「Webや映像を⼀段レベルアップするフォント選びの極意」Adobe MAX Japan 2016 セッションレポート

BY 公開

文字に込められた思いや情報を最大限に活かすために、なにに重点を置き、どのように展開させたのか

「株式会社資生堂」澁谷克彦氏、「株式会社ワンパク」稲葉政文氏、「株式会社SIX」斉藤迅氏の3名が登壇したAdobe MAX Japan 2016のセッション「Webや映像を一段レベルアップするフォント選びの極意」では、なぜそのフォントなのか、そのフォントがプロダクトの中でどう活きているのか具体的な事例によって紹介されました。
澁谷氏、稲葉氏は、資生堂の企業文化誌として知られる「花椿」のWebサイトリニューアルにまつわる話を、また斉藤氏は次世代型スピーカーと称される「Lyric Speaker」の開発を取り上げ、フォントへの考え方、フォントとの向き合い方などなど「フォント愛」に溢れた熱いセッションが繰り広げられました。

フォント愛を感じたい方は是非セッションのビデオをご覧ください。

花椿のブランドパーソナリティを体言するフォント

既存の読者やファンがいる中でリニューアルに取り組んだ「花椿」のWebサイトは、「世界観を届けるツール」のひとつとしてデザインされています。雑誌に比べシンプルに見えるWebサイトですが、花椿のブランドパーソナリティである「潔さ」からシンプルでわかりやすくという点に重点を置き、特に文字が主役となる記事ページではフォントのサイズや字送りにこだわり、記事のひとつひとつが映えるようなデザインになっています。

  1. 気品があり、情緒的な花椿のブランドパーソナリティ
  2. Webと紙の両方でバランス良く使用できる
  3. 現代に合わせたモバイルでの読みやすさ

これらを考慮し、見出しには本明朝、本文には秀英角ゴシック金が使用されています。
単純に雑誌のイメージをそのままWebへ持ってくるのではなく、細部までこだわり「Webサイトとしての花椿」をデザインすることがフォントを選ぶ基準になっているのが興味深いところです。

文字と音楽の世界が広がるLyric Speaker

花椿とは対象に「Lyric Speaker」は、自身も音楽家である斉藤迅氏の「歌詞の魅力をもっと伝えたい」という思いからできたプロダクトです。7つのフォントが組み込まれており、音楽の波形や歌詞のデータからそれに見合ったフォントを選び、モーションを自動で生成します。音楽を「音」と「動き」そして「文字」で受け取ることのできるまったく新しいスピーカーです。

この「Lyric Speaker」に使用するフォントを選ぶ際に「音楽にまで踏み込んでしまわないよう、味をつけすぎないことが大事」と考え、フォントは個性の強いものは使わずに統一感のあるものを選んだと語っていました。シンプルな文字だけで形成されることにより自由な想像が膨らみ、ミュージシャンとリスナーのコラボレーションのように、文字と音楽の世界が広がるという設計そのものが次世代型スピーカーであるLyric Speakerの最大の魅力です。

2つの事例に共通するのは最新のインフォメーション・テクノロジーと、古参の情報伝達手段である文字の新しい形での融合です。特に世界で最も多様な文字種を扱うと言われている日本語の表現において、文字の形状は表音記号としての役割以上に人の深層に訴えかけるものがあります。とかく味気ないと言われるスクリーン上の日本語表現が、読み手の琴線にふれるためにも、フォントの重要性が、ますます高まってきていると実感できるセッションでした。

実際にフォントと触れ合う

Adobe MAX Japan展示ホール内のモリサワブースでは、講演内で紹介されたLyric Speakerが展示されており、そのスタイリッシュな見た目と中で動く文字に惹かれ、足を止める人が多く見られました。Webフォントを体験できるコーナーなども充実しており、見るだけではなくフォントと触れ合える展示でした。普段何気なく使っているフォントへの向き合い方を改めて考えさせられる1日になりました。


登壇者のプロフィール

スピーカー

澁谷 克彦 氏
株式会社資生堂
宣伝・デザイン部エグゼクティブクリエイティブディレクター
1981年 東京藝術大学美術学部卒業、同年資生堂宣伝部入社。「PERKY JEAN」「男のギア」「RECIENTE」「エリクシール」「ピエヌ」「ZEN」などの化粧品広告や企業広告を手がけ、「SHISEIDO」「クレ・ド・ポー ボーテ」など資生堂のグローバル展開におけるクリエイティブディレクションも担当。2012年より『花椿』誌アートディレクター。2012年 亀倉雄策賞、東京ADC会員賞。他に東京ADC賞、NYADC特別賞、JAGDA新人賞、東京TDC金賞など受賞多数。

稲葉 政文 氏
株式会社ワンパク
アートディレクター
三重県出身。アメリカ、東京で生活をした後、ロンドンのデザイン会社でデザイナーとして4年間勤務。紙ものからデジタルまで幅広い経験を積む。2015年10月に帰国し、ワンパクにアートディレクター兼デザイナーとして入社。趣味は街の広告などを見て、頭のなかでフォント当てること。

斉藤 迅 氏
株式会社SIX
クリエイティブディレクター
自身のバンドJINTANA&EMERALDSのアルバム「DESTINY」がミュージックマガジン誌の「2014ベストアルバム 歌謡曲/J-POP部門」で1位になるなど、音楽的なバッググランドを軸に、様々なクリエイティブを手がける。
楽曲を再生するとその楽曲の歌詞を、透過スクリーンにモーショングラフィックで表示する次世代スピーカー「Lyric speaker(リリックスピーカー)」の開発。リリックスピーカーはSXSW・インタラクティブ・フェスティバルにて、アジア企業で初めて「Best Bootstrap Company」を受賞。リリックスピーカーは現在先行予約受付中。
lyric-speaker.com