労なくして得るものなし:「南極大陸プロジェクト」の記録 #AdobeStock

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最高のストーリーには事欠かないのが冒険写真家です。山に登る、嵐を乗り切る、珍しい動物と遭遇する。そして、撮影中はしばしば困難に直面する。南極大陸を旅するフォトグラファーとなれば、当然更なる難題に突き当たることでしょう。しかし、フォトグラファー兼フィルムメーカーで長年の友人同士であるTim David Müller-Zitzke、Dennis Vogt、Michael Ginzburgにとっては、そうした障害こそが重要なポイントでした。

勇気ある3人のクリエイター

20代のドイツ人3人組が、南極の旅を描くドキュメンタリーの撮影に乗り出したとき、その目標の一つは若い視聴者とメッセージを共有することでした。自分のキャリアを思い描くとき、成績に囚われすぎないこと。こだわるべきは、本当に意味のある体験の機会を逃さないようにすること。それは彼ら自身がもっと若かった頃に聞きたかった助言でした。誰からもこうした言葉を掛けてもらえなかった3人は、ビジュアル・ストーリーテラーとして、どんな夢にも到達できるということを伝えたかったといいます。たとえその夢が、お金のかかる1万マイルも離れた氷の大陸への1カ月に及ぶ旅であろうと、です。

ドキュメンタリー映画「Projekt Antarktis (南極大陸プロジェクト)」は、そんな思いが結実した作品です。

「私たちにとって南極大陸は、ほぼ不可能なもの、の大いなる象徴でした」とMüller-Zitzkeは言います。「クレイジーな気温、予測不能な天候、それに世界で最も荒れる海の一つ、ドレーク海峡を通過する難しさ。この冒険は私たちにとって大変なチャレンジであると同時に、視聴者の皆さんを鼓舞して、家の中でためらっているのではなく自分の夢に向かって踏み出そうという気にさせるための素晴らしい方法でもありました」。

3人はAdobe Stockでストックフォトとして入手可能な写真のセレクションを用意しました。

彼らは1年をかけて計画を立て、Sonyからカメラや装置を調達し、いくつかのスポンサー契約を結びました。(Adobe GermanyおよびAdobe Stockとも契約を結んでいます。内容は、撮影した写真をAdobe Stockで入手可能にしPhotoshop CCLightroom CCPremiere Pro CCの使用法についてのドイツ語版チュートリアルを制作するというもの。)

旅の始まり

旅がスタートしたのは2017年11月のこと。まずはフランクフルトへ、そこからブエノスアイレスへと飛び立ちました。ところが、現地の税関職員から、彼らの高価なカメラ一式に対して支払いを要求され、旅は中断を余儀なくされてしまいます。数日後3人は、法外な料金ながら問題を解決してくれる税関業者を見つけました(それでも、Sonyから貸与された64,000ドルのリモートコントロール付水中カメラがチームの元に返却されたのは1年後でした)。

次に、南米大陸の最南端であるアルゼンチンのウシュアイアへ向かった彼らは、そこで300フィートの大型船、オルテリウス号に乗り込みます。旅行客・乗組員を含め定員は100名。その後の数週間、彼らにとって海上のホテル兼活動拠点となる船です。

動画:ドイツ人3人組の冒険を描いたドキュメンタリー作品「Projekt Antarktis (南極大陸プロジェクト)」のトレイラー

船の食事は素晴らしかったものの、部屋は2人が同時に立つことができないほど窮屈で、複雑な動きを強いられたそうです。

そして、船酔いが彼らを襲います。ドレーク海峡遭遇した10mのうねりは、持参した酔い止め薬では太刀打ちできず、オルテリウス号の乗組員からもっと強力で効果的な貼るタイプの薬をもらいました(因みにドイツでは入手できません)。しかも、これに追い打ちをかけるように、3人全員が数日間、風邪で寝込むことに。とはいえ、この旅において重要なのは、困難な試練を記録することです。早くも目標が達成されました。

「全員がぐったりと数日間ただベッドに横たわっているだけでした。自分たちの動画を撮影し、たくさんの写真を撮って帰らなければならないというプレッシャーに苛まれ、正直、何度かこの旅を後悔し始めたときはありました」とMüller-Zitzkeは述べています。「でも、最終的にはすべてのショットを撮ることができました。南極大陸では山に上ったり、ヘリコプターやゾディアック(小型ボート)から素晴らしい光景をカメラに収めることができたので、本当にそれだけの価値はあったと思います」。

荒海 と過酷な撮影条件も経験のひとつ。素晴らしい撮影の機会も含め、苦労以上に得るものが大きかった冒険でした。

新鮮な撮影体験

チームはこれらの画像を捉えるため、写真用にSonyのα7Sを2台とCanonの5D Mark IIIを1台、スローモーションビデオ用にSonyのNEX-FS700、アクションショット用にGoPro10台を揃えました。Müller-Zitzkeは、空撮用にドローン・カメラも持参したかったそうですが、クラッシュの可能性があるとして、ドローンの使用は厳しく制限されています。脆弱な野生動物の生息地で、リチウム電池の破片が飛散する恐れのある事態を防ぐためです。

南極大陸での撮影は容易なことではありません。エンペラーペンギンの群れまで飛ぶためのヘリコプターは、悪天候が好転して安全条件が整うまでに3日間待たなければなりませんでした。華氏マイナス22度のような低気温の場合、バッテリーは20分しかもちません。つまり、1回の外出につき30個のバッテリーをバックパックに詰め込む必要があるということ。一方、気温が華氏35度まで上昇すると、カメラケースに半溶けの雪や溶けた水が入り込み、大きなダメージを被ります。

「寒さに対する備えはしていたものの、船からの水しぶきや雪どけ水には無防備でした。撮影終盤にはディスプレイが壊れてしまい、カメラがキャプチャしたものを確かめることができず、絞り値すらわからないまま、どうか上手くいくよう祈りながら撮りました。もっと入念な準備ができたかもしれません。でも、こうしてミスを認めることもひとつの考え方で、(たとえ自分にとっての夢のプロジェクトに取り組んでいるときであっても)万事うまくいくとは限らないということも伝えたいと思いました」。

手つかずの美しさ

ドキュメンタリーでは、イライラさせられる遅れ、窮屈な空間、テーブルの上を勝手に滑り落ちるコーヒーカップなどが映し出されますが、静止画はどれもポストカードのような完成度です。エンペラーペンギンの群れ、氷海を突き進む真っ赤なカヤック、氷河により形作られたアーチ等々。旅の間、Müller-Zitzkeとその仲間は、Photoshopを使用してこれらの画像を編集したほか、数本のチュートリアルも撮影しました。ただし、画像や動画を投稿するのはドイツに戻るまで待つ必要がありました。というのも、船では1日に約3回、衛星通信によるインターネットアクセスが提供されていますが、料金が高額なうえ接続状態が悪く、利用は現実的ではなかったからです。

そして、このことが旅に深みを与えました。

Müller-Zitzkeは次のように話しています。「旅に向けて準備とストレスが数カ月間続いた後で船に乗り込み、インターネットへのアクセスがない状態に置かれるというのは、実のところなかなか良いものでした。船にいる人以外は誰も話し掛けてきませんから、デジタル・デトックスのようなものです。急に1日が倍の長さに感じられ、何事に対しても感受性が強くなりました。たった今交わした会話や聞いたことについて考えを巡らせたり、食事だっていつもよりじっくりと味わうようになりました」。

デジタル環境からの隔離は、旅仲間——科学者、ジャーナリスト、フォトグラファー、そして本来の生息地にいるエンペラーペンギンを見てみたいという冒険心溢れる旅行者たち——との交流を深める良い機会になったといいます。

1カ月間にわたる旅が終わった後、Müller-Zitzke、Ginzburg、Vogtは、130時間の動画を90分にまとめ、「Projekt Antarktis (南極大陸プロジェクト)」を制作しました。そうして完成した映画は、10月に彼らの地元ブレーマーハーフェンで初公開され、その後6週間をかけてドイツ60都市で上映、一貫して好評を博しました。

「BBCのドキュメンタリーのように完璧ではないこの作品のコンセプトが観客の皆さんに気に入ってもらえたようです。3年かけて撮影するためにクルーを雇ったり、南極大陸に足を踏み入れたことのないナレーターに吹き替えをしてもらったりする代わりに、私たちはただありのままの自分たちの旅を見せたのです。それが良かったのでしょう。これはすべての人向けの映画なんです」とMüller-Zitzkeは述べています。チームは既に、英語と中国語の字幕版のリクエストを受けているそうです(最新の情報は作品のウェブサイトでご確認ください)。

当然ながら、手つかずの地、とはいえ脅威に晒されている南極にまでやって来て、気候変動の問題に目を背けることはできません。作品には、気候変動が南極大陸に及ぼす影響についても重要なメッセージが含まれています。とはいえ、それが彼らの主な目的ではありません。

「私たちがメディア業界に進むと決めたとき『それで暮らしていけるわけがない』とよく言われました。この作品は、一般的な無難な仕事とか、両親が誇りに思うようなことをした方がいいと言っていた人たちに対する回答のようなもの。つまり、情熱を持っていれば、クリエイティブな分野でも仕事を得ることができるということです。必ずしも簡単ではないけれど、常に簡単な仕事なんてありません。この大冒険で私たちの夢は現実のものとなりました。そして、私たちの映画は「あなたが到達したいゴールとは?」「あなたにとっての南極大陸とは?」という問いを皆さんに投げかけています」。

詳細についてはこちらの南極大陸プロジェクト をどうぞ。本ドキュメンタリーのトレイラーもご鑑賞いただけます。また、Adobe Stockより入手可能な写真もぜひ併せてご覧ください。


この記事は2018年12月3日に Adobe Creative Magazine により作成&公開されたNOTHING GOOD COMES EASY: DOCUMENTING ‘PROJECT ANTARCTICA’の抄訳です。

POSTED ON 2019.01.29