#AdobeMAX ラスベガス基調講演2日目 #ジョナサンアドラー #アニーグリフィス #マークロンソン #ジョンファブロー

BY 公開

Adobe MAX2日目は、世界中で活躍する著名なクリエイターを招き、インスピレーションを与える基調講演が行われます。Adobe MAXがクリエイティブカンファレンスとしてスペシャルなのは、クリエイターのコミュニティが一緒になってクリエイティブなイベントに作り上げるところ。今回は4名のセレブアーティストが登壇し、彼らのクリエイティブワークのプロセスについて話してくれました。

■陶芸家 ジョナサンアドラー

まず登場したのは陶芸家兼デザイナーで起業家のジョナサンアドラー。彼の名前を冠したショップ「JONATHAN ADLER」は、いま全世界で25店舗に拡大。ジョナサンアドラーは、自らの作品を手がけるアーティストであり、ビジネス的にも大成功を納めるビジネスマンという2つの顔を持つクリエイター。

自身のブランドをローンチしたのは1993年のこと。その作風はハッピーで大胆でグラマラス、すぐに彼の作品とわかるほど個性的。また、積極的にガンやエイズなどの研究にも貢献している。

しかしジョナサンアドラーの成功は一朝一夕に得られたものではない。最初に立ち上げたブランドは成功しなかった。24年間ひたすら陶芸を作り続け、現在の成功があるという。彼は言う。「私は自分の事が大好きで、同時に大嫌い。そうやってラブとヘイトを自分の中に持っている人がクリエイターとして成功すると思う」と。彼のパートナーは”アリアナ・グランデ”っぽいポップな男性だそう。

ジョナサンアドラーが最初に陶芸に触れたのは子どものころ、サマーキャンプにて。陶芸体験のプログラムで粘土をいじった時に、これは自分の未来になると直感したという。そのときの先生がカッコよかったのも陶芸を志す一因だった。よくありがちな、髭がもじゃもじゃで、バーモント州の山にこもってクラフトフェアでお皿を売る…そんなステレオタイプの陶芸家にはなりたくなかったから。ジョナサンが目指した陶芸はただひとつ。

「クリーンでグラフィカルでポップな陶芸」。

ラッパーのマグカップが欲しいな、と思ってカニエウェストやRUN DMCのマグカップを作った。次の日には手榴弾ってカッコイイな、と思い、花瓶を作った。パームスプリングスのホテルでは、「この庭には絶対にバナナが必要!」と思い込み、7フィート(約2メートル)のbバナナのブロンズ像を作った。雲の形のソファーや、巨大なピル(薬)も作った。

こうしたクレイジーなアイデアには、「わたしのアイデアだからファビュラスなのよ!」と酔いしれることもある。これがインスピレーション、クリエイティブプロセスの一部というものだ。しかし同時に「わたしの作品だから失敗するかもしれない」とも思う。この自己愛と自己嫌悪のバランスは、永遠にジョナサンアドラーのテーマであり続けている。

ジョナサンアドラーとアドビのCMOアンルネス

「わたしのアイデアは全部最高だと思うし、同時にサイアクだと思う。でも何かを作る時にはバカでなければならないんです。そして、バカだということを知りたくないという拒否感も感じなければならない。まるで感情のローラーコースターです。とにかくクリエイティブにやろうということから地味にスタートして、一人でスタジオにこもってひたすら陶芸を作りました。そうした感情にぴったり来るものを作るのには時間がかかりましたが、表現出来るようになるまでには、自分との長い戦いがあったんです」

そして見事に成功したジョナサンアドラーのクリエイティビティの旅。「心を解き放つと自然に表現がついてくる」とトークを締めくくった。

■「ナショナル ジオグラフィック」写真家 アニーグリフィス

150か所以上の国と地域で写真を撮ってきた写真家のアニーグリフィス。ナショナルジオグラフィック誌(以下、ナショジオ)で世界で活躍する女性フォトグラファーのさきがけとなったアーティストだ。

彼女はナショジオに入るまで、ほとんど経験のない写真家だった。海外に渡って写真を撮るうちに、ヒューマンストーリーに惹きつけられたという。中でもさまざまな女性の姿に。何が人のモチベーションになっているのか、「それを見せるのがわたしの仕事」と語る。

もともとミネソタ州育ちで、どこにも行ったことがなかった彼女がナショジオに入ったのは20代の最初の頃。ナショジオでは、ただ美しい写真を撮るだけでは通用しない。そのため、取材で訪れる場所に興味を持ち、そこの文化の一番いいところ、そして全ての文化を繋いでいる神経のようなものを見せたかったという。アルゼンチンのガウチョやエルサレムのドームオブザロックなど、全世界を飛び回って撮影した。

世界中を旅する彼女が出会った中でも、最もクリエイティブで惹きつけられたのは貧しい女性達の姿だったという。彼女らは金属のかけらを叩いて鍋やアクセサリを作る。教育がなくても生き抜くために様々な知恵を駆使している。写真にできるのは、これまでに語られなかったストーリーを魅せること。女性のストーリーを伝えることにアニーグリフィスは使命感を持っている。

印象的だったのは、「自分の墓石に何と書くか」という最後のエピソード。昔、「カメラを持っているひどい女」と言われたことがあるので、それを墓石に刻むのだそう(笑)。

■音楽プロデューサー マークロンソン

アドビのエヴァンジェリストJason Levineとマークロンソン

アデル、ブルーノマーズなどを手がける音楽プロデューサーのマークロンソン。ブルーノマーズとコラボした「Uptown Funk」は世界的大ヒットになった。本トークでは、アドビのエヴァンジェリストでも最もロックな存在であるジェイソンラヴィーンとの対話を行った。

ロンドンからNYに来たマーク。プロモーターに自分の音楽をプレゼンして、NYで活動を始めた。DJをしていたらパフダディが来てチップに100ドルをくれようとしたこともあった。「お金をもらうなんてヤバイ…」と思ったマークは「大丈夫、ありがとう」と断ったのだが、また来た(笑)ので結局お金はもらった。そこでマークを気に入ったパフダディは、マークを色々なところに連れて行って名前を広めてくれたという。

順風満帆に見えるマークにも失敗はある。

「テープでプレゼンをして、仕事を貰うんだ。家にある小さい機械でいい音が出来てチャンスをもらっても、(実際には)大きなスタジオの仕事をやってみると、うまく行くわけじゃないんだよ。ボタンが多すぎるし(笑)。レコード会社の人に『これじゃ、全然ダメ』と言われて恥ずかしかった」

マークが影響を受けたジャンルはブラックミュージック。ヒップホップのDJ Premiereやクインシージョーンズ。いろいろなジャンルの音源を組み合わせて音楽を作るのは、さまざまな色を組み合わせるような感じと語る。たまに、「まぜこぜにした結果茶色になっちゃってうまくいかなかった」ってこともあるそう。

アデルやエイミーワインハウスなどをプロデュースしてきたマーク。「僕はすごくラッキーだった。才能を持っている人はたくさんいるけど、会話してグッと来ることが大事なんだ。『この人のために何かができる』っていう、キラキラとしたものが湧くかどうかが、その人と仕事をするかどうか、の決め手になるんだよ」

10代のアーティストでも、どういうレコードを作りたいか、はっきりしたビジョンを持っているアーティストもいるという。

「あるアーティストは「どういう曲を作りたい?」と聞くと、「こんなのできるの!?って人を驚かせるようなものを作って欲しい」と漠然と言われて、これは大変だと思った(笑)。しかしエイミーワインハウスは60年代の大好きなレコードをもってきて、こういう風にしたいんだと言ったんだよ」

エイミーワインハウスとは一緒に映画を観に行ったりして親交を深めて、インスピレーションを与えてあった。ヒットを連発するマークでも、「録音ブースの中に入ると少し怖くなる」という。本当にできるのかと怖くなる一方で、最高のところまでやりたいと思うそうだ。ギリギリのところまでやってやろうという気持ちが湧き上がる。小さい部屋のなかで神が降りてくるような、インスピレーションを信じている

「ドリームコラボレーションっていうのは、お前と組みたいんだ!って電話がいきなりかかってくるんじゃなくて、自然な流れで生まれるものなんだ」

マークロンソンがコラボしてみたい「ドリームコラボレーター」はレディオヘッド。「曲を聴いて嫉妬するほど好きなアーティストだ。彼女といるときでも、タイミングとかリズムが合っていないな、とか考えてしまって(笑)」

「やろうと思った事ができるのは1%もない」という。彼の理想は、モータウンや70年代のスティービーワンダー、90年代のヒップホップのように、時代を越えて愛される音楽を作ること。

「せっかくあるテクノロジーを使わない手はないと思うんだけど、コンピュータの音には人間っぽさ、ヒューマンタッチを入れたいんだ。ボブディランの声って、人の心を震えさせるものがあるよね。そういうものを、コンピュータの音にも入れていきたい」

世界中で引っ張りだこの売れっ子プロデューサー、マークだが、これからの展望は?と聞くと…

「音楽は、若い人のほうが作るのが得意なもの。だけど永遠に若者であることはできないよね。僕はメンター的な役割も大事だと思っている。ディプロやケビンパーカーのメンターになりたいと思っているんだ」

■映画監督、ジョン・ファヴロー

ジャングルブックやアイアンマンなどのブロックバスタームービーを作ってきた名匠、ジョンファヴロー監督。ニューヨーク生まれ、ブロンクスサイエンス高校の出身だ。ただいま50歳で、3DCGやVRなど、精力的に手がける作品の幅を広げている野心家なアーティストである。

監督自身は、アナログ人間。「テクノロジーでアイデアの流れをストップしたくない」ということで、携帯やパソコンもほとんど使わない。

「アイデアを書き留めるのに使っているのはノートです。日頃からアイデアをスケッチしておいて、新作映画のアイデアはその本のネタから使ったりするんです。いまやっているVRのプロジェクトも、実は昔描いたスケッチがアイデアのソース。でもその頃はまだ、”VR”という言葉がなかった頃だったんですよね」

”テクノロジーはツールである”と語るジョンファヴロー監督。いま注目されているVR映画を製作することについてこう回答した。

「VRというのは複雑なものなので、ストーリーテリングがすごく複雑になる。だからテクノロジーとストーリーを組み合わせるのが重要なんだ。例えば古い神話をモチーフにする、みたいなね。今まで、ジョージルーカスもディズニーも、テクノロジーとストーリーを組み合わせてきた。テクノロジーを使ってストーリーを新鮮に見せるというフォーミュラ(方程式)があればいい」

従来、映画を作るのは大掛かりなことだったが、いまでは2000ドルで映画を製作してオンラインで公開できる時代になった。そんな時代に、”評論家”はどんな役割があるのかと監督に聞くと…

「評論家じゃなくて、キュレーターがいればいいと思っている。批評家というのは、今までの流れを汲んで、その人が持つある観点から評価やコメントをしているけれど、僕の子どもはその視点をもう気にしないかもしれないし(笑)。今では口コミもある。僕が思うのは、映画を見るのに、批評とかコメントを読みすぎてはダメだということだ。情報が入りすぎるからね」

数々の大ヒット作品を生み出したジョンファブロー監督のモットーは、「失敗から学ぶ」こと。

「ホームランを打つためには、失敗する必要があるんだ。僕自身、失敗作は山のようにあるよ。アイアンマン、カウボーイもザスーラも、興行は良くなかった。そこをどう見ていくのかが大事なんだ。自分中心で怖がるのはよくない。そこに成長が生まれるから」

基本的にジョンファヴロー監督は仕事が大好き。朝はワクワクして目が醒めるという。現在は、『ライオンキング』に取り組んでいる。

「環境も動物もバーチャルな作品で、何もないところからVRの撮影をしているんだ。まるでゲームを作っているような感覚だよ。(同じくテクノロジーを多用した)『ジャングルブック』とまた同じか、と言われたくないからすごく新鮮な作品にするように心がけている」

全世界が待ち焦がれている『ライオンキング』だが、あまりにもチャレンジングであるために監督は「ギャンブルだよ」と言う。

「僕にはギャンブルの直感がある。とにかくやってみるんだ」

俳優・監督など沢山の顔を持っているが、やはりいちばん好きなのは映画監督であること。

「どれか選べ、と言われたら監督を選ぶね。良くできたセットにいるのが好きなんだ。僕自身がスタッフを選んで、ひとつのカルチャーを作ることができるからね」

新作も楽しみなジョンファヴロー監督。これからも世界を湧かせてくれるだろう。

■Adobe MAX Japan
日本でも2017年11月28日(火)、パシフィコ横浜にて「Adobe MAX Japan 2017」を開催。
クリエイターたちが主役になるこのイベントは、ラスベガスで開催されたAdobe MAXでも基調講演を行ったデジタルメディア事業部門担当エグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのBryan Lamkin(ブライアンラムキン)や、メディアアーティストの落合陽一氏による基調講演に、充実のセッションやBEER BASHなどさまざまな企画が盛りだくさんな一日です。お申込みはお早めに。詳細はWEBサイトにて。

  TAGS

  AUTHOR

齋藤 あきこ

宮城県出身。図書館司書を志していたが、“これからはインターネットが来る”と神の啓示を受けて上京。青山ブックセンター六本木店書店員などを経て現在フリーランスのライター/エディター。