連載  /  

#Illustrator30_30 #Ai30th 記念連載 | Vol.1 イラストレーター福田愛子さん

BY 公開

photo: Taio Konishi Photography

いまやデザインに欠かせないツールとなったAdobe Illustrator CC。1987年3月19日に初めてPostScript専用ベクターツール「Adobe Illustrator 1.0」がリリースされて30年。いまでは世界中で、毎月1億8000万点以上のグラフィックがIllustratorを使って作成されています。

本日よりスタートする新企画「Illustrator 30_30(イラストレーター サーティー サーティー)」は、Illustrator30周年を記念して、さまざまなジャンルでIllustratorをクリエイティブの味方として活用する、30代までの若手クリエイター30人を連載でご紹介します。本企画では、クリエイターのみなさんのポートレートを撮影し、その上に自由にイメージを描いていただくビジュアル・コラボレーション「Illustratorと私」も毎回お届けします。インタビューと合わせてお楽しみください。

第1回にご登場いただくのは福田愛子さん。ペン画による精密なイラストレーションを特徴とし、「BRUTUS」「ELLE gourmet」といった雑誌から、ファッション関係のイラストレーション、そして「モードとインテリアの20世紀展 ─ポワレからシャネル、サンローランまで─」などの展覧会の美術まで、幅広く活躍されています。福田さんとIllustratorの関係とは?


福田さんのアトリエがある、千葉県のご自宅。ご家族が予約限定の寿司店を営まれているのだとか。

ーークリエイターになったきっかけを教えてください。
Fukuda:海外の雑誌の挿絵がすごく可愛くて、あんな絵が描けるようになりたいと思ったことです。アメリカのNYLONに載っていたようなリアリズムの可愛い絵ってあまり見たことがなくって、衝撃を受けました。それでアメリカの美大のグラフィックデザイン科に進学したんですが、アメリカの美大の入試は、日本と違ってデッサン力の試験はなくて、高校の成績とエッセイとTOEFLスコアで入学できるので、、、ドローイングのスキルを身につけないまま入学してしまったんですね。ところが日本に戻って就活をしたら基礎力やデッサン力も見られるので、見事に就職試験に落ちてしまって…。それからドローイングスクールに通い始めました。実は今も通っています。キャリアとしては、その後グラフィックデザイナーなどを経て、現在はフリーのイラストレーターとして活動しています。

ーー最初に使われたIllustratorのバージョンは?
Fukuda:2003年の頃、Illustrator 10ですね。はじめは書類の新規作成もわからなくて、かなり画面上を右往左往していました(笑)。

 

三越伊勢丹「PLAISIR」表紙, 2016年

ーーどういうところにIllustratorのメリットを感じますか?
Fukuda:やっぱり、配置が簡単にできるということですね。例えばこの三越伊勢丹のクライアントワークは、単体でオブジェクトを描き、レイアウト組みはIllustratorでやっています。実際に描いたのは8アイテムですが、トリミングツールで絵の一部を切り抜いて使ったり、反転させたりしていて。一つのお花がトリミングの仕方によってまったく違うものに見える作品にしました。オブジェクトを構成して一つの絵を作るという時は、Illustratorの出番かな。納期に余裕がない時などは、クライアントさんに「こういうやり方でうまく見せましょう」と提案することもあります。

■iPad Proがメインツールに

ーー福田さんのイラストはアナログタッチが魅力ですが、どのように作品制作を行われているのでしょうか?
Fukuda:iPad ProとApple Pencilで、Adobe Photoshop Sketchを使っています。ラフはすべてAdobe Sketchですね。オブジェクトの配置が楽ですし、長方形ツールや楕円形ツールを使うとプロダクトのイラストもすごく描きやすくて、ラフを描く時間が少しだけ短縮できました。



「BRUTUS 男の色気 vol.16, ハゲとジョン・レノン、 2017年」

Fukuda:ブルータスの連載では、最初はラフだけにAdobe Sketchを使っていて、清書はアナログで描いていたんですけれど、慣れるにつれてすべてAdobe Sketchへ移行してきました。Adobe Sketchだったらアナログで描いたような線画もデジタルで描けてしまうんです。



「BRUTUS 男の色気 vol.16, ハゲとジョン・レノン、 2017年」Adobe Sketchで描いたラフ画、制作画面

Adobe Sketchは移動の際に使うものというより、メインのツールとしてがっつり使っています。電車の中でも描けるので、細密描写をしていたりすると周りの人にギョッとされるんですけど(笑)。去年ニューヨークに行った時も、普通に日本からの仕事をしていました。 Adobe Sketchはアナログ感のあるタッチが魅力です。今は、ほとんどAdobe Sketchですね。

■Illustrator Drawでの制作

ーーAdobe Illustrator Drawは使われていますか?
Fukuda:Illustrator Drawは使い始めたばかりなんですけれど、ちょうど今、クライアントワークの背景や文字をIllustrator Drawを使って描いています。今回は私が描いた絵をアニメーションにしてくださる方がいるので、Illustrator Drawで描いたイラスト素材をAirDropでMacに取り込み、Photoshopで納品しています。


ーーモバイルの魅力は?
Fukuda:iPad Proの画面に、アナログ感覚で直接描けるのがいいですね。ペンタブレットだとモニターを見ながらタブレットに描かなきゃいけないじゃないですか。それが私には慣れなくて。iPad Proはイラストレーターの友達がみんな使っていたので使い始めたんですけれど、やっぱりアナログ表現の再現性が高いと思います。例えば鉛筆ツールを使うと、筆圧やペンの傾きを変えることで自然な濃淡が出せたり、線の端もシャッと溶けるように描けたり。ほかのアプリよりも、Adobeのモバイルアプリの方が繊細に表現できる感じがしますね。iPad Proだとピンチイン(拡大)で、細かく描き込めるのも魅力です。

ーーアナログツールも並行して使われていますか?
Fukuda:そうですね、クラシックな鉛筆スタイルはアナログで描いています。ゆくゆくは移行できたらいいなと思っているんですけれど。どこでも作業できるという制作スタイルが理想なので、常にデジタルに移行できるように考えています。じつは、iPad Proを導入する前は意地でもアナログドローイングを貫いていたんです。けれど去年開催された、日本科学未来館でBjörkの実験的なVRの展示「Björk Digital」を見た時に、デジタルのツールを使うことに抵抗してちゃダメだな、と危機感を覚えたんです。

ーーiPad Pro導入のきっかけがBjörkとは驚きです。
Fukuda:その展示はデジタルで完結するものでしたが、「デジタルをアナログに戻す」事もできると思ったんですね。そこで先日、表参道のギャラリー・ルモンドで個展「Fashion Laboratory」を開催した時に、デジタルドローイングを和紙に出力するという作品を制作しました。制作工程のどこかにアナログが入っていれば、アナログっぽい、温度が感じられる表現になるんじゃないかと思うんです。なぜ私がアナログ表現が好きなのかというと、肌で感じられたり、触れられるものに惹かれるので。

今年の2月にギャラリー・ルモンドにて行われた個展「FASHION LABORATORY」より。デジタルとアナログの融合として、3Dメガネで立体に見えるイラストを制作した。

ほか、パナソニック 汐留ミュージアムで行われた「モードとインテリアの20世紀展」では、背景画を描いて、その前に出品作品を置くという展示方法をとりました。



背景のインテリアイラストを担当した、パナソニック 汐留ミュージアム「モードとインテリアの20世紀展 ―ポワレからシャネル、サンローランまで」展覧会会場風景、2016年

ーー仕事をする上で特に注力していることは?
Fukuda:とにかく温もりのあるイラストを心掛けていて・・絵に愛情を込めるという感じですね。合わせて、今までにやったことのないことに挑戦し続けていきたいです。例えば、マガジンハウスの「an・an」に掲載したこのイラストは、イラストと写真のコラージュで作っているんですよね。絵の中にカラスの写真を入れたり、スワロフスキーのドレスを雪山に見立てたり。そういったチャレンジは、人に受けるためというよりも、自分自身との対話として行っています。


「Psychological door」マガジンハウス an・an No.2030

ーー”作品の完成”はどういったポイントで判断しているんですか?
Fukuda:締切などの制約によっても違いますが…。いつも頭に置いているのは、デッサンの先生に「完成したと思ってからさらに15分考えて」と言われていること。それに従って、作品を一旦完成させた後、ちょっと時間をおくようにしています。そうすると、出来たつもりでもそうじゃないとことが絶対見つかるんです。それを最後に詰めますね。

ーー今後手がけたい仕事、野望は?
Fukuda:「平面のイラストを立体する」ということです。個展では、切り抜いた絵を立てて置き、立体空間を作りました。紙に描いた絵の花びらを切り抜いて本物のように組み立てる作品も作ってみて。今後はウィンドウディスプレイみたいな、大きな立体空間を作れたらいいなと思っています。アナログだけど未来にいく、みたいな(笑)。

ーーこれからのクリエイターに必要な事は何だと思いますか?
Fukuda:「基礎力」だと思います。これは自戒の意味も込めて・・・。(笑)趣味で絵を描いていた時代はよかったのですが、クライアントワークをするにあたって自分が苦手とするモチーフも描く場面がでてきて。また細密画を描く人は、基本的には参考資料をみて描いていると思うのですがたまに想像で描かないといけない部分もあるんです。そういう時に、基礎って大事だよな〜と痛感します。基盤がしっかりできていれば、なんでも描くことができるし、今後やりたいクリエイションに挑戦するのも、やっぱり基礎があっての応用だとも思うので。だからデッサンスクールはまだまだ辞められないですし、学びはつきません・・・!
福田愛子
http://www.aikofukuda.com/
https://www.behance.net/aikofukuda

1986年千葉生まれ。
米ブリッジウォーター州立大学芸術学部グラフィックデザイン学科卒業。帰国後グラフィックデザイナーなど働く傍ら、趣味で点描画を描き始める。2014年よりイラストレーターとして活動を本格化させ、一本のペンで描かれる繊細かつ独特な世界観でファッション誌や広告、美術館背景などで起用される。最近ではiPad Proを使ったイラストや立体表現なども取り組み中。イラスト連載にBRUTUS「男の色気」など。たまにお寿司やさんもやっていたり。座右の銘は「日々精進」

本企画「Illustrator 30_30」では、イラストレーター愛あふれる30代までのクリエイターの情報を募集しています。自薦/他薦/ジャンルは問いません。Illustrator CCを使って、さまざまなクリエイティブ活動をされている方はぜひ @creativecloudjp に【お名前、作品、Illustrator歴、ポートフォリオのURLなど】をご連絡ください!

  AUTHOR

齋藤 あきこ

宮城県出身。図書館司書を志していたが、“これからはインターネットが来る”と神の啓示を受けて上京。青山ブックセンター六本木店書店員などを経て現在フリーランスのライター/エディター。