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フォトレタッチの極意4:マクロで撮影した桜の質感をアップする

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今年もいよいよ桜のシーズンがやってきました。今回は、マクロで撮影した桜の花の質感をアップし、劇的に仕上げるコツについてです。マクロで撮影した写真は、ピントの合っている部分は鮮鋭に、そしてアウトフォーカスの範囲は濁りのないボケ味にしたいもの。レタッチを考慮して、花びらの階調が取り込める露出で撮影し、白や明るい色はわずかに暗めに撮影しておくのもポイントです。レタッチャー/ライターの桐生彩希さんが「Shuffle by COMMERCIAL PHOTO」に掲載した解説を抜粋してお届けします。

Before
After

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1、露出とボケ味を整える

(1)スマートオブジェクトに変換する

露出や色を「Camera Rawフィルター」で補正するので、試行錯誤がしやすいように「背景」レイヤーを「スマートオブジェクト」に変換する。「レイヤー」パネルで「背景」を右クリックし、「スマートオブジェクトに変換」を選択。
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(2)「Camera Rawフィルター」を選択

露出と色を補正するために、「フィルター」メニューの「Camera Raw フィルター」を選択。スマートオブジェクトに対してフィルターを適用すると、自動的に「スマートフィルター」として「レイヤー」パネルに記録される。
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(3)露出を補正する

「露光量」スライダーを右に移動して明るく補正。全体の明るさを見るだけでなく、細部(花びらの階調感)にも注目し、被写体の微妙な陰影を失くさないようにすること。作例は、陰影が乏しくならないぎりぎりの明るさに補正している。

nature02_07「露光量」スライダーを右に移動して明るく補正する

(4)微妙な露出を整える

ハイライトの質感を維持しつつ、少し明るくするために「トーンカーブ」で補正する。「トーンカーブ」ボタンをクリックして機能を表示し、トーンカーブ上に3つのポイントを作成。中央のポイントを上に移動すれば、中間調が重点的に補正できる。

nature02_08中央のポイントを上に移動して中間調を重点的に明るく補正

(5)色を補正する

桜の色がイメージより暖色系なので、透明感のある色彩に補正する。この作業は、「基本補正」ボタンをクリックして、「色温度」と「色かぶり補正」スライダーを調整すればOK。色温度の設定値を少し下げると澄んだイメージになり、「色かぶり補正」の設定値を上げると赤系の発色がよくなる。
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(6)彩度を強めて発色をよくする

華やかな色彩を得るために「彩度」を強める。淡い色の場合、「自然な彩度」スライダーを使うとバランスよく仕上げやすい。「自然な彩度」で足りない鮮やかさは、「彩度」スライダーで補うことができる。色と鮮やかさを調整すると、ハイライトやシャドウの階調感が変化することもあるので、必要に応じて「トーンカーブ」や「ハイライト」「シャドウ」スライダーなどで微調整しておく。
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2、背景を滑らかにならす

(1)「虹彩絞りぼかし」を選択

被写界深度が若干深く、背景がうるさく感じられる。これを修整するために、少しぼかして滑らかに補正していく。使う機能は被写界深度が補正できる「虹彩絞りぼかし」。「フィルター」メニューの「ぼかしギャラリー」→「虹彩絞りぼかし」で機能を表示する。
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(2)ぼかしを実行する

シャープな状態(元の画質)を保つ位置に①焦点ポイントを移動し、②外側の円をドラッグしてぼかす範囲を指定。必要に応じて③○をドラッグしてぼかしはじめる位置を調整したら、④「虹彩絞りぼかし」の「ぼかし」スライダーでぼけの強さを決める。焦点ポイントは複数作れるので、一度の調整で仕上げる必要はない。
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(3)焦点ポイントを追加する

複雑な形状をぼかす場合、複数の焦点ポイントを作って仕上げていく。ピントの合っている状態を保ちたい位置でクリックすると、焦点ポイントを中心に元の画質が表示される。新たに追加した焦点ポイントは、(2)の要領で範囲を編集することが可能。
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(4)ぼかす範囲を仕上げる

被写体の形状に合わせて①焦点ポイントを追加し、背景をぼかしていく。ぼかす範囲が編集できたら②「OK」ボタンをクリックして確定。
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3、背景の色彩を落ち着かせる

(1)「トーンカーブ」を選択

作例のように、煩雑で同系色な背景の場合は、コントラストをわずかに弱めるなどして「色調に変化」を出すとすっきりした印象にしやすい。使う機能は調整レイヤーの「トーンカーブ」で、線グラフの左下と右上に2つのポイントを作成しておく。
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(2)背景の色調を調整する

背景部分に着目して、メインの被写体よりも控えめの色調に仕上げていく。基本的には露出やコントラストを下げればOK。作例はメインの被写体も背景もハイライトが際立っているので、トーンカーブの右上のポイントを下げてハイライトを弱め、コントラストを抑えている。
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(3)レイヤーマスクを選択

(2)の補正を背景だけに適用するために、レイヤーマスクで範囲を制限する。「レイヤー」パネルで、(2)で作った「トーンカーブ」レイヤーの「レイヤーマスクサムネール」をクリックして選択。

(4)「ブラシツール」を設定する

レイヤーマスクに描画するための「ブラシツール」を設定する。ツールパネルの①描画色を「黒」に設定したら、②「ブラシツール」をクリックして選択。ブラシの形状はボケ足のあるタイプが適しているので、③「ブラシプリセットピッカー」をクリックし、④「ソフト円ブラシ」に設定。ブラシの太さは、作業する部分に合わせて⑤「直径」スライダーで調整しておく。⑥「不透明度」と⑦「流量」はどちらも「100%」にする。
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(5)背景だけを補正する

描画色を「黒」に設定したブラシで、「背景以外」の補正したくない被写体の部分をドラッグして描画。部分補正が完了したら、必要に応じて(2)の「トーンカーブ」を微調整。
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4、シャープなポイントを作る

(1)レイヤーの複製を作る

シャープを適用するレイヤーを作る。「レイヤー」パネルでいちばん上にある「トーンカーブ」調整レイヤーを選択したら、「Alt+Shift+Ctrl+E」(Macは「Command+Shift+Option+E」)キーを押して「見えている状態の複製」を作成。
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(2)スマートオブジェクトに変換

(1)で作ったレイヤーを選択し、スマートオブジェクトに変換。
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(3)「スマートシャープ」を選択

「レイヤー」パネルで(2)で作成したレイヤーが選択されている状態で、「フィルター」メニューの「シャープ」→「スマートシャープ」フィルターを選択。

(4)「スマートシャープ」を適用する

「スマートシャープ」画面が表示されたら、「除去」を「ぼかし(レンズ)に設定。「量」「半径」を最大、「ノイズを軽減」は最小にして、もっともシャープが強い状態にする。
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(5)「スマートシャープ」を仕上げる

最初に調整するのが「ノイズを軽減」スライダー。右に移動して、滑らかな部分のザラつきが目立たず、エッジのシャープネスが低下しない設定にする。
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続けて、「半径」スライダーを左に移動して、エッジがもっとも細く、はっきり見える状態に調整。
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最後に、「量」スライダーを左に移動して、シャープ効果の分かる最小の設定にする。調整できたら、「OK」ボタンをクリックして設定を確定。
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(6)部分補正の準備

画面全体にシャープが適用されているので、必要な部分だけシャープになるように範囲を制限する。「スマートフィルター」の「レイヤーマスクサムネール」をクリックして選択。「編集」メニューの「塗りつぶし」を選択したら、「塗りつぶし」画面で「内容」を「ブラック」に設定して「OK」ボタンをクリック。「レイヤーマスクサムネール」が黒で塗りつぶされ、写真は補正前の状態が表示される。
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(7)レイヤーマスクに描画する

「②背景を滑らかにならす」の(3)の要領で描画色が「白」のブラシツールを用意したら、(6)のレイヤーマスクに対して「シャープにしたい部分」をドラッグして描画。白で塗りつぶすことで、その範囲にシャープが適用された状態になる。
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5、階調を整える

(1)「トーンカーブ」を選択

最後に、花びらの階調感が高まる露出に仕上げていく。使う機能は調整レイヤーの「トーンカーブ」で、「レイヤー」パネルでいちばん上のレイヤーを選択し、「トーンカーブ」を選択。「トーンカーブ」が表示されたら、左下、中央、右上に3つのポイントを作成しておく。
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(2)ハイライトの階調感を高める

トーンカーブに作成した右上のポイントを下に移動して暗くし、花びら(ハイライト)の階調感が高まる露出に調整。暗くし過ぎると濁りが出るので注意しよう。反対に、透明感を出したいときは、右上のポイントを上に移動すればよい。
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さらに詳しい解説は、Shuffle by COMMERCIAL PHOTO で連載中の「風景&ネイチャー レタッチの教科書」(解説・写真:桐生彩希)に掲載されています。サンプルファイルもダウンロードできますので、ぜひ挑戦してみてください!

  AUTHOR

Muneo Tochiya

1998年 9月 アドビ システムズ 株式会社に入社。マーケティング部に所属し、アドビのPhoto製品全般を担当。Photoshop のバージョン 5.5 から、Lightroomはベータから現行バージョンを担当。 「解りやすく、楽しく」をモットーに Photoshop 製品群の紹介をおこなう。