福田愛子「Frescoにはリアルな画材にはできない表現の可能性がある」 Adobe Fresco Creative Relay 03

Creative Cloud Design

アドビではいま、Twitter上でAdobe Frescoを使ったイラストを募集しています。応募は簡単、月ごとに変わるテーマをもとに、Frescoで描いたイラストやアートをハッシュタグをつけて投稿するだけです。
5月のテーマは「水+人魚」。海辺や海中の風景はもちろん、テーマから自由に発想したイラストをお待ちしています。もちろん、アマビエもOKです! みなさんがFrescoで描いたレタリングを #AdobeFresco #AdobeDrawing_Water #MerMay をつけてTwitterにアップしてください。

この企画に連動したFrescoクリエイターのインタビュー「Adobe Fresco Creative Relay」、第3回はイラストレーター/ミクスト メディア アーティストの福田愛子さんにご登場いただきました。
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見たことがあるようで実在しない、架空の海

「テーマが『水』『人魚』ということで、現実世界に存在しているようで実際には存在しない、架空の海中世界を描きました。人魚とともに泳いでるのはアザラシとジンベイザメを組み合わせて描いたものです」

イラストのタッチはアナログテイストでありながら、その実、Adobe FrescoとAdobe Photoshopを巧みに行き交い、デジタルドローイングの技術がふんだんに散りばめられています。

「こうしたアートワークを作るときは、おおよそのラフを一枚絵として作るのですが、実際の制作工程ではFrescoですべてパーツ別に大きめのサイズで描いていき、反転・拡大・縮小をしながらレイアウトをしています。

必要に応じて、クラウドドキュメントを経由して、Photoshopで色を調整したり、パペットワープを使ってイラストに変化をつけては、またFrescoで描き足していったり。それぞれでできること、得意なことを使い分けて、ひとつのアートワークを仕上げています」

イラストをよくよく見ると、魚やヒトデ、サンゴはコピーや反転、拡大・縮小をしたものがベースになっているのですが、一枚のアートワークとして合成感、違和感を感じさせないのは福田さんならではの仕上げの妙と言えるでしょう。

イラストレーションをレイアウトするように構成していくアプローチ、そして全体のバランスをとりながらクオリティを追求していくスタイル。それを高いレベルで実現できるのは、福田さんの経歴にヒントがありました。

ひとつの記事がきっかけでグラフィックデザインの道へ

いまでこそイラストレーターとして活躍する福田さんですが、子どもの頃からイラストレーターになりたかった……というわけではありませんでした。

もともと美術・アートに興味は興味は持っていたものの、作家・アーティストを職にするのは難しいと感じていた福田さんは、高校卒業後の進路に頭を悩ませます。そんなとき、ひとつの記事が転機をもたらしました。それは海外の美大で学ばれているグラフィックデザイン学科の女性のインタビューでした。

それまで美術・アートに目が向いていた福田さんにとって、この記事で描かれていたグラフィックデザイナーという職業は理想的なキャリアに映り、これがきっかけとなって一般大学への進学ではなく、アメリカの美大への進学を決意します。

苦境の中で見出したイラストレーターへの道

アメリカでグラフィックデザインを学び、帰国したものの、時代はリーマンショックの影響下。就職も一筋縄では行きませんでした。

「就職の内定がなかなか出なくて……『自分には何が足りないのだろう?』と自分を見つめ直してみました。そうしたら、海外ではそれほど重要視されていなかった、イメージやアイデアを絵にする力が足りていないのではないかと気づいて。あらためてデッサン教室に通うことにしたんです。今にして思うとこれがイラストレーターになったきっかけでしたね。
その後、無事に就職はできたのですが、最初は全然デザインをさせてもらえなくて……鬱憤を晴らすように週末のデッサン教室でイラストを描いていました(笑)」

就職してもなお、デッサンを学び続けた福田さんはその後、ゲーム等を手がけるIT会社にアートディレクターとして転職。しかし、入社後ほどなくしてフィリピンに駐在することになります。

「マニラ支社のデザイナー採用に関わっていたときに、ひとりアメリカの大手コスメティックのイラストレーションを手がけている人がいて。
“アメリカから見れば地球の反対側で、イラストレーターとして活躍している人がいる”
そのことにすごく刺激を受けたんです。この出会いがずっと忘れられず、今目の前にある仕事に目処がついたら、いつか自分もイラストレーターとして、ファッション雑誌や広告の仕事に挑戦してみたいと思うようになりました」

これが第二のきっかけとなり帰国して退職。イラストレーターとしての活動を決意します。

イラストレーターとしての活動をスタート

イラストレーターになると決意したものの、イラストでの仕事の実績がない以上、すぐに仕事につながったわけではありません。

「退職した翌年の2014年元旦から、肩書きをデザイナーからイラストレーターに変えました。とはいえ、まったくツテがなかったので、まずはイラストのポートフォリオを作り、出版社に営業することにしたんです」

ここで福田さんのグラフィックデザイナーとしてのキャリアが功を奏します。

「雑誌のイラストレーションを手がけるのが目標だったので、架空の特集を作って、今で言うZINEのようなアートブックを作りました。イラスト単体ではありますが、テーマに沿った並びにすることで、イラストがどんなシチュエーションで使ってもらえるか、こちらから提案するような気持ちでデザインしました」

イラストレーションが使われるシチュエーションを自ら創出してプレゼンテーションする。その方法は雑誌編集者の目に留まり、有名雑誌の特集イラストに大抜擢。それがきっかけとなって雑誌の連載イラストや、ファッション誌のWebイラストの仕事につながり、翌年には広告会社のアートディレクターから大手自動車メーカーの広告のイラストの依頼が舞い込み……ひとつの仕事が次の仕事を生むという連鎖が起こりはじめました。

「イラストレーターとして1年活動してみて、ダメだったら諦めようと思っていたんですが……本当にラッキーが続きましたね」

ラッキーというとまるで運まかせのようですが、磨き込まれたイラストレーションと地道な営業活動が実を結んだ結果に他なりません。そうして福田さんはイラストレーター、アーティストとしての地位を確実なものにしていきました。

アナログからデジタルへ。Frescoとの出会い

「最初は紙にペンという完全にアナログでしたが、途中から彩色だけはPhotoshopを使うようになりました。でも、当時は線画からデジタルというふうにはなれなくて。ペンタブレットも使ってみたのですが、手の動きと描画のラグや、感覚の違いを拭えなかったんです」
そうした中で出会ったのがiPad Proと、Frescoの前身ともいえるAdobe Photoshop Sketchでした。

「同じペン入力でもペンタブレットとは全然違って! これなら紙に書いていたときと同じような感覚で、違和感なく描けると思いました。最初はラフだけに使っていたのですが、どうしたらアナログの頃と同じような自然ななじみやかすれを再現できるんだろうといろいろと研究した結果、アナログのペンのタッチは、Frescoの鉛筆を使うとうまく再現できることを発見して。それからiPad Proで描いたものでも納品できるクオリティのものができるようになりました。
どこでも描けるし、いつでも戻せる。拡大・縮小して描けることもできるので、どんどん細かく描き込んでしまうのが難点なんですけど(笑)」
Frescoに用意された多くの画材をいつでも気軽に試せるのは、イラストレーターとして大きなメリットになっているそうです。

カスタムブラシで効率化→作品の品質アップへ

福田さんの作品作りにおいて、Frescoはいまや欠かせないツールになっていますが、なかでもイチ押しの機能はカスタムブラシだそうです。

「特にKyleのブラシが気に入っています。Kyleのブラシは自然界にあるナチュラルな素材をベースに作られていて、たとえば点描のようなブラシでもいい意味でムラがあるんです。今回のイラストでも岩の部分はKyleのブラシを使っています」

Kyleのブラシとは、世界的に知られるイラストレーター・Kyle T. Webster氏によるオリジナルブラシで、Adobe Creative Cloudユーザー向けに1,000種以上が提供されています。個性的なテクスチャ表現がブラシひとつでできることから、PhotoshopやFrescoユーザーの人気を集めています。

「正直いうと、最初はこういうブラシを使うことに抵抗があったんです。ラクしているような気がして。でもあるとき、メンターに『アーティストは限られた時間の中でいいものを作るのが使命なんだ。ツールや材料にこだわるのも大事だけれど最終的に評価されるのは仕上がりの作品であって、絵のクオリティが高いことはプロジェクトは成功条件なんだよ』と言われたんです。
限られた時間で効率化することが全体のクオリティアップにつながる、ということですね。それからはツールで効率化しつつ、かけるべきところにしっかりと時間をかけるようになりました」

福田さんは意識的に制作の時間配分を変えていった結果、自身でも作品のクオリティが上がったことを実感しているそうです。

「ブラシのような機能はうまく使うこと=手を抜くことではないんですよね。かけたいところ時間をかける、そのためにうまく活用していきたいと思っています」

“デジタルだからできるアナログ表現を追求したい”

イラストレーターとして、そしてアーティストとして活躍する福田さんが目指す、次のステージはどのようなものなのでしょうか。

「これまでもFrescoでどんなイラスト表現ができるんだろうと追求してきましたが、そこをもっと深掘りしていきたいですね。たとえばいま、色鉛筆画だけはまだアナログのままなんです。色鉛筆を重ね塗りする表現がどうしてもFrescoで表現しきれなくて。どうやったらFrescoで再現できるのかを研究しています」

「でも、逆に、油彩の上に鉛筆で描いていくというような、Frescoだからできる表現もあるんです。リアルな画材なら絶対にできないようなかけあわせが、デジタルならできる。そうした点でもデジタルの中のアナログ的表現にはもっとたくさんの可能性が詰まっていると思います」

福田さんにとって、テクノロジーの進歩は表現の進化につながる重要な要素。それゆえに国内外含め、情報収集は欠かしません。

「今後は自分のイラストをARのようなヴァーチャル空間に展開したり、よりいろいろなメディアとミックスさせた表現にもチャレンジしていきたい。そのときにイラストもデジタルデータの方が応用がしやすいですよね。その点でも、Frescoで描いていてよかったなと思っています」

イラストレーター/ミクスト メディア アーティスト
福田 愛子

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POSTED ON 2020.05.18