サタケシュンスケ 「Frescoは手描きの楽しさを思い出させてくれる」 Adobe Fresco Creative Relay 05

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アドビではいま、Twitter上でAdobe Frescoを使ったイラストを募集しています。応募はかんたん、月ごとに変わるテーマをもとに、Frescoで描いたイラストやアートをハッシュタグをつけて投稿するだけです。
7月のテーマは「花火」。花火といえば、大きく打ち上がり、夜空に大輪の花を咲かせるものもあれば、静かに儚く火花を散らす線香花火もあります。なかにはバケツを抱えて公園に集まった夏休みを思い出す人もいるのではないでしょうか。
みなさんが思い描く花火をFrescoで描き、 #AdobeFresco #花火 をつけてTwitterにポストしましょう。
この企画に連動したFrescoクリエイターのインタビュー「Adobe Fresco Creative Relay」、第5回はイラストレーターのサタケシュンスケさんにご登場いただきました。

愛らしくてノスタルジック。花火を見上げる男の子

「今回のイラストは、“自分目線で見た花火”をテーマに描きました。夜空を見上げて、花火を全身で楽しむ男の子がいて、その背中を見守りながら一緒に楽しんでいる……自分にも子どもがいるので、気持ちが入りやすかったですね。
実は最初は男の子ひとりではなくて、肩車をしている親子がいたり、おじいちゃん、おばあちゃん、たくさんの人が集まっている花火大会をイメージしていたんですが、そうすると、この絵で表現したかった“海面に映り込む花火”も見えにくくなってしまう。そうした試行錯誤を経て、最終的にこの構図になりました。
普段Frescoで描くときは横位置なのですが、今回は空をできるだけたくさん入れて、画面いっぱいの花火を描いてみたかったので縦位置で描いています」

絵がコミュニケーションツールだった小学校時代

見れば思わず微笑んでしまいそうな、温かみのあるイラストで知られるサタケシュンスケさん。振り返ると、その原点は小学校時代まで遡ります。

「あらためて思い返すと、イラストレーターにつながる最初のきっかけは、小学校のときにノートに自作の漫画を描いていたことかもしれません。描いた漫画を見せると、友だちが喜んでくれたり、おもしろいって言ってくれる。それがうれしくて、どんどん描くようになったんです。
そのころはいわゆる“ジャンプ全盛期”で、『ドラゴンボール』のような漫画が一番盛り上がっていました。僕が描いていた漫画も、それを真似たようなバトル漫画でした。それを教室の友だちに見せると『続きはまだ?』って言われることもあって。締切に追われる感じを、このときはじめて体験しました(笑)」

自分で描いた絵で人が喜んでくれる。自分の絵は人を喜ばせることができる。それは小学生だったサタケさんにとっても、大きな体験でした。

「僕にとって、漫画を描くというのは自分の武器というか、コミュニケーションツールとして一番大きなものだったんです。
僕は親の仕事の関係で2回転校をしているのですが、新しい学校で友だちを作るとき、やっぱり何かきっかけがないと話しかけてもらいにくいですよね。そういうときに、机の上で漫画を描いていると『何、描いてるの?』って見てくれたりして、そこから話が生まれたりするんです。
転校するたびに、ここぞとばかりにノートを開いて漫画を描いて、友だちを作る。僕にとって漫画はなくてはならないものでした。
大変なこともありましたが、この経験のおかげで、“絵が人をつなぐ”ということがわかりましたし、だからこそ今も描き続けているのかな、と思っています」

専門学校を経て、グラフィックデザインの道へ

絵を描くことでコミュニケーションを作り上げていく。
サタケさんのその経験がストレートにいまの道へとつながっているのかというと、実はそうではありません。

「イラストレーターという仕事があるらしいというのは知っていたのですが、実際に周りで目にしたことはなかったので、職業としてピンときていませんでしたし、自分がなれるものとも思っていませんでした。絵を描くのは好きでも、仕事にはならないだろうと勝手に思い込んでいたんです」

当時、イラストレーターになることをまったく意識していなかったというサタケさんですが、中学、高校と進んでも絵は描き続けていたそうです。

「高校に行っているときに、文化祭で絵を任されたり、卒業文集の表紙を描かせてもらったり、頼まれて描くことが増えてきて。学校外でも、音楽をやっている友だちのデモCDやポスターのイラストを描いているうちに、こういうのが仕事になったらおもしろいんだろうなと、そのとき初めて仕事としてイラストを描くことを意識しました。
高校卒業のタイミングで、初めて絵をしっかりと勉強しようと思ってデザイン系の専門学校に進み、そこでAdobe PhotoshopAdobe Illustratorにも出会ったんです」

それまでは独学で手描きのイラストを描き続けてきたサタケさんは、その学校であらためて絵の描きかた、画材の扱いかたを学び、Photoshop、Illustratorの使いかたを習得します。

「まっしろな状態で入学したので、触れるものすべてが新鮮でした。高校時代に手描きのイラストをコピー機で拡大・縮小したり、ハサミで切って繋ぎあわせていたアナログな作業も、Photoshop、Illustratorならこんなにかんたんに、効率的にできるのかと……とにかく衝撃でしたね」

広告会社に勤めながら路上でイラストを販売

サタケさんは専門学校卒業後、広告会社に入社。自動車業界の広告やパンフレット等を手がけるなかで、Photoshop、Illustratorのスキルも磨かれていったそうです。

「いま持っているデジタルツールのスキルは、このときに培われたと思っています。特に写真のクオリティは常に高いものを求められたので、Photoshopの画像合成スキルは相当、鍛えられました。
たとえば、車をカッコよく見せるために夜景と組み合わせたり、光を入れたりするのですが、1枚の絵を仕上げるという点では、絵を描くのと共通するところがあって。その作業はすごく好きでした」

入社1年目は、自分の絵を描く時間も体力も残っていないほど仕事に追われる日々。しかし徐々に仕事に慣れてくると、絵に対する想いがこみ上げてきます。

「自分で作った作品を、自分の名前で世に出していきたいという欲がフツフツと湧いてきたんです。それがついにあふれて、梅田の歩道橋でイラストの路上販売をはじめました。イラストレーターとしての第一歩ですね。
絵を描きはじめたのはいいものの、どこに持っていけばいいのかも、誰に見てもらえばいいのかもわからなかった。だから、人の多いところでイラストを広げていたら、何かチャンスがあるんじゃないかと」

勇気ある、大胆な第一歩。しかしこれは、人気イラストレーターへと駆け上がるための一歩目でもあったのです。イラストレーターとして独立したときのことをサタケさんはこう振り返ります。

「自分で制作をするようになってからはどんどん楽しくなってきて。デザインの経験を積んだこともあって、仕事にできるんじゃないかという手応えを感じはじめていました。
でも、会社を辞めた直後は、なかなかイラストの仕事だけでは食べていけなくて、出力センターの深夜バイトをしたり。作風も定まらなくて、個展のたびに作風が変わっていましたし、“自分の絵とは?”ということに向き合い続けるなかで焦りも感じていました。
でも周りに聞くとみんなそうなんですよね。それが当たり前なんだということを受け入れてからは、無理にスタイルを固めようと気負わなくなって、気持ちも楽になりました。いい方向に変わっていけるのなら、10年後、まったく違う絵柄になっていてもいいと思っています」

サタケさんのイラストレーションと言えば、まず思い浮かぶのは、そぎ落とされたシンプルなラインで描かれるかわいい動物たち。このスタイルはどのようにして生み出されたのでしょうか。

「自己表現としてスタイルを固めたというよりは、動物の絵や、子ども向け、ファミリー向けの絵が依頼を多くいただいたことを通して、“自分はこういう絵を描くのが向いているんだな”ということに気づかされたという感じです。
自分はアーティストとして、ひたむきに自分と向き合ってゼロから作品を生み出すというタイプではなく、クライアントの『こういう絵がほしい』というオーダーに対してどうやって応えようか、どういう答えを出そうかを考えることにおもしろみを感じているということも、仕事をいただくようになってから気づきました。
いまでは職業としてイラストレーターを選んだのは間違いなかった、と思っています」

そうした活動の集大成として、2020年6月、サタケさんの作品集『PRESENT』(発行:玄光社)が刊行されました。サタケさんのイラストの魅力、秘密の詰まった1冊になっています。

手描きの楽しさを思い出させてくれるFresco

普段のイラストワークはほぼ100%、Illustratorで行なうサタケさん。Frescoとの出会いはどのようなものだったのでしょうか。

「Frescoはリリースされてすぐに使い始めました。そのときはベクターブラシで描いたものを、Illustratorに取り込むことができるんじゃないかと思って、ひと通り試したのですが思い通りにはならなかったんです。
でも、水彩ブラシや今まで触れていなかったブラシを使ってみたら、“これはおもしろい”と気づいて。それからずっと使っていますね。手描きで描く楽しさを思い出させてくれました」

今回の「花火」のイラストには、Frescoのどのような機能が使われているのでしょうか。

「いろいろなブラシで粗さや質感を試しながら描きました。特に、水彩ブラシはFrescoに初めて触れたときに衝撃を受けた機能で、今回のイラストでは背景の星空に使っています。空の濃淡と光が混じり合う部分に水彩をにじませました。
クレヨンのようなアナログ風の表現は、一旦ブラシで綺麗に描いたあと、レイヤーマスクを使って粗めなブラシで部分的に隠すことで、描いた部分を削ったような表現をしています」

「背景以外で今回使ったブラシは、塗るためのブラシと削るためのブラシ、2種類だけです。それだけでもこれだけいろんな表情が出せるということはわかりました。実際に絵の具で描くときも、あとから削る、こするという作業をするのですが、それと同じことがデジタルでもできる。僕のおすすめの使いかたです」

一方、デジタルならではの、思いがけないトラブルもあったそうです。

「Frescoは普段、イラストを描くのに使っているIllustatorとは違って、手描きに近い感覚のツールですよね。デジタルツールなので効率的に進めることもできたとは思うのですが、できるだけコピー&ペーストを使わずに描いたほうが仕上がりがいいんじゃないかと思っていて。
唯一、コピーを使ったのは海面への花火の映り込みです。これはそのほうが正確に表現できるというのが大きな理由なのですが、実はFrescoで拡大して映り込みを描こうとすると、元の花火が見えないという理由もあって。アナログのように別の場所を見ながら描くことができなかったんです。これは思いもよらなかったですね(笑)」

デジタルツールを使って、手描きの感覚で描く。それはクリエイティブにとっても大きなメリットになっています。

「今回のイラストでは、背景を最後に仕上げたのですが、すでに描いた絵の後側にも手を入れられるというのは、デジタルの恩恵ですね。アナログではすべてを決めてから描いていき、後には戻れないという状態で描き進めていく必要がありますが、デジタルなら何回でもやり直せる。その場で考えながら直感的に描いていけるというのはデジタルツールならではの魅力だと思います」

イラストレーターへの道を諦めることなく、挑み続けたサタケさんが、絵を描き続ける理由、そしてモチベーションはどこにあるのでしょうか。最後に聞いてみました。

「結果的にいまもイラストレーターを続けられていますが、イラストが評価されないということが続いていたら、どこかで絵を描くモチベーションはなくなっていたかもしれません。ただ、僕は評価されないときでも、外に出て行って、自分の中だけで作品を終わらせないように心がけていました。作品の評価がよくなかったら、また新しい絵を描いて、個展で見てもらうということを、自分に課し続けていたのがよかったのだと思います。
たとえばいまなら、絵を描いたらSNSでもいいのでまず見てもらう。そこまでをセットとして考えて、絵を完結させると、気持ち新たに次の絵にまた臨めます。自分の中にためこまないようにするんです。1回外に出してしまったら、次を描きたい、また描きたいっていう気持ちになりますから」

イラストレーター
サタケシュンスケ

Web|https://naturalpermanent.com
Twitter|https://twitter.com/satakeshunsuke
note|https://note.com/shunsukesatake
Instagram|https://www.instagram.com/shunsuke_satake/
Behance|https://www.behance.net/shunsukesatake

POSTED ON 2020.07.15