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#Illustrator30_30 #Ai30th 記念連載 | Vol.14 イラストレーターとんぼせんせい

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photo: Taio Konishi Photography

 

Illustratorと私」の制作作品。Illustratorにて制作。

Illustrator30周年(#Ai30th)を記念し、Illustratorをクリエイティブの味方として活用する若手クリエイター30人をご紹介する本企画。第14回にご登場いただくのは、イラストレーターのとんぼせんせい。たった3本の線で描かれた笑顔で人物や動物、風景などをハックし、書籍からミュージシャンのアートワーク、ファッション、アートまで、幅広い仕事を手がけ、活躍されています。そんなとんぼせんせいとIllustratorの関係とは?

笑っている顔がいいな、と思った

オリジナルキャラクター「レモンねこ」

——クリエイターになったきっかけは?

けっこう成り行きですね。進学校に入ったものの勉強についていけなくなって「大学どうしようかな」と思った時に、当時はファッションがやりたかったので、東京のファッションを学べる学科とか、いくつかの美大を受けてたまたま受かった京都精華大学の彫刻科に入ったんです。

——彫刻科だったんですね。意外ですね!

元々はイラストレーター志望じゃなかったんですよ。大学に入って現代アートと出会ってすごく面白いと思って、作家を目指すようになりました。今のような仕事をするようになるなんて思ってもみませんでしたね。

現代アートを手がけていた頃の作品。

それから京都市立芸術大学の大学院に進み卒業したんですけれど、それから3年ぐらいは、今ひとつ方向性が見いだせませんでした。おそらくアートが好きすぎて、その枠組みから抜け出せなかったんだと思います。それでほかのジャンルでもう少し何かできないかな、と思ってマンガを描いたり、グッズを作ったりといったことを始めました。そのグッズを周りの人に見せたら、僕が信頼している人たちからウケが良くて。そこからとんぼせんせいとしての活動が始まったんです。

——当時から3本線の顔を描かれていたんですか?

そうです。笑っている顔がいいなと思って。彫刻からイラストへ移行していった頃、フォークアートとか円空とか、プリミティブでシンプルなものが好きだったんですよ。そういったものの影響もあったのかな。僕の中で生活と制作が徐々に近づいていって、イラストレーションという形になったのかもしれません。好きなものを素直に描けるようになるまで、時間がかかりましたけどね。

——普段使っているツールを教えてください。

デジタルは最初から今にいたるまで、Illustratorだけです。アナログは、鉛筆、アクリルガッシュ。後は、その時々によってメディアを変えるので、何でも。最近はまた木を彫りたいなと思っています。

京都にあるとんぼせんせいのアトリエにて。
アトリエはイベント時に開放されることも。グッズもたくさん置いてあります。

——初めてIllustratorを使われたのはいつでしたか?

大学に入ってから、共用のコンピューターで。Illustrator 8.0だったと思います。最初は展覧会のDMを作るために使っていました。人に聞いたりネットで調べたりして使い方を覚えたので、プロの方が僕の仕事を見たら「えっ、こんなデータの作り方しているの」って思うんじゃないかな。Illustratorはひとつひとつのパーツを動かしたり、大きさを変えられたりするのが、変な素材を扱っているみたいで楽しいんですよね。彫刻を大きくしようとしたら大変だけど、Illustratorなら大きくしても小さくしてもそのままじゃないですか。それが素材として面白いという感覚なんです。

マッスルNTTなどズ「ななな」アルバムジャケット

——どんな風にイラストを制作されていますか?

まず手描きで描いたラフを写真にとって、Illustratorで写真を開き、レイヤーの1番下にいれて上からパスでなぞっていきます。その時に、鉛筆ツールのオプションで精度と滑らかさを落として反応を鈍くさせると、ちょっとブレたような線が描けるんですよ。そうやって偶然生まれた形や線を楽しんでいます。それから版を重ねるような感じで塗りのレイヤーを作って、一番上のレイヤーに顔を描いて、線の太さや位置を微調整して、完成させます。

鉛筆ツールのオプションで、精度と滑らかさを最小値に。どんなにラフなタッチでも、とんぼせんせいらしい仕上がりになるのはさすが!パスはワコムのペンタブレットを使って描いています。
アパレルショップ「WEGO」とのコラボトートのための下書き。
コラボトートのためのデジタルデータ。
こちらが完成したアパレルショップ「WE GO」とのコラボトート!

アクリルガッシュの作品は、最初にIllustratorで作ったデータをプリントアウトして、キャンバスにトレースした上からガッシュで塗っていきました。構図はIllustratorで作らないと、なかなか決まらないんですよね。Illustratorは線の太さを変えたり、パーツを微妙に動かしたりできるじゃないですか。線のバランスを少し変えるだけでも印象が変わってくるので、その微調整をかけていく作業が大事なんです。

大きな2枚の絵が、アクリルガッシュによる作品。うっすら手跡が見えるのも魅力的。

イラストレーターとデザイナーと、Illustrator

——今まで手がけられたなかで、一番思い出深い仕事は?

2013年に第9回グラフィック「1_WALL」のファイナリストに入ったことをきっかけにいろんな方に見ていただけて、デザイナーの菊地敦己さんが『ニクキュー』というカタログの表紙に使って下さったんですよ。その時に「自分の絵がこういう使われ方をするんだ」と衝撃を受けたところがあって。グラフィックに自分の絵を落とし込むやり方を見せてもらったような気がしました。僕は菊池さんのデザインにはかなり影響を受けています。それまでは関西のお店に細々とグッズを下ろしている感じだったので、表紙に使っていただいたことで仕事の幅も広がり、本当にありがたかったです。

『ニクキュー #18』(2014)皆川明さんが監修を務めるファッションブランド「サリー・スコット」のシーズンカタログ。菊地敦己さんがアートディレクション、デザインを手がけている。

最近デザイナーの佐々木俊君とも最果タヒさんのエッセイ『君の言い訳は最高の芸術』で一緒に仕事をしたんですけれど、彼にも勉強させてもらっています。いいデザイナーさんと仕事をさせてもらっていると思いますね。

3本線で何ができる?

——今回はiPadとIllustrator Drawなどを使って「Illustratorと私」を制作して頂きました。どのように制作されましたか?

まず、ボールペンで描いたラフをIllustratorに取り込んでペン入れしてモチーフ素材を作りました。それから写真にそのモチーフを配置して、構成、色、バランスを調整し、完成という具合です。

——モバイルアプリIllustrator Drawを使ってみていかがでしたか?

フィジカルに気持ちいいという感想です。この間、飲み会の時にこんなアプリがあるんだよと紹介したら、食いつきが良くて、みんな夢中で絵を描いていて面白かったです。個人的には、子供たちがどんな風に使うのかも気になります。

——今後はどんな仕事を手がけていきたいですか?

3本線で次は何ができるかな、と考えているんですけれど、電車の中のポスターや広告のような、たくさんの人の目ににふれる仕事がしたいですね。僕の絵は外国の人にもわかってもらえるので、言葉が要らないんですよ。たくさんの人に笑ってもらえたらいいなと思います。

それから、3本線というコンセプトでの活動は、現代アートから影響を受けたもので、僕の活動はアートとイラストレーションを緩やかにつないでいると思います。僕の活動を見て、アートにもっと興味を持つ人が増えると嬉しいですね。この3本線でいろんなものを作るの面白くない?僕が面白いアートを紹介するよ、みたいな。そんな気持ちでやっています。

——最後に、座右の銘を教えてください。

「健康第一」。水木しげる先生も寝ないと死んじゃうって言っていましたからね。なので、ちゃんと寝るしご飯も食べます。散歩をしたり、ゆっくりする時間も欲しいですね。ものづくりをしていくには時間がかかるということがわかったから、やっぱり長生きしないと。長生きしてたら、その分チャンスが増えるので。

とんぼせんせい
http://www.tombosensei.com/
https://twitter.com/tombosensei
https://www.instagram.com/tombosenseition/

京都市立芸術大学大学院彫刻専攻を修了後、オリズナルグッズの制作や企業へのイラスト提供、展覧会での発表など、多岐にわたる活動を展開。2013年、第9回グラフィック「1_WALL」ファイナリストに選出。主な展覧会に水野健一郎氏との2人展「T/M センセーション」(2016年 トランスポップギャラリー)、 「東京とんぼせんせい娘。」(2016年 タンバリンギャラリー)など。2014年より京都造形芸術大学情報デザイン学科、非常勤講師 。

◾️この企画について
いまやデザインに欠かせないツールとなったAdobe Illustrator CC。1987年3月19日に初めてPostScript専用ベクターツール「Adobe Illustrator 1.0」がリリースされて30年。いまでは世界中で、毎月1億8000万点以上のグラフィックがIllustratorを使って作成されています。

本企画「Illustrator30_30(イラストレーター サーティー サーティー)」は、Illustrator30周年(#Ai30th)を記念して、さまざまなジャンルでIllustratorをクリエイティブの味方として活用する、30代までの若手クリエイター30人を連載でご紹介します。本企画では、クリエイターのみなさんのポートレートを撮影し、その上に自由にイメージを描いていただくビジュアル・コラボレーション「Illustratorと私」も毎回お届けします。インタビューと合わせてお楽しみください。

  AUTHOR

宮越 裕生

神奈川県出身。大学で絵を学んだ後、ギャラリーや事務の仕事をへてライターに。アートや旅、食などについて書いています。音楽好きだけど音痴。リリカルに生きるべく精進するまいにちです。