大森とこ 「Adobe Frescoならコラージュのように表現を組み合わせられる」 Adobe Fresco Creative Relay 07

Design

アドビではいま、Twitter上でAdobe Frescoを使ったイラストを募集しています。応募はかんたん、月ごとに変わるテーマをもとに、Adobe Frescoで描いたイラストやアートをハッシュタグをつけて投稿するだけです。
9月のテーマは「ペット」。
イヌ、ネコ、インコ、魚にカメ……自分の大切なペットを描いてもよし、ペットと戯れる人たちを描いてもよし。みなさんがイメージするペットの姿をAdobe Frescoで描き、 #AdobeFresco #ペット をつけてTwitterにポストしてください。
そして、この企画に連動したFrescoクリエイターのインタビュー「Adobe Fresco Creative Relay」、第7回はイラストレーターの大森とこさんにご登場いただきました。

アンドロイドとロボットペットがいる未来の日常

「自分もネコを飼っているので、動物を描こうかと思っていたのですが、ペットが自分の生活の一員、家族と考えたとき、未来のペットはアンドロイドやロボットになる可能性があるんじゃないかと思っていて。おもしろいテーマになりそうだなと思い、アンドロイドとそのペットロボットをモチーフに選びました。
わたしは、アンドロイドが出てくるようなSF映画が大好きでよく見ているのですが、アンドロイドに女性、男性という性別はありませんよね。女性の見た目をしていても性格は男の子かもしれない。それは自分の設定次第です。
このイラストを描きながら、“生活にごく自然にアンドロイドやロボットがいる世界”ってどういうふうなんだろうと想像するのがとても楽しかったです」

絵を始めたのは“父を喜ばせるため”

大森とこさんは、洗練された空気感をまとうイラストレーションが魅力のイラストレーターです。
雑誌から広告、Web、ウィンドウディスプレイまで幅広いジャンルのビジュアルを手がけ、「ウォール・ストリート・ジャーナル」「ニューヨークタイムズ」の挿絵も描くなど、国内外で活躍しています。
その大森さんが絵と触れ合うきっかけになったのは、父へのある想いがきっかけでした。

「もともと絵を描くようになったのは、絵を描きたいと思っていた父を喜ばすためだったんです。あまり勉強は得意ではなかったこともあって、高校は女子美術大学付属高等学校を選びました。父は女子校ということもあって安心していたようですが、わたしは女子ばかりの世界に圧倒されてしまって……大学は東京造形大学の絵画(油彩)に進むことにしました」

その頃の大森さんは、とにかく具象=具体的なもの、人の絵が描きたかったのに対し、当時はコンセプチュアルアートに傾倒した先生が多く、描きたい絵の方向性と合わない点もあったそうです。

「みんなが概念的なアートに情熱を注いでいるのを見ながら、“わたしがやりたいことじゃないな”と思っていて。単位が取れる程度には学校に行っていましたが、教授から見れば“熱量の低い学生だ”と思われていたかもしれませんね」

Mac、そしてAdobe Illustratorとの出会い

大学の授業の方向性と自分の描きたいもの、ふたつに齟齬を感じていた大森さんは別の方向性を検討します。そのうちのひとつがMac、そしてAdobe Illustrator、Adobe Photoshopを学ぶことでした。

「当時は絵を描くということに気持ちが入らなくて、漫画を描いて出版社に持ち込んだりしていました(笑)。デザイン系に進むことも考えていたとき、友だちがMacデザインアカデミーをすすめてくれたんです。“これからはやっぱりMacの時代だよね”って。
その頃はまだそういうことを言う人はほとんどいなかったのですが、リクルートがMacを導入したという話も聞いていたので、これはMacをちゃんと学んでみようと思って、Macデザインアカデミーに通うことにしました」

家に早くからパソコンがあった大森さんにとって、デザイン・制作がこれからMacに変わっていくということは直感的に理解できたそうです。

「Macデザインアカデミーには卒業間際から通いはじめ、Macの初歩から、Illustrator、Photoshopの使いかたを学びました。Illustratorはイラストを描くためのツールと思い込んでいたくらい、最初は訳がわからなかったのですが、少しずつ機能を覚えていくうちに夢中になっていきました。
美大では平面を同じ色に均一に塗るのが一番難しいと教えられていたのに、Illustratorならかんたんにできる。アナログのようにムラもできず、ゴミがつくこともありません。それがすごく新しいと感じましたね」

この学びがきっかけとなって、デザイン事務所に勤めることになった大森さんですが、師弟関係が厳しく、とにかく仕事の多い職場だったこともあり、わずか3ヶ月で退職することに。

「“Macが使えるなら”ということで採用されたのですが、当時はちょうどアナログとデジタルの転換期だったこともあり、写植もやれば、Illustratorもやる、そんな時代でした。広告から雑誌までなんでもデザインするようなデザイン事務所だったので、夜も遅く、徹夜も当たり前。体を壊しそうになったこともあって、退職を決めました」

Macの専門学校を経て、デザイン事務所に勤めた大森さん。次の仕事に選んだのは一見クリエイティブとは無関係に思える、有名テーマパークのキャストでした。

「現実逃避みたいなものですね(笑)。最初はショップスタッフをしていたのですが、途中から美大出身者ということもあって、ディスプレイを担当することになりました」

この仕事は3年で辞め、父の仕事を手伝いながらMacでイラストを描くようになります。

「父の仕事で必要な図版をIllustratorで作図したり、Macデザインアカデミーの先生にクリエイティブエージェンシー・Waha(ワーハ)を紹介いただいてイラストの指導を受けたり、デザイン事務所の友人からカットイラストの仕事をもらったり。本当にいろいろなことをしていました。
いま振り返るとそうした経験を積むことによって、イラストのスキルも上がっていったのだと思います」

イラストレーターへの道を切り拓いた“バービー”

大森さんがイラストレーターとして飛躍することになったきっかけ、それは以外にも趣味で描いていたバービーのイラストでした。

「わたし、バービーが大好きなんですよ。ホールマーク社のバービー・オーナメント(写真)という小さなバービーや、マテル社の35周年記念バービーをコレクションしていたのですが、当時はマテル社の着せ替えバービーの顔をアクリルでカスタマイズしたりしていました。
このパッケージに描かれていたイラストが本当にかわいくて、趣味で自分なりのイラストにしてはwebにアップしていたら、いろいろな人がこのwebを見に来てくれて。イラストの仕事の依頼も来るようになったんです」

当時のwebのトップページ(左)と、バービー風イラスト(右)で描かれたDHC社のDMイラストを見ると、それがいわゆる模写ではなく、バービーのテイストを盛り込みながらも、大森さん独自のアレンジによってオリジナルイラストとして表現されていることがわかります。
こうしてひとつのスタイルを見出した大森さんは、その後、雑誌や広告等、さまざまなフィールドで活躍していくことになります。

IllustratorからPhotoshopへ。ツールと表現の変化

Illustratorでイラストを描きはじめた大森さんですが、いま、イラストを描くメインツールはPhotoshopだそうです。

「Illustratorで描いた線はシャープすぎて何を描いてもペタっとしてしまうんですよね。
Macデザインアカデミーに通っていた頃は、“均一の面がこんなにかんたんに作れる!”と歓迎していたのですが、イラスト表現として考えたときに味気なく感じてきたんです。
イラストには、塗りや線がはみ出すことによって出てくる味わいのようなものがあるのですが、Illustratorではこのニュアンスを出すことがむずかしい。なので、慣れているIllustratorでまず下絵を描き、Photoshopでゆらぎを加えて仕上げていく、というふうに変化していきました
いまはIllustratorでも水彩のようなブラシがあるので、あらためてIllustratorの表現も模索していますし、アクリルを使って、完全にアナログで描くこともあります。
自分のなかでは、使うツールや表現に区別があるわけではなく、コラージュのようにそのときに使いたいものを混ぜ合わせて描くという感じですね」

Adobe Frescoなら環境もかんたんに変えられる

新しいツールを見ると“これができる”“あれができそう”といろいろ想像して、前向きな気持ちになれるという大森さんは、新しい表現を求め、ブラシや機能の探求に余念がありません。
Adobe Frescoはまだラフでの使用がメインとのことですが、その機能、表現力をどのように評価しているのでしょうか。

「たとえば水彩の場合、アナログでは乾いてしまった色は混ざり合うことはありません。でも、Adobe Frescoを使うと、自然な水彩表現ができるうえに、時間をおいてさらに塗りを重ねても色を混ぜ合わせることができますし、さらにそこに油彩を重ねることもできる。これは本当にすごいですよね。画材の組み合わせを考える必要もなく、アナログでは絶対にできない描きかたができるんです。
“アナログじゃないけれどアナログ風”という摩訶不思議な表現ができるのは、Adobe Frescoならではの魅力だと思います」

大森さんにとって、iPadとAdobe Frescoはイラストとの向き合いかたを変えるきっかけにもなっています。

「ふだんはMacBook Proにディスプレイをつないで作業をしているのですが、いつも同じ場所で同じ作業をするというのはマンネリに陥りやすいんですよね。息が詰まっちゃうというか。
iPadとAdobe Frescoがあれば描く場所もさっと変えられますし、新しい土地で誰かと知り合いながら描くとか、環境を変えることで感覚も変わってくると思うんです。
iPadとAdobe Frescoにはそうした点でもあたらしい可能性を感じています」

イラストレーター
大森とこ

Web|https://www.tokoohmori.org
Instagram|https://www.instagram.com/tokoohmori/

POSTED ON 2020.09.17