連載/hueが直伝! “売れる“料理の撮り方、見せ方。#14 料理写真に“湯気”をプラス、シズル感たっぷりにしてみる。#AdobeStock

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美味しい表現を作り続ける、シズル専門のビジュアル制作集団hue(ヒュー)。同社の近藤泰夫が、その撮影テクニックを伝える本連載の第14回は実践編です。ふつうの料理写真をすぐさま「アツアツ」「ほかほか」にみせる“湯気”の撮り方、加工法をシズルフォトグラファー井口俊介と共に伝授しましょう。

■普通の料理写真に、「シズル感」をあとから付け足す

せいろの蓋をとった瞬間、シュウマイからもうもうと立ち上る白い湯気。
寒空の下で飲むホットコーヒーから、ふんわりとあがる柔らかな湯気。

できたて熱々の料理やホットドリンクをシズル感たっぷりにみせる名脇役が「湯気」です。

もっとも、この湯気。いくらできたてを撮ったところで、狙いどおりの形で出るとは限らないのが難しいところ。そのため熱々の料理写真を撮るならば「事前に湯気のストック写真をとっておき、あとからPhotoshopで加工して乗せるのが正解」である――。

ということを、以前、この連載10回目でお伝えしました。

しかし、読者の方から「もっとくわしく湯気の撮影&加工法を教えてくれ」というお声や「やってみたけど、うまくいかない」というお声をいくつかいただきました。

なるほど。確かにちょっと説明不足だったかもしれません。そこで、今回は湯気のあとのせ「実践編」。ふつうの写真を熱々のシズル写真に格上げしてくれる「湯気のあとのせ加工法」をよりハウツー的にご紹介いたしましょう。

■一生モノとして使える「湯気ストック写真集」は、こう撮る。

まずは加工時の「素材」として使う、湯気の撮影から。
ストックしておきたいのは、こんな湯気の写真です。

単に湯気といっても、たとえば料理の温度によって見え方は変わってきます。「ちょうどいい温かさの日本茶」と「ぐつぐつと煮えたすき焼き」。たとえば両者の立ち上る湯気は、量や形が違ってきますよね。一般的に、温度が低ければ湯気はおとなしく目立たず、熱ければ熱いほど、大量に派手に立ち上るからです。

だから前提として、ストックとして湯気を撮るときも、何段階かの熱さを意識して、あるいは「鍋物に使えそう」「コーヒーにフィットしそう」などと完成写真の想像をふくらませながら撮るのが正解です。5段階ほどの強弱つけた湯気を撮るイメージを持つといいでしょう。

そのうえで、いよいよ「湯気」をつくります。

用意すべきは、お部屋用の「加湿器」。加湿器に水をいれて発生する白い水蒸気を料理の湯気に見立てて撮影するのです。

ただし、問題が2つ。

ひとつ目は、加湿器の吹き出し口はたいてい、上にむいてついていること。狙いどおりに湯気の位置や形をコントロールしたいのに、これでは撮影が困難です。そこで、吹き出し口に水道ホースや掃除機のホースのようなものをDIYでとりつけて、自由に動かせるように加工しましょう。

加湿器は写真のように、ホースを付けて吹き出し口を操れるように

もう一つの問題は、加湿器の湯気は水分が多いため、地面に向かってさがるように発生すること。本来、湯気は熱いため、空気中では、上へ上へと立ち上るものですが、下にさがると「冷気」に見えてしまうんですね。

アツアツというより、キンキンに冷えてそうです

そこで、湯気をとるときは「熱湯を入れた皿」をひとつ用意してください。加湿器に取り付けたホースを上から掲げ、下に置いた熱湯入ちの皿に向けて水蒸気を発射するのです。
一旦さがった水蒸気が、熱湯から立ち上る温かい空気に押し上げられているのがわかるでしょうか? 「上昇気流」が生まれるのです。すると、いかにも自然に湯気が発生、これを写真に収める、というわけです。

熱湯を入れた皿の上に加湿器の水蒸気を落とした写真。上昇気流で「立ち上る湯気」に

いかがでしょう? こうして加湿器の湯気を撮ると、いろんな動きの「立ち上る湯気」ができあがります。これを量や角度を調整しながら、強弱つけて何カットも撮影して、「湯気ストック」を撮っておきましょう。もちろん白い湯気をしっかりと撮るために、黒いバックを用意して撮ることも忘れずに。また、下め45度くらいから逆行でライティングすると、湯気が際立って撮れるのも連載10回目で説明した通り。ぜひ実践してください。

■ポークソテーに湯気を合成するとき、忘れたくない“最後のひと手間”。

湯気のストック写真集ができたら、これを実際の料理写真に合成してみましょう。
まず料理素材として使うのは、こちらのフライパンに乗ったポークソテー。

焦げ目とソースが食欲をそそりますが、なんだか「ちょっと冷めていそう」ですよね。

そこでAdobe「Photoshop」を立ち上げて、この写真をまず展開。そのうえで、先に撮っておいた「湯気のストック画像」をいくつか選んで合成しましょう。

「一番、ポークソテーにフィットしそうな湯気はどれかな」と比較しながら一枚選びます。先に述べたとおり、温度によって湯気の出方は変わるので、この場合は、調理直後の高温度なフライパンから立ち上る湯気ということを意識して、やや強めで勢いのある湯気を選びます。

選んだ湯気をまず「スクリーン」で湯気だけの画像にします。「スクリーン」は画像の明暗の輝度の高いところだけを切り抜いて、暗い部分を透かしてくれる。つまり、黒バックで撮った湯気の、白いところだけを残してくれる、というわけです。この湯気の部分だけを、料理写真に「レイヤー」で重ねて合成するわけです。

まずは「スクリーン」で白い湯気だけを切り抜いて…
その湯気を「レイヤー」で料理画像に重ね合わせます

いかがでしょう。これだけでぐっと「温度感」が高まりましたよね。もちろん、位置や大きさなどは調整しながら、ピタリとハマる湯気を重ねてください。

ただ、ここで満足してはいけません。

先にお伝えしたとおり、シズル写真を彩る大事な演出技法ではありますが、湯気はあくまで「脇役」なんですね。主役となる、料理にかぶってしまい、料理が少し見えにくくなっているのは少し残念。僕らのようなプロがパッケージ写真などを撮る場合は、これではやっぱりNGなのです。

そこで、「ブラシ」ツールを使って、主役の料理、この場合はポークソテーにかかっている湯気を消していきましょう。

「ブラシ」ツールでポークソテーにかかっている湯気など余計な湯気を取り除きます

今度はしっかりと、ポークソテーの表面が浮き上がってきた。そのうえで、湯気がたちのぼっているという、シズル感が表出してきましたよね。

これで完成。……では、ないんです。

シズル写真家としては、このあと。最後の「ひと仕事」を忘れずに入れておきたいもの。それが「ぼかし」です。
最後の仕上げとして、合成した湯気の画像を「ぼかし(ガウス)」ツールでぼかす。湯気の輪郭を柔らかく仕上げるのです。

湯気の粒子がぼやけて、柔らかくなったの、わかりますか?

湯気そのものを柔らかくしたほうが、臨場感が出ることもあるのですが、こんな意識的なピンをぼかした湯気を合成することで、より写真のリアリティが増す、というわけです。

いかがでしょうか。

湯気のあとのせ加工は、やってみると案外に簡単です。

大切なのは「リアリティ」の追求。たとえば、ポークソテーにふさわしい湯気をココアの写真を載せたら、むしろ熱すぎて見える。逆に、ココアにふさわしい湯気をポークソテーにのせたら、むしろ冷めていることを強調してしまうからです。

ココアにポークソテーの湯気を転用。「そんな持ち方、熱すぎない?」というほど過剰。
ココアの湯気をポークソテーに乗せてみました。なんだかむしろ冷たそう…

これは湯気の表現に限りませんが、普段から料理と接するときには「あの料理の湯気はどれくらいたつものなのか」「外気がどれくらいだとどんな湯気が出てくるのか」など、「なぜ料理が美味しそうに見えるのか」を意識して観察しておくことが大切。こうした経験のストックこそが、あなたの写真に本当のシズル感をプラスすることになるのです。

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参考写真撮影:井口俊介(hue inc.)

POSTED ON 2019.03.29