新たなリアリティを描く シリコンバレー The Techで #Wetbrush を展示

BY 公開

この記事は、2017/5/16にポストされたPAINTING A NEW REALITY: WETBRUSH AT THE TECHを翻訳したものです。

ブラシを油絵の具に浸してからキャンバスの上に乗せ、頭の中に描いたイメージに近づくよう色を重ねるところを想像してみてください。デジタルの世界で、そうした没入型の触感的な体験をすることは可能でしょうか?
米国サンノゼのThe Tech Museum of Innovation(技術革新博物館)を訪問すると答えが分かります。新しい常設展「Reboot Reality」では、アドビの研究者が開発した実験的テクノロジーであるWetbrushが公開されました。 来場者は、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)、複合現実(MR)を体験することができます。

3Dでバーチャルに油絵を描く

Wetbrushは、筆圧対応のタブレット上で物理ベースのブラシと粒子シミュレーションを使用することで、本物の油絵のような質感と色を再現します。ユーザーはブラシのサイズと色を選び、絵の具を混ぜることで、現実世界と同じような感覚で複雑な質感を表現できます。

Adobe Researchの主席科学者であるネイサン カー(Nathan Carr)は次のように説明しています。「Wetbrushの開発における目標は、自然界での人間の直観をコンピューターに反映したシステムを構築することでした。非常に細かいうねりや、隆起、立体を表現するほか、それを3Dプリントして自然光の効果を加えることもできます。」

開発段階であるWetbrushは、一般家庭で使用されるタブレットやコンピューターでは対応しきれない複雑なアルゴリズムを使用していますが、没入型の複合現実クリエイティブツールの未来を垣間見ることができます。

カーは次のように述べています。「今後、コンピューティング技術がますます加速化し、将来的には誰もがWetbrushを利用できるようになることを願っています。実現するまでの間、未来を実際に体験していただけるよう、Wetbrushを博物館に展示します。」

「Reboot Reality」の展示の趣旨は、来場者が間もなく実用化されるテクノロジーを知り、自分で問題解決能力を見いだし、新しいツールを使用して創造できるようにすることです。Wetbrushのインタラクションは、博物館の環境に理想的です。ヘッドセットや特別なアイテムは必要なく、ユーザーはチュートリアルや解説がなくても実際に体験しながら使いこなすことができます。

The Tech のアート&テクノロジー担当エクスペリエンス開発兼プログラムマネージャーであるナダブ ホックマン(Nadav Hochman)氏は次のように述べています。「Wetbrushは、来場者にぜひ体験してもらいたいクリエイティブなデザインプロセスの一つです。とても簡単に使い始められますが、すぐに夢中になって10分、20分、30分、あるいはそれ以上の時間が経ってしまうことでしょう。」

Courtesy of The Tech

博物館で未来を体験

WetbrushをThe Techに展示すると、来場者が最先端のテクノロジーに触れられるだけでなく、研究者も自分の開発した技術をユーザーが体験している様子を目にする機会が得られ、ユーザーの反応を開発プロセスに組み込むことができます。

例えば、Wetbrushを使用しているユーザーをエンジニアリングチームが観察しているうちに、ユーザーはアートを共同制作したいのだということに気付きました。これは大きな変化といえます。

カーは、「ある種の世代的変化が起こっています。プロのアーティストに聞いてみたところ、作品は1人で制作したいと言っています。その一方で、若い世代を見ているとツールの使い方に変化が生じています。若い世代はコラボレーションを望んでいるのです」と語っています。エンジニアリングチームは、この観察結果を真摯に受け止め、次の計画では共同で油絵を制作できるテクノロジーを研究していきます。

また、エンジニアリングチームは、3DプリントされたWetbrushの油絵を展示に追加する予定です。カーはこのアイデアを次のように説明しています。「実際に油絵を描いている感覚が実感できます。コンピューター上で絵を描いていますが、色を付けているだけではなく、絵の具の重なりが感じられます。来場者が油絵のデコボコを実感できれば、あらゆる可能性に対する認識が深まると思います。」

Wetbrushのような複雑なシステムの実現には、ジーリー チェン(Zhili Chen)、ビョンムン キム(Byungmoon Kim)、シン スン(Xin Sun)から成る専門の研究者のチームと、アドビのテクニカルアーティストである伊藤大地によるサポートが不可欠でした。Wetbrushをサポートするチームを奮い立たせたのは、このテクノロジーが影響を及ぼす範囲の広さです。カーは、「優れた調査が研究所で行われる例は多いですが、ユーザーが実際に手に取れることがありません。Wetbrushは、一般の消費者に届くまでを確認することができるので期待が膨らみます」と話しています。

5月26日(金)から公開のThe Techの常設展「Reboot Reality」で、ぜひWetbrushを体験してみてください。この展示では、GoogleのデジタルおよびVRプロジェクト、Facebookやスタンフォード大学のOculusもお試しいただけます。