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連載/hueが直伝! “売れる“料理の撮り方、見せ方 #4   “美味しさのカタチ“を変える、カメラワーク #AdobeStock

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料理やスウィーツなど「食」の写真は人気カテゴリー。しかし、撮影してみるとなかなか美味しさがちゃんと写らない……。
そんな悩みを持つ人に、“食“に特化してビジュアル制作をするクリエイティブ集団hue(ヒュー)近藤泰夫氏が、食欲をそそるシズル撮影のワザを伝授。第4回目は美味しさを伝えるカメラワークあれこれ、です。

■なぜ背景がぼけた写真が、“センスある上質さ“を感じさせるのか?

雑誌やWebコンテンツ、あるいは広告でも、料理写真の世界では、「上質なライフスタイルを感じさせる写真」が最近のトレンドです。
たくさんの料理が並んだテーブルを友人と楽しそうに囲んでいる写真。人の気配や、憧れのキッチンやリビングの雰囲気が伝わるような写真――。見た人に「こんな上質な生活をしてみたい」と感じさせるような、空気感のある料理写真が好まれているわけです。

そんなライフスタイルを感じさせる写真が撮影したいなら、押さえておきたいのが“ボケ”のテクニックです。下の二枚をみてください。

● パターンA

©Copyright2018 hyemi cho/hueinc.All Rights Reserved.

パターンB

©Copyright2018 hyemi cho/hueinc.All Rights Reserved.

 

同じ被写体、同じライティングの写真で、違うのはボケ具合のみです。
パターンAは「ボケあり」の写真。レンズの絞りを開ける(開放にする)事で、被写界深度(ピントのあう奥行き)を浅くして、奥のほうがぐっとボケるように撮影しました。

一方、パターンBは「ボケなし」の写真。逆に、絞りを絞る事で被写界深度を深くし、画面のほとんどがボケることなくクリアに写るように撮影したものです。

色味も構図も同じなのに、なんとなくAのボケた写真のほうが「上質な生活」の雰囲気が出ている気がしませんか? 簡単にいうと、どこか「おしゃれ」でセンスを感じますよね。それには、理由があります。

ボケている事で、写真の中の「明確な情報量が減る」からなのです。
言うまでもなく、ボケた部分はクリアに見えず、何があるかしっかりと認識出来ません。

ただし、その曖昧で明確に見えないものにこそ、人はイマジネーションが働くのです。よく見えないから「なんだろう」と注目する。そして見えないから、頭を働かせ、脳内でポジティブなイメージに補完してくれる、というわけです。

しかし、クリアに見えているとそうはいきません。いわゆる「パンフォーカス」と呼ばれる画角全体にピントがあった写真は、すべてがしっかり見えているので情報が明確です。それだけにイマジネーションの入りこむ余地がない。

「あ、なんだ、まな板の奥にあったのは、塩の瓶か」「奥に色があったけれど、フルーツね」と、イマジネーションを働かせること無く、写真の中にある情報を見てしまうわけです。
もちろん料理写真でも「どんな料理なのか伝えたい」「具材に何を使っているかきちんと見せたい」という意図があるものなら、パンフォーカスがオススメ。第一回でもお伝えしたように、写真の“狙い”によって使い分けましょう。

■ななめ45度で撮った写真は、アノ目線と同じになる。

ボケた写真に、私たちが魅力を感じる理由はもう一つ、「人間の目が、パンフォーカスだから」ということもあります。

私たちの「目」は、カメラのレンズでいうとやや広角気味のレンズで、みるものすべてにピントがあった状態で、モノを見ています。つまり、カメラで撮ったパンフォーカスの写真は、「普段見ているいつもの世界」に近い。日常の延長でしかないため、情報は明確に伝わるけれど、ワクワク感を感じづらくなります。
逆にいうと、「ボケ」た写真は、人の目では再現できない画なのです。「非日常」を感じさせ、すっと目がいき引き込まれる、というわけです。

この「非日常の魅力」を理解したうえで、覚えて欲しいもうひとつのカメラワークが、“アングル“になります。被写体に対する撮影角度のことです。最もスタンダードな料理写真のアングルといえば、この角度ではないでしょうか。

©Copyright2018 hyemi cho/hueinc.All Rights Reserved.

斜め45度。「斜俯瞰」と呼ばれるアングルで撮ったものです。見ていて違和感がない、しっくりくる写真だと思います。なぜなら、この角度は「日常に近い」から。
私たちが食卓で、料理を前にしたときに見える角度が、だいたい斜め45度。いつも見慣れている角度が、このアングルなのです。

少しアングルを変えてみましょう。

©Copyright2018 hyemi cho/hueinc.All Rights Reserved.

斜め45度だったアングルを、やや水平にし斜め30度くらいから撮影しました。いわゆる「ローアングル」。その結果、少しだけテーブルの奥まで写り込むようになりました。

これだけで、先程よりも空気感を感じさせる事が出来ました。普段は見慣れない角度で撮影することで、少しだけ非現実感を感じさせ気持ちを高揚させてくれます。ボケの効果もあいまって、「すてきな空間」を感じとれる写真に仕上るというわけです。

さらに日常とは違ったアングルにも挑戦してみましょう。

©Copyright2018 hyemi cho/hueinc.All Rights Reserved.

真上からとった「真俯瞰」のアングルです。こちらは美味しさを伝えるにはあまり向いていないアングルですが、皿に何が入っているか、とても見えやすいので、情報量はぐっとあがります。さらに、グラフィカルに写るため、料理にまた違ったおもしろさを加え、写真にデザイン的な要素与えてくれます。

斜俯瞰
ローアングル
真俯瞰

「斜俯瞰」「ローアングル」「真俯瞰」。

アングルの違いで、まったく違う表情になるのが写真のおもしろさ、みなさんもぜひ試してみてください。

■がっつり系を撮るなら、「広角レンズ」を。

最後にレンズについても、少しだけお伝えします。

レンズはおおまかにわけると「広角」と「望遠」に分かれます。広角は、パースがついて歪むというデメリットはありますが、写る範囲がワイドに広がります。それに対して、望遠は映る範囲は狭くなりますが、遠くの被写体でもズームアップして写す事ができ、ボケやすくする効果もあります。

次の2枚でいうと、まったく同じアングルと環境で、「広角」、「望遠」で撮ったものです。

広角

©Copyright2018 hyemi cho/hueinc.All Rights Reserved.

望遠

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これもまた全く違った写真になりますね。

広角で撮った写真は、パースの効果で写真の中心がこちら側にぐっと迫ってくるような“迫力“が出ます。一方の望遠のほうは、誇張されずに映る分、どこか“上品“な印象になります。
こうしたレンズの特徴を生かして、たとえばラーメンや丼モノなどの“がっつり系”の料理は「広角」レンズで寄って撮ると、よりインパクトを与える写真になります。逆にヘルシーやオーガニックを売りにしたような被写体だと、すっきりとスマートな写真が求められますので、「望遠」レンズのほうがイメージに近い仕上がりになります。

繰り返しになりますが、人間の目はやや広角ぎみのパンフォーカスでしか見る事が出来ません。だからこそ、写真を撮るときは、この被写体を「望遠レンズだどのように見えるか」「ボカしてみたらどうか」「ローアングルのほうがイメージに近いかな」などと、想像してみることが大切なのです。

今回お伝えした様々なカメラワーク、ぜひ試してみてください。

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参考写真撮影:趙慧美/hue inc.

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近藤泰夫

株式会社ヒュー(amanaグループ)| 料理写真を専門として多くの食品メーカーをクライアントに持ち、シズル感のある広告写真を多く手掛ける、フォトディレクター兼フォトグラファー。株式会社ヒューは圧倒的な『食』の写真・動画のシズル表現で年間1200案件以上のビジュアル制作する『食の総合プロデュース会社』。このブログでは、数十年間の経験に基づく『美味しい』を具現化する表現手法やフォトグラファー育成で培ったノウハウをもとに、『Adobe Stockで売れる写真を撮るにはどうしたら良いか』を一緒に考えていきます。