連載  /  

#Illustrator30_30 #Ai30th 記念連載 | Vol.9 映像作家 細金卓矢さん

BY 公開

photo: Taio Konishi Photography

 

Illustratorと私」

Illustrator30周年(#Ai30th)を記念し、Illustratorをクリエイティブの味方として活用する若手クリエイター30人をご紹介する本企画。第9回にご登場いただくのは、映像作家の細金卓矢さん。NHKデザイン「あ」 や tofubeatsのミュージックビデオ「No.1 feat.G.RINA」、東京の風景を切り取った「UGUISU」など、心地よいモーションが際立つ映像作品で国内外より高い評価を得る映像作家です。細金さんとIllustratorの関係とは?

絵を動かす楽しみはFlashで知った

ーー普段使っているツールを教えてください。

Hosogane: Adobe Illustrator、After EffectsPhotoshopLightroom、Flash(Animator)です。

ーー細金さんがクリエイターの道に進んだきっかけは?

Hosogane:中学校の頃に、Webサイトを作りたいと思ってMacromediaのFlashとFireworksを使ったのが最初です。当時Flashコンテンツが全盛期で、自分もWebで何かやってみたいと思ったんです。もともと家にMacintosh Classicがあって、Painterやキッドピクスを触ってはいました。何かを作りたいと思ったときに、初めて本格的に使ったのがDreamweaverとFireworksとFlashだったんです。

ーー絵を動かす楽しみを知ったのはFlashからだったんですね。

Hosogane:だから最初に作ったのは、Flashのウェブサイトでした。実験サイトみたいなもので、アニメーションを置いていただけなんですが。テキストやキリ番みたいなコンテンツはないですよ。

ーーもう見られないのが残念です。最初に作ったのはどんな映像だったんですか?

Hosogane:四角が動いているものです。右から左に動いていくやつ。みんな同じだと思いますよ。そういう作品を色々作って、Web上で公開していたら、高校生の頃から仕事を頼まれるようになりました。

ーーいきなりプロデビューとはすごいですね。

Hosogane:しばらくはFlashで作っていましたが、Flashでは出来ない動きを作ることができる、ということでAfter Effectsを使うようになって、映像作家として活動するようになりました。映像を学ぶためにプロダクションに就職したこともなければ師匠についたということもなくて、独学で今に至ります。

Illustratorからシェイプレイヤーへ

ーーなるほど。細金さんは古今東西の映像をすごくたくさんリサーチしていらっしゃるので、見て覚えたというところがありそうですね。Illustratorはどんな時に使っていますか?

Hosogane:映像作家とIllustratorで一番関係が深いのは、やっぱりAfter Effectsとの連携だと思います。ベクターってだけで友達になれる。毎日のように使っていますよ。Illustratorからシェイプレイヤーにもっていくのはいつもの日課です。

ーー日課…

Hosogane:日課はさすがに言いすぎましたが、モーションロゴなどを作るときに、データをIllustratorでもらえたら、After Effectsでそのまま開いて動きを調整する事ができるのが最高です。

ーー細金さんの映像は”気持ち良いモーション”がすごく特徴的だと思いますが、その気持ちよさはどうやって作られているのでしょうか?

Hosogane:一「プレビューして変だったら直す」ということに尽きます。気持ちいいか気持ちよくないかは、見ればわかることですから。

気持ちよさのある映像とは

ーー「UGUISU」はそういった気持ちよさのある映像を東京から切り取ったという作品でしたが。

Hosogane:「UGISU」はスケブリ(杉山峻輔)くんなど、たくさんの人と一緒に作りました。東京でロケをする場所の候補を予め作っておいて、一ヶ月ほどで撮影・編集を行いました。素材の管理にはAdobe Bridgeを使っています。



「uguisu」より

ーーすごい作業量になりそうですね。使わなかった素材も膨大にあるんですか?

Hosogane:それはあります。でも「この映像が使える、使えない」というところは、撮影現場で見た瞬間に決まるんですよ。撮影後はそれを繋いでいくだけです。

ーーPAELLASのMV『Fire』でもその心地よさの取捨選択はすごく敏感に行われているようですね。

Hosogane:『Fire』ではCGの質感を実写で再現するということがテーマでした。撮影は小さな箱の中で全て行っています。

ーー『日本橋高架下R計画』など、アニメーションをディレクションするときにはどうしているんですか?

Hosogane:自分が監督する時にはアニメーターの方に絵を描いて頂くのですが、その時のテンポやリズム感は僕が最初にタイミングを切っています。アニメに”編集作業”はないので、最初に全部タイミングを決めなければならない。あらかじめ何フレーム目でこう動く、という指示をして描いていただいています。

ーーすごく綿密なディレクションが必要でしょうね。

Hosogane:気持ちいい動きを作る、というのは、たぶんそのうち全部自動で出来るようになるんじゃないんでしょうか。

ーーAdobeなら出来ちゃいそうですね。ところでIllustratorはどういうシーンで使っておられますか?

Hosogane:Illustratorは使いやすいのが魅力ですよ。一番使うのは、絵コンテと請求書です。絵コンテの枠線を書くのにも便利ですが、請求書はIllustratorが一番。僕はWordを持っていないので、昔から請求書はIllustrator一筋です。

ーーところで今回の「#Illustrator30_30」ではIllustratorの女神をモーショングラフィックスにしていただいていますが、どのように作られましたか?

Hosogane:Adobe Illustratorでトレースをして、Adobe AfterEffectsのシェイプレイヤーでアニメーションさせました。トレース作業は内職っぽいので割と好きです。Illustrator drawは線のラフを考えるのに使いました。細かいところはベジェでやりたいのでPCのほうで作っています。Illustrator drawには、トレース作業に特化したモードがあったらうれしいですね。

モバイル作業環境

ーー変わったモバイル環境をお使いとのことで…

Hosogane:はい。これが僕の制作環境です。


5.5インチ液晶、物理キーボードにゲームパッドまで付いている

ーーこれ、、パソコンですか?!

Hosogane:別にハックしているわけではなくて、「GPD WIN」という名前のきちんとしたパソコンです。UMPC(ウルトラモバイルPC)というジャンルの小さいPCで、Windows10が搭載されているのでIllustratorもPhotoshopもちゃんと動きます。クラウドファンディングサイトの「INDIEGOGO」で出資を募っていたもので、即買いしました。

ーーどこから見ても某携帯ゲーム機のように見えます。

Hosogane:それが狙いです。使っている姿はどう見てもゲームしている人だけど、実はaiもpsdも扱えるというところが気に入っています。

ーーiPad Proも使われていますか?

Hosogane:iPad Proで一番使うのはLightroomですね。素材の加工に使っています。

ーーいま細金さんはベルリンを拠点に活動されていますが、海外に行くとマインドセットも変わるんでしょうか?

Hosogane:打ち合わせはSkypeで出来るし、モバイルツールを使えば、働き方はベルリンでも熱海でも変わりません。

ーー最後に座右の銘を教えてください。

Hosogane:貰えるものはみかんの皮でも貰え。

ーーその心は?

Hosogane:貰えるものはなんでも貰えってことです。

ーーありがとうございました。

細金卓矢
https://www.behance.net/hosogane3673

東京都出身、千葉育ち。2004年ころから映像制作を開始。国内外で高い評価を受ける『Vanishing Point』や文化庁メディア芸術祭大賞に選ばれたアニメ『四畳半神話大系』のエンディング制作、WIREDへの映像提供、NHKデザイン「あ」のクラッチ映像提供、そしてボーカロイド「IA」のプロモーションを兼ねた『日本橋高架下R計画』のアニメーション制作を手掛けるなど、活動領域は多岐にわたっている。

◾️この企画について
いまやデザインに欠かせないツールとなったAdobe Illustrator CC。1987年3月19日に初めてPostScript専用ベクターツール「Adobe Illustrator 1.0」がリリースされて30年。いまでは世界中で、毎月1億8000万点以上のグラフィックがIllustratorを使って作成されています。

本企画「Illustrator30_30(イラストレーター サーティー サーティー)」は、Illustrator30周年(#Ai30th)を記念して、さまざまなジャンルでIllustratorをクリエイティブの味方として活用する、30代までの若手クリエイター30人を連載でご紹介します。本企画では、クリエイターのみなさんのポートレートを撮影し、その上に自由にイメージを描いていただくビジュアル・コラボレーション「Illustratorと私」も毎回お届けします。インタビューと合わせてお楽しみください。

  AUTHOR

齋藤 あきこ

宮城県出身。図書館司書を志していたが、“これからはインターネットが来る”と神の啓示を受けて上京。青山ブックセンター六本木店書店員などを経て現在フリーランスのライター/エディター。