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#源ノ明朝 開発のプロセス

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この記事は、Dr. Ken Lundeが執筆し、2017年4月3日 (米国時間) にポストされたブログ(http://blogs.adobe.com/CCJKType/2017/04/source-han-serif-history-development.html)の抄訳です。

開発のプロセスと言うよりも、この2年間、私が忙殺されていたプロジェクトについて…と言ったほうが正確かもしれません。

アドビの「源ノ明朝」(英語名は Source Han Serif、韓国語名は 본명조、中国語名は簡体字で 思源宋体、繁体字で 思源宋體)およびGoogleの「Noto Serif CJK」が、4月4日に発表されました。これはオープンソースのPan-CJK書体ファミリーで、やはりオープンソースで同様の名前を持つ「源ノ角ゴシック」(Source Han Sans)およびGoogleの「Noto Sans CJK」書体ファミリーの明朝体版ということになります。詳細は、こちら日本語한국어简体中文繁體中文)をご参照ください。この記事では、源ノ明朝やNoto Serif CJKの公式発表文には書かれていないフォント開発者向けの情報をご紹介します。以後、特に断りがない限り、Noto Serif CJK、Noto Sans CJKも含めて源ノ明朝、源ノ角ゴシックとのみ記述します。

開発のタイムライン

源ノ明朝の実際のデザインワークがスタートしたのは2014年末、源ノ角ゴシックのリリースから2、3ヵ月後のことでした。まずAdobe-Japan1-6の漢字に対応する大部分の日本語グリフの微調整を行うかたちでスタートしました。2015年の初めに、株式会社イワタが追加の漢字と少数の韓国語漢字のグリフデザインを開始しました。2015年中ごろには、Changzhou SinoType が中国語のグリフデザインを開始しました。韓国語については、Sandoll のデザイナーである Soohyun Park(박수현)がハングルのエレメントライブラリを制作するところから始めなければなりませんでした。この作業には数ヵ月を要しましたが、このエレメントライブラリがハングルの文字、記号、音節のグリフデザインの基礎となりました。そして最後にアドビの Frank Grießhammer が Source Serif のグリフをデザインして提供しました。

私は開発期間中に6つの仮ビルドを作り、ビルドが進むごとにグリフと機能を増やしていきました。個々の仮ビルドを制作した日付、ウェイトごとのグリフ数、概要を下の表にまとめました。

仮ビルド 日付 グリフ数 概要
1 2015-09-21 26,166 日本語および韓国用のすべての漢字、中国用漢字(一回目)、3つのウェイト、フォントパートナーごとに整理されたグリフ
2 2016-01-29 38,836 追加の中国用漢字、ハングル音節文字(一回目)、9つのウェイト
3 2016-05-27 52,277 追加の中国用漢字、追加のハングル音節文字、台湾用漢字(一回目)、7つのウェイト
4 2016-08-26 57,359 追加の中国用および台湾用漢字、追加のハングル音節文字、香港用漢字(一回目)
リリース候補1 2016-12-19 64,665 追加のハングル音節文字、ハングル字母の組み合わせ、CJK (日本語のカナと句読点) のカーニング、グリフ完成
リリース候補 2 2017-02-27 65,535 欧文カーニング、グリフ再配列、源ノ明朝とNoto Serif CJKのリソースを分離

 

開発プロセス全体の中で、仮ビルドは非常に重要な役割を担っています。これがあるため、アドビ、Google、フォントパートナー各社(Sandoll Communicationsイワタ、Changzhou SinoType)は、複数のスクリプトと複数の言語が混ざった状態でグリフを確認することができます。仮ビルドごとの確認作業の結果を基に、さまざまな調整を行いましたが、時にはそれがスクリプト全体に及ぶこともありました。

多大な労力を費やして製品を完成に導いたフォントパートナー3社とアドビの才能豊かなデザイナーたちへの感謝に加えて、私は特にある人物に感謝の意を伝えたいと思います。アドビ、Google、そして世界中に広がる数多くのユーザーを代表して、Eric Q Liúに深く感謝します。彼のフィードバックが、より一層この書体デザインのクオリティを引き上げたのです。谢谢!

開発の詳細

成功した源ノ角ゴシックをモデルとして開発されたからというだけではなく、源ノ明朝の開発はUnicodeの新たな文字をサポートし、さらに新たな技術、効率性、機能性を追求するチャンスとなりました。

Unicodeについては、Unicode Version 10.0でURO(Unified Repertoire & Ordering)の全域のカバーを達成し、これは6月にリリース予定です。既存の2つの日本語グリフが漢字拡張F(これもUnicode Version 10.0で対応)のコードポイントからマッピングしています。

主な機能性と効率性の改善点は、以下の通りです。

  • ハングル字母の組み合わせで作られる7つのグリフを削除。詳細はこちらの記事を参照(英語)してください。
  • 縦書きでのハングル字母の組み合わせをサポートするため、(GSUBではなく)’vert’ GPOS機能を追加。 このGPOS機能は、さらにいくつかの組み合わせ文字にもメリットがあります。詳細は こちらの記事を参照(英語)してください。
  • ‘kern’ および ‘vkrn’ GPOS機能で規定されるCJKカーニングは、当初日本語のカナと全角の句読点をカバーしていましたが、現在ではクラスカーニングを利用してさらに開発効率を高めるものになっています。
  • 標準ウェイトを太字ウェイトにスタイルリンクで関連付けました。スタイルリンクを使用する、またはスタイルリンクが必要となるアプリや環境で役立ちます。Source Han Sans Issue #103 もご参照ください。
  • XUIDのアレイをCIDFont リソースから削除。’CFF ‘ テーブルには存在しなくなりました。詳細はこちらの記事を参照してください。
  • Macintosh(PlatformID=1)’name’のテーブルストリングを、AFDKO makeotf ツールの “-omitMacNames” コマンドラインオプションを呼び出すことで明確に削除しました。これにより ‘name’ テーブルははるかにクリーンになりました。詳細は こちらの記事を参照(英語)してください。
  • 現在は非推奨となっている ‘hngl‘  GSUB機能を削除。
  • cmap‘ テーブル、および ソースUTF-32 CMap リソースは、U+0000からU+001Fまでの範囲のマップを含んでいません。この処理は通常、CMap リソース中で beginnotdefrange と endnotdefrange オペレータによってなされ、その特定範囲のコードポイントを、U+0020 SPACEのグリフに対応するCIDに対応付けます。それは、ASCIIのすべての範囲がプロポーショナルか半角であるかに依存して、通常はプロポーショナルか半角となります。Noto CJK Issue #29 も参照してください。
  • 中国簡体字フォントとフォントインスタンスに9つの Standardized Variants を規定するFormat 14 ‘cmap’ サブテーブルが含まれるようになりました。詳しくはこちらの記事を参照(英語)してください。
  • AFDKO tx ツールに含まれる新たな サブルーチナイザー で CFF をサブルーチン化しました。まだ一般公開されていませんが、この新しい サブルーチナイザーは AFDKO makeotf ツールに組み込まれていたものに比べて100倍以上高速で、これまで1日近く(1,440分)かかっていた個々のCFFのサブルーチン化が約1分で完了します。詳細はこちらの記事を参照(英語)してください。
  • UTC-00791 と UTC-01312という2つのIRG Working Set 2015の文字のグリフが追加され、こちらの記事を参照(英語)にあるように’ccmp‘ GSUB機能を介してアクセスできるようになりました。詳細はこちらの記事を参照(英語)してください(この時点では、上記の記事や UAX #45、IRG Working Set 2015で源ノ明朝のグリフが使われていることは誰も気付いていませんでした)
    上記で多用した「詳細はこちらの記事を参照」という、過去に私が書いたブログを振り返ると、フォント名を名指しはしないものの、源ノ明朝の開発内容を少しずつ小出しにしてきたようです。

さらに指摘しておきたいのは、香港用漢字のグリフの数が、特にUROの末尾でギャップを埋めるために必要となるものに限られているということです。香港語のきちんとしたサポートは、バージョン2.000の時点まで延期しなければなりません。そのときには、追加のフォントとフォントインスタンスというかたちをとると予測します。香港用繁体字の完全なサポートを期待していた皆さんにはお詫び申し上げます。香港語のサポートは正確に行いたいと考えていますが、間近に迫っている香港語SCSの改訂が、このパズルの大きなピースとなっているのです。源ノ角ゴシックのバージョン2.000がまだ実現していないのも同じ理由によるものです。この遅延についても重ねてお詫び申し上げます。

源ノ明朝と源ノ角ゴシック

バージョン10.0でのUnicode の追加要素、前項で特定した変更点、香港用の漢字が未サポートである点以外は、源ノ明朝は源ノ角ゴシックを原型としています。どちらもspecial-purpose Adobe-Identity-0 ROSを基盤とし、Unicodeベースの作業用グリフ名を使用しています。源ノ角ゴシックでは、それぞれの仮ビルド間だけではなくこの2つの書体の間でも、CIDの変更が影響しないことを再び証明しました。

加えてこの2つの書体では、各言語間、各地域間で共有されるグリフの範囲も異なっています。これは2つの書体のスタイルとデザインの違いによるもので、あらかじめ想定されたことでした。つまり源ノ明朝と源ノ角ゴシックは、CIDのレベルでは互換性がなく、そしてCID+108から分岐しはじめるということを意味します。

源ノ明朝とNoto Serif CJKの差異については、Source Han Serif ReadMe(PDF)の21ページから始まる “Noto Serif CJK Differences” の項を参照してください。

どうぞ楽しんでください

この2つのPan-CJKフォントが、15億人以上のユーザーにとって役立つものとなることを願っています。オープンソース、つまり無料であるにもかかわらず、非常にクオリティの高いフォントになりました。大半の有料の書体と同等か、むしろ優れていると言いたいほどです。デザインと開発にかけた労力という点では、増え続ける有料書体のために私たちが行っている仕事とまったく変わるものではありません。

 

もちろん、源ノ角ゴシックと同じように源ノ明朝でも、私はSuper OTC版だけを使用しています。これはすべてのフォントを管理しやすい単一のフォントリソースで提供するものです。

Super OTCと言えば、マイクロソフトの友人たちは、今月 Windows 10 Creators Update をリリースし、源ノ角ゴシックを含むSuper OTCフォントがついにWindowsでインストール、利用可能となります。Windows 10 Anniversary Updateの段階で既にこの動きは進んでおり、すでにウェイトごとのOTCをインストールして利用できるようになっていました。

最後に、源ノ明朝の標準ウェイトのすべてのグリフを1ページに掲載したPDFでこの記事を締めくくりたいと思います。