スマートフォンから電子署名が利用可能に。米国のデジタル政府の最新情報と欧米における電子署名の動向について #AdobeSign

Document Cloud インタビュー トレンド

近年、日本では政府サービスのデジタル化を推進する法律「デジタルファースト法案」の動きが話題になっています。米国ではこれと同様の法律である「21st Century IDEA法案」が昨年、大統領によって署名されました。この法案では、政府サービスにおいて電子申込、電子サインを導入するなど、政府サービスのデジタル化を通し国民サービスの向上につなげる、という内容が盛り込まれています。

この法案の動きの中で、アドビは電子サイン技術の部分で協力をしています。今回、米国を中心に電子サインの普及に努めるストラテジック デベロップメント ディレクターのダン ピュータボーが来日した際に、米国政府におけるデジタル化への取組みや、欧米における電子署名の動向、標準化団体について伺いました。

保守的な米国政府とデジタル化の関係

Q: 米国はデジタル化への取組みが非常に進んでいるという印象がありますが、実際どのくらいの速度で進んでいるのでしょうか。

A: そのような印象が強いのは頻繁に耳にするのですが、実際はその印象の逆と言えるでしょう。分野や業界によって取組みの姿勢は大きく異なり、特に、公共政策に関わる団体やアメリカ政府組織は、デジタル化に対する取り組みが遅れている業界の代表例です。

Q: その背景にはどのような理由があるのでしょうか。

A: 根底にあるのは、米国の政府組織の特徴として、とても保守的で変化に対して寛容ではない面だと思います。米国政府の組織図は大きく、数多くの省庁や機関で構成されており、それに応じるようにインフラの規模も巨大です。

デジタル化に取り組むことで、そのインフラの先にいる市民の生活向上にも繋がるはずですが、保守的であるために現状はまだまだ消極的な姿勢のままです。実際に、行政手続きに必要な書類の多くは、未だ紙ベースでの提出が必須となっています。このことから、米国でもデジタル化は道半ばであることがお察しいただけるかと思います。

米国政府による紙の依存度の高さを示した資料

政府のデジタル化に新しい風を吹き込む「21st Century IDEA法」。普及が期待されるデジタル署名

Q: 一方で、デジタル化を推進する法律が最近可決されたことを伺いました。

A: 昨年末に、大統領によって「21st Century Integrated Digital Experience Act (21st Century IDEA法)」が署名されました。この法律には4つの大枠がありますが、大きな特長としては、これらの大枠がすべて義務化されたものであることです。

  • 市民が使いやすいユーザーフレンドリーなWebサイトの構築
  • デジタル取引へのアクセスの整備
  • 整合性のとれたセキュリティ基準の導入
  • デジタル署名の実現

政府として各省庁に義務付けることで、デジタル化を推進させていく意図があります。目標を設定することは簡単ですが、それ以上に重要なのはその目標を実際に実行に移していくことですよね。デジタル化が喫緊の課題であるという認識のもと、政府と関連の機関・団体が足踏みを揃えながら、本腰を入れて取り組んでいくのではないでしょうか。

Q: 21st Century IDEA法により今まで以上にデジタル化が加速していくかと思います。アドビとしては、今後、どのようにこのデジタル化に取り組んでいくのでしょうか。

A: アドビは、21st Century IDEA法でも義務化されている「デジタル署名」という部分に注目しています。当社では、電子サインソリューションAdobe Signを提供しています。Adobe Signは、既にMicrosoftやSalesforce、Dropboxなど様々なアプリケーションとも連携しており、デジタル署名を牽引するソリューションとしてデジタル化に貢献しています。

今回の法案についていえば、この分野では特に課題が多い印象があります。例えば、半年以内にデジタル署名化への計画を提出する、1年以内に紙の書式のデジタル化、2年以内に住民向けサービスにデジタルオプションを用意するなど、それぞれの項目に期限が具体的に示されています。これらの課題に対し、期限内に確実に遂行できるよう、協力していけたらと考えています。

Q: 電子サインに関しては、米国国内に限らず、他の国とも協力した体勢づくりもあるのでしょうか

A: はい。米国国内に限らず、欧州、グローバルで協力した取り組みも数年前から盛んになっています。2016年に欧州で制定されたElectronic Identification and Trust Services Regulation(eIDAS規制)は、「デジタル単一市場」の構築のために、欧州全域でデジタルIDと電子署名を容易かつ標準化する土台となりました。これを追う形で、同年に、アドビは他の12の企業とともに、クラウド署名コンソーシアム(Cloud Signature Consortium / CSC)を立ち上げました。

CSCは、電子署名業界および学術界の専門家で構成した国際団体として、クラウド上の電子署名の実施において、国・地域・組織で異なる電子署名の基準を統一し、eIDAS規制のような国際的な法規制を遵守した電子署名を実現するための、オープンな標準仕様(標準規格)を定めています。

クラウド署名コンソーシアム(CSC)の概要を示すプレゼン資料②

Q: CSCはどのような活動をしているのでしょうか。

A: 昨年1月には、ベルギーの非営利法人として立ち上げており、具体的にはITSP(Internet Telephony Service Provider)の容易な相互運用性を実現するために、プロトコルとAPI(Application Programming Interface)の技術仕様を開発しています。CSCは、クラウドベースの電子署名を基本とし、スマートフォンで使えることを前提としており、企業が追加の投資をせずに、電子署名を導入できるように働きかけています。

Q: 「21st Century IDEA法」について、期待していることはありますか。

A: 国際会議などの場に出席すると度々耳にする意見として、国や地域をまたいだ単一サービスや標準化を求める声が多くあります。今回、21st Century IDEA法が署名されて米国内のデジタル化が進む中で、企業としては電子署名をはじめとしたグローバル規模での単一サービスや標準化への発展にも益々寄与できれば、と期待しております。

―本日はありがとうございました!

POSTED ON 2019.02.5