チームの役割と仕組みを一新し、さらに柔軟に、さらにクリエイティブに | デザイン主導の考え方によって覆されたクリエイティブの常識

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リクルーティングストーリーテラー」、「ブランドエバンジェリスト」、「カルチャーキュレーター」、「コンテンツデザイナー」といった肩書の名刺をよく目にします。クリエイティブ部門が劇的に変わる中、以前は存在しなかったニーズに対応するために、まったく新しい役割が次々と生まれているのです。

影響力の極めて大きいいくつかの企業がデザイン主導の考え方を戦略の核に据えて以来、ありとあらゆる顧客体験のタッチポイントが再定義されつつあります。表面下では変革も進んでおり、デザイン主導の原則に従って、企業の仕組みや組織、肩書が一新されています。

これまで数十年にわたり組織に大きな変化がなかったクリエイティブ分野やマーケティング分野では、新しい肩書や組織は、当然ながら当惑を生み、最悪の場合拒絶されます(「カルチャーキュレーター」の求人のGoogle検索を黙認することはありますが)。一方で、今日のクリエイティブプラットフォームによって可能性は広がり、クライアントと消費者は新たなレベルのパーソナライズされた体験を求めています。ですから、そのギャップと機会を埋めるために役割が進化しても不思議はありません。当然の結果として、肩書が一新されます。

従来の肩書を気に入っていた人もいるでしょう。慣れた手順で制作を進め、無事に成果を挙げることで、それなりの幸せを感じていました。ただ、嬉しいことに、この変革がなぜ起こり、私たちをどこに導くのかをよく考えれば、自分たちでその舵を取ることができます。そこで、この変革の根源であるデザイン主導の考え方に話は戻ります。

新しい世界と役割を作り出そう

「ブランドは、広告の制作に終始することなく、様々な世界を作り出さなければならない」とGaston Legorburu氏(SapientNitro社 エグゼクティブディレクター兼ワールドワイドチーフクリエイティブオフィサー)は述べています。彼は、顧客が参加する体験型のブランドストーリーを作るという手法をとる「ストーリースケープ」の誕生に関する著書を執筆しました。例えばTOMS shoes社は、顧客一人ひとりを主人公に仕立てながら、必要としている人々に靴を提供するという使命に取り組んでいます。ストーリースケープでは、ストーリーを巧みに語り、価値を深く共有することで、顧客と企業に一体感が生まれるのです。

ストーリースケープを計画するには、私たちクリエイティブリーダーが思い切って改革をおこない、従来のやり方から脱却する必要があります。「今日のクリエイティブディレクターは、単なる制作の統括者であってはいけません。今やコンセプトや情報、技術、アイデアを管理するキュレーターでもあります」とWunderman UK社のチーフクリエイティブオフィサーを務めるIan Haworth氏は記しています。「キュレーターとして、私たちはメディチ家さながらに采配を振るう必要があります(ただし、暗殺は企みません)」

暴力に訴えないスニーカーをはいた現代版メディチ家は、社内外交、予算編成、アイデアの売り込みに取り組みながら、山ほどあるビジネスの問題を解決しなければなりません。そこで、私たちはバーチャルリアリティやソーシャルメディアを活用しながら、IT、業務、経理の部門間の調整役を担う必要があります。また、賞を獲得するコンセプトを練り上げるように、巧みに広報活動を管理することも必要です。

このようにサイロ(部門間の壁)を壊すやり方は、クリエイティブ分野のあらゆる職種の壁を取り払います。 例えば、Netflix社では、ユーザーインターフェイスとブランドメッセージに詳しいだけでなく、「ビデオ制作者、画像デザイナー、メタデータの専門家と連携」することができる「プロダクトエクスペリエンスマネージャー」を募集しています。一方、PepsiCo社は、ブランドスペシャリストのための「独自の起動力を備えた」チームを作ることで、階層型の企業構造から一歩踏み出しています。

刻々と変わるクリエイティブの世界のニーズや責任に対応することは、時には面倒に感じるでしょうし、でたらめに思えることさえあるかもしれません。新しい肩書を身につけるだけではなく、時にはすべてのチームを束ね、試行錯誤を繰り返しながら、その役割に取り組むのですから。

デザインはこの変化に拍車をかけます。と同時に、私たちが舵取りできるよう助けてくれます。
この混沌とした進化のさなか、私たちはこうした改革の原動力となる正しいデザイン思考を信頼し、それを道しるべとして、自分自身と自分の役割を新しい環境(言うなれば「ストーリースケープ」)に適応させることができます。

デザインとは、つまるところ、創造力を形にするプロセスです。組織の穴にぴったり合うよう、杭を削るようなものです。デザインへの取り組み方と同じように、私たちも進歩しましょう。

 

1. 大企業に学ぶ

必要かどうかは別として、Procter & Gamble社が採用している「コンテンツストラテジスト兼デザイナー」という職種には興味を覚えます。コンテンツ戦略をデジタルデザイン、UX、外部エージェンシーとの連携と結びつけるという職務内容からヒントを得ることもありそうです。 

2. 試行錯誤を繰り返す

最初から完璧なアイデアなど、まずありません。変化する環境の中で、チームの構造や個人の役割を最適な形にしていくには、かなりの時間を要することがあります。結局のところ、デザインの問題を解決するための第一歩は、それに関わる人間のニーズに共感し理解することです。そうすれば、他の業界のリーダーたちが部下の役割を決める方法を見定めることができます。例えばGoogle社のデザイン倫理家を参考にすると、何を自社の戦略に採り入れ、デザイン、技術、人間性のすべてを大きく成長させることができるでしょうか。 

3. 体制を整える

実験段階だとしても、定義もデザインプロセスの鍵を握ることを心に留めておいてください。新しい役割が現時点で組織に何をもたらすかについて、クリエイティブリーダーと経営幹部が十分に話し合えば、互いに助け合うことができます。Facebook社では、クリエイティブ部門の「クリエイティブストラテジスト」と「デザインストラテジスト」を区別し、さらに役割を業種別に分けて、特定のクライアントを専門に担当する仕組みを作っています。

4. 常に目的を意識する

あらゆることを計画的かつ意図的におこないます。クリエイティブディレクターを長年務めるRobert Fleege氏はかつて「削除すべき要素が何一つ見当たらなくなったら、広告は終わる」と述べましたが、私たちが作るストーリーやそれを伝える役割にも同じことが当てはまります。AdAgeは、比較的新しい肩書であるチーフクリエイティブオフィサーについて、その職務目的や責任はこれから徐々に定着していくとしながらも、「CCOは最先端の職種のように見えるが、すべてのブランドに効果的なわけではない」と述べています。

5. 創造力は現役の秘密兵器

「創造力は、競争相手を圧倒するために利用できる、合法でありながら不公平な最終兵器だ」とThe Gate社前会長のDave Trott氏は言います。誰かを倒そうとしている人はいないとしても、彼は重要な指摘をしています。ビジネスを最終的に左右するのは創造力だという事実です。つまり、耳慣れない肩書やチームを新たに設けてもいいということになります。Apple社のジーニアスがその最たるものです。

技術と世の中の流れが変化を続ける中、一本道のキャリアパスはもはや過去のものとなっています。組織図は、ペンではなく鉛筆で書くべきでしょう。Fast Company Design社がデザインリーダーについて考察した記事によると、「アバタープログラマー」、「チーフドローンエクスペリエンスデザイナー」、「サイバネティックディレクター」といった職種が誕生する日が近いかもしれません。

ジオフェンシングアプリでのインストアエクスペリエンスのパーソナライズから印刷広告のAR拡張機能開発に至るまで、あらゆる業務に対応するチームを構築するための有機的なデザイン主導のアプローチには、良い意味で自由をもたらす何かがあることを認めざるをえません。

確かに、クリエイティブ分野にストーリースケープが採用されるまでは、重要項目を記した付箋を壁に貼り付けることに時間を費やしたもので、世界は今より単純でした。とはいえ、デザイン主導の顧客体験によって私たち自身の専門的な経験が変わることはありません。新しい知識や技能を活用し、従来のサイロから脱却したとしても、私たちは根本的にクリエイティブですから、楽しみながら担当分野の見直しをおこない、それによってさらに前進することができます。新しい肩書を試すこととて例外ではありません。

POSTED ON 2020.01.28