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Adobe XD製品デザイナーのタリン・ ウォズワースが語る。フィードバックを大切にするチームのつくり方

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一匹狼で、想像力溢れる天才デザイナーの時代は終わりました。今日のプロのクリエイターは、複雑なプロジェクトの中で、様々な役割の人たちと働いています。フィードバック、すなわち同僚からの助言や批評を求めることは、クリエイティブな作業の中核です。人々の成長を助け、チーム内の信頼を構築し、その結果としてより良い仕事につながります。

Adobe XDのリードデザイナータリン・ウォズワースは、アドビのデザインチームに属していて、7人のデザイナーのリーダーです。自身のチームの拡大に連れて、彼にとって主要な課題のひとつになったのは、「フィードバックを大切にする文化」をチーム内に育て続ける手段の発展と継続でした。その過程で何を学んだのか、彼の言葉を聞いてみましょう。

理想の環境づくりとチーム心理の関係

健全で生産的なフィードバックの行われるデザインチームへの土台作りは、チームの文化から始まります。
「もし作業を他のメンバーに見せるのに抵抗を感じるなら、文化に問題があるということです。公正で、お互いが親密な環境にいる人たちは、フィードバックを躊躇したりはしないでしょう」とウォズワースは言います。

多くの研究者の調査結果にあるように、心理的な安全性の確保は、成功するチームの礎となります。ハーバードビジネススクールの教授エイミー・エドモンドソンは、研究論文のひとつで心理的な安全性を定義して、「お互いの信頼と尊敬により性格づけられるチームの様相で、自分自身でいることが心地よい状況」と記述しています。ウォズワースが推進するチーム文化はこの考えと一致しています。

ウォズワースの実践する、 安心という感覚をチームに根付かせる方法のひとつは、リーダーとして支えになることです。
「自分にとって、みんなが自分を彼らの支援者とみなしてくれるかはとても重要です。自分の役割は、メンバーが成功するようお膳立てすることで、例えば、彼らが見せてくれた仕事に自信を持てるよう、フィードバックや批判をしっかりと行うことです。グループで集まってフィードバックを行う時は、彼らの側に立って彼らの仕事を推しているように感じて欲しいです。彼らが仕事に労力を注いでいることを知っているからです」

フィードバック中に、人々が安心感を保てるように支援するのは、キム・スコットのRadical Candouの考え方「リーダーは個人個人を気遣い、同時に直接対峙する必要がある」とも一致します。フィードバックが思いやりからのものであることを理解している時、人々は安心して意見を共有し、受け入れようとするでしょう。ブレネー・ブラウンが著書Daring Greatlに書いたように、「脆弱さはフィードバックの過程の中に現れます」。そのため、人々の脆い箇所を支える手段を見いだすことは、フィードバックの文化を発展させるためには極めて重要なのです。

チームのフィードバックを促進する5つの方法

こうした心理的及び文化的な条件の他に、ウォズワースは生産的なフィードバックを促進するいくつかの実践的なヒントを共有してくれました。

1. フィードバックをプロセスの一部にする

「私達は、今年、デザインチーム内でビジョンを共有するというゴールを設定しました。誰かの仕事を確認することが必要なとき、十分な情報と制作物が公開されている状況をつくろうということです」
とウォズワースは説明します。これは、チームメンバーにとっては、日々の作業の中で、早い段階で頻繁に制作物の共有を行うことを意味します。
「情報は定期的にSlackで共有され、XDのプロトタイプリンクも共有します。XDプロトタイプのコメント機能を使ったフィードバックも、後から時間ができたら行います」
これにより、チームは現在進行中の案件においても、何が起きているのか見て知ることができるのです。

2. フィードバック専用の機会をつくる

作業の進行状況の共有を習慣化することは有益ですが、フィードバックだけを目的として集まるのも役に立ちます。ウォズワースのチームでは、毎週金曜日に論評会を行い、チーム全員がフィードバックの時間を確実に持てるようにしています。様々な仕事が舞い込む忙しいデザインチームにとって、この機会を守ることは、フィードバックの文化を育てるための優れた戦術です。
「私達のチームにとっては、このセッションがもっとも大事なことのひとつになりました」とウォズワースは話します。

3. 正しく準備する

もちろん、週に一度、ただ部屋に集まるだけでは十分ではありません。フィードバックの集いが成功するには、注意深い事前準備が必要です。ウォズワースは以下のように解説しています。
「みんながなじみのある話の方がセッションは上手くいきます。参加者に、打ち合わせの目的も背景も知らないまま来て欲しくはありません。適切に準備しておくことのメリットは、解決したいデザイン上の課題に到達するために必要な整理が行えるようになることです」
事前準備に含まれるものには、デザインを予め確認することや、議論したい課題の背景の共有などが含まれます。

4. 仕事について話す

デザイナーがフィードバックを嫌がる理由に、個人的に責められたように感じたり、主観的な主張や好みが展開されることが挙げられます。ウォズワースが使うこれらを軽減するための手法は、会話の焦点を制作物に集中させ、ユーザー視点での会話を維持することです。
「そのときのデザインにたまたま存在する問題をいちいち取り上げることはありません。そうではなくて、ユーザーの操作という観点からデザインを眺めるのです。ユーザーのために解決しようとしている課題に集中していれば、得られるフィードバックは対応しやすいものになるでしょう」

5. 範を示す

リーダーとしてフィードバックの文化をつくるなら、有限実行することです。率先して自身の作業を共有し、フィードバックを受け入れる姿勢を見せることで、チームの模範となるのです。
「自分はいろんな意味で手本にならなければなりませんでした。まず自分が示さなければならないのです。自分自身をその場に投げ出せば、チームが同じことをするよいきっかけになります。ルールを一方的に押し付けても上手くはいきません。リーダー自身が遂行し、熱心な姿を見せなければなりません」

フィードバック力を向上させる

もちろん、フィードバックがその場限りのものだったら、何の意味もありません。仕事に反映されていることを明確にする責任も必要とされます。ウォズワースにとってこれは、「お互いがお互いの仕事を良くする作業の一部になっていること」の確認です。Adobe XDチームは、製品開発の工程の中核に、フィードバックの収集とその反映の繰り返しを組み込もうと取り組んできました。そこでは、「XDを発展させるためのフィードバックをXDのフィードバック機能を使って行う」という試みも行われています。

フィードバックが練習したり教わって上達できるものであるのも重要な点です。ウォズワースが言うには、
「デザインスクールでは、常に講師から作品を壁に張り出して紹介することを強いられました。ストレスを感じましたが、一度やってみると次は少し楽になったのです。この体験をチームに適用し、定期的にフィードバックを送ったり受けたりするることにより、お互いにフォードバックの練習を行う機会にしています」


この記事はEnabling a Culture of Feedback: A Conversation with Talin Wadsworth, Lead Designer for Adobe XD(著者:Linn Vizard)の抄訳です

  AUTHOR

akihiro kamijo

アドビのコンサルティングチームでリードアーキテクトとして主にUIデザインプロジェクトに関わる。現在は独立してデザイン/開発に関連のマーケティング企画や情報発信、プロジェクト支援を行っている。