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フォトレタッチの極意15:強い日射しにまぶしい夏空を再現

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夏と言えば、まばゆい日射しに青い空と白い雲、そして色濃い緑。でも、まぶしさを出すと雲が白とびするし、雲の階調を出すと地表の露出がアンダーになってしまいます。なので撮影時には、雲の階調がぎりぎり残り、なおかつシャドウがつぶれ過ぎない露出のカットも撮影しておきましょう。レタッチを前提としたカットを押さえておけば、Photoshopを使って夏の陽射しが表現できます。解説は、レタッチャー/ライターの桐生彩希さん。「Shuffle by COMMERCIAL PHOTO」に掲載した内容から抜粋してお届けします。

 

Before
After(※クリックで拡大)

 

レタッチの設計

1、「Camera Rawフィルター」の準備をする

(1)「背景」をスマートオブジェクト化する

「Camera Rawフィルター」を調整レイヤー的に使うために、「背景」レイヤーを選択し、スマートオブジェクト化する。「背景」が「レイヤー0」になる。

(2)「Camera Rawフィルター」を表示する

「レイヤー0」を選択した状態で、「フィルター」メニューの「Camera Rawフィルター」を選択。これで、「Camera Rawフィルター」画面が表示される。

2、「Camera Rawフィルター」で全体の色調を整える

(1)露出を補正する

仕上がりのイメージが得やすいように、全体の露出を整えておく。作例は雲が白とびしない露出にしたため地表物が暗く写っているので、「露光量」スライダーを使ってこれを改善。

(2)シャドウの質感を改善する

山肌に見える緑(シャドウ)の微妙な濃淡が出ていない(=クリアな印象が薄い)ので、「シャドウ」スライダーで少し明るく補正して階調を出す。最終的に見えなくなる可能性もあるが、補正の途中ではできる限り階調を出すようにする。

(3)周辺光量落ちを補正する

広角レンズ+絞り開放の弊害として、画面の四隅(とくに右上)が暗くなっているので、「レンズ補正」パネルの「周辺光量補正」機能で補正する。自然に仕上げるポイントは、「適用量」スライダーを一時的に最大に設定して補正の効果を分かりやすくしておき、「中心点」スライダーを移動して適切な範囲を見つけ出すこと。最後に「適用量」スライダーを調整してフラットな露出にする。

「適用量」スライダーを一時的に最大に調整


「中心点」スライダーを調整


「適用量」スライダーを再度調整

1、「段階フィルター」で空を補正する

(1)「段階フィルター」を選択する

「Camera Rawフィルター」画面の上部にある、「段階フィルター」ボタンをクリックして機能を表示。まずは雲の立体感と空の色の濃さから補正する。現状は雲が白とびに近い状態なので、「露光量」の「-」ボタンをクリックして補正量をマイナスに設定。効果の範囲が分かりやすいように、強めの設定にするのがコツだ。あとで調整できるので、仮の設定でOK。ちなみに、各スライダーの両端にある「+」や「-」ボタンをクリックすると、クリックしたスライダー以外の設定がリセットされる。

(2)ドラッグして補正する範囲を決める

まずは、画面上半分の空と雲、そして山肌に部分に対して補正を行なう。補正する部分からしない部分に向けてドラッグして補正を適用。このとき、Shiftキーを押しながらドラッグすれば、補正の向きが45度単位に固定できる。ドラッグする幅が広いほど補正の境界が目立たなくなるが、補正したくない部分への補正の影響も生じるため、適切な範囲に設定したい。

(3)雲の階調を出す

雲の白とびを改善するには、「ハイライト」と「白レベル」スライダーを使用する。それぞれを左に移動して暗く補正することで、雲に立体感を出すことができる。

(4)露出を整える

「露光量」スライダーで仮に設定した暗めの露出を、イメージに近い露出に補正する。この後にコントラストも調整するので、雲が白とびしない程度の露出(少し暗め)にしておくと微調整の手間が省ける。

(5)コントラストを強めてまぶしさを出す

「コントラスト」で雲の白さと立体感、日射しの強さ、澄んだ空気の透明感などを再現する。「コントラスト」スライダーを右に移動してコントラストを強くすることで、明暗差が生じてヌケのよい立体感が得られるようになる。

(6)シャドウの暗さを軽減する

コントラストを強くしたことにより、山肌のシャドウが暗い状態に。仕上がりイメージよりも暗いため、違和感のない明るさに補正しておく。使う機能は「シャドウ」と「黒レベル」スライダー。暗さを感じさせず、階調感のある状態を目指せばOK。

(7)色彩を整える

露出とコントラストを補正したら、色を確認。山肌の緑を見ると少しシアンが強い(色温度が低い)ようなので、「色温度」スライダーを右に移動して補正。さらに、「色かぶり補正」スライダーを右に移動し、わずかな緑かぶりを軽減。補正の目安にしたのは、緑の色彩と岩肌の部分。空の青は調整レイヤーの「特定色域の選択」で補正できるので、さほど重視してはいない。
 

(8)透明感と解像感を高める

ここまで補正してもなお透明感が得られないときは、「かすみの除去」を使うと効果的。さらに作例では、遠方の解像感も高くしてパンフォーカスの印象を強めたいので、合わせて「明瞭度」も調整。「かすみの除去」を使うと露出とコントラストが変化するので、必要に応じて微調整しよう。

4、「段階フィルター」で地表を補正する

(1)地表物を補正する準備

同じく「段階フィルター」を使い、画面下半分(地表)の補正を行なう。地表の色調は、日射しの強さが感じられる仕上がりを目指す。新しい「段階フィルター」を作るので、「新規」をクリックしてチェックしたら、「露光量」の「+」ボタンをクリックして明るく補正される状態にしておく。

(2)ドラッグして補正する範囲を決める

地表部分(画面の下半分)を補正したいので、下部から上に向けてドラッグ。これで、下部が重点的に補正できるようになる。前回の「段階フィルター」はピンアイコン(○印)で表示され、クリックすると補正の再調整が可能。

(3)コントラストを強めてまぶしさを再現

日射しの強さはコントラストで再現できる。「コントラスト」スライダーを右に移動して明暗差を広げればOK。雲のような繊細な立体感を必要としない地表物は、少しだけ白とびする程度に調整すると、まぶしさが感じられる色調にできる。

(4)さらなるまぶしさを追求する

「コントラスト」スライダーの補正は、ハイライトとシャドウを同じように調整するため狙ったコントラスト(明るくコントラストを強めるなど)が得にくい。そこで、足りない要素を「ハイライト」「白レベル」「シャドウ」「黒レベル」の各スライダーで調整。「ハイライト」や「白レベル」スライダーを右、「シャドウ」や「黒レベル」スライダーを左に移動するとコントラストを強くすることができる。作例は、「白レベル」スライダーを右に移動して白さを出し、「シャドウ」スライダーを左に移動して暗部を引き締め、色を濃く仕上げている。

(5)色の偏りを補正する

露出とコントラストを整えたら、「色温度」と「色かぶり補正」スライダーで色を補正する。池の周りの砂地を見ると少し暖色系とグリーンが強い印象なので、「色温度」スライダーを左、「色かぶり補正」スライダーを右に移動して軽減。

(6)「かすみの除去」で色彩を濃くする

「かすみの除去」はローコントラストの状態をクリアな色調にする機能。つまり、色を濃くする調整にも使えるということ。池の周囲の緑が平面的な状態なので、「かすみの除去」スライダーを右に移動して色彩を強める。これにより色の差が出て、繊細かつ立体的に見えるようになる。

(7)「彩度」で発色をよくする

空の青に対して池の青がくすんで見えるので、「彩度」スライダーを右に移動して発色をよくする。画面上部と下部の2つの部分補正のバランスに違和感がないなら「Camera Rawフィルター」の作業は完了。「OK」ボタンをクリックして、画面を閉じる。違和感があるときは、該当するピンアイコンをクリックして「段階フィルター」の補正を微調整する。

5、「特定色域の選択」で空の色を補正する

(1)「特定色域の選択」を選択する

空の青に対して補正を行ないたいので、「調整レイヤー」の「特定色域の選択」を使用。「レイヤー」パネル下部の 「調整レイヤーを新規作成」ボタンから「特定色域の選択」を選択し、補正画面を表示。下部にある「絶対値」を選択しておく。

(2)「シアン系」と「ブルー系」を調整する

「青」を補正するので、選択する「カラー」は「ブルー系」とその類似色の「シアン系」。それぞれのカラーに対して「マゼンタ」成分を増加すると青に深みが出て紺色に近づき、「シアン」成分を増加すると軽やかさが出せる。作例は「マゼンタ」スライダーを右に移動して色濃い青に調整。

(3)「イエロー系」で緑の色調を調整する

緑の色彩が軽やかで、さわやかな印象に感じられるので、もう少し色濃く濃密な色調に調整。「特定色域の選択」の「カラー」を「イエロー系」に設定し、「イエロー」スライダーを右に移動して濃密な色彩に補正。さらに、「ブラック」スライダーを右に移動して色を落ち着かせる。

 

6、「トーンカーブ」で露出を仕上げる

(1)「トーンカーブ」を選択する

最後に、全体的な露出とコントラストを補正する。使う機能は「調整レイヤー」の「トーンカーブ」。「レイヤー」パネル下部の 「調整レイヤーを新規作成」ボタンから「トーンカーブ」を選択する。

(2)ハイライトを強めて白さを際立たせる

夏の日射しの強さを出すために、少しハイライトがとぶ程度に明るく補正する。この補正は、ヒストグラム下部にある△スライダーを左に移動すればOK。

このとき、キーボードのAltキー(MacはOptionキー)を押しながら移動すると、階調がとんでいる色と場所が確認できる。

(3)コントラストを仕上げる

「トーンカーブ」で露出やコントラストを補正するときは、線グラフの右上と左下をクリックして2つのポイントを作っておくと簡単。右上のポイントを上下するとハイライトの明暗、左下のポイントでシャドウの明暗が補正できる。作例は、右上のポイントを上に、左下を少し下げて、夏の日射しらしい明るくコントラストの強い状態に補正する。

 

さらに詳しい解説は、Shuffle by COMMERCIAL PHOTO で連載中の「風景&ネイチャー レタッチの教科書」(解説・写真:桐生彩希)に掲載されています。サンプルファイルもダウンロードできますので、ぜひ挑戦してみてください!

  AUTHOR

Muneo Tochiya

1998年 9月 アドビ システムズ 株式会社に入社。マーケティング部に所属し、アドビのPhoto製品全般を担当。Photoshop のバージョン 5.5 から、Lightroomはベータから現行バージョンを担当。 「解りやすく、楽しく」をモットーに Photoshop 製品群の紹介をおこなう。