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「デザイナーの言葉を話さないクライアント」と上手く会話するためのヒント。フィラメント クリエイティブのマット・フライホースキーに学ぶ

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クライアントとのやり取りは必ずしも簡単ではありません。もし上手く、最初に要件や意見を理解して、効果的なコミュニケーションをとることができたなら、顧客と前向きな良い関係を構築できるでしょう。さもなければ、難しい関係になるかもしれません。では、デザインの理解がないクライアントとコミュニケーションする最適の方法は何でしょうか?フィラメント クリエイティブ社のデザインディレクターであるマット・フライホースキーにはいくつかの考えがあります。クライアントがあなたとは違う言葉を話しているように感じ始めたときに役立つ、いくつかのアドバイスを紹介します。

「デザイナーの言葉を話さないクライアント」とデザイナーとの会話で起こる最も大きな問題は何でしょう?

クライアントは、熱心に働く賢い人達で、彼らの仕事の専門家です。この点は、デザイナーも同様です。しかし、デザインについての会話に使う言葉は、両者に大きな違いがあります。更に、多くのクライアントは、デザインに関する議論に積極的に参加する機会に恵まれていません。私の経験では、最も大きな誤解が生じるのは、クライアントにとっては全く自明に思える言葉、例えば「もっと企業っぽい見た目が良い」のような発言を受けて、デザイナーがそのコメントが実際に意味するところを深くまで確認せずに、自身の解釈に頼って前に進もうとするときです。

もし、「クリーン」や「ミニマル」のように、デザインの表現として頻繁に登場する言葉を耳にすれば、頭に浮かぶビジュアルは、全く違ったものになるでしょう。ですが、私達デザイナーがデザインを参照して使う言葉は、標準的に知られている意味とはしばしば異なっています。例えば、「クリーン」なデザインが指すイメージは、私達がこれまでに目にしてきたビジュアルと、それを頭の中に整理した方法に影響されます。

一方、クライアントが「何か『ミニマル』な物が欲しい」と言ったとき、それは、北欧のインテリアや和風の建築を見た体験からの一言かもしれませんし、単純に言葉通りできるだけ物を減らして欲しいという意味かもしれません。デザイナーは、こうした言葉が指すビジュアルを「既に知っている」ように思っても、実際に対応する言葉が何なのか、理解するために時間を費やすことがとても大事です。

そうした会話上の障害を、早めに取り除くよい方法は何でしょうか?

良いデザイナーは、正しい質問から始めるのが最適だと知っているものです。

UXに関して言うなら、クライアントは達成したいビジネス上の目標を話したがるものですが、実際のUXデザインは、ユーザーのニーズの理解から始まります。我々フィラメント社では、ユーザー調査から始め、現在の顧客や将来の顧客候補が、クライアントのブランドと関わることで、どんな価値を得ようとしているかを掘り下げます。顧客が日々どんな状況を過ごしていて、これからデザインすることになる製品やサービスをどう利用する可能性があるのかを時間をかけて理解し、次に、彼らの目標達成の障害に成りうる問題に取り組みます。

ユーザーの目的は、オムツの購入かもしれません、投資資金の口座への送金かもしれません、仕事に出かける前に軽く運動したいのかもしれません。どのような場合であれ、何がしたくて何をしたくないのかを尋ねるだけでなく、ずっと深い理解を得るための調査をまず行います。

クライアントが欲しいものを提供しようとしていることを、どのような手段を使って確認していますか?

最初のツールは、デザイン・ディスカバリー(Design Discovery)です。クライアントにアイデアを提示するよう促し、同様に、我々の側もひらめいた案を提示します。これは楽しいやり取りで、共通のデザイン言語を構築するために、クライアントが何を「クリーン」、「しゃれた」、「目立つ」、「ミニマル」とみなしているのか、理解する最初の一歩になります。

次に、その成果を出発点として、20秒直感テストを準備します。これは、クライアントが、Webやアプリにのデザイン関して、何が好きで何が嫌いかという理解を更に深めるために使う手段です。このテストでは、20個の作品を20秒ずつクライアントに見せます。そして、それぞれに、直感で0から5の間で点数をつけるように依頼します。終了したら、得点を集計して、結果を議論します。その議論が、クライアントの好みについて、本当の会話が起きるときです。同時に、関係者がデザインをどのように見ているのか、更に深い洞察を得られます。

最後はスタイルタイルで確認します。プロジェクトの内容に合わせ、ユーザー調査の結果も踏まえ、いくつかの画面をデザインします。フィラメント社では、「デザインとは、複数の要素の組み合わせである」と定義しています。ユーザー調査、コンテンツ戦略、UXデザイン、スタイル、そしてデザインの実践です。ユーザーが望むもの、プロジェクト関係者が期待するもの、デザインについてクライアントと会話する方法、これら全てがはっきりと理解できれば、プロジェクトの方向性を決めるのに足りないものはありません。我々は何年もこの手段を使ってきましたが、クライアントにデザインを完全に否定されたことは一度もありません。

この手順をとるオマケの利点は、クライアントが早い段階からデザインチームの一員になることです。これは後のプロセスで大いに役に立ちます。

クライアントからのフィードバックを確実に引き出すために、何をしていますか?

情報が不足していると人は適当な答えを返します。ですから、聞くときの状況が大事です。「フィードバックとは何か?」「何故それが必要なのか?」「デザインする立場から、この段階でクライアントに何を期待しているのか?」など、それぞれの段階に応じた期待を明確に伝えて、クライアントが迷いなく話せる状況をつくるのがとても大切です。

UX調査を済ませた後であれば、ユーザーの声に頼ることが可能です。もし、クライアントからのフィードバックが、ユーザーのためではなく個人的な好みのように思えた場合、調査により得られた知見や洞察を使って、クライアントの注意をユーザーが本当に欲しいものへと向けることは難しくはありません。

最後に、これは何回も言い古された言葉ですが、我々はプロフェッショナルとして、プロらしく振舞うことです。デザインへのフィードバックがどのよううな影響を持つのかを、クライアントに理解させるのはデザイナーの仕事です。ユーザーのためになるフィードバックは、結果としてビジネスにも貢献するのです。

デザイナーとして、クライアントとの会話術を身に付ける一番の利点は何でしょう?

あまり大げさに言わなかったとしても、文字通り全てに役立ちます。優れたデザイナーであることは、チームにアイデアを伝えるときでも、クライアントと共にデザインの方向性を策定するときでも、優れた会話者であることと同等です。

信じがたいかもしれませんが、全ての人はデザインを語ります。同じ言葉は使わないかもしれませんし、デザインの理解の仕方が異なるかもしれません。しかし、誰もが、デザインが自身にとって有効かどうかを判断する能力を持っています。言語はしばしば曖昧で、完全に主観的な意見もあるでしょうが、それは問題ありません。我々の仕事は、クライアントが話すデザイン言語を正しく理解し、デザインが果たす役割についてのクライアントの理解を助け、プロジェクトの成果やビジネス戦略やユーザーの目標に焦点を合わせた建設的なフィードバックを述べる手段をクライアントに教えることです。

クライアントの言葉を理解するためのより詳しいヒントは、マット・フライホースキーの記事をご覧ください。


この記事はTips for Communicating Effectively with Clients Who Don’t ‘Speak Design’ from Filament Creative’s Matt Hryhorsky(著者:Patrick Faller)の抄訳です

  AUTHOR

akihiro kamijo

アドビのコンサルティングチームでリードアーキテクトとして主にUIデザインプロジェクトに関わる。現在は独立してデザイン/開発に関連のマーケティング企画や情報発信、プロジェクト支援を行っている。