Photoshop Camera レンズクリエイター インタビュー Vol.2 大石結花「写真を一瞬でレトロ風ポスターに変える魔法」

Creative Cloud Photo

すでにたくさんの方にご利用いただいている Adobe Photoshop Camera。被写体に合わせて写真に最適なエフェクトを瞬時に適用する魔法のような「レンズ」も続々と追加されています。

世界中のアーティストが制作、提供する多種多様なレンズは、使って楽しむだけでなく、自分でレンズを制作して世界中のユーザーに使ってもらうこともできます。

そこで、Photoshop Cameraのレンズ制作に携わった日本のクリエイターの方々に、作品のコンセプトやこだわりのポイント、制作にまつわるエピソードなどを連載でご紹介しています。

第2回目は、デジタルクリエイターの大石結花さんにご登場いただきました。

カラーハーフトーンを基調としたポップアートな世界

今回、大石さんが制作した「Retro Poster」は、まるでポップアートの世界に飛び込んだような感覚が楽しめるポートレイト向けのレンズです。カメラのレンズを向けると、被写体の人物が背景から切り取られ、カラーハーフトーンの背景やグラフィックの中に溶け込みます。ゆらゆらと動く曲線のラインアートも気分を高めてくれます。

この最新のレンズは、Photoshop Cameraから無料でダウンロードできるので、ぜひ試してみてください。

大石さんは、カナダで生まれ、日本とアメリカで育ち、現在はニューヨークに住むデジタルクリエイターです。動画や写真、ポッドキャストをメインに様々なクリエイティブ活動をおこなっており、最近ではInstagramのARフィルターを制作したり、YouTubeでチュートリアル動画などを公開したりしています。YouTubeのチャンネル登録者数は約6万人を超えています。

そんな大石さんが、なぜPhotoshop Cameraのレンズを制作してみようと思ったのか。そのきっかけは何だったのでしょう。

「昨年のAdobe MAXで初めてPhotoshop Cameraを触ってみました。すごくPhotoshopらしいな、というのが最初の印象です。SNSとかでよく見るカメラフィルターとはちょっと違って、被写体だけに効果をかけるというよりも、写真全体を1枚のアーティスティックな作品として仕上げるのに向いているなと感じました。それで、一般のクリエイターでもこのレンズが作れるというお話を聞いて、ぜひ作ってみたいと思いました」

大石さんのレンズの特徴は、何といってもパステル調のカラーハーフトーン。もともとは印刷の技術によって表現していたカラーハーフトーンですが、今ではPhotoshopのフィルターを使って簡単に再現することができ、画像をポップな雰囲気に加工したいときなどに用いられています。

「1970年代のレトロなポスター、というのがこのレンズのコンセプトなのですが、もともとカラーハーフトーンをふんだんに使ったものを作ってみたかったんです。ハーフトーンって、デジタルで作ってはいるものの、どこかアナログな味わいがあったりして、そういうものにすごく魅力を感じるんです。

70年代のファッションや映画のポスターって、わりとハーフトーンが使われているものが多く、今見ても新鮮なんですよね。パステル調の色使いだとか、うねうねとした曲線なんかも取り入れることで、70年代っぽさを出していければといいなと思いました」

大石さんはどんなシーンでこのレンズを活用してもらいたいと思っているのでしょうか。

「もちろん人物をメインに撮ってほしいんですけど、背景が加工されてわりと見えづらくなるので、あまり背景を写したくないときなどに向いているかもしれません。あくまで人物がメインになるので、モデルばりに決めて撮ってほしいです。

撮った後は、やはりポスターなど一枚絵として使ってもらいたいですね。後から文字やロゴを入れたりするのも楽しいと思います。SNSのプロフィール写真でもいいですし、CDのジャケットとか、YouTubeのサムネイルとかにしてもらえたりするとすごく嬉しいですね」

Photoshop Camera レンズの制作過程

レンズのデザインは、Photoshopを使って制作します。(レンズの仕組みについて詳しくはVol.1の記事をご覧ください。)Photoshopの操作には慣れている大石さんですが、初めてのレンズ制作で不安に感じたことや、苦労されたことはあったのでしょうか。

「実際にスマートフォンで見たときにどのようになるのか、作りながらすぐに確認できないので、そういう難しさはありましたが、使い慣れたPhotoshopなので、何か新しいことを覚える必要もなく、わりとスムーズに作業は進められたと思います。

苦労した点といえば、レイヤーの作り方ですかね。人物のレイヤーと、その前のレイヤーと後ろのレイヤーをどういう順番で、どのように配置するかなど、その調整にすごく気を使いました。最終的にはアニメーションの動きがついたりするので、それも計算に入れなければなりませんでした」

曲線のラインアートがゆらゆらと動くアニメーションなどは、After Effectsを使って制作されました。Premiere Proを使った動画編集には慣れている大石さんですが、After Effectsはまだ使い始めたばかりだったそうです。

「初めはモーションを入れることを考えていなかったのですが、アドビ サンフランシスコのスタジオチームから勧められて、やってみることにしました。うねうねとした曲線はすでにPhotoshopで作っていたのですが、それを動かすということになったので、After Effectsでもう一度同じように線を描いて、キーフレームでアニメーションにしました。

最初はちょっと戸惑ったりもしましたが、After Effectsは使ってみたかったツールなので、これを機会に理解が深まったのでよかったと思います」

レンズ制作でこだわったところは?

70年代のレトロなポスターというコンセプトを表現するために、特にどのような部分にこだわったのでしょうか。

「こだわった部分は、いかにアナログ感を出せるかというところです。ハーフトーンでもPhotoshopで加工しただけだと、やっぱりデジタルっぽい雰囲気になってしまうので。本当に印刷したような感じにするにはどうしたらいいか、そこはすごく考えました。少し汚れた感じを出してたくて、ダストを細かく散りばめたりしたのですが、なかなかいい効果が得られたと思います」

作品にはハーフトーンの部分とそうでない部分が混在していますが、これには何か意図があったのでしょうか。

「写真全体をハーフトーンにしてしまうと、どうしてもイラストっぽくなってしまうんですね。あくまで人の写真を撮るということを意識して、人物の部分にはあえてハーフトーンを使わずに写真感を残しました。そうすることで、より人物を際立たせることができました。

ただ、ハーフトーンの部分と、人物の部分を完全に切り分けてしまうと違和感が出てしまうので、ハーフトーンと人物が違和感なく重なる部分をつくろうと思いました。それには、Photoshopの描画モードを使ったのですが、描画モードの種類やレイヤーの重なり方で印象がすごく変わるので、納得がいくまで本当に何通りも試しました。普段は使わないようなモードもいろいろ使ってみて、こんな効果が出るんだ、という新しい発見もありました」

レンズ制作の醍醐味

レンズ制作を通してクリエイティブの新たな可能性を広げた大石さん。次回作がとても楽しみです。

「やはり、デジタルだけどアナログ感があるものが好きなので、レトロ写真風のものとか、フィルム映画風のものとか作ってみたいですね。また、空を切り抜いて別の世界に変えるという機能はPhotoshop Camera独特のものなので、ぜひ試してみたいです。

それと、今回はあまり意識しなかったのですが、写真を撮った後に明るさや色味、コントラストなどを調整すると、また違った雰囲気の作品に仕上げることができるので、明るくするとこうなるとか、コントラストを上げるとこう変わるとか、そういったことも意識して作ってみるともっといいレンズができると思います」

最後に、これからレンズを制作してみたいと思っているみなさんに向けて、レンズ制作の醍醐味について聞いてみました。

「私の場合、最初は何となくレトロ風なポスターができればいいなと思っていたのですが、普段あまり使ったことのない機能などもを試していくうちに、70年代のポップアート風で、印刷されたアナログ感のあるポスター、というようにどんどんコンセプトが明確になっていきました。そこが一番楽しかったところですね。

なので、まだ使ったことのないPhotoshopの隠れた機能を探していろいろ遊んでみたりすると、アイデアはどんどん広がると思います。

最初は慣れない部分もあると思いますが、他のクリエイターさんが作った面白いレンズもたくさんあるので、そういうものを徹底的に遊び倒して、そこからいい要素をインスピレーションとして吸収して作っていくといいと思います」

アドビでは、Photoshop Cameraの新しいレンズの制作にご協力いただける方を募集しています。

Photoshopをご利用のクリエイターの方で、興味のある方はこちらからご応募ください。

※応募いただいた後のコミュニケーション、コミュニティでは英語が必須となります。

大石結花

デジタルクリエイター

カナダ生まれ、日本・アメリカ育ち。国際基督教大学卒業。IT関連企業勤務、Pinterestのインターナショナル・プログラムマネージャーを経て、現在はフリーランスの映像・ARクリエイターとして活動中。週末クリエイターのためのコミュニティ #週末CC 主宰。

POSTED ON 2020.08.21