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UXを犠牲にせずに、楽しさをデザインの細部に加えるには?Dropboxの製品デザイナーが教えるコツ

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Webサイトやアプリをつくるとき、ちょっとした楽しさをデザインに追加するのは、どこまでも続けられそうな作業です。しかし、どこまでやるとやり過ぎになるのでしょう? これが、マット・アームストロングが定期的に取り組んでいる疑問です。彼は、Dropboxの製品デザイナーとして、ユーザー体験の邪魔にならないよう注意を払いながら、ユーザーを楽しませる細かな要素の追加に多くの時間を費やしてきました。そんな彼に、正しくデザインしつつも、ちょっとした楽しさを追加するコツを聞きました。

マット・アームストロング

細部に楽しさを追加することと良いUXの実現のバランスをとるための、一番のアドバイスは何でしょうか?

デザインの細部に手を加えるならば、修正の対象となる要素を圧倒するのではなくて、要素を引き立てるものであるべきです。そして、その修正が、全体の体験を使いやすくて理解しやすくする助けになれば理想的です。

私が日常の仕事として取り組んでいる製品やツールは、人々が日々仕事を進めるために、同じ作業を何回も繰り返しながら、多くの時間を費やすような種類のものです。思うに、このような状況では、どんな些細な装飾の追加でも、興味深い挑戦となり得ます。それは、追加した細部が、急速に邪魔に感じられるようになる危険を伴っているからです。もし、ユーザーへの配慮が足りないと受け取られたなら、意図とは全く逆の効果がもたらされたことになります。こうした場合、体験を少し改善するには、単純なもの、例えば一貫性のある操作しやすいナビゲーションや優れたコピーライティングなどが候補になるでしょう。

アクセシビリティは、見落とされがちなこの例のひとつです。例えば、ボタンのような基本的なコンポーネントを取り上げてみましょう。幅広いデバイスできちんと動作するボタンをデザインするということは、それを操作する多くのユーザーの体験を改善し、更には、すべての操作フローや、ボタンを表示するすべてのビュー(スクリーンリーダー等も含め)を向上させるということでもあります。

バランスについては、私の意見では、デザインする対象によって少し変わるものです。また、何が楽しそうで魅力的かという基準も、誰のためにデザインしているのかに依存します。おそらく、解を見つけるための最も良い手段は、ユーザーと会話して、誰のためにデザインしているのかを理解することです。

何かをデザインし過ぎたとき、何が起こるのでしょうか?

何かデザインし過ぎたものがあれば、その要素と関わったユーザーはつまらない仕事をしているように感じることでしょう。長い期間関わり続けると、邪魔に感じたりイライラし始めることだってあるかもしれません。ここで頭に入れておくべき重要な点は、どんな細部からでも、ユーザーが受け取る驚きは時間の経過と共に薄れるということです。

最初に派手なアニメーションやトランジションを目にしたとき、ユーザーは驚きつつも、楽しく格好よいと感じるかもしれませんが、何回も見た後は、その新鮮さも失われます。もし、それらのアニメーションにより操作が中断されたり時間を取られるようなら、それは次第に否定的なユーザー体験となり、製品や機能のその他の良い面を消してしまうでしょう。

もちろん、注目を引く派手な瞬間に適した場所がないという意味ではありません。初めてのユーザー向けの画面や、使い方を紹介する場面では、何か目立って少し驚かせるような細部を追加するのは理にかなっています。一般的なユーザーはそうした要素を頻繁に見たりはしませんから、ちょっとした驚きが失われることもないでしょう。

私達はできるだけ簡素なデザインを心がけていますが、Dropbox製品の中でも、初めてのユーザーのための体験は、イラストレーションなどの細かな要素を用いて、少し楽しい雰囲気を持たせている領域です。

ユーザーを喜ばせる細部を追加するための最良の方法は何でしょうか?

一般的には、体験を飾る個々の要素を、継続的に強化し続けることが良い方針だと思います。ちょっとした事、例えばマウスオーバーやタッチの状態に一貫した処理を追加したり、シンプルなアニメーションやトランジションを採用すると、構築済みのユーザー体験を損ねることなく、豊かな気分を感じさせ始められるでしょう。

それから、しばしば見逃されがちな方法は、良いコピーライティングを使うことです。優れたコピーは、デザインに特定の雰囲気を持ち込む大きな機会であり、デザイナーの声を伝え、製品に人間味を加えます。(この例としては、Dropbox Paperに新しいドキュメントを追加したときに表示されるテキストが挙げられます)

使いやすさと楽しさのバランスをとって、デザインをちょうど良い状態にすることで得られるのは何ですか?

優れたユーザー体験はそれ自体が楽しいものです。ですから、そうした細部を加えることは、初めての印象を肯定的にする助けになると思います。しかし、時間の経過と共に細部が背景に埋もれ注意を引かなくなると、製品の中核を成す体験が舞台の主役になります。細部が、ずっとユーザーの注意を引き続けたりせず、使い続けるにつれて背景と一体化するのが良いシナリオなのです。

マットの仕事は彼のサイトでたくさん見ることができます。


この記事はAdding Delightful Details without Sacrificing UX: Top Tips from Dropbox’s Product Designer(著者:Patrick Faller)の抄訳です

  AUTHOR

akihiro kamijo

アドビのコンサルティングチームでリードアーキテクトとして主にUIデザインプロジェクトに関わる。現在は独立してデザイン/開発に関連のマーケティング企画や情報発信、プロジェクト支援を行っている。