フォトレタッチの極意33:パノラマ機能で迫力のあるシーンに仕上げる

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風景写真とパノラマ合成機能はとても相性がよく、標準的なズームレンズだけでより広い範囲を写したり(横でパノラマ化)、高さを表現したり(縦でパノラマ化)と、使いどころはたくさんあります。Photoshopの機能「Photomerge」を使って、目の前の迫力あるシーンを丸ごと写し取ってみましょう。解説はレタッチャー/ライターの桐生彩希さん。「Shuffle by COMMERCIAL PHOTO」に掲載した内容から抜粋してお届けします。

Before

After

レタッチの設計

1、パノラマ合成を実行する

(1)「Bridge」で写真を選択

パノラマ化の作業は、写真の選択から。Photoshopに読み込んで「ファイル」メニューの「自動処理」→「Photomerge」を実行してもよいが、Bridgeで写真を選択して、「ツール」メニューの「Photoshop」→「Photomerge」を実行するほうが分かりやすい。

(2)「レイアウト」を選択する

「Photomerge」画面が表示されたら、「レイアウト」でパノラマに合成するアルゴリズム(方法)を選択。ここでは各レイアウトを比較した結果、「球面法」を選択。「OK」ボタンをクリックして合成を実行する。今回は「コンテンツに応じた塗りつぶし」のチェックを外し、後から手動で余白を埋める処理をする。

(3)Photoshop CCで写真が表示される

Photoshop CCが起動して、合成されたパノラマ写真が表示される。合成された各写真は、「レイヤー」パネルでレイヤー別に重ねられている。

(4)レイヤーを結合する

レイヤーに分けておく必要はないので、合成したレイヤーをひとつにまとめる。このとき、「画像を統合」してしまうと周囲の透明な部分がなくなり、余白が埋めにくくなるので注意。

2、合成で生じた歪みを補正する

(1)「広角補正」フィルターを選択する

湾曲した歪みをまっすぐに補正できる機能が、「フィルター」メニューの「広角補正」フィルター。本来は水平線や建物の垂直ラインなどがゆがんでいる状態をまっすぐに補正する機能だが、「Photomerge」で生じた歪みを軽減したり、余白を減らす際にも効果的な機能だ。

(2)写真全体を表示する

作例はプレビュー画面から一部がはみ出た状態なので、全体が見える状態に調整する。フィルター画面右上の「拡大・縮小」スライダーを左に移動して縮小すればOK。

(3)歪みを修整する

「Photomerge」のゆがみを補正するときは、①「補正」を「パノラマ」に設定する。歪みを取り除くツールが②「コンストレイントツール」で、③歪んだライン上でクリックして開始点を作成。さらに、④歪みに沿ってマウスを動かすとラインが作られるので、⑤歪みの終わり付近でクリックして終点を作成。これで、指定したラインが直線になるように画像が修整される。

(4)角度を補正する

(3)で修整した直線は傾いた状態なので、水平になるように補正する。四辺をできるだけ水平/垂直にしておけばトリミング時の余白が減らせるので、違和感のない程度に整えておく。この作業は、「コンストレイントツール」で作成したライン上の○をドラッグすればOK。Shiftキーを押しながらドラッグすると、回転する角度が水平や垂直に固定できる。また、ラインを上下左右に移動して位置を調整することも可能だ。

(5)自然な奥行き感を演出

パノラマで合成した写真は、四辺すべてを水平/垂直に正すと奥行き感のない印象になってしまう。そこで作例では、右の上辺に角度を付けて奥行き感を演出。広角レンズで撮影すると画面の両端が引き伸ばされたように歪む現象を作り出すというわけだ。作業自体は(4)と同様で、「コンストレイントツール」で作成したラインをクリックして○を表示し、イメージする角度になるようにドラッグする。

(6)大きさと位置を整える

湾曲と角度を修整したら、「拡大・縮小」スライダーを元の倍率(100%)に戻す。ここでは全体が見える倍率にしているが、さらに拡大して余白を減らしてもOK。画像の位置は、「移動ツール」を選択して、写真上でドラッグして調整できる。作業が終わったら「OK」ボタンをクリックして確定。

3、色調を補正する

(1)スマートオブジェクトに変換する

色の補正には、写真の色調整に適している「Camera Rawフィルター」を使用する。まずは、「レイヤー」パネルで「スマートオブジェクトに変換」を実行。スマートオブジェクト化することで、「Camera Rawフィルター」の設定があとから何度でも変更できるようになる。

(2)「Camera Rawフィルター」を選択する

補正したいレイヤーをスマートオブジェクトに変換したら、「フィルター」メニューの「Camera Rawフィルター」を選択する。

(3)「Camera Rawフィルター」で色調を整える

作例は色調に関してはさほどイメージとは異なっていないので、微調整程度に「露光量」で明るく補正。白とび気味になったハイライト(滝の水の流れ)は、「ハイライト」と「白レベル」スライダーを弱めることで救済している。

さらに、「色温度」でイエローを強めて緑の発色に深みを出し、「自然な彩度」と「彩度」を強めて色彩に色の乗りを出してみた。調整できたら「OK」ボタンをクリックして確定する。

4、白い空を救済する

(1)クイックマスク機能を設定する

作例は左上と右上に空が写っているが、左上の空は白っぽくて印象が薄い状態。そこで、調整レイヤーとレイヤーマスクを使いこれを補正していく。調整レイヤーで部分的に補正するには、あらかじめ選択範囲を作っておくと簡単。「クイックマスクモード」と「ブラシツール」を使う。まずは、ツールパネル下部の「クイックマスクモードで編集」ボタンをダブルクリックして、「選択範囲に色を付ける」に設定する。

(2)「ブラシツール」を設定する

ツールパネルで①「ブラシツール」を選択したら、②「プリセットピッカー」をクリックして、ボケ足のある③「ソフト円ブラシ」を選択。④「直径」でブラシの太さを調整し、⑤「描画色」を「黒」に設定。

(3)選択範囲を作成する

①ブラシツールで選択したい部分をドラッグすると赤く塗りつぶされるので、補正したい範囲が含まれるように塗りつぶす。描画した部分を修整するには、描画色を「白」に変更して塗りつぶすか、ツールパネルの「消しゴムツール」でドラッグする。補正範囲を塗りつぶしたら、②「画像描画モードで編集」ボタンをクリックすると、塗りつぶした領域が選択範囲に変換される。

(4)「特定色域の選択」を選択する

特定の色(作例の場合は白)に対して補正を行なうには、「特定色域の選択」機能が適している。「レイヤー」パネル下部の「塗りつぶしまたは調整レイヤーを新規作成」ボタンをクリックして「特定色域の選択」を選択し、補正の画面が表示されたら「絶対値」に設定。

(5)白い部分を青系に偏らせる

補正したい部分は白い色なので、「カラー」から「白色系」を選択。白を青に近づけるには、「シアン」と「マゼンタ」スライダーを右に移動して増加すればよい。画面右上の空の色に近づくように補正量を調整する。

5、余白を埋める

(1)「切り抜きツール」を選択する

余白が広過ぎるときれいに埋めることができないので、ツールパネルの「切り抜きツール」でトリミングする。切り抜いたデータを保持して後から変更できる設定もあるが、パノラマ合成するとファイル容量が大きくなるため、ここでは「切り抜いたピクセルを削除」をチェックする。

(2)切り抜く範囲を指定する

枠をドラッグして切り抜く範囲を指定。余白が小さく、かつ写真が大きく見えるように調整するのがポイントだ。指定できたら、画面上部の「○」ボタンをクリックして切り抜きを実行する。

(3)レイヤーを複製する

現状のレイヤー構成は、スマートオブジェクト化して「Camera Rawフィルター」を適用したレイヤーと、「特定色域の選択」の調整レイヤーの2つ。余白を塗りつぶすには通常のレイヤーが必要なので、見えている状態でレイヤーの複製を作成する。この処理は、キーボードの「Alt+Shift+Ctrl+E」(Macは「Command+Shift+Option+E」)を押すだけでOK。複製を作ったら、下の2つのレイヤーは必要ないので非表示にしておく。

(4)余白を選択する

(3)で作ったレイヤーに対し、「Ctrl」(Macは「Command」)キーを押しながら、「レイヤー」パネルの「レイヤーサムネイル」をクリック。これで、レイヤー画像の選択範囲が作られる。以降の作業は複製したレイヤーに対して行なうので、「レイヤー1」が選択された状態にしておく。

(5)選択範囲を反転する

選択範囲が作られたら、「選択範囲」メニューの「選択範囲を反転」を実行。これで、透明な余白部分が選択できる。

(6)選択範囲を拡張する

現状の選択範囲は余白にピッタリなサイズなので、念のため選択範囲を広げて完全に余白が含まれる状態にする。使う機能は「選択範囲」メニューの「選択範囲を変更」→「拡張」で、「5pixel」ほど拡張しておく。

(7)「塗りつぶし」を実行する

「編集」メニューの「塗りつぶし」を選択して、「内容」から「コンテンツに応じる」を選択。「OK」ボタンをクリックして塗りつぶしを実行すると、選択した余白が周囲の画に応じて自然に見えるように塗りつぶされる。繰り返し模様などが目立つときは、ツールパネルの「スポット修復ブラシツール」などで修整する。

完成

さらに詳しい解説は、Shuffle by COMMERCIAL PHOTO で連載中の「風景&ネイチャー レタッチの教科書」(解説・写真:桐生彩希)に掲載されています。サンプルファイルもダウンロードできますので、ぜひ挑戦してみてください!

POSTED ON 2019.07.5

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