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UXデザインに役立つスケッチノートの活用術 | アドビUX道場 #UXDojo

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マケイラ・ルイス(Makayla Lewis)の仕事は、ロンドンのブルネル大学の研究者で、専門分野はHCI、サイバーセキュリティ、スマートマネーです。その素顔は、日常的にスケッチやスケッチノートを描くビジュアルシンキングの実践者であり、スケッチノートのイベント(いくつかは彼女自身が主催)で自身の思考プロセスを共有したり、さまざまな組織やイベントにビジュアルを提供しています。彼女のドゥードゥル(落書き)やスケッチノートは、彼女のポートフォリオサイトInstagramで見ることができます。

私たちは、マケイラから、UXデザイナーにとってのスケッチノートの利点と、UXプロセスでの活用方法について聞くことができました。彼女のワークスタイル、愛用ツール、そしてスケッチのスキルを磨く方法ついても聞きました。

スケッチノートはあなたをより良いUXデザイナーに変えましたか?

ここ数年よく聞かれる質問です。そして、その答えは変わりません。スケッチは、UXデザイナーが、体験や複雑なコンテンツを表現したり創りあげるときによく使われる手法です。UXの実践者がアイデアを表現するのに役立ち、デザインを同僚やユーザーやクライアントと共有することを可能にします。このようなスケッチの有用性をさらに高めることができるのがスケッチノートだと捉えています。手書きの文字、簡単なイラスト、図形、そして補助的な要素(例えば、接続する線、囲む線、分ける線など)が、思考のプロセスを助け、考えを伝えるのに役立ちます。ですから、UXデザイナーにとってスケッチノートを描く能力が役に立つかと聞かれたら、答えは当然イエスです。

マケイラ・ルイス

スケッチノート活用シーンは何でしょうか(カンファレンストークのまとめ以外に)?

カンファレンスやミートアップやイベントのトークを視覚化するために使うものがスケッチノートだという考え方には賛同しません。他の使い道はたくさんあります。私自身の場合は、ブレインストーミング、新しいコンセプトの探索と理解、ユーザーシナリオの共有、インタビューしたユーザーと視点を共有していることの確認、議論を補助するためのインタラクションや機能の視覚化といったことに使っていますし、最近では、ユーザーが明確にそしてシンプルに彼らの体験を表現できるように、共同でスケッチノートを描きました。スケッチノートは、「スケッチ」と「ノート(メモ書き)」の2つが、理解しやすく、学びやすく、議論しやすいかたちに組み合わされたものです。それは他の言語と同じように使えるビジュアル言語です。ほとんどの場面でスケッチノートは役立つと思います。

ロンドン某所でスケッチノートを描くマケイラ

あなた自身がスケッチノートを描くときの様子を教えてください。よく使うツールとその理由も。

私は昔ながらのスケッチノートの手法が好みです。何年もの間、さまざまな紙、ペン、マーカーを試してきましたが、結局は入手しやすいモレスキンのノートブックに戻ってきます。気持ちオフホワイトな紙色は目に優しく、ペンを走らせやすくしています。Large(A5)サイズはちょうどよい柔軟性があり、持ち歩くのに大き過ぎず、失くす程小さくありません。15分以内の短いナラティブなら1ページ、それより長ければ見開き2ページがうってつけです。

マケイラが描いたスケッチノートや落書きによく使うツールの「落書き」

すくなくとも2週間にいちどは「筆箱を見せてくれない?どんなペンを使ってるか知りたいんだ。」と聞かれます。そこで、数年前に、お気に入りのペンとマーカーを描いた「落書き」を公開しました。見直してみると、今でも同じツールを使っています:

  • 鉛筆:シャープペンシルなら削りかすの心配はありません。例えば、Caran d’Ache 888 インフィニット
  • 消しゴム:ホルダー式の消しゴムは、ペンと同じように正確にコントロールできます。例えば、トンボ モノゼロ
  • 黒インク:リッチな着色、丈夫なペン先、耐水性、速乾性を重視します。私がいつも使うのは、ユニボールの0.38mmボールペンの黒です。
  • グレーマーカー:TooコピックのマーカーC3、N3、T3、W3を使います。コピッククラッシックの丈夫で精密な砲弾状のペン先は影を付けるのに便利です。
  • カラーマーカー:さっと描けて速乾性がある、Tooコピックのマーカースケッチチャオの二択です。私は重要な部分の強調や見た目のアピールの改善に色を使います。図やテキストの邪魔をしない、B02、B21、BG02、BV31、G02、E13、E21、E31、RV34、V12、Y08のようなパステルの組み合わせが最も有効だと思います。
  • 修正液:私は完璧からはほど遠い人間で、失敗は避けられません。失敗したところはそのまま放置か描き直すこともありますが、塗りつぶすしかないときもあります。そんなときは修正液ではなく無臭の白いゲルペン(ユニボール シグノ UM-153 太字またはSakura Gelly Roll)を使うようにしています。
アルベルト・ソランツォによるUX Scotlandの基調講演のスケッチノート

私自身は伝統的なツールを使うのが好きですが、イベントやミーティングではそのままプロジェクターに表示できるデジタルスケッチを要望されることも結構あります。そんなとき私はWindows 10が走るタブレットを使います。Microsoft Surface Pro 4とSurface Penの組み合わせか、Wacom Cintiq CompanionとPro Penの組み合わせです。スケッチノートを描くときはいつもAdobe Photoshop CCにJazza’s Signature Photoshop Brushesというプラグインを組み合わせて使います。このプラグインは私が普段使うツールをうまく代替してくれます。Photoshopが与えてくれるいろんな自由が好きですし、学生時代に最初に学んだドローイングソフトウェアだから使い慣れているというのも理由です。ときにはAutodesk Sketchbookも使いますが、これはささっと楽しいキャラクターの落書きをするときが主です。デジタルで描くとき、従来のスケッチノートのスタイルをよく利用します。スケッチノートの写真を撮ったりスキャンして取り込んで、その上に描くのです。ハイブリッドな見た目がとても好きです。

スケッチノートのスキルを磨いて、自分自身のスタイルを身につける方法は?

練習、そして練習あるのみです!うっとうしく感じるかもしれませんが事実です。どんなスキルでもその上達には練習が欠かせないと思います。2012年4月に私が初めて描いたスケッチノートをいま見返すと「マケイラ、このスケッチノートは微妙だけど…ずいぶん上達したものだよね」という気持ちになります。自慢しようとしているわけではありませんが、劇的に上達したんです。当時はとても満足していましたが、よく見れば題名も講演者の名前もなく、構成は不十分で、テキストとドローイングのバランスがとれておらず、色使いが重要な要素の発見を邪魔しています。太すぎる線については言うまでもありません。何を考えていたんでしょうかね、私は?

上達したかった私はひたすら描き続けました。スケッチノートを日々の暮らしの一部にまで広げました。ありとあらゆるものごとをスケッチノートしました。好きなテレビ番組や映画、料理のレシピ、書籍、記事ドキュメンタリー、ツイッターでの議論ミートアップTEDトーク博物館、そして旅行。プライベートで描き続けることで、仕事の現場で求められるような完成度の追求によるプレッシャーと無縁な状態で、自分の得手不得手を発見しながらスケッチノートのスキルを磨くことができました。例えば2012年12月には主要なコンテンツを雲で囲む手法を試し、それが有効であることを知りました。2013年4月にマイク ロード(Mike Rhode)の書籍「Sketchnote Handbook」でコネクターの存在を知り、視覚的な構成力を向上しました。2014年11月にはインスタント写真への愛が蘇り、ポラロイド写真として講演者を描き入れています。練習を継続することでスタイルの方がこちらにやってくると信じています。だから年後に私がどんなスタイルで描いているのか待ちきれません。

Sketchnote Army Traveling Bookのためのロンドンのスケッチノート

失敗がスケッチノーターとしての成長につながった話を聞かせてください

「成功は決定的ではなく、失敗は致命的ではない。大切なのは続ける勇気だ」とウィンストン・チャーチルは言っています。

スケッチノーターとして成長する唯一の方法は、いくつも失敗をしてそれらから学ぶことだけです。去年、私は完璧さに囚われて、失敗を恐れるあまり新しいことに挑戦していないことに気づきました。退屈になりモチベーションも下がり、スケッチノートをほとんど描かなくなりました。ですが、最近、マギャリ・ル・ギャルクリス・スパルトンが主催したSketchnote Hangoutsイベントが失敗の重要性を思い出させてくれました。失敗とは学びのプロセスの一環です。失敗を目にするのは喜ぶべきことです。なぜなら、それは新しいことに挑戦していることを示しているのです。今は、2日に1度はスケッチノートを描き、それをInstagram、Flickr、Twitterで公開しています。個人的な責任、友人や世界と共有するということが、つねに挑戦し続け、失敗から学び、スケッチノーターとして成長を続ける私の原動力です。

Sketchnote Hangoutイベントのクリス・スパルトンによるトークのスケッチノート

あなたはこれまでに多くのリソースを公開しました。これからスケッチノートを始めたい人には何を推薦しますか?

ここ数年にわたって私はさまざまな参考リソースを公開してきました。もし探しているものが、UXアイコン、人物像、手書き文字なら、UX Oxford Sketchnote 101をお薦めします。より計画的かつ構造的なスケッチノートを描きたいなら、19 Sketchnote Style Sheetが参考になるでしょう。自分自身のビジュアル言語を短期間で簡単に育成したければ、the 365 Sketchnote Challengeに参加してみてください。文字デザインのスタイルを増やしたければ、Brush Lettering for Sketchnotesをダウンロードしてみましょう。

いちばん良い方法のひとつは誰かと共に学ぶことです。私は毎月、Sketchnote Hangout(オンライン)とSketchnoteLDN(対面)というミートアップを開催しています。世界中から集まった仲間と出会い、学び、練習する、快適で心地よい環境です。

参考リソースを公開しているのは私だけではありません。国際的なスケッチノートコミュニティは素晴らしくクリエイティブです。マイク・ロードのThe Sketchnote Workbook、マウロ・トセッリの100 + 1 Drawing Ideas: 100 + 1 Drawing Ideas for Sketchnoters and Doodlers、シルビア・ダックワースのVisual Notetaking for Educators、ウィルミン・ブランドのVisual Thinking: Empowering People & Organizations through Visual Collaboration、アラン・マルテッロのfoldable lettering cheatsheetはどれもお薦めです。

マケイラ・ルイスについて更に学ぶために、彼女のサイトをチェックしましょう。


この記事はMakayla Lewis on The Power of Sketchnoting in UX Design(著者:Oliver Lindberg)の抄訳です

  AUTHOR

akihiro kamijo

アドビのコンサルティングチームでリードアーキテクトとして主にUIデザインプロジェクトに関わる。現在は独立してデザイン/開発に関連のマーケティング企画や情報発信、プロジェクト支援を行っている。