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UX評価のい・ろ・は 3 数字に踊らされないための指標の見つけ方 | アドビUX道場 #UXDojo

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前回紹介したユーザーインタビューだけでなく、既存サイトのデータ解析も具体的なアクションの発見に役立ちます。ユーザーインタビューで発見したユーザーの目的や、クライアントが設定したビジネスゴールを参考にして適切な指標を選択すれば、新しいデザインを考えるときの根拠として使える数値を得られるでしょう。

サイトの状況を数値化する

ユーザー体験は主観的なものであるため、数値による評価は難しいように見えます。しかし、デザインの評価に数値が使えるようになるととても便利です。数値は、「このデザインの方が使いやすいからです」という説明だけでは理解できない相手に対しても、デザインの価値や効果を伝えることができる『ユニバーサルな言語』と言えるでしょう。

ユーザーインタビューでユーザーの本質を見つけたら、彼らの課題を解決したり、目的を達成できているかを既存のサイトで確かめるべきです。そのためには、数値と向き合う定量調査が不可欠です。その際、ページビューやコンバージョン率といった指標が注目されがちですが、これだけではサイトの問題点の発見や、デザインの方向性を決める根拠にはなりません。デザイナーには、ユーザー体験の良し悪しを判断するための指標を定義できることが求められます。

ページビューはデザイン指標になるか?

例えば、あるコーポレートサイトが10,000ビューあったとします。これを多いと捉えることもできますし、少ないとも言えます。10,000という数は、コンテンツを全部読んだ人の数かもしれません。ほとんど読まずに離脱していることも考えられます。

ページビューやコンバージョン率は分かりやすい数値ではあるものの、解釈の仕方次第で良くも悪くも見えます。特に、ユーザーが良い体験をしたのか、目的を達成できたのかといったデザイナーにとって重要な指標は、ページビューやコンバージョン率だけでは判断がつきません。ページビューやコンバージョン率をデータとして取得する必要がないという意味ではありません。データが多ければそれだけ改善のためのヒントを得ることができます。

一方、ページビューやコンバージョン率といった数値があまりにも分かりやすいため、それだけに囚わたデザインになる場合があります。週刊UX その9で数値を上げることだけを目的とした倫理に欠けたデザイン例を幾つか紹介しましたが、他にもあります。

Booking.comでは、ホテル情報を見ている人の数や、残り何部屋残っているのか赤字で表示しています。コンバージョン率を上げるための施策ですが、ユーザーの気持ちを急かし、十分に吟味して選べないようにしているという意味では体験を阻害しています。こうした表現方法を単純に『悪』とは呼べないものの、短期的な利益だけでなく、中長期的な視点からユーザーに価値をどのように提供するのかも議論するべきでしょう。

デザインに役立つ指標の見つけ方

では、デザインを評価するための指標はどのように定義すれば良いのでしょうか。そのためには、以下の2つの質問の答えが必要です。

  1. ユーザーの成功体験はどのようなものか?
  2. どのような行動をとれば価値を得ることができるか?

例えばAdobe Creative Stationへアクセスすることで、ユーザーは何を得ることができるでしょうか。彼らが「訪問して良かった」と思える瞬間はどんなときでしょうか。訪問者が デザイナーであれば、知らなかったノウハウを手に入れたときや、スキルアップしたと思える瞬間が成功体験と呼べるでしょう。成功体験を通して信用できる情報ソースと見なしてもらえるでしょうし、頻繁に訪れることも考えられます。このようにユーザーの成功体験を考えることは、サイトの核になる価値を定義することにもなります。

次に価値を得るために、ユーザーはどのような行動をとるのかを考えていきます。WebサイトのUIに注目して、何をクリックしたりスクロールすれば価値を得ることができるのか見ていきましょう。Adobe Creative Stationのトップページであれば、読んでみたい記事のサムネイルをクリックすることが成功体験へ近づく行為と見なすことができます。記事ページであれば、最後まで読んだりブックマークすることが成功体験を示す行動と解釈できるでしょう。

2つの質問に答えることで、以下のような指標を導き出すことができます。

  • トップページを訪問した〇〇%のユーザーが記事ページへ遷移している
  • 週に△回以上トップページへ訪れるユーザーが□□人いる
  • 記事ページを訪問した〇〇%のユーザーが最後まで記事を読んでいる
  • 記事ページを訪問した〇〇%のユーザーがブックマークしている

これらはページビューという漠然とした数値より具体性があるだけでなく、何をデザインすべきかも考えやすくなります。例えば「トップページを訪問した20%のユーザーが記事ページを訪れている」という指標に対して、どういったデザインが考えられるでしょうか。ユーザーに新しい発見や興味をもってもらえるような画像にしたり、情報構成を工夫することができるでしょう。あらかじめ指標が決まっているとデザインの評価も見た目の良し悪しではなく、デザインで達成したい目的に基づいて議論がしやすくなります。

計測を始めたばかりはどんな目標数値を入れたら良いか分かりませんが、検証を続けながら変えていくと良いでしょう。

デザイン指標を考えてみよう

良い指標は、それを基にデザインが改善できるものです。既存サイトから得られた具体的な数値とユーザーの本質から設定された現実的な指標、例えば「週に3回以上トップページへ訪れるユーザーが200,000人いる」というものであれば、それに対してトップページの構成を変えたり、導線の見せ方を工夫するなど、ユーザーの成功体験を生むための施策が考えやすくなります。

まずユーザーの成功体験、またはサイトの核になる価値を定義した上で、良いデザインかどうかを見極める指標を選択しましょう。そうすれば、あなたのデザインを説明するときも、目的に沿って作られていることが説明しやすくなるはずです。

  AUTHOR

長谷川 恭久

Web/アプリに特化したデザイナー・コンサルタントとして活動中。組織の一員となるスタイルで一緒にデザインに関わる課題を解決するといった仕事をするなど、チームでデザインに取り組むためにできることを模索している。 アメリカの大学にてビジュアルコミュニケーションを専攻後、マルチメディア関連の制作会社に在籍。帰国後、数々の制作会社や企業とコラボレーションを続け、現在はフリーで活動。 自身のブログとポッドキャストではWebとデザインをキーワードに情報発信をしているだけでなく、各地でWebに関するさまざまなトピックで全国各地で講演を行ったり、多数の雑誌で執筆に携わる。 著書に『Experience Points』など。 http://www.yasuhisa.com/