連載  /  

フォトレタッチの極意11:葉の色彩と透過光の美しさを引き出す

BY 公開

今年も桜の時期が終わり(東北北部、北海道ではこれから!という方も多いと思いますが)、次に被写体となるのは「新緑」です。

カメラ任せではなかなか“気持ちのよい”色彩にならない草木の緑。Photoshopの機能を使って新緑らしい緑と透過光の美しさを引き出します。また、今回使っている「特定色域の選択」は、レタッチに何かと便利なオススメの機能なので、この機会にぜひマスターしましょう。レタッチャー/ライターの桐生彩希さんが「Shuffle by COMMERCIAL PHOTO」に掲載した解説を抜粋してお届けします。

Before
After(※クリックで拡大)

レタッチの設計

color07_03

1、緑の色彩を補正

(1)「特定色域の選択」を選択

「レイヤー」メニューの「新規調整レイヤー」→「特定色域の選択」して「属性」ウィンドウに機能を表示。補正画面では、下部にある設定から「絶対値」を選択しておく。
color07_04

(2)緑の色彩を整える

「特定色域の選択」で草木の緑を補正するときには、「カラー」で「グリーン系」と「イエロー系」を選択して調整する。作例のように黄色みがかった緑のときは、「イエロー系」から補正すると効果的だ。そこで、「カラー」を「イエロー系」に設定して、「シアン」と「イエロー」スライダーを右方向に移動し緑の色彩を補正。ポイントとなるのは「シアン」の量で、シアンを強めるほどに新緑の緑色の雰囲気が出てくる。
color07_05

(3)「グリーン系」を補正する

(2)の「特定色域の選択」を使い、今度は「グリーン系」に対して補正を行う。作業は「イエロー系」のときと同じで、「シアン」とイエロー」を増加(スライダーを右に移動)するように調整すればOK。シアンを増やすほどに若葉色が強まるのも「イエロー系」の補正と同じだ。この段階では「わずかに補正を弱め」ておくと、後の作業で「緑かぶり」を再現するときにちょうどよい補正量にすることができる。イメージどおりに補正して、最後にレイヤーの「不透明度」を下げてもOKだ。
color07_06

2、爽やかな明るさを再現

(1)「トーンカーブ」を選択

最終的な色に追い込む前に、明るさを整えておく。仕上がりのイメージは「透過光の軽やかな色彩」なので、明るめに補正して爽やかな印象を出す点がポイント。使用する機能は「調整レイヤー」の「トーンカーブ」。
color07_07

(2)2つのポイントを作る

線グラフの左下(シャドウ)と右上(ハイライト)付近をクリックしてポイントを作成し、写真を見ながらそれらを上下に移動。これにより、シャドウの明暗とハイライトの明暗(=全体の露出)が整えられ、しかも同時にコントラストまで仕上げられる。

3、新緑に包まれた雰囲気を出す

(1)「カラーバランス」を選択

“雰囲気作り”として、透過光の緑に包まれたような「色かぶり」を再現する。作例は木の幹の面積が広いため、この部分は個別に補正しているが、違和感がないようなら全体の色を同時に仕上げてもかまわない。使う機能は「調整レイヤー」の「カラーバランス」。微妙な色彩の調整が必要なので、「輝度を保持」のチェックは外しておく。

(2)シアンとイエローを強める

ここでの補正に「カラーバランス」を使う理由は、「①緑の色彩を補正」で「葉の緑」に対してだけ色を調整したのに対し、「すべての色に対して色を偏らせるため。補正する階調域は「ハイライト」と「中間調」を中心にし(必要なら「シャドウ」も補正)、全体の雰囲気を見て色を決めていく。具体的な調整としては、各階調域で「シアン」と「イエロー」に偏らせればよい(スライダーを左に移動)。「グリーン」を直接増やすと蛍光色に近づいてしまう(=プリントで再現しにくい色)が、モニターで表示する写真ならそれもOKだ。

 

color07_14

(3)マスク描画の準備

(2)の補正のままだと、木の幹もイメージ以上にグリーンかぶりが生じている。そこで、この部分の補正を「レイヤーマスク」を使って除外し、改めて補正し直すことにする。まずは、「レイヤー」パネルで「カラーバランス」のレイヤーの「レイヤーマスクサムネール」をクリックして選択。
color07_15

(4)「ブラシツール」を設定する

ツールパネルの①描画色を「黒」に設定したら、②「ブラシツール」をクリックして選択する。ブラシの形状はボケ足のあるタイプが適しているので、③「ブラシプリセットピッカー」をクリックし、④「ソフト円ブラシ」に設定。ブラシの太さは、作業する部分に合わせて⑤「直径」スライダーで調整しておく。⑥「不透明度」と⑦「流量」はどちらも「100%」に設定。
color07_16

(5)木の幹の補正を除外する

「レイヤーマスク」に対して「黒」で描画することで、調整レイヤーの補正を透明(除外)にすることができる。「白」で描画すると補正された状態に戻り、グレーなら濃度により補正が弱められる。作例は幹の部分の補正を消去したいので、「黒」に設定した「ブラシツール」で写真の上からドラッグすればOK。このとき、「レイヤー」パネルで調整レイヤーの「レイヤーマスクサムネール」が選ばれた状態にしておくこと。
color07_17

4、透過光の美しさを再現する

(1)「トーンカーブ」を選択する

左上に木の葉が重なり色濃い部分があるため、透過光の透き通った印象が薄れている。そこで、陰りを取り除くために、「調整レイヤー」の「トーンカーブ」で補正を行なう。作例では2つめのトーンカーブ(トーンカーブ2)だ。
color07_18

(2)陰がなくなるように補正

「トーンカーブ」の線グラフを上にドラッグして明るく補正。このとき、画面左上の濃い陰の部分だけに着目して、透明感の出る明るさになるまで補正を強めていく。ただし、最終的な補正の強弱はレイヤーマスクで部分補正を行なわないと分からないので、実際には「明るく補正」→「部分補正」→「補正を調整」という流れで仕上げることになる。

(3)レイヤーマスクをいったん黒で塗りつぶす

左上の部分だけ補正を適用したいので、「レイヤーマスク」に対して左上部分以外を「黒」で塗りつぶす。今回は塗りつぶす範囲が広いので、一度全体を黒で塗りつぶしてから「補正したい範囲を白」で描画する。作業手順としては、「レイヤー」パネルで「トーンカーブ2」の「レイヤーマスクサムネール」をクリックして選択したら、描画色/背景色が「白/黒」になっていることを確認し、キーボードのCtrl+Del(MacはCommand+Delete)キーを押してレイヤーマスクを黒(背景色)で塗りつぶす。
color07_21

(4)「ブラシツール」を設定する

「レイヤー」パネルで①「トーンカーブ2」の「レイヤーマスクサムネール」が選択されていることを確認。続けて、②描画色を「白」に設定したら、③「ブラシツール」をクリックして選択する。ブラシの形状は、④「ブラシプリセットピッカー」をクリックし、⑤「ソフト円ブラシ」に設定。ブラシの太さは、作業する部分に合わせて⑥「直径」スライダーで調整しておく。⑦「不透明度」と「流量」はどちらも「100%」に設定。
color07_22

(5)必要な部分だけ補正を施す

「レイヤーマスク」は、「黒」で描画すると透明(補正が消える)に、「白」なら不透明(補正された状態)に、「グレー」なら色が濃いほど透明(補正が弱まる)になる。作例は部分的に補正された状態に戻したいので、「白」に設定したブラシツールで描画すればよい。補正の境界が目立たないように描画色をグレーにしたり(ブラシツールの「不透明度」を下げてもOK)、ブラシの太さを調整しながら違和感が出ないように仕上げていく。

 

5、木の幹の色を仕上げる

(1)「トーンカーブ」を選択する

残る作業は、「木の幹」の補正だ。「カラーバランス」を使ったグリーンかぶり補正を除外したため、木の葉を透かしたグリーンの光の印象が弱い。これを改善するために、「調整レイヤー」の「トーンカーブ」を使用する。作例はこれで3つ目のトーンカーブ(トーンカーブ3)だ。
color07_25

(2)「レッド」チャンネルを補正

グリーンに偏らせるには、「シアン」と「イエロー」を増加すればよい。まずはチャンネルから「レッド」を選択し、線グラフを下げてシアンを強める。

(3)「RGB」チャンネルで光の反射を弱める

次はハイライトの補正。(2)で使った「トーンカーブ」に対して、チャンネルを「RGB」に設定したら、線グラフの左下(シャドウ)と右上(ハイライト)をクリックしてポイントを作成。右上のポイントを下げてハイライトを暗く補正。これにより、木の幹の白い反射が弱まって、質感を高めることができるようになる。

(4)部分補正をする準備

木の幹だけ補正するために、「レイヤーマスク」を使用する。先の作業でも紹介したとおり、「トーンカーブ3」の「レイヤーマスクサムネール」をクリックして選択したら、黒で塗りつぶす。そして、描画色が「白」のブラシを設定する。

(5)幹の補正を元に戻す

「白」に設定したブラシツールで木の幹の部分をドラッグして、補正された状態に戻す。補正の境界が目立たないように、太めのブラシで、エッジをぼかして塗りつぶすのがポイントだ。最後に、必要に応じて「レイヤー」パネルで各調整レイヤーの「不透明度」を調整し、補正のバランスを整える。作例では、バランスをとる必要はなかったので、不透明度は変更していない。

 

 

さらに詳しい解説は、Shuffle by COMMERCIAL PHOTO で連載中の「風景&ネイチャー レタッチの教科書」(解説・写真:桐生彩希)に掲載されています。サンプルファイルもダウンロードできますので、ぜひ挑戦してみてください!

  AUTHOR

Muneo Tochiya

1998年 9月 アドビ システムズ 株式会社に入社。マーケティング部に所属し、アドビのPhoto製品全般を担当。Photoshop のバージョン 5.5 から、Lightroomはベータから現行バージョンを担当。 「解りやすく、楽しく」をモットーに Photoshop 製品群の紹介をおこなう。