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ユーザー (UX) 調査の入門ガイド Part 1: ユーザー調査の大切さ(UXデザイン入門シリーズ)| アドビUX道場 #UXDojo

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どんなプロジェクトであれ、デザインに着手する前に何らかの調査を実施して、十分な情報を持って判断できるようになることは、大きな違いにつながります。

もし自分の肩書が「調査員」でないとしても、プロジェクトを始める際、少なくとも何か最初に簡易な調査を行って、ユーザーとそのニーズに関する情報を集めるべきではないということにはなりません。ユーザー調査はすべてのデザイナーの技能の一つであるべきで、業界が成熟するにつれて、その見方を反映するように、ユーザー調査の重要性に対する関心も高まってきています。

この入門ガイドのパート1では、ユーザー調査の大切さについてお話しします。そして、新しい製品をデザインしたり、既存のデザインの見直しを行うデザイナーの役に立つ代表的な調査方法の種類を紹介します。「調査」は非常に幅広いトピックです。この記事は、ユーザー調査の簡単な入門書としてお読みください。

クライアントのための仕事でも、社内チームの一員としての作業でも、デジタル製品の構築していても、ユーザー調査は非常に重要な作業です。デザイナーとして、自身の「UX道具箱」の中には、優れたユーザー体験を効果的にデザインするために必要な調査ツールを備えておくべきです。この入門ガイドのパート2ではそうしたツールの使い方を紹介します。

デザインプロセスとユーザー調査

ユーザー中心設計にはユーザー調査が必要

上の見出しが述べているように、ユーザー中心設計にはユーザー調査が必要です。デザインプロセスの中心にユーザーがいなくては、効果的で印象的なユーザー体験をデザインすることはできません。

デザインプロセスに着手する際、つまりは解決しようとしている問題の枠組みを形作ろうとするときは、以下の問いが重要です。

  • ユーザーは何をやりたいと思っているか?
  • ユーザーの目的は何か?
  • ユーザーは何を達成しようとしているのか?

ユーザー調査は、こうした質問への答えに対する洞察を与えてくれるでしょう。また、これはプロセスの最初に注力すべき作業です。ユーザー調査をプロジェクトの始めに実施することは非常に重要なのです。そうすれば、プロジェクトのスコープ(実際に行うこと)と、目標(プロジェクトを行う意図)を定義する手立てとなります。目標を明確化することから始めて、はっきりしたら、そこから遡って探っていくと良いでしょう。

良質な製品は、ユーザーがタスクを完了することを可能にするものです。デザイナーの役割は、そういったタスクを定義し、そのタスクのためにデザインすることです。つまり、ユーザーを観察し、ユーザーが求めるものを知り、何を達成しようとしているのかを理解するのです。そうして得られるものが、片付けるべきタスク「jobs to be done」の概念です。

もし「Jobs to be Done」というフレーズが初めてならば、それは精通する価値があるものです。Alan Klementの「Jobs to be Done」という素晴らしいWebサイトをブックマークしておくことを強くお勧めします。このテーマについてより掘り下げて説明しているサイトです。優れた製品を生み出したIntercomのチームも、『Intercom on Jobs to be Done』というこのトピックに関する書籍を出版しています。

ユーザー調査を繰り返し行う

はじめからユーザーに着目することは重要です。さもなければ、自分の必ずしも正しいとは言えない仮説に基づいてデザインする危険があります。そうならないように、まずはユーザー調査を行うべきです。そして、解決しようとしている課題を定義し、プロトタイプを作成して、仮説を検証したら、その工程を繰り返します。

調査は継続的に行われるべきで、デザインプロセスを通じて繰り返し行われます。

  • 調査
  • デザイン
  • プロトタイプ
  • 構築
  • 検証

このプロセスは、繰り返して実行される作業であることを強調しておきます。ユーザー調査を実施することによって、問題を定義し、デザイン、プロトタイプ、構築を行い、最後にユーザーと共に仮説を検証します。

調査は、循環するデザインプロセスのごく一部分。デザインプロセス全体を通じて、仮説を検証するために実施するもの

このプロセスを繰り返し行うことで、ユーザーのフィードバックがユーザー体験に組み込まれ、より良い結果を引き出します。何かを作成する場合、それがごく基本的なプロトタイプの段階であっても、それを検証することは重要です。最良のアプローチは、最小限実行可能な製品 (MVP) を制作し、検証し、それを繰り返して、素早く効果的にデザインするリーンアプローチです。

ユーザーがプロトタイプと関わる様子を観察すれば、たくさんのことを学ぶことができます。Yogi Berraの個性的な表現にもあるように、「ただ見ているだけで、たくさんのことを観察できる」のです。

つまり、ユーザーと接点のない場所でデザインに迷うのではなく、机を離れてユーザーと対面することが大切だということです。ユーザー像を持たないデザインには意味がありません。加えて、そこから誤ちに発展し、後で修復するために費用が掛かることもあります。

ですから、「ユーザー調査は費用が掛かるため実施できない」という考えは誤っています。まったく調査を行わないよりも、なんらかの調査を行う方が結果的には良いのです。

調査方法の位置づけ

2つの軸による分類

デザイナーとして調査に使用できるツールは山ほどあります。ユーザー調査の経験を積むにつれ、いつどのツールを使用するのかという判断ができるようになるでしょう。この記事のパート2で紹介するように、調査データを分析していく際は、調査方法を組み合わせて、様々な視点からの情報に基づく結果を得ることが重要なポイントです。

ツールには様々なものがあり、本職のデザイン調査員もでない限り、すべてのツールを知り尽すことは不可能でしょう。それでも、調査の知識を蓄積しながら様々な方法を追加して、調査の「道具箱」を作り始めることは大切です。調査方法の位置づけは、次の2つの軸を使って表現できます。

  • 定性と定量
  • 行動と態度

軸の1つは、意見を調べる定性的アプローチと、データを読み解くことで意見を検証する定量的アプローチです。もう1つの軸は、ユーザーを観察しユーザーの行動を理解する行動的アプローチと、ユーザーから聞き取りを行いユーザーの態度や見方を探る態度的アプローチです。

広範な調査方法が利用可能。さまざまな手法を選択して、調査がうまくまとめることが重要

調査対象を正しく選ぶ

定性的および定量的な調査方法の紹介の前に、誰を検証するのかということが重要であることを述べておきます。作成したデザインをチーム内のスタッフに検証するのは不十分です。プロジェクトルームの外の現実世界にいる人々で、さらに言えば、デザインの対象となるユーザーに合致する人々を調査の対象とすることが重要です。

調査の対象者とより密接に作業を行う定性調査においては、最適な対象者を見つけ出すことの重要度が高まります。たとえば、高齢者を対象にしたプロジェクトであれば、そのプロファイルに適合する調査対象者のグループを集めることが不可欠です。

適切な人々を見つけるための手段の一つは、候補者の適性審査のための書類作成です。基本的に、審査書類にはデザインの対象となるユーザーの特性をリストアップすると良いでしょう。たとえば、対象者が男性なのか女性なのか、65歳以上であるのか、コンピュータを使い慣れているのか、定期的に旅行するのか、といった項目です。

選ばれた調査への参加者から調査結果が形づくられるわけですから、対象者選びに労力をつぎ込むことは本質的です。

ここまで、UX調査の重要性と調査方法の位置づけについて説明しました。それぞれの調査方法のより詳しい紹介は、『ユーザー (UX) 調査の入門ガイド Part 2: 調査方法』で行います。


この記事はA Comprehensive Guide To User Experience (UX) Research(著者:)の抄訳です

  AUTHOR

akihiro kamijo

アドビのコンサルティングチームでリードアーキテクトとして主にUIデザインプロジェクトに関わる。現在は独立してデザイン/開発に関連のマーケティング企画や情報発信、プロジェクト支援を行っている。