機械に考えてもらおう:人工知能(AI)への招待

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インターネットからモバイルに至るまで、世界はこれまでテクノロジーの爆発的な発展を経験してきた。そして、今日、人工知能によって次のイノベーションの扉が開かれようとしている。

人工知能、すなわち、コンピューターにより直感的に考えさせるプロセスは、驚くようなエクスペリエンスを当たり前のことに変えながら、私たちの日常生活に溶け込んでいる。

例えば、これまで食べてきた中で最高のパスタ・プリマヴェーラを出すイタリアンレストランを、スマートフォンが推薦してくれるとき、人工知能の力が働いている。

「3,000マイルも離れたブライダルショップで、クレジットカードで2,000ドルの買い物をしましたか?」という電子メールが銀行から送られてくるのも、やはり、人工知能があるからだ。さらに、知らない酔っぱらいが写り込んでしまい、南国ビーチでの写真が台無しになったとき、その酔っぱらいを消してくれるのも、人工知能である。

2020年には、マシンラーニング(機械学習)やディープラーニングを含む人工知能関連のテクノロジーを使用して、新たなビジネスインサイトを発掘するようになった企業が、そのようなテクノロジーを一切使用しない競合他社から毎年1.2兆ドルの収益を奪うことになる。

Adobe Researchの代表を務めるGavin Millerは、「医療に関する助言からマーケティングキャンペーンの展開に至るまで、人工知能があらゆるビジネスを根底から変え、変革をもたらしています。

革新的な変化が起きているのです」と述べる。

人工知能は、複数の業界、クリエイティブ、マーケター、ビジネスをまたぐ大きな変革を引き起こし、あらゆる顧客がそのメリットを受けることになる。

しかし、テクノロジーに詳しい人にとってさえも、人工知能とその関連用語はややこしく、苦戦を強いられているのが現状だ。人工知能のテクノロジーを理解するためには、このテクノロジーが持つ様々な部分を理解する必要がある。

ここでは、今後のデジタル変革をもたらす人工知能とその機能について、知っておくべきことをご紹介しよう。

人工知能とその機能とは

人工知能 略語
人工知能(AI)
人間のように機能し、反応するインテリジェントな機械を構築することに重点を置いたコンピューターサイエンスの領域。

マシンラーニング(ML)
データモデルの構築を自動化したデータ分析手法。アルゴリズムを使用してデータから反復的に学び、明示的なプログラミングを必要とせずにインサイトを導出。

ディープラーニング(DL)
MLのサブセットで、多層から成る人工的なニューラルネットワーク。

人工知能は、「マシンラーニング」や「ニューラルネットワーク」のような難解な用語で満たされている。だが、人工知能の進化に目を向けることによって、人工知能の様々な要素がどのように統合され、クリエイティブやマーケターの仕事をいかに効率化するかを理解できる。

人工知能とは

人工知能が話題になり始めた時から、古代ギリシャの神話に出てくる「金のロボット」のように、自分で考え、神に仕える存在だと人々は想像してきた。人工知能というサイエンスは、研究者が人工脳という概念を考え始めた1940~50年代に初めて登場する。

1951年、コンピューターが考えることができるかどうかを判定するために、倫理学者のアラン・チューリングがいわゆる「チューリングテスト」を提唱した。チューリングは、現在の人工知能の原型を創出した人物として知られる。

しかし、人工知能の近代的な使用は、1980年代に始まる。この時代に、人工知能が「エキスパートシステム」に応用され、いわゆる「IF-THEN」ルール、すなわち、条件に対する応答という形で、コンピューターは論理的に考えることを可能にした。

人工知能による作業のほとんどは、データの分析と予測である。例えば、オンラインマーケットにアクセスした場合を考えてみよう。人工知能は、多くの情報を分析し、顧客のオンライン閲覧や過去の購入傾向、他者の購入傾向などにもとづいて、顧客が購入したいと思われる商品を即座に提案する。

クリエイティブ分野でも、人工知能は急速に不可欠な要素となっている。最適なストックイメージを検索した際、ユーザーの検索基準に最も適合するイメージを探してくれるのは人工知能だ。

マシンラーニングとは

人工知能はこれまで、人間のコンピュータープログラマーが開発したアルゴリズムを根拠としていた。それは、コンピューターがタスクを進めるステップを、一つひとつ示すものであった。コンピューターは、プログラマーが明示的に指示しなければ何もできず、その指示を作るのに膨大な時間がかかっていた。

マシンラーニングとは、ある意味で、コンピューターの足かせを外すものだ。コンピューターは、接するデータが増えるにしたがい、プログラマーによる明示的な指示がなくても、情報の中に存在するつながりを理解できるようになり、それによって精度の高い予測モデルの開発が可能になった。

取り込むデータが増えれば増えるほど、モデルは継続的に微調整され、予測の精度が向上する。

アドビのPhotoshopは、実用化されているマシンラーニングのわかりやすい例だ。高層ビルの写真を編集していて、写り込んでいる飛行機を消したい場合、Photoshopはマシンラーニングによって画像データの意味を理解し、ユーザーが飛行機を選択、削除し、空いたスペースを同じ空の色で埋めて自然に見せることを可能にしてくれる。

ニューラルネットワークとは

人工知能にサブセットがあるように、マシンラーニングにもさまざまな種類がある。人工ニューラルネットワークもそのひとつだ。人間の脳の機能から着想を得、情報を処理する方法である。脳は大量のニューロンを同時に使用して、複雑な問題を解くことができる。

人工ニューラルネットワークもこれに似たアプローチを取り、相互に接続した大量の処理要素を駆使して、問題を解決する。

これがかなり複雑なプロセスであることは明らかだが、Adobe Researchのディレクターを務める Jon Brandtによれば、基本原理は極めてシンプルだ。コンピューターはデータから学習して、より優れた解決法を見つけ出す。

彼はその例として、写真に写っている人物を自動的にタグ付けできるように、顔で人物を特定できるデータモデルを挙げている。

このようなモデルの開発を依頼されたコンピュータープログラマーは、写真に写っている顔を認識する最適な方法として、顔の中の目とその他のパーツの間隔を測定しようとするだろう。その場合、そこから生まれるデータモデルは、その考えをもとに展開される。

しかし、プログラマーには思いつけないような、さらに優れた方法はないのだろうか。

ニューラルネットワークやマシンラーニングは、プログラマーの明示的な指示に縛られない。したがって、データを様々な方法で分析し、人間にとって想定外のインサイトを思いつく。ニューラルネットワークは、人間には想像できない相関性をデータ内に見い出し、より優れたタグ付け方法を生み出すことができるのだ。

人工知能やマシンラーニング、ニューラルネットワークを使用した方法の緻密さを把握することは、コンピュータープログラマーでなければ難しい。

しかし、忘れてならないことは、人工知能やマシンラーニングは、単に数学的な計算をおこなう存在に過ぎないということだ。

人工知能が進化の過程で辿ってきた各段階は、どれも似たような特徴を帯びている。それは、より優れた解決法をによって内部で起きていることの理解を促進し、最善の結果を生み出すために必要な反復作業からプログラマーやエンドユーザーを解放するということだ。

人工知能を未来に向けて準備させる

Jon Brandt director Adobe Research

演算能力の向上と利用可能なデータの増加により、人工知能やマシンラーニングは成熟の時期を迎えている。今後、多くの企業が事業ニーズに応じてこのテクノロジーを効果的に活用できるようになるだろう。

人工知能は、反復的で時間がかかる作業の手間と時間を、大幅に削減してくれる。

しかし、現在、人工知能やマシンラーニングが、不正の検出から顧客への商品の推薦に至るまで、多くの重要な目的に利用されているといっても、このような技術は未だ黎明期にある。

人工知能の可能性には興奮させられるが、可能性を完全に現実化する前に、克服すべき限界や課題があるのも確かだ。

例えば、Brandtによれば、私たちは問題の解決を携帯電話に頼り過ぎ、コンピューターに話しかける行為を当然だと思っているという。

実際、現在のインタラクションは非常にシンプルで、写真をどのように加工してほしいかという指示を口頭でコンピューターに理解させ、その作業を人間と同じスキルで処理させることなどは、はるかに先の話だと思える。

しかし、それこそ、テクノロジーを利用して、うんざりするような作業からクリエイターやマーケター、ビジネスリーダーなどを解放するという、人工知能の究極の目標なのだ。

人工知能に伴う技術的な課題に加え、人工知能の利用拡大が社会に与える影響が広く議論されている。人工知能は利用するデータの量や種類を増やすことで能力が高まるため、私たちは確実にデータを保護し、責任を持って取り扱わなければならない。

個人レベルでは、人工知能がその可能性を十分に発揮したら、自分たちの仕事はどうなるのかと心配になる。Jonはその心配は理解できるとしながら、人工知能が人間に取って代わることはないと確信している。

人工知能が重要な作業を担えるようになるのは、あらゆる単純作業を処理できるようになった後の話である。

「カメラやデジタルイメージング、印刷機といった新しいテクノロジーが導入されると、人間は創造力を表現するための新たな絵筆を手に入れる、という歴史を辿ってきました」と、Brandtは語る。

ここで問いたいのは、人工知能がその可能性を十分発揮するのに必要なのは何かということだ。Brandtは、分野横断的に広がること、協調的なビジョン、言語の専門家、認知科学者、人間とコンピューターのやり取り、クリエイター自身がこの課題に取り組むことだという。

「つまり、分野の枠を超えるということです。言語の問題を解決する必要もあるため、様々なスキルや人材が一体となる必要があります。それにより、メッセージの意図と内容の両方を確実に理解できるようになります」とJonは述べる。

Brandtは、それでも人間が働き、生活し、創造するのに人工知能が不可欠になるだろうと述べる。

「究極的に言えば、人工知能が人間とコンピューターとのインタラクションの頂点にあると考えればいいのです。人間とマシンのやり取りが、そこで仲介されるということです」とBrandt。

Adobe Senseiの詳細についてご覧ください。

POSTED ON 2018.10.30