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日本初開催!「World Interaction Design Day」イベントレポート #IxDD #AdobeForAll

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先月25日、東京のアドビオフィスで「World Interaction Design Day」(以下、IxDD)が開催されました。IxDDとは、コペンハーゲンで始まったプロジェクトで、毎年9月25日は「IxDD」の日。世界各国で同時にイベントが開催され、人々の暮らしをより良くするインタラクションデザインの在りかたを語るために、世界中のインタラクションデザインのコミュニティが集結するという、言わばインタラクションデザインのお祭りのような日なのです。アドビは、ワールドスポンサーとしてIxDDのコミュニティを盛り上げを担っており、日本でも初開催されることになりました。

UXよりも大きなスケールで話すのがインタラクションデザイン


菊池聡(UX DAYS TOKYO主宰 / Web Directions East合同会社)さん

まず登壇したのは、IxDD主催者の菊池聡さん。菊池さんは、UXをより良くするためのイベント「UX DAYS TOKYO」を運営されるWebディレクターで、アメリカの大学でマーケティングを学び、日本で最も早くから「モバイルファースト」、「レスポンシブWebデザイン」に注目し広めた人物。自社プロジェクトを行う傍ら、海外のカンファレンスに参加し、UXの世界的最前線を日本に伝える役目を果たしています。

菊池さんがまず紹介したのは、インタラクションデザイン協会 IxDA(Interaction Design Association)が開催するインタラクションデザインカンファレンス「Interaction 18」。今年の2月に仏リヨンで開催されました。

菊池(敬称略):UXよりも大きなスケールで話すのがインタラクションデザインです。CX(カスタマーエクスペリエンス)などが複雑に絡み合ってきますから。なかでも「Interaction」はすごくシニア向けで、難しいイベントです。話すテーマも、外交や国連の難民キャンプなど高度なものになってきます。

カンファレンス全体の経験価値が高く、よくデザインされたカンファレンスとして知られている「Interaction」。アドビは、なんとAdobe XDのワッフルを朝食として来場者に提供したそう!甘いにおいに誘われて、一番人気のブースだったそうです。

チーム自体にダイバーシティが欠けてはならない


さて、今年のIxDDのテーマは「Diversity and Inclusion in Design」、デザインにおけるダイバーシティとインクルージョンです。菊池さんは、「Scrumとダイバーシティ」をテーマにトークしました。

ダイバーシティとは「多様性、たくさんの違いがあること」。インクルージョンとは、「社会の一員として認められること、価値があると肯定されること」。ダイバーシティとインクルージョンはよく一緒に使われる言葉です。

例えば、「レイシスト石鹸ディスペンサー(Racist Soap Dispenser)」という言葉がネットで話題になったことがありました。これはトイレの手洗い場で、白人が手を出すと石鹸が出るのに、黒人が手かざすと出てこないという動画で、石鹸ディスペンサーを作ったメーカーが白人の手でセンサー反応のテストをしたから起こったそうで、テクノロジーの多様性欠如について大きく疑問を投げかけるキッカケになりました。

こうした問題の原因は、プログラミングやAI(人工知能)の精度ではなく、開発者が人種多様性の認識に欠陥があること。チーム自体にダイバーシティが欠けていると、そういった問題が起こってしまいます。

菊池:例えば、オーストラリアのソフトウェア企業「アトラシアン」は、サイトなどのリニューアルの際に、ダイバーシティを意識したキャラクターデザインを行いました。

菊池:僕が参考にしているのは、いまNetflixのUXを手がけているエリンメイヤーが書いた「カルチャーマップ」と「異文化理解力」という書籍です。彼女が10年間リサーチした結果が、この本に書かれています。人間の認知バイアスは180個あるとよく言われていますが、正確には500ぐらいあるかもしれません。バイアスはシーソーのようなもので、かけすぎてもよくないし、まったくなくてもダメなのです。

 

菊池:僕自身が国内衣料品メーカーのプロジェクトで体験したことをお話します。チームは日本、フランス、マレーシア、中国などのメンバーで成り立っていて、共通言語は英語でした。自分のポジションが何なのかを、確認しなければいけなかったんです。

菊池:Scrumをやる時に一番大切なのは、メカニカルと言われる部分です。プロセスではなく、ゴールをどう共有してクライアントにいかに利益を与えるかが重要なのですが、ゴールを共有することがダイバーシティのあるチームだと難しいんです。具体的に難しかったのは、「問題をどれくらいはっきり相手に伝えるか」ということ。日本はハイコンテクストな国と言われます。言葉の前後を理解しないと、相手の言っていることがわからない。それに対して、アングロサクソンはダイレクトに伝えます。僕はScrumだからフラットに伝えようとしていたんだけど、伝え方を間違えると、チームの中に階層が出来てしまって、「この組織では誰が上司なの」と言われるようになってしまうんです。

菊池:フランス人はアングロサクソンだから直接的に問題を伝えたのですが、実は繊細に伝えなくてはならなくて、機嫌を損ねてしまったり。階層ができると、コミュニケーションに手間がかかり、パフォーマンスがものすごく悪くなります。決断に関しても、日本は会議を経る合意志向型ですが、中国はトップダウン式。「稟議」と言う言葉は日本独自のもので、「ジャパンにはリンギ(稟議)という言葉がある」とカンファレンスで話していたくらいです。また、面白いと思ったのは、インド人って会議中に頷いているんですね。てっきり合意しているのかと思ったら、「合意していないとき」にインド人は頷くそうなんです。カルチャーによって全く違いますよね。

菊池:デザインに関して意見を言う時に大切なのは、「批評のスキル」を身につけなければならないということです。これはシニアアーキテクトの役割ですが、「どういう風に批評をするべきか」を知っておかなければならない。このデザインの目的は何なのか?情報のヒエラルキーがわからなくなって、メッセージが伝わらなくなるから、デザインを変えなければならない、というように伝えなくてはならないんです。

菊池:僕がおすすめするのは、UXデザイナーAmelie Lamontの批評の仕方。Adobe Creative CloudのYouTubeチャンネルで見る事ができるので、ぜひ参考にしてみてください。

 

続いての登壇は、株式会社カイブツでグラフィックデザイナーをつとめる三島良太さん。三島さんがデザインを担当した視覚障がい者向けの選挙情報サイト「Yahoo! JAPAN 聞こえる選挙」。

視覚障がいのある方のための選挙情報サイトを作るには?


カイブツ 三島良太さん

 

視覚障がいのある方の91.7%がインターネットを利用しており、多くの方が音声による画面読み上げソフトを使用してインターネットから情報を取得していますが、選挙情報において重要な選挙公報は、画面読み上げソフトでは読み上げることができないという問題がありました。その理由は、「画像化したPDFファイル」による掲載が義務付けられていたから。そこで、「Yahoo! JAPAN 聞こえる選挙」では、インターネットで考えるバリアフリーを実現しようとしました。


画面読み上げソフトでインターネットを閲覧する視覚障がい者

 

三島:視覚障がい者の皆さんは、「PCトーカー」というソフトを使って、HTMLをテキストに変換して音声で出しているんです。そのソフトだと、PDFやJPGは読めないんですね。そうすると、重要な情報を取得できなかったりする。そこで、視覚障害者のアテンドにより体験する暗闇のソーシャルエンターテインメント「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の方から話を聞いて、このサイトを作りました。

実際のサイトはとてもシンプル。文字と線、白と黒という要素だけにしています。

三島:全盲ではなくても、かすかにしか見えない人がいます。そういう方は、黒の中に白があるというものが一番見やすいそうです。視覚障がい者じゃない方にも、その世界を感じてほしいと思い、シンプルに作りました。一番難しかったのは、画像も何も使わずに、とにかくミニマルにするということ。画像の裏側にテキストをひいて、デザインの見た目もよく、テキスト変換ソフトにも読みやすいように作っています。実は読み上げソフトだと漢字の読み間違いも発生するので、CSS上では正しい読み方をひらがなで表記するなどの工夫をしています。

三島さんはこのサイトをデザインして、いかに自分が普段ビジュアルに頼っていたかを気づかされたという。デザイナーとして、言葉ではなく、いかに絵に頼って来たか…。

三島:ボタンをひとつ作るのでも、矢印も無しにどうボタンとして成立させればいいのか、何を見せればいいのかとか、大きさとか、自分の固定概念を壊しながら、どう表現していくのかに苦労しました。そうして実感したのは、誰が見てもわかりやすいということは実現できるのではないかということです。このプロジェクトは「眼が見えない人のために」と思って作っていたけど、これから自分がデザインを作っていくうえで、糧となるようなことを学ばせていただきました。


菊池さんと三島さん

懇親会も盛り上がりました🍻



お二人の「Diversity and Inclusion in Design」トークの後は、参加者と懇親会!ケータリングとドリンク片手に、インタラクションデザインについて楽しいディスカッションが繰り広げられました。Happy IxDD!

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  AUTHOR

齋藤 あきこ

宮城県出身。図書館司書を志していたが、“これからはインターネットが来る”と神の啓示を受けて上京。青山ブックセンター六本木店書店員などを経て現在フリーランスのライター/エディター。