【寄稿】クリエイターの英語との関わり方:発信を続けることで掴むチャンス

Community Design
はじめまして、灰色ハイジ (@haiji505) といいます。アメリカ・サンフランシスコAll Turtlesというスタートアップスタジオで、デザイナーをしています。
世界62以上の国からクリエイターが集まるクリエイティブの祭典であるAdobe MAXは、私が英語を学んで良かったと思えるような体験を与えてくれた大好きなカンファレンスです。2019年にMAX Insidersとして招待いただき、各国のクリエイターと一緒に講演を聞いたり、ワークショップに参加してその場でデザインに取り組んだりと、世界中のクリエイターと対等にカンファレンスで過ごすことができたのは、とても刺激的で楽しいものでした。
Adobe MAX 2019で参加したワークショップでは、同じテーブルについた人たちと一緒に、コーヒーを試飲し、そのコーヒー豆をイメージしたラベルをその場でデザインして印刷する体験をしました。
実は、Adobe MAXに参加したのはこのときが2回目で、初めて参加した2016年のときは英語をうまく扱えず、自分の名前を言うのが精一杯でほとんど他のクリエイターと交流できず、苦い思い出となってしまっていました。そこから、うまく交流できるようになるまでにやったことは、英語をただ勉強するのではなく、英語を前提としてデザイナーとしての活動を続けたことにありました。

名刺代わりのSNSを英語で発信していく

2016年での参加の当時、結婚を機にアメリカへ渡ることとなったばかりで、漠然と「英語を使えるようになりたい」と思いながら、中学英語の英文法を市販の本で学習したり、現地の語学学校に通ったりと、さまざまな方法で英語を学んでいました。しかし、アメリカでの生活にも少し慣れてきた頃に、Adobe MAXでの苦い体験を経て「アメリカでもデザイナーとして活動し、他のクリエイターと対等に話せるようになりたい」ことが私が英語を学ぶ目的であると気づきます。
それから、現地のプロダクトデザイナーの養成所に通ったり、自分の制作物をインターネット上で英語で公開をするようになりました。公開先は、自分のウェブサイトをはじめ、Twitter、Instagram、Behance、DribbbleなどのSNSです。BehanceDribbleは、クリエイター向けSNSとも言えるプラットフォームで、さまざまなデザイナーがポートフォリオを掲載する場所として用しています。アメリカではイベントなどで他のクリエイターと会うと、名刺の代わりにInstagramなどのIDを交換することも少なくありません。
余談ですが、SNSという呼び方は地域によっては通じないことがあり、アメリカでは Social Media(ソーシャルメディア)と呼ばれることが多いです。
名前をローマ字表記にし、プロフィールを英語で書くところから始まり公開する自分の制作物の解説を全て英語で書いて発信するようになりました。2回目にAdobe MAXに参加するまでに、私が具体的に発信していたものを紹介します。
毎日、自分のデザインを投稿する
アメリカに来て仕事にも就いていなかった私は、公開できるような最近手掛けた作品が何ひとつありませんでした。そこで始めたのがDaily UIです。メールアドレスを登録すると、100日間毎日UIをデザインするためのお題が送られてきます。世界中の多くのデザイナーがそのお題に取り組み、SNSにその成果物を公開しています。 作ったものを投稿する際に添える説明文を英語で書いていたのですが、毎日自分の考えを誰かに伝える簡潔な文を書くなんてことはなかった私にとっては非常に良い訓練となりました。以下は当時投稿していた毎日の成果物です。(GitHub 上に全ての作品の元データも公開しています

Hello dribbbler 😉

This is my first UI challenge with Framer.

Dribbbleのみなさん、こんにちは 😉

これはFramerを使用した私の最初のUIチャレンジです。

I created some loading animations with square and circle.

四角と丸を使って、いくつかのローディングアニメーションを作りました。

Boarding pass for a mobile app. I designed it to allow users to expand the boarding pass quickly at the app. Because I always struggle to find my ticket when I get on a flight.

モバイルアプリ用の搭乗券。アプリでユーザーがすばやく搭乗券を拡大できるようにデザインしました。何故なら私はいつも飛行機に乗るときに、自分のチケットを探すのに苦労するからです。

Daily UIのお題はもちろん英語なのでお題に含まれる分からない単語に始まり、自分が作ったものを説明するための言い回しなど、毎回英語について調べることに追われました。そのときに学んだ単語やフレーズは、今でも仕事でデザインを説明するときに役立っています。デザインに関係する言葉や、自分が作ったものを説明するためのフレーズに触れることで英語を学んでいた時間は、教材にある単語の一覧を暗記しようとしていたときに比べて遥かに楽しいものとなりました。
また、Daily UIにチャレンジしている他のデザイナーからコメントをもらい、私の作ったデザインについてディスカッションが起こるなんてこともありました。他の人からコメントがつくことは、SNSで作品を公開したからこそ起きる出来事で、そこでのコミュニケーションはまさにそこまでで学んだことを総動員する瞬間でした。こうやって反応をもらえることは、英語を学習する上でも、作品を作り続ける上でもモチベーションを高めてくれました。
まとまったケーススタディを公開する
Daily UIを通して短い英文を書くことに慣れてきたら、次は作品の制作過程を発信するようになりました。例えばロゴデザインに携わった際は、コンセプトを説明したり、最終案に至るまでのアイデアを文章と共に公開しました。最初に紹介したSNSの中でも、Behanceは複数の画像と文章を挿入することができ、ケーススタディの掲載に最適です。
加えて長めの文をブログの記事として公開することにも挑戦しました。通っていたサンフランシスコのプロダクトデザイナーの養成所で、「ゲリラユーザーテスト」という既存のアプリの問題点を洗い出し、それを改善するプロトタイプを作り、街中で見知らぬ人に声をかけてテストする課題を出されたことがありました。私はFoursquareというシティガイドのアプリを選びその時のプロセスや具体的な改善案と評価の結果をブログに書いたところ、思いがけず大きな反響を得られました。
私の住んでいるサンフランシスコだけでなく、ニューヨーク、オランダ、スペイン、台湾、中国など、世界中のさまざまな人に読んでもらえたのです。日本語で書いていたら届かなかったであろう多くの人に届き、デザイナーとして何かを発信するときは、これからも継続して英語を使いたい、と思える嬉しい体験でした。
この記事は、Foursquareの創業者の目にも入ったようでその会社の人事担当者から「ちょうどシニアプロダクトデザイナーのポジションを募集しているんだけど、興味があったら連絡待ってるよ」というメールが届きました。電話面接を受けて、結果はダメだったのですが、英語で発信することで、日本語で発信していたときには考えられなかったようなつながりも生まれるのだと、そのとき身をもって体験しました。

発信を続けることでチャンスにつなが

英語もろくに扱えず、アメリカで何の実績もないことで、デザイナーとしての自信を失っていた時期もありました。しかし、こうした制作活動と英語での発信を続けたことで自信を手に入れ、現在働いている会社への就職冒頭のAdobe MAXを楽しめた体験につながりました。
さらには、日本語での発信ではありましたが、私がこれまで学んできた英単語やフレーズを「デザイナーの英語帳」というブログで公開を続けていたところ、出版社の方との縁が生まれ、書籍化に至ることとなりました。デザインの現場でよく使われる英語のフレーズをまとめた実践的な内容となっているので、制作物を英語で発信する際に、ぜひ役立ててもらえたら嬉しいです。

『デザイナーの英語帳』(ビー・エヌ・エヌ新社)

アプリやサービスを作るプロダクトデザイナー、デザイナーとやりとりをするエンジニアも必携。グローバルな場やチームで、臆せず活躍するための一冊。 カフェでコーヒーを注文することもままならなかった著者が、突然アメリカに移住。2年後にはサンフランシスコのスタートアップスタジオでデザイナーとして働くまでに! プロダクトマネージャーやエンジニア、他のデザイナーと日々会話するやりとり、説明のための英語表現を、デザインのフェーズ毎に厳選してまとめました。英語学習に悩む日本のデザイナーに向けて、デザインの現場で欠かせない100のキーワードを基点に、シンプルな単語の超実践的な使われ方と例文を紹介しています。そのほかにデザイナーがよく使う用語集、特定のシーンで使える表現集、著者が英語にどのように向き合ってきたかを伝えるコラムも収録。

プロフィール

灰色ハイジ
サンフランシスコ在住。スタートアップスタジオAll Turtlesのシニアデザイナーとして、新規プロダクトのデザインを主導する。大学在学中から多くのウェブサイトのデザインを手がけ、プランナーとしても多様な広告のデジタル施策の企画に携わる。渡米後はフリーランスとしてブランディングやパッケージデザインなどへ領域を広げながら、現地のデザイナー養成所Tradecraftを経て現職。デザインの現場で使われる英語を紹介する「デザイナーの英語帳」をはじめウェブ上でさまざまな発信を行っている。

POSTED ON 2020.09.3