業の方とお話しする時には、型通りの方法論ではなく、「企業がやりたいこと」「その企業のお客様が求めていること」を明確にし、テクノロジーを活用してこの2つをどのように結び付けていくかを提案し、実行します。

 

ありがとうございます。実は私、マーケティング分野では当たり前のように使われている「エクスペリエンス」という用語の意味を、きちんと理解できていないんです。日本語では「体験」という意味ですが、この用語の定義を改めて教えていただけますか?

 

祖谷 これは私の見解ですが、アドビが訴求している「エクスペリエンス」とは、物やサービスを通じて生活者や消費者が抱く感情、またはその積み重ねだと考えています。そして重要なことは、その中でも強く印象の残るいくつかの感情によって、エクスペリエンスの評価が形成されるという点です。

 

おすすめ商品をレコメンドしたり、クーポンをプレゼンしたりという一過性の施策ではなく、感情の積み重ねなんですね。

 

祖谷 エクスペリエンスは積み重ね、過程にあると考えています。さらにいえば、その過程の中にあっても、受け手側に本当に強く印象を与えたものだけが記憶に残ります。強い印象、それは「キーとなるモーメント(瞬間)」ともいえるでしょう。それ以外のものは忘却されたり、どうでもいいこととしてエクスぺリエンスにはあまり影響しないと考えます。そういう意味では、人間同士のリレーションシップにも通じるところがあるのかな、とも思います。

たとえば、人と人が出会ったとしましょう。最初は他人同士ですが、顔を知り、名前を知り、コミュニケーションしていくうちに、いつしか人生で大切なパートナーになったり、かけがえのない親友になったりしますよね。そういう関係性の変化が生まれる時というのは何かしら印象的な出来事や感情の起伏がキッカケになったりするものです。それが人間同士のリレーションシップであり、エクスペリエンスもこれと似ていると思います。

ただ、企業と人とのリレーションシップになると、マーケターは最初からエンジン全開になってしまいたくなるものです。キャンペーンでメールアドレスを獲得すると、自社についてより知ってもらいたいと次の日からメルマガをどんどん送信してしまったり。ただ、人間関係に置き換えると、一方のコミュニケーションが強すぎれば、受け手側は拒絶反応を起こしてしまいますよね。

だからエクスペリエンスを考えるうえで、距離感はとても大切だと思います。企業目線だけで「こういう経験を提供したい」と一方通行的に考えることは、絶対にいけません。「受け手がどう感じるか」という視点が必須です。

 

 

 エクスペリエンス追求に向け、コンサルティングが必要な理由

 

冒頭で「企業のお客様が求めていること」を明確にする、とおっしゃっていたのは、いまお話しいただいた理由があるからですね。そこで活用するテクノロジーが、Adobe Experience Cloudですが、これはエクスペリエンスの改善・向上にどのように貢献するのでしょうか。

 

祖谷 大きくは3つあると考えています。第一に、いま何が起こっているか、データを通じて把握すること。第二に、それらのデータから将来を見通すためのインサイトを得ることです。第三に、そのインサイトに基づいて、お客様が必要とするコンテンツや情報を届けることです。そしてコンテンツを作るソリューションとして、Adobe Creative Cloudも提供しています。つまりアドビのプラットフォームを通じ、Make(制作)、Manage(管理)、Measure(計測)、Monetize(収益化)という4つのMを実現していくことができるわけです。

 

4つのMの実現に向け、コンサルティングが必要になるわけですね。

 

祖谷 個々の企業課題に応えるためには、具体的な活用方法の青写真を描く必要があります。特に、戦略策定から実行に落とし込む際には、ソリューションを活用するためのアーキテクチャ設計はもちろんのこと、定着のためのスキルトランスファーも必要ですし、時には企業組織に踏み込んで意識改革のチェンジマネジメントを支援することもあります。なぜなら、いまやデジタルは重要な経営アジェンダのひとつであり、戦略の中核になっているため、経営層の判断が必要になるからです。

こうしたビジネス環境の変化を踏まえ、日本でも2018年1月に「デジタル ストラテジー グループ」という組織を立ち上げましたこの部門は、グローバルでは2017年から立ち上がっていたのですが、日本では私が責任者となり、これから本格展開していきます。

 

どんなことをやる部門なのですか?

 

祖谷 企業の方がデジタル変革を推進するうえで必要となるさまざまな支援を行います。具体的なロードマップを策定し、時にはCEOに上申することもあります。

最大の特徴は、グローバルでベストプラクティスを共有し、企業の価値創造を支援する部隊であること。今後、エグゼクティブレベルの戦略策定に関してはまずデジタルストラテジーグループが担当し、実行に落とし込むフェーズからは、エクスペリエンス提供のプロフェッショナルであるエクスペリエンス ビジネス コンサルティング部が請け負い、長期的にサポートしていくというやり方を考えています。

 

これまでの経験から、エクスペリエンスで成功するための秘訣のようなものがあれば教えてください。

 

祖谷 先ほどもお話しした通り、生活者や消費者のエクスペリエンスに対する印象はキーとなるモーメントによって形成されます。だからこそ、最初から欲張ってカスタマージャーニー全体を改善しようとせず、いくつかのキーとなるモーメントを見定めそこから取り組むことをおすすめします。

 

 

 

また、マーケターがひとりでエクスペリエンスを追求しようとしても、限界がありますなぜなら、組織に属している以上、やはり組織目線でものを考えてしまうから。そのほか、さまざまな関係者を巻き込んでいく必要がありますし、テクノロジーをより高度に活用する必要があります。そういった点では、私たちアドビにたくさんのベストプラクティスがあるので、ぜひご相談いただければお力になれると思います。

 

 

広告会社の知見をデジタルマーケティングで生かす

 

祖谷さんは、ずっとデジタルマーケティングの分野にご興味があってキャリアを積まれてきたのですか?

 

祖谷 もともと新卒で入社したのは広告会社です。先ほど「モノやサービスを通じて得られる印象的な出来事が重なってエクスペリエンスになる」という話をしましたが、どんなにいい製品をつくっても、それが社会的に知られていなければ、そもそも人に感情や印象を与えることはできません。いいかえれば、社会的な価値はゼロなのです。

けれどもその価値を、広告などのコミュニケーションで知らしめれば価値が顕在化しますし、さらに価値が上がることもあります。そのように社会的価値を生み出す現場で仕事をすることは、当時の自分にとって、とても魅力的でした。

また、ずっと音楽に関わってきたこともあり、広告の表現やクリエティブにも興味があったのです。

 

音楽のご経験もあるのですね!

 

祖谷 中学から大学までコーラスをやっていました。男声の中で一番高いトップテノールを担当していたんです。

 

だからすばらしい声なんですね。納得しました。合唱を始めたきっかけは?

 

祖谷 私が子供のころ、両親がよく音楽のCDをかけていていたのですが、その中に海外の合唱団のCDがあり、それが興味を持ったきっかけでした。進学した中学はコーラス部が有名で、全国大会では金賞を取るような学校でした。注目度の高い部活でしたし、合唱はずっと好きで興味があったので、入部ました。音楽を通じて相手にどう思いを伝えるか、その表現を考えるのは楽しく、とてもいい経験だったと思います。

 

ぜひ一度聴いてみたいです。さて、そんなご経験から、広告クリエイティブや表現にもご興味があり、広告会社に入社なさったわけですね。次にアドビに転職されたきっかけは?

 

祖谷 広告やマーケティングにおいて、テクノロジーの役割が大きくなってきたからです。「マーケティングコミュニケーションを行ううえで、テクノロジーの知見をしっかり理解し、より先進的な提案を行いたい」と思いました。

アドビは、コンテンツを制作するクリエイティブから、計測して配信するというマーケティングの幅広い部分まで、トータルでカバーするテクノロジーを持っています。ブランドマーケティングやマーケティングコミュニケーションといった自分が培ってきたバックグラウンドを生かし、テクノロジーを掛け合わせることで新しい分野に挑戦できると思ったことが、転職のきっかけです。

 

 

5年後、10年後も価値創造をテーマに現場にいたい

 

アドビに転職して、最も印象に残っていることは何でしょう。

 

祖谷 入社してすぐ、上司と1on1(1対1のミーティング)があったのですが、その時に「祖谷さんの5年後、10年後のキャリアを形成する上で、私やアドビはどんなサポートができそうでしょうか?」と聞かれたんです。ふつうの人事面談なら、「これが会社の目標なので、この目標達成のために、祖谷さんにはこういうパフォーマンスを期待している」となるじゃないですか。まったく逆だったので、びっくりしました。

で、「せっかくグローバル企業に転職したのだから、海外のスタッフと一緒に仕事がしたい」という希望を伝えました。実はこれ、アドビに入社した理由の1つでもあるんです。

いま、国内でのデジタルストラテジーグループの立ち上げに当たり、週に数回は海外の社員とオンラインミーティングを持ち、プレゼン資料もすべて英語で作成しています。いろいろ手探りな部分もありますが(笑)、やりたかったことですし、自分にとって素晴らしい成長の機会だと思っています。

 

その流れで、最後に、今後5年後、10年後にはマーケティングがどうなっているのか、考えをお聞かせください。

 

祖谷 AI(人工知能)やマシンラーニングを活用して「良いエクスペリエンス」を追求していくと、どんどん同質化していくことなり、差別化できなくなってくると考える方もいるかもしれません。

もちろん、AIにもいろいろあります。たとえばアドビのAIおよびマシンラーニングのフレームワークであるAdobe Senseiは、人間のクリエイティブ作業をサポートするために開発された、業務特化型AIです。プロのクリエイターのように、デザインの補正や最適な調整を自動的に行うほか、クリエイターのツール使用方法を覚え、次の作業をスムーズに行えるように、必要な機能を画面に表示します。やらなくてもいい作業はAIに任せ、人間はよりクリエイティブ分野に注力できるわけです。つまりそのクリエイティビティこそが差別化要因として一層重視されると思います。

また一方で、AIと異なり、人間には、少数のデータからでもひらめきを起こし、イノベーションを推進する力があります今後テクノロジーが進化し続け、AIがカバーする範囲が広くなるかもしれませんが、人間はそれでもイノベーションを起こし続けるでしょう。そこに一層、焦点が当てられることになるのではないでしょうか。

その未来で自分が何をしているかを考えると–、やはり生活者や消費者の立場から、最新のテクノロジーでどんなバリューを提供できるのか考えていて、価値あるものを提供する場に、何らかの形で関わっているでしょうね。

 

 

アドビでは2018年4月25日(水)に、働き方改革、デジタルマーケティング事業、アドビのコンサルティングにご興味のある方向けにAdobe Professional Servicesビジネスワークショップを開催いたします。 顧客の”デジタル変革”を成功へと導くアドビプロフェッショナルサービスについてご紹介するとともに、立食形式での懇親会にて、アドビのコンサルタントまたは参加者同士とのネットワーキングをお楽しみいただけます。

 

さらに2018年4月26日(木)には、Adobe Digital Experience Insights 2018 を開催いたします。ビジネスの課題をデジタルを通していかにして対応するかを、Adobe Experience Cloudを利用いただいている多くのお客様、アドビのコンサルタント、同事業を支えるパートナー様の講演をご用意しております。ぜひご参加ください。

 

アドビ 広報

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