デジタル化を進める鍵は 「提案」ではなく「共感」だ

アドビのコンサルタントが語る“My Experience”

企業のデジタル化を目指すプロジェクトは数あれど、そのすべてが円滑に進むとは限りません。アドビ カスタマー ソリューション統括本部 プロジェクトマネジメント部 部長 鵜瀬総一郎が、デジタル化プロジェクトが進まない理由と、そんな困難プロジェクトを進めるためのノウハウを、自身のエクスペリエンスを基にお話しします。

聞き手:フリーライター 岩崎 史絵

 

アドビきっての凄腕コンサルタント!

 

鵜瀬さんについては、事前に「全世界のアドビ社員が認めるすごいコンサルタント」とお伺いしていたので、今日のインタビューを楽しみにしていました。

 

鵜瀬 ひょっとして「Consultant of the Year」のことでしょうか。グローバルではありますが、あくまでも社内の表彰なので、そういわれると少し照れますね。

 

それです。世界中のアドビ社員コンサルタントの中から一人しか選出されない賞に選ばれたと伺いました。

 

鵜瀬 アドビは海外のメンバーと一緒にチームを組んで仕事をする機会が多いのですが、受賞した時はインドやイギリスのメンバーと一緒に米国のクライアントのプロジェクトをサポートしたんです。地域や組織単位の縦割りではなく、組織の壁を超えてプロジェクト全体を支援したことが評価されたようです。

 

オフショアでの大規模プロジェクトというと、時差もあって大変だったでしょうね。

 

鵜瀬 リモートなので、それほど負担はなかったですよ。夜中や朝に電話会議が入ることもありましたが、そういう時は睡眠を小分けに取るなど、自分のこともマネジメントします(笑)。

 

前職では、事業会社のマーケティング部門でデジタルマーケティングを担当されていたとか。

 

鵜瀬 そうです。外資系保険会社のマーケティング部門に所属していました。webサイト担当者を経て、その後はデジタルチャネルの売上向上に注力しました。簡単にいうと、電話ベースの保険申し込みから、web経由の申し込み件数を増やすための施策づくりです。自主性を重んじるというか、いろいろなことを自由にやらせてもらいました。

 

現在はプロジェクトマネジメント部の責任者であり、コンサルタントとして企業の支援を行なっているんですよね。

 

鵜瀬 前職も現在も、概念的にいえば「デジタルトランスフォーメーションの推進役」なので、仕事内容も似ています。デジタルトランスフォーメーション、つまり「デジタル化」という意味ですが、現在はアドビのプラットフォームを用いてマーケティングのデジタル化を推進する役割になります。部門名で勘違いされることもあるのですが、一般的なプロジェクトマネージャーというより、むしろ製品の技術的な知見や導入実績をベースに、クライアント企業がやりたいこと、導入したいことを形にしていく仕事です。ほかに、アドビ製品のオフショア開発に携わることや、またコンサルティングメニューの企画で海外とやり取りすることもあります。

 

仕事内容が多岐にわたっているんですね。そのなかで、ご自分の強みは何でしょう?

 

鵜瀬 あえていえば、仕事を進めるうえで、自分の強みをあまり考えないことでしょうか(笑)。それよりも、実現したいゴールに向かって、しっかりチームで動いていくことを重視しています。

 

 

難しいプロジェクトをスムーズに進める秘訣

 

デジタル化プロジェクトを進める際の難しさはありますか?

 

鵜瀬 強いていえば、デジタル化に対する「危機感のなさ」でしょうか。デジタル化を進めるに当たり、「いままでそれなりにうまくいっており、何も問題がないのだから、わざわざ変える必要はないのではないか」という考えが出てくることがあるんですよ。確かに、特に問題がないプロセスややり方を変えることは、企業にとってかなりチャレンジングです。これ、意外と根強い抵抗なんです。

 

そういう意見を、それこそどのようにトランスフォーメーションするのですか?

 

鵜瀬 「こういうふうになりたい」という夢と、それを実現するしっかりとしたプランを見せることです。「もし自分がお客様の立場だったら、こういうことをやりたいです」と、相手の立場に立って提案します。通常は「お客様がしたいことを実現する」というスタンスで仕事をするケースが多いかと思いますが、大きな変革を進めていくには、われわれコンサルタントにも、「こうしたい、こうなりたい」という強い意思が必要です。

というわけで、私のやり方はとてもシンプルなんですよ。「自分がお客様の立場ならこうしたい」という想像をふくらませて、それに足りないものを足していくだけ。そこで互いに共通意識を持てば、向かっていく方向は同じなので、あとは実現するだけです。

 

もし、「自分なら」という想像が、お客様の目的と異なる場合はどうなるのでしょうか?

 

 

鵜瀬 それはひとえに調査不足のせいです(笑)。社内には「こう変わりたい」「いまでなくてもいい」「どうせなら、これもやりたい」など、一言では言い表せない要件やニーズが多々あります。私はそういう要件を机の上だけで整理するのではなく、実際に「こういう風にしたいですね、ああいう風にしたいですね」と話し、イメージをどんどんふくらませて直感的に進めていく。すると、お客様が考えていることと、私がお客様だったらやりたいことが重なり合ってくるんですよ。いろいろなコンサルタントがいますけど、私はこんな感じで進めるタイプなんです(笑)。

ただ、自分がやりたいことと、お客様がやりたいことが重なり合うには、こちらの考えにお客様を合わせるのではなく、私たち自身が変わっていかなければなりません。冒頭で社内表彰された話が出ましたが、あのプロジェクトもそうです。案件でいえば「オフショア開発の成功」ですが、実質的には、お客様のプロジェクトを通じ、これまでの社内のやり方を変えてアドビ自身が変革したことが大きいと思います。いずれにせよ、お客様のプロジェクトに貢献できて、社内でもトランスフォーメーションを実現したことは嬉しいですね。

 

 

デジタルトランスフォーメーションは難しくない

 

社内外に変革を起こすということは、それだけ信頼されるコンサルタントということですよね。

 

鵜瀬 トランスフォーメーションという特殊な仕事をする時には、全員で強い意思を共有するためのイメージや目標が大切になると思うんです。で、それに向かって一緒に進んでいく。具体的にいえば、お客様のビジネスを大きくするためのアドビ製品の活用法や、体制づくりをアドバイスし、着実にゴールに近づけるわけですね。最初の一、二、三歩を一緒に進む、それがコンサルティングサービスなのかなと。

あとはプロジェクトの透明性を意識しています。プロジェクトを進めるうえでは、全体の風通しが良く、周囲が何をやっているか見えることが必要なので、そういう環境をつくるように注力しています。

 

イメージを共有する、ということが一番難しいような気がしますが、それについては?

 

鵜瀬 単にデジタルトランスフォーメーションという横文字だとイメージがわきにくいかもしれませんね。もっと単純に考えていいんです。

 

 

まずデジタルを導入すれば、いろいろなデータが集約されて全体の状況が把握できたり、また1人のお客様の行動プロセスが見えたり、ある商品に対して市場がどういうイメージを持っているのかがわかります。これらの結果は、経営にも活かされますし、顧客理解も進みますし、ブランディングの確立・強化につながります。実際、これまで店舗とweb、通販などバラバラのチャネルを横串で刺して、デジタルで状況を確認できるようになるだけでも、大きなインパクトがあるんですよ。これがデジタル化、企業の変革になります。

そして各チャネルを横串で見られるようにすれば、お客様のエクスペリエンスがシームレスな形で把握できます。つまり、デジタル化が実現すれば、エクスペリエンスベースで物事が見えるようになる。マーケターは、「このフェーズのお客様はどういう状態なのか」など、データを活用してお客様のインサイトを分析し、どのようにコミュニケーションを取るべきかを考えるようになる。最近になり、アドビが提唱するエクスペリエンスとは、この「エクスペリエンスベースで物事を考えて戦略を立案できる」ことがポイントなのかな、と思うようになりました。

 

なるほど。本当にそうなったらいいな、と思いますが、それにはやはりプラットフォームを抜本的に変えることが必要で、そうするとやっぱり、「そこまで変化しなくても……」と消極的になる気持ちも芽生えます(笑)。

 

鵜瀬 ですよね。そこでなぜアドビが選ばれるのかといえば、「アドビという乗り物に乗れば、『デジタルトランスフォーメーションの実現』という未来に連れて行ってもらえる」という期待があると思うんです。幸い、アドビというブランドはデジタルやクリエイティブの世界で実績がありますし、私たちはその製品の操縦の仕方を教えることができます。もちろん私たち自身も学ぶことは多いんですけれども、一緒の乗り物に乗って一緒にやっていく感じです。

 

 

休日はこんなことをしています

 

鵜瀬さんは、自分自身のマネジメントや、仕事の進め方、物事の割り切り方がきっぱりしている印象がありますが、何かコツはあるのでしょうか。

 

鵜瀬 うーん、自分ではあまり意識していないんですよ。仕事を効率的に進めるためにはデジタルツールも大いに活用しますし、時間配分は自分で決めますが、あとは……、ちょっと思いつきません(笑)。

 

休日は何をなさっているのですか。

 

鵜瀬 10年以上前に、知人に初めてゴルフ場に連れて行ってもらってから、すっかりゴルフにはまってしまったんです。ここ1年くらいサボっていたのですが、また復活しようかなと思っています。

 

ゴルフはメンタルが鍛えられるといいますよね。

 

鵜瀬 そうですね。でも、ゴルフでメンタルを鍛えて仕事に生かすとか、仕事の疲れをゴルフでリフレッシュするとか、そういうことは一切ないんですよ。純粋に、ゴルフ自体が楽しいんです。スコアを伸ばすために、ストイックに考えたり、練習したりすることが楽しい。もともと最初にゴルフにはまったきっかけも、地方にあるリーズナブルなゴルフ場で、本当に原っぱのようなところで打った経験が楽しく、それで夢中になったんですよね。高額なカントリーではなく、広大な原っぱでのびのびプレーするスタイルが、私のゴルフの原点なんです。

アドビに入社して良かったことの1つに、すごくゴルフがうまいドイツのメンバーの知り合いになれたこと。例の、大規模オフショアのプロジェクトがきっかけです。その社員は、ジュニアの時にドイツ代表だったそうで、いまでもプロになれるんじゃないかな。会話のなかで、たまたま私がゴルフ好きとわかり、昨年日本に来た時に、パターカバーをプレゼントしてくれたんです。ウイスキーのボトルをかたどったデザインがかわいいでしょう(笑)。

 

 

宝物で、これずっと自宅に置いているんです。いつか彼と一緒にプレーしたいのですが、向こうは本当にプロ並みなので、そのためにはもっと精進してゴルフの腕を磨かないと、と思っています(笑)。

 

これからますますのご活躍をお祈りしております! 今日はありがとうございました。

アドビ 広報

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