Creative Cloudがあれば映画が作れる! 映画『ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど。』 #ママダメ #PremierePro

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5/27から日本で、6/16から台湾でそれぞれ公開される映画『ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど。』(以下、ママダメ) 監督は谷内田彰久(やちだ・あきひさ)さん、主演は映画『新宿スワン2』などで知られる中野裕太さん。Facebookがきっかけで生まれ、35万人を超える「いいね 👍 」がついた、台湾女子と日本男子の恋模様を映画にしたこの作品。編集作業は、すべてAdobe Premiere Proで行われているんです。

監督はこの映画を『ソーシャル・シネマ』と定義しています。「切り取った2人の日常を視聴者とシェア(共感)していく事により、製作者と観客が身近な立ち位置となり融合していく」作品を目指したということで、”これまでの映画の流儀を覆す” 斬新な作品になりました。

5月15日に東京・お台場で行われた、谷内田監督と主演中野裕太さん、アドビのビデオ製品マーケ担当古田正剛によるトークセッションをレポートします。

■映画のセオリーを排除した斬新な作品

この映画が作られたきっかけは、谷内田監督が書店で原作本を見つけたこと。「これは映画になる!」と閃いた監督は、プロダクションに企画を持ち込みます。ところで、知ってるようで知らない映画の作り方ですが、映画製作の流れは

企画→脚本→キャスティング→撮影→編集→グレーディング→音→プロモーション→公開

というもの。

なんと、主演の中野さんは今回、編集とグレーディングを担当されています。

Nakano: 監督から、8,000円くらいするカラーグレーディングの本をもらって勉強し、Premiere Proを使って全編のグレーディングを行いました。いままでPhotoshopで写真を加工することはありましたが、Premiere Proの編集作業は初めて。フィルタだとそれぞれのカットの深みがなくなってしまうのでかけていません。クリエイティブやセカンダリを使って、コンマ1レベルで調整しています。ビネットもひとつ、印象的なシーンで使いました。

今回は撮影をREDで行っているので、素材のサイズはなんと6.5K。谷内田監督は素材のネイティブ編集が出来るように、メーカーにシステム構成を伝えて、オーダーメイドのPCを作ってしまいました!

Yachida: ダウンコンバートやレンダリングなどの手間なしに、Premiere Proでそのまま5.5Kの素材をグレーディングできるようにしました。

Nakano: 5.5Kをそのまま編集すると、素材の奥深さが全部出てくるんです。岩井俊二監督の『リップヴァンウィンクルの花嫁』もPremiere Proで編集されているそうで、世界観のある映画にもPremiere Proが使われるようになっていますね。

中野裕太さんは、ショートフィルムの監督経験はありましたが、長編は初めて。今回の映画は2015年のクランクアップ以降、2年間にわたって編集作業を行っていたのだそう。

Nakano: 編集はすごく楽しいけど、すごくしんどい作業です。この作品は、脚本そのままではなくて、編集のときにタイムラインをガラリと変えたんですね。出口の見えない迷路を彷徨うような気分でした。

Yachida: 実は中野さんだけでなく、主演女優の簡嫚書(ジエンマンシュー)も自分で編集をしていました。最初のバージョンのオープニング30分が納得いかなかったようで、23TBあるR3Dのファイルを台湾に持って帰って、独学でPremiere Proを勉強したんです。最初の30分を自分で編集したものを送ってくれました。

Nakano: 彼女が編集する前のバージョンは、どうしても行き着けない何かがあって、点数でいうと80点だな…と思っていたんです。彼女が編集した映像は荒削りだったのでそのままは使えないものでしたが、なにかキラめくものがあったんですね。僕がやったものと合わせて120点にできるのではないかということで、取り入れたもので最終版を作りました。

主人公のFacebookでのチャットのやりとりを吹き出しで表現した斬新な作品を実現するために、主演俳優も女優もPremiere Proで編集を行っていたとは…。監督は「現場に監督が3人いるみたいだった」と語りました。

■50回もの試写を行った理由

そして、「ソーシャル・シネマ」と言われる所以は、観客からのフィードバックを徹底的に反映したこと。50回もの試写を行い、1,500人からコメントを得たといいます。

Yachida: ランダムに選んだ人にオンラインでプレビューを送って感想をもらい、取り入れていきました。
Nakano: 試写会のフィードバックを作品に反映していくのは、ディズニーで実践されているとききますが、日本ではまだ少ないですね。極限まで人間的な作品を作る努力を注ぎ込んだ映画だと思います。

2年の編集の月日を経て、ようやく公開されることになった本作品。これから映画を作りたいと思っている方のために、お二人からメッセージをいただきました。

Yachida: いま、iPhoneで撮影して、Premiere Proで編集すれば映画ができる。ツールはすべて揃っているから、アイデア次第です。でも「こんな映像を作りたい」という漠然とした思いだけだと、長くは続かない。時間が経っても失われない何かがあるものを作る連鎖にならないんですよね。VFXはハリウッドに勝てないけど、Creative Cloudを使えば個人の想いを伝える映画が作れてしまう時代になっていると思います。

Nakano: Adobe CCのアカウントを持っていれば、映画が作れてしまいます。YouTubeを見ればトリッキーなアイデアの映像作品はたくさんあるし、その中でプロになりたかったら、ホンモノを作らなければならない。人間の本質に触れているのか、人間というものを感じさせる事ができているのか、が才能として問われると思いますし、本物だったらみんなついてくるんですよ。その違いは紙一重なんですよね。僕はそこを追求したいと思っています。

最後に、「すべての技術が本物のためにある!」という名言でトークは終了。「試写中はソーシャルシネマなのでどんどん画面の写真を撮ってシェアしてください」と、監督より斬新なお言葉が!Premiere Proで作られた新しい映画の世界を、劇場で確かめてみてください。

映画『ママは日本へ嫁に行っちゃダメと言うけれど。』
5月27日(土)新宿シネマカリテ、ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場他全国順次公開
公式HP http://mama-dame.com/
公式Facebook https://www.facebook.com/mamadame.movie/

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  AUTHOR

齋藤 あきこ

宮城県出身。図書館司書を志していたが、“これからはインターネットが来る”と神の啓示を受けて上京。青山ブックセンター六本木店書店員などを経て現在フリーランスのライター/エディター。