Adobe Remixプロジェクトの制作の裏側をクリエイターに聞く!『車輪ノ再発明』

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誰もが知るAdobeの『A』のロゴマークを、クリエイターたちが様々な手法を用いて表現する「Adobe Remixプロジェクト」。これまでにアッシュ・ソープやGMUNK、ロバート・ホッジンなど世界的クリエイターが手がけてきたこのプロジェクトを、日本人で初めて手掛けたのが、東京を拠点に活動するイラストレーターの飛永雄大さん。

『車輪ノ再発明』というタイトルのもと、Photoshop, Illustrator, After Effectsを駆使したカットアウト(切り絵)アニメーションでAdobeのクリエイティビティを見事に表現しています。https://www.youtube.com/watch?v=z12xA3mrURo

卓越したアート・ディレクションにスムーズなモーション、ツボにはまるサウンドの合わせ技である、本Adobe Remixプロジェクト。制作者の飛永さんとアニメーションを手がけた岡本将徳さん、音楽を手がけた雨森諭司さんにお話をお伺いしました。

左から岡本将徳さん、飛永雄大さん、雨森諭司さん

——日本人初の「Remixプロジェクト」ですが、USのAdobeから直接オファーがあったとか。

飛永:Adobeさんとのお仕事は、2015年の「Adobe MakeIt Campaign」が最初です。これは熊野古道に入り込んで、現地で得たインスピレーションを元にイラストを描き、森の中に設置したライトボックスに展示するというプロジェクトです。Adobeさんとというか、実はこれが僕のクリエイターとしての初めての仕事だったんです。

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「Adobe MakeIt Campaign」

——熊野の森の大自然から飛永さんがインスピレーションを受けているのが伝わってくる、美しい映像作品でした。こちらはどういうきっかけで始まったんですか?

飛永:アジアのクリエイティヴネットワークのサイト「Ubis.net」に自分が描いた絵を掲載していたのをUSのクリエイティブエージェンシーの担当者が見ていたそうなんです。いま僕が所属している「AgentHamyak」に突然オファーのメールが届き「日本ではこのアーティストを起用したい。探してくれ!」ということになったそうです。

——それはすごい抜擢ですね。「Adobe Remix」の制作にあたり、本国とはどのようなオーダーややり取りがありましたか?

飛永:先方からは自由に作って欲しいという依頼だけで、細かい指定などはなく、好きなものを作ることができました。まずは何を作るか考えたのですが、そもそもAdobe Remixは、他の参加者の方々がすごすぎる。イラストだけでは対抗できないと思い、アニメーション作品を作ることにしました。最初に僕がイメージボード、ストリーボードを作り、アニメーション担当の岡本さんに「こういう感じでやりたい」と相談したんです。

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——岡本さんは、古典的な手法であるカットアウト(切り絵)アニメーションの作家でいらっしゃいますね。

岡本:カットアウトの手法と飛永さんの絵が、親和性がすごくありそうだということで紹介していただいて参加しました。飛永さんから受け取った最初のキービジュアルのイラストが、小さなオブジェクトがたくさん集まっAdobeのロゴになるというものでした。具体的には、飛永さんが描いたひとつひとつのキャラクターやオブジェクトを印刷して切り抜き、それぞれのパーツをガラスの台の上でコマ撮りして。アニメーションに起こすという作業を行っています。

——岡本さんは飛永さんの絵を見た時にどう思いました?

岡本:最初に見たのはベクターだけの、色が塗られていないデータでしたが、「すごく面白そう」というのが第一印象です。これまで自分の絵以外のアニメーションを作ったことがなくて、描かれたイラストからコマ撮りするのはほぼ初めてチャレンジだったので、すごくワクワクしました。

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——カットアウトの技法について詳しく教えてください。

岡本:カットアウトは、古典的なアニメーションの手法です。例えば猿であれば腕や頭などをパーツ分けして、関節人形みたいな感じにして、バラバラな紙の人形を作ってコマ撮りして動かすという手法です。今回は多少、After Effects上での合成や拡大縮小など、デジタルに頼っている部分はありますが、基本的にモーションを付ける上ではコマ撮りのみです。ひとつひとつパーツを動かして、カメラで撮影していきます。

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——すごく時間がかかりそうですね。

岡本:パーツを切り抜くところからやるので確かに時間はかかります。でもやってみると、思ったほどはかかりませんよ(笑)。素材の撮影自体は5日ぐらいで行いました。

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——実際の撮影ではどのようなことが行われるのでしょうか?

岡本:ガム状の接着剤を関節のところに止めて、可動性があるようにして撮影します。飛永さんから提案いただく資料は静止画なので、実際に動かしてみると、隠れてたところがはみ出したり逆にパーツの長さが足りなかったりします。それらを「ここは削ってほしい」というフィードバックをして素材をやりとりするという感じでした。

——そうしたモーションについてはどう決めるのでしょうか?

飛永:まずは僕がざっくり動きを決めて、岡本さんにも「ここも動かしちゃいましょう」と提案していただいて決めていきました。

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岡本:カットアウトアニメーションは、テレビアニメのようなドローイングのアニメーションと違って、モチーフの形がメタモルフォーゼすることがない。そういう制限がありつつもモチーフに生命があるような、微妙な境界を探りました。

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——サウンドの制作についてお聞かせください。アニメーションにぴったり合った音を作るために工夫したところは?

雨森諭司:これまでは劇伴や映画音楽を作ってきたのですが、アニメに音をつけるのは初めての経験でした。アニメと実写の一番大きな違いは、音が空間の情報を含んでいないことです。現場で録音された素材であれば映像と同じ空間の音を含んでいますが、アニメではエフェクトに頼らざるをえない。今回は、そうしたリバーブなどの空間系エフェクトに頼らず、テンポよくモノラルの効果音を配置することで、絵画的な表現を狙いました。また、アニメでは、物体の質感や重さなど、視覚とは違った情報を音響で表現することができます。そういう意味で、映画や劇伴とは違った楽しさがありました。

——BGMと効果音のバランスが絶妙ですね。

雨森:これまでの「Adobe Remix」を見てみたら、今どきのダンスミュージックが使われていることが多かったので、独自性が欲しかった。この作品は効果音を多用するので、そのアプローチでは合わなかったのです。そこで、できる限り楽器の数を減らしたハイファイの音楽を組み合わせることで、リズムやハーモニーと効果音が一体に感じられるような工夫をし、最終的に古いSF映画のような世界観を狙いました。

——制作にはどのようなツールを使っていますか?

雨森:SuperColliderやAbletonliveを使っていますが、映像に同期させるための編集ソフトにはPremiereProCCを使っています。海外の方が多く見られるので、音階に東洋やアフリカなど異国の情緒を取り入れることで、海外の人に「なんだこれは?!」と思ってもらえるような音世界に仕上げました。

——映像で描かれているモチーフはどうやって選んだのでしょうか?

飛永:廃品置き場ということで、使わなくなったものとか。古いイメージを取り入れて新しい価値を見出すみたいなコンセプトのもと、思いつきで重ねていきました。 うまいこと組み合わさったと思います。

岡本:飛永さんからは「瓦礫の山からロゴになっていくストーリーはどうですか?」という提案があって。飛永さんからの、「こういう順番で、ロゴになっていって形になる」という大きな流れを動きで作っています。

飛永:絵のテイストをアナログにしているのは、僕の好きな絵のテイストがかすれたような感じだから。アニメーションするモチーフは、ベースをIllustratorで作り、その後でPhotoshopに移し、ブラシで影や質感を作っています。もともと映画が好きで、80年代ぐらいのキャラクターだったりやSF映画のクラシカルな雰囲気にインスピレーションを受けるので、そういうテイストが影響にあると思いますね。

ちなみに本作品に対するAdobeグローバルの評判は、コミュニティリーダーの武井しおり曰く「すごく良かったです。日本らしさがまさに出ている映像で」ということで、大変好評だったそう!

世界を唸らせた、飛永さんチームのクリエイティブ・ワーク。Adobe Remixプロジェクト「車輪ノ再発明」の制作過程はBehanceにて公開中。ぜひご覧下さい。

https://www.behance.net/gallery/32805283/Adobe-Remix-Takehiro-Tobinaga

■プロフィール

飛永 雄大 Tobinaga Takehiro
1986年生まれ。東京都出身。

日本デザイン専門学校イラストレーション専攻卒業、同グラフィックデザイン研究科修了。2013年よりクリエイティブユニット『16bit.』に参加。鉛筆による細密描写や、ベジェ曲線・パスによる平面的なキャラクターイラストレーションを制作。

http://takehirotobinaga.16bit.co.jp/

http://16bit.co.jp

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岡本将徳 OKAMOTO Masanori

アニメーション作家。東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻修了。絵を描いた紙を切り抜いてコマ撮りしていく手法を主としており、扱うテーマに沿って手法や素材を選んで表現する。作品歴に「パンク直し」「’Ho-Ho’ This message is boiling hot.」「BONNIE」「まつすぐな道でさみしい」など。

活動のアーカイブはこちら→http://peamar.tumblr.com/

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雨森諭司 Satoshi Amenomori

1982年、新潟県出身。大阪芸術大学在学中より自主映画や演劇の録音・劇伴を手がける。「TRANSARTSTOKYO」インスタレーション/パフォーマンス「燃える人影」(演出:生西康典、プロデュース:佐藤直樹)、『名づけられるまえに』(共演:吉田アミ)ほか、多数。

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矢部幹治 Mikiharu Yabe

Agent Hamyak

クリエイティブアーティストエージェント。ロンドンDutch アーティストマネージメントの経験後、東京に拠点を移し、日本・アジアのみ ならず世界各国のプロジェクトにおける、プロジェクトマネージメント、企画 プロデュースを行っている。

http://agenthamyak.com

https://www.facebook.com/agenthamyak

DOOR to ASIA : http://door-to.asia

  AUTHOR

齋藤 あきこ

宮城県出身。図書館司書を志していたが、“これからはインターネットが来る”と神の啓示を受けて上京。青山ブックセンター六本木店書店員などを経て現在フリーランスのライター/エディター。