Trend & Illustrations #2/網中いづるが描く「Makeup is not a Mask」 #Adobe Stock

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アドビが予測する2020年のビジュアルトレンドをテーマに、東京イラストレーターズ・ソサエティ会員のイラストレーターが描きおろした作品のコンセプトやプロセスについてインタビューする連載企画。第2回目のテーマは「Makeup is not a Mask」。イラストレーターという立場からも、ジェンダーやフェミニズムに触れてきた網中いづるさんはいったいどのような作品を描いたのでしょうか?

プロフィール;網中いづる/IZURU AMINAKA

アパレル会社勤務の後、独立。主な書籍装画に『完訳クラシック 赤毛のアン』シリーズ(講談社)、『気付くのが遅すぎて、』シリーズ(酒井順子・著/講談社)+同タイトルの連載エッセイ挿絵、新装版『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズ(KADOKAWA)、絵本『赤いくつ』(角田光代・文/フェリシモ)、『ふくはなにからできてるの?』(佐藤哲也・文/福音館書店)ほか。企業広告では、ワコール70周年カレンダー(2019年)味の素AGF「Blendy stick 紅茶オレ」キャンペーンビジュアル(2017~2019年)。そのほか、ユニクロUTキャンペーン(2020年)、雑誌『婦人之友』表紙画(2017~2018年)など。主な受賞歴に、1999年「ペーターズギャラリーコンペ」ペーター賞、2003年「TIS公募」プロ部門大賞、2007年「講談社出版文化賞」さしえ賞。大分県立芸術文化短期大学美術科デザイン専攻非常勤講師。TIS会員。https://www.tis-home.com/izuru-aminaka

「people with makeup」2020年/Adobe Fresco使用

人物の空気感を捉える

Q:「Makeup is not a Mask」というテーマを選んだ理由を教えてください。

まず、「メイクアップ」という要素に自分の絵が合いそうだと感じました。化粧品会社の広告仕事は何度か受けたことがありますし、ファッション誌の『Numero TOKYO』ではコスメティックの紹介ページに絵をよく提供しています。テーマから、女性的な絵柄や華やかなイメージが頭に浮かびました。

そして性別がはっきりとしない4人の人物が並ぶ構図は、過去に描いた作品から発展させました。ウィリアム・シェイクスピアの「十二夜」という戯曲を串田和美さんが演出した演劇のパンフレットのお仕事をして、その後の企画展で展示したものです。。今回いただいたテーマには、生まれながらの容姿や肌の色をポジティブに捉え、メイクを使って自分自身の強さに変えていくという意味合いが含まれていたり、ジェンダーのあいまいさも関連しているというお話があったので、男装した女性など描いたこの絵は1つのヒントになりました。

舞台「十二夜」に連動した企画展の作品/Bunkamuraシアターコクーン/2011年

Q:今回の作品に描かれた人物はそれぞれ異なる花をまとっていますね

描くにあたって、今のファッショントレンドを調べました。海外ブランドのコレクションやファッションショーの写真を眺めたり。そうすると、いろんなメゾンが“花”を打ち出していたんです。男女問わず、花をまとっているランウェイもあったし、メイクは絵具で描いたように派手で、まさに今回の作品のような感じ。すごくかわいいと思いました。

暗い気持ちになりがちな時期なので、明るい絵にしたいという気持ちもあったかな。花はよく描くモチーフだし、各ブランドが打ち出しているトレンドでもあったから、モチーフとして選びました。人物と花の組み合わせはあまり細かく決めすぎず、進めていきました。飽きっぽいところがあるので、普段も描きながら考えていくことが多いです。

Q:資料集めなど、描くための下準備はしっかりされますか?

時間を掛けます。描くことから逃げているのかもしれませんが……(笑)。小説ですと時代背景が気になって、その時代を描いた映画を観たり、ファッションを調べたり。分からないことがあると図書館に行ったり、知識を持っている人に聞いたりもします。横道に逸れてしまうけど、そうしないと不安になるので。下準備をして答えが出るかは分からないですけどね。

天神イムズ「女ごころ研究所。」春夏キャンペーンビジュアル原画/2013年

Q:網中さんが描かれる人物の洋服がかわいくて、観ていると気分が高揚しますね。

ありがとうございます! アパレル企業に昔勤めていて、モードなファッションの世界で売場に立ち、プレス関連の仕事もしていました。セレクトショップでは海外の洋服を多く扱っていて、「このお客さんにはどういう洋服が似合うだろう?」と販売時にジロジロ観察しながら考えるのも好きで……(笑)。人を観るという経験は、絵を描く仕事にとても活きています。

洋服は身につける人の雰囲気に合うかどうかが大切。描くときも、リボンを付けるとか細かいモチーフ選びより、その人物の雰囲気をざっくり見ることが大事。洋服の仕事をしていたからこそ、あまり描きこまずに最低限の要素で人物の雰囲気を伝えるのが得意なのかもしれません。「この服を着ているからおしゃれでしょ?」と押しつけるのではなく、描く人物がどう在るかを大切にしています。

ファッションはそのときの自分の気分を表せるし、色を身につけたり、自分が変わる楽しさがある。まとう人に力を与えてくれる。お化粧と同じく、持ち前の自分らしさを表現できるものですね。

新装版『ブリジット・ジョーンズの日記 恋に仕事に子育てにてんやわんやの12か月(上)』 ヘレン・フィールディング著/亀井よし子訳 KADOKAWA 2016年 書籍表紙原画

Adobe Frescoで描いた、初めての作品

Q:今回の作品はどのように描きましたか?

実は、Adobe Fresco(2019年にリリースされた、スケッチ・ペイントのアプリケーション)で描いた最初の作品なんです! デジタルにとても疎い私ですが、頑張って描きました。それまではAdobe Photoshop Sketchで描いたラフをクライアントに提出して、本番は手で描くという方法でした。今年の2月くらいから始めて、いまだに「こんな風に描けるんだー!」と発見ばかり。チュートリアルの動画を眺めながら機能をあれこれ試しています。

Q:ロケーションやシチュエーションにとらわれず、いろんな場所で描いてもらえます。インスピレーションが途切れず、思い立ったときに描けるので、気楽に使っていただけるとうれしいです。

Adobe Photoshop SketchやAdobe Illustrator Drawなどのデジタル描画ツールは昨年から使っていましたが、手で描くよりも難しくて時間が掛かるという課題がありました。でも、フラットに描くことに関しては手描きよりもうまくできることに気づいたんです。水性のアクリル絵具で描くとフワーッと色が重なってにじんだり、筆跡のストロークがきれいな部分が、デジタルだとフラットになる。私にとってはその違いが新しいし、なんだかおもしろいなと思えて。じゃあ、画面がペッタリしすぎず、手描きの雰囲気を残すにはどうしたらいいだろうかと悩んでいました。

Adobe Frescoだと、今までの絵と違ってワッと驚く発見もあれば、私の絵っぽさも表現できる。20年くらい画業を続けていて、自分の絵の変化に対してこんなにも新鮮に思えるのは初めてです(笑)。仕事を続けていれば、画風のイメージがよくもわるくも定着してくるので、このツールがきっかけで絵の幅も広がっていくといいなと思います。

今回の作品では、初めて油絵のブラシを使ってみました。部屋の中で油絵を描くのって大変じゃないですか。でもこういう絵が描けるなら、描くことを仕事にしていない人も楽しいはずです。

「women」2020年/Adobe Fresco使用

男女が平等に生きるために

Q:最近のお仕事のなかで印象深いものはありますか?

レティシア・コロンバニという、映画監督でもあるフランス人女性が書いた小説『三つ編み』の装画を描きました。フランスでは100万部以上売れていて、日本語版も“フェミニズム文学”として紹介され、ヒット作になっています。

『三つ編み』レティシア・コロンバニ著/齋藤可津子訳 (早川書房)2019年 装幀:早川書房デザイン室

『三つ編み』は、インド・イタリア・カナダという3つの異なる国で生きる3人の女性の生き方を描いた物語です。それぞれ女性としての生きづらさを抱えていて、たとえばカナダの女性は仕事と暮らしの両立をがんばるうちに癌に冒されてしまって、仕事の重要なポジションから外れていく。子育てだったり、仕事だったり、さまざまな環境で生きる女性たちにスポットライトが当たります。

装画では、主人公の1人であるインドの女性を描きました。この人物はカースト制度の底辺として生まれた人。女性の生き方がテーマとしてあるので、日本の読者が見てかっこいいと思える女性を描きたいと思いました。

Q:今回の制作テーマ「Makeup is not a Mask」は、生まれ持った個性を隠すのではなくて強さとして表現していくという、ジェンダーのあり方やフェミニズムにも関連するテーマです。制作の前にも、そうしたテーマについて考える時間が多かったんですね。

私自身は幸いにも女性としての生きづらさに悩む経験はあまりありませんが、子育てのために仕事への復帰をあきらめる友人がいたりと、悩みを抱える人に触れる機会があったからかもしれません。それと、仕事のジャンルにもよりますが、「意志の強い女性を描いてください」というリクエストはこれまで結構あって、考えるきっかけにはなっていると思います。

チョ・ナムジュという韓国の女性作家が書いた小説『82年生まれ、キム・ジヨン』もまた男女の不平等や女性の苦悩を綴り、2016年に原書が発売されてから2年後にはミリオンセラーになっていましたよね。フェミニズム文学が注目されたり、「#MeToo運動」が起こってきた世のなかの流れには関心を持っています。

Q:日本の上場企業の取締役に占める女性割合は、OECD(経済協力開発機構)の加盟国のなかでも最下位に近い数字で、男女平等指数も世界的にかなり低いようです(世界経済フォーラムの「グローバル・ジェンダー・ギャップ指数」の2019年調査において、対象となる153ヵ国のうち、日本は121位)。

日本では政界に進出している女性もまだまだ少ない。政治と経済の分野でも、もっと男性と女性が平等に活躍する国になってほしいです。自分が社会に対して持つ違和感をなくして理想に近づけるためにも、女性が勇気を持てるような絵を描いていきたいです。それぞれが関心を持つテーマで作品を制作してAdobe Stockで公開していけば、少しずつ社会が変わっていくかもしれませんね。

個展「wonderland」グッズのための作品 L’illustre Galerie LE MONDE/2018年

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いかがでしたか?今回ご紹介した網中いづるさんのすばらしい作品は、Adobe Stockのプレミアムコレクションからご利用いただけます。クレジットパックを使用することで、お得にライセンスいただくことができます。また、Adobe Stockには、プレミアムアセットに加え、お求めやすい「通常アセット」も豊富にご用意しています。現在、通常アセットが毎月10枚利用いただける年間サブスクリプションが1ヵ月無料となるキャンペーンを引き続き継続中です。PhotoshopIllustratorなどいつものアプリから直接検索でき、カンプ作成で行った制作作業を無駄にすることなく高解像度画像への差し替えが一発でできるため、高い作業効率を実現できます。まだの方はこの機会にぜひお試しください。