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#Illustrator30_30 Illustrator30周年記念 連載 | Vol.2 イラストレーターエイドリアンホーガンさん #Ai30th

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photo: Taio Konishi Photography

いまやデザインに欠かせないツールとなったAdobe Illustrator CC。1987年3月19日に初めてPostScript専用ベクターツール「Adobe Illustrator 1.0」がリリースされて30年。いまでは世界中で、毎月1億8000万点以上のグラフィックがIllustratorを使って作成されています。

本企画「Illustrator 30_30(イラストレーター サーティー サーティー)」は、Illustrator30周年を記念して、さまざまなジャンルでIllustratorをクリエイティブの味方として活用する、30代までの若手クリエイター30人を連載でご紹介します。本企画では、クリエイターのみなさんのポートレートを撮影し、その上に自由にイメージを描いていただくビジュアル・コラボレーション「Illustratorと私」も毎回お届けします。インタビューと合わせてお楽しみください。

第2回のゲストは、オーストラリア・メルボルン出身のイラストレーター、エイドリアン ホーガンさん。鮮やかな色彩と生き生きとしたタッチのイラストレーションで人気を集め、雑誌『POPEYE』や『Tarzan』、またTOMORROWLANDにて『FLOWER』をテーマにしたライブペイントやキャンペーンビジュアルなどのクライアントワークのほか、個人プロジェクトであるコーヒーの紙コップに描いたパノラマアートなどでも高い人気を誇る売れっ子イラストレーターです。エイドリアンさんとIllustratorの関係とは?

ーークリエイターになったきっかけを教えてください。
Hogan:子どもの頃から、アーティストになりたくって、息をするように絵を描いていました。絵を仕事にしたいと思うようになったのは中学生ぐらいから。でも「アーティストだけで食べていくのは難しそうだな」と思って、オーストラリアの美大(モナシュー大学)のデザイン科に進学したんです。デザイナーなら仕事があるんじゃないかな?と思って。デジタルツールを使ったイラストは、父が建築家だったので自宅でAutoCADなどを使って図面を引いていたこともあり、16歳頃から描き初めました。

エイドリアンさんのオフィスがある「みどり荘」にて

ーー最初に触れたIllustratorのバージョンを覚えていますか?
Hogan:2003年か2004年ごろだったと思うんですが…。最初にデジタルツールとして取り入れたのはPhotoshop7.0で、ペインティング用に使っていました。Illustratorは最初、紙の立体作品のパターンを作るのに使っていたんです。自分のデザインを印刷して、ハサミで切ってペーパークラフトを作っていました。Illustratorはファイルのサイズが大きくないから一つのページ上で複数のデザインができるし、おじいちゃんやおばあちゃんの家にある、ちょっと昔のパソコンでも使えるのが良かったです(笑)。

シリーズ「日本のもの」

ーーずっとアナログでペイントしていて、デジタルツールへの移行はスムーズでしたか?
Hogan:IllustratorやPhotoshopを使い始めた頃の僕は高校生で、周りに使っている人もいなかったし、わからないことばかりでした。それで、オンラインのフォーラムで自分の絵を公開して、使い方を教わっていました。

ーーそんなコミュニティがあったんですね。
Hogan:「conceptart(現在閉鎖)」というサイトが昔あって、僕のような初心者がわからないことを書きこむと、プロの人がアドバイスしてくれるんです。そのサイトはすでになくなってしまったんですが、すごく勉強になりました。当時、フォーラムで質問していた僕の世代のアーティストが、いまでは世界中でInstagramに作品を発表しています。その移り変わりはなんだか感慨深いですね。大学では、先生たちがアプリケーションの使い方をあまり知らなかったのでちょっと残念だったんですけれど(笑)、今はインターネットで使い方を調べられるからラッキーだなあと思います。

シリーズ「Entrances」

頭の中のイメージをそのまま表現できる

ーーエイドリアンさんのイラストは、アナログで描いているのかデジタルで描いているのか、わからないほどです。普段使っているデジタルツールとアナログツールを教えてください。また、どのように使い分けていますか?
Hogan:実際にデジタルとアナログを併用して描いています。デジタルはPhotoshop、Illustrator、InDesign。iPad Proで描く時はAdobe Photoshop SketchAdobe Illustrator Draw

エイドリアンさんが持ち歩いている画材

アナログは水彩絵の具、タチカワのスクールG(インクカートリッジ内蔵型のGペン)、パイロットのパラレルペン(カリグラフィータッチで描けるカラーペン)、アクリルグアッシュなどを使っています。小さい絵の具セットとスケッチブックはいつも持ち歩いていて、最近は友達と会った時に人を動物にたとえて描くのが楽しいです。『父さんギツネバンザイ』という絵本(『ファンタスティックMr.FOX』というタイトルで映画化)が大好きで、友達の性格を動物になぞらえています。

Kinetic Ms. Kishiko #japanimals #swan #adehogan #adrianhogan #drawing #watercolour #gouache

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ーーデジタルとアナログツールはどのように併用されていますか?
Hogan:最近はほぼデジタルで描いています。デジタルを使う一番のメリットは、頭の中のイメージを、考えた通りにそのまま描けること。逆に難しいところは、手描きの生き生きとしたところをいかにデジタルへ移行するかということ。でも、最近はiPad Proでも本物のスケッチブックのように描けますから、ラフもほぼiPad ProとApple Pencilを使ってPhotoshop Sketchで描いています。手描きの味もデジタルで表現できるようになっていくんじゃないかな、と思いますね。

ーーデジタルツールを活用した作品を教えてください。
Hogan:「Tarzan」のランニングのイラストは、まずPhotoshop Sketchで形や配置を決め、紙に印刷し、ライトボックスの上に置いて鉛筆でトレースする。それをスキャンしてMacに取り込み、最後にPhotoshopで色づけしました。この方法で描く時はIllustratorで仕上げることもあります。


「Tarzan」のためのIllustrator Drawでのスケッチ

「Tarzan」のためのスケッチ

「OneWorld Magazine」手描きのラフをIllustratorで仕上げた。

ーーその過程は面白いですね。
Hogan:アパレルメーカー「FRUIT OF THE LOOM」のTシャツのグラフィックを描いた時は、まずオフラインでお寿司を描き、スキャンしたものをIllustratorでトレースをして仕上げました。アナログで描くのは、手描きの味を生かしたい時に。インクのにじみやランダムな線が新しい表現を生むことがあるんです。

Tシャツブランド「FRUIT OF THE LOOM」とのコラボレーション

ーーいままで手がけられた中で想い出深い仕事は?
Hogan:渋谷にあるアパレルの「TOMORROWLAND」で実施した『FLOWER』をテーマにした複合的なプロジェクトです。店内にイラストを立体にして配置したり、ライブペイントをしたり…。店内にディスプレイされている絵は、手描のものをスキャンしてトレースし、Illustratorのデータで入稿しています。こういう時にもIllustratorは欠かせません。ほか、オフィスの壁にライブペインティングした仕事も楽しかったですね。本物の空間に展開するのは面白いです。

「TOMORROWLAND」
CBRE Tokyo Panorama Mural オフィスの壁画

ーー仕事をする上で特に注力していること、ご自身のテーマにされていることは?
Hogan:絵を描く楽しさを知ってほしいということです。絵を見た人に、「私も絵を描いてみたい」と思って欲しい。ペンをとってスケッチから始めれば、誰でも絵が描けるんだということに気づいてほしい…。なので完成した作品を発表するだけではなく、誰にでも絵が描けると感じてもらえるように、目の前で描いたり、ラフな状態を見せたりするのも好きです。絵を描くために「見る」ことが大事だと思っているから。描くことを通してみんなが普段気づいてないことに気づけて「あ、楽しい」と思えたら、毎日見ている景色も新しくなる。いつも通るバス乗り場でも、何回行っても新しい発見があると思うんです。

Starbucks x Kigi 駅でのディスプレイ・イラストを担当

ーー作品を完成させる時に気をつけているポイントはなんですか?
Hogan:全体のバランスをとることと、描きすぎないこと。描きすぎると絵の情熱や生きている感じが無くなっちゃうから、絵が生きている間に描き上げた方いい。オーバードローより、少しアンダードローなぐらいで。ドローイングはまるで「Good guest」(=良いお客)みたいだなと思います。オンタイムに来て長居しすぎず、ちょうど良い時間で帰る、お客さんみたいな。ファインアートはちょっと違うかもしれないけれど、イラストレーションとしてのドローイングは、Good guest。

ーーこれからのクリエイターに必要な事は何だと思いますか?
Hogan:何よりも情熱が必要。上手になるには毎日練習することだと思うけど、情熱があれば耐えられると思います。プロになっても努力は必要ですしね。それから描くことだけではなく、全然違う分野の仕事とか、いろんな経験も必要だと思います。僕は花屋さんの配達や英語の先生、サラリーマンみたいな仕事もしてきて、いまでもそういった経験の積み重ねから絵を描いています。ビジネスの絵を描く時にサラリーマン時代のことを思い出しながら描いたり。イラストの仕事に、無駄なことはないですね。だから、いまどんな仕事をしている人でも絵は描けると思うし、イラストレーターになってほしいなと思います。

ーー座右の銘を教えてください
Hogan:「一期一会」。毎回完璧な絵は描けないと思うから、その時の自分にとってベストで、ベターな絵が描ければいい。気づかない間に少しずつ進歩してるぐらいでいいと思うんです。スポーツみたいにウォーミングアップしていないと手が動かなくなってしまうので、いつもベストを尽くすという気持ちで描いていきたいですね。

Adrian Hogan
http://www.adrianhogan.com/
https://www.instagram.com/adehogan/
1986年、オーストラリア・メルボルン生まれ。モナシュー大学卒業。雑誌、広告、描籍、絵コンテ、など幅広く活動中。主な仕事に、雑誌『POPEYE』、日テレ・ガイドブック、Clash of Clans広告、雑誌『婦人画報』等

本企画「Illustrator 30_30」では、イラストレーター愛あふれる30代までのクリエイターの情報を募集しています。自薦/他薦/ジャンルは問いません。Illustrator CCを使って、さまざまなクリエイティブ活動をされている方はぜひ @creativecloudjp に【お名前、作品、Illustrator歴、ポートフォリオのURLなど】をご連絡ください!

  AUTHOR

齋藤 あきこ

宮城県出身。図書館司書を志していたが、“これからはインターネットが来る”と神の啓示を受けて上京。青山ブックセンター六本木店書店員などを経て現在フリーランスのライター/エディター。