デザインは経営レベルでの議論が必要。その理由とは?

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Appleが、Nikeが、そしてAirbnbが、デザイン先導型の戦略によって他社をしのぐ業績をあげているというのに、いまだにデザインを単なる添え物、おまけ、製品の美しさとしか見ていない企業がたくさんあります。つまり、ビジネスの世界ではまだ、デザインや優れたユーザーエクスペリエンスを企業の目標や成果の一部に組み入れるという考え方が、ほとんど受け入れられていないということです1

「デザイン先導型ではない企業は、デザインとは『美しいかどうか』だと考えています」と言うのは、執筆家でありブランドコンサルタントでもあるDebbie Millman氏。「実際は、市場での成果、ブランドの関連性、強力なカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)戦略に関するものなのです2」 デザイン的な観点を介在させることはビジネスの意思決定や成果を成功に導くうえで極めて効果的であり、ビジネスを長く存続させるには経営陣がその役割を担うことが不可欠となります。

クリエイティブな経営陣やリーダーは、問題を見極めたり顧客を本当に理解するためにデザインを活用し、そういった情報にもとづくソリューションを構築して製品やカスタマーエクスペリエンスの向上を図っています。顧客を理解してエンゲージメントを構築できれば、その顧客は満足度もロイヤルティもアップし、企業の成功を支えてくれます。

経営陣がデザインを踏まえて意思決定をおこなうようになれば、デザインはもはや個々の製品やユーザーエクスペリエンスとして存在するだけのものではなくなります。協力体制のもと、常にユーザーをしっかりと見据えるというデザイン的な観点は、経営陣がビジネスを成功させるために必要です。

反対側からの視点

よく言われるように、デザイナーはユーザーに共感することでユーザーを理解します。ユーザーの立場に立って考えるのです。これと同じ法則が、経営陣とコミュニケーションする際にも当てはまります。ブランディングの役割や財務目標、あるいは市場ニーズなど、ビジネスのあらゆる側面をまず理解しなくてはなりません。デザイン戦略やデザインリーダーシップについて論じるのはその後です。

おそらくこれを最も端的に言い表しているのが、MINEのディレクターを務めるChristopher Simmons氏の言葉でしょう。「『どのようにビジネスを運営すべきかを申し上げたいのです。現在どのように運営されているかを理解したいわけではありません』というのは、うまい言い方ではありません3」 つまり、デザイナーはビジネスプランとビジネス目標の両方を聞いたうえで、その促進や改善をデザインで先導する方法を考える必要があるのです。

IntelでUXデザイン担当シニアディレクターを務めるAndrew Hooper氏に、デザイン先導型戦略のベストプラクティスについて聞きました。Hooper氏は、自分より先に、そしてもっと予算規模の大きなデザインチームより先に、広告代理店やブランディングエージェンシーが話し合いの席に着くようになってきたのを見て、デザイン以外のビジネス的側面がどのように成長し進化していくのかをしっかりと理解する必要があることに気付いたと言います。

「私自身、デザインビジネスを理解するには、ビジネスを理解しなくてはならないと思いました」と言うHooper氏。「特定分野のエキスパートとしてその場に居合わせながら、話し合われている他の分野や専門知識については何もわからないということほど最悪なことはありません」

Hooper氏はFrog Designでビジネス開発リーダーを経験したことで、こうしたビジネスの役割について貴重な見識を得ることができ、その視点を今度はクリエイター側の立場で活かしています。「ビジネスのプロたちが言うことを理解できる知性を身に付けないまま、話し合いの場に転がり込んできたとしたら、
絶好のチャンスを逃してしまうことになります」とHooper氏は言います。

Team succes. Photo young businessmans crew working with new startup project. Generic design notebook on wood table. Analyze plans hands, keyboard.

これを言い換えると、常に様々なかたちの学びが必要ということになります。デザインリーダーがしっかりと理解しなくてはならないのは経営目標だけではありません。市場データをもとに既存の市場について理解することも、ビジネスの現状や進むべき未来について理解することも不可欠です。そのためには、
仕事の成果を逐一把握しておくことや、社内外の状況に照らして成功や失敗の評価をおこなうことも必要になってきます。

しかし、世界中の情報をすべて集めたとしても、率直な対話と確かな信頼関係がなければ何の役にも立ちません。まずは、ビジネスパートナーに耳を傾けること。相手のニーズに応えること。そして何より重要なのは、関係性を築き上げることです。

 

つながる、関わる、活性化する

ユーザーの立場に立って考えるというデザインの基本原則は、リーダーシップに関しても極めて有効です。Hooper氏が実践しているベストプラクティスのなかに「物語づくり」というものがあります。まず既存の市場について理解し、必要性や関連性のあるチームやスキルがどれなのかを把握することから始めます。次に、急いで制作に取りかかるのではなくペースを落として、全員が一緒に作ろうとしているものについて合意できていることを確認します。この際に重要となるのが、指針を1~2文にまとめることだとHooper氏は言います。この指針はシンプルに書かれてはいても、感情的なつながりを生み、インパクトがありプロジェクトとの関連性を感じられて、チームを奮い立たせるものでなくてはなりません。

「自分たちが何をやろうとしているかをスローガンのようなかたちに凝縮してまとめ上げるというのは価値のあることですし、自分たちのゴールを定めることにもなります」とHooper氏は言います。

ビジネスパートナーや経営陣との関係を築くには、ポジティブなカスタマーエクスペリエンスを創出する際と同じように、影響力の継続と顧客ロイヤルティの向上を実現するためのデザイン原則を利用します。Forrester Research主任アナリストのAllegra Burnette氏は、簡単さ、効果、感情に訴求するという点は、ユーザーエクスペリエンスのデザインで意図的に計画している方法と同じだと言います。

「デザインはビジュアルインターフェイスであり、インタラクションでもありますが、問題を理解すること、問題を解決することでもあるのです4」と言うBurnette氏。そのことが経営陣の目に明らかになればなるほど、デザインは絶対に必要なものとして価値が大きくなります。

コスト効率が高く思いやりのあるコラボレーション

 学ぶことと関係を築くことによって話し合いの場でデザインの議論ができるようにはなりますが、デザインの議論を継続するために役に立つのは一貫性のある効果的なコラボレーションです。早い段階からデザインについて考えることで、時間とコストを削減しながら大きな成果を生み出せると示すことができれば、デザインは絶対に必要ということになります。この点についてもHooper氏は声を大にして提唱しています。つい先日、公開後に次々と問題が明るみに出て初めてHooper氏のチームに修復の依頼が来たユーザーエクスペリエンスのことを考えるとなおさらです。

「全面的に再構築する必要がありました」とHooper氏は言います。「これでは時間がかかりますし、コストも高くなってしまいます。うまくやれば、このようなスキルをプログラムの適切なフェーズに取り入れることで、時間もコストも節約できると証明することができます」

さらに、いざ提供する際にも全フェーズでこうしたスキルを活かせるようにしておくことが重要だとHooper氏は言います。「そうすれば(課題や調査を)統合して深い情報が得られるようになり、問題点をよく理解して、それにまつわるデータをもとに変化を起こすことができます」

他にも心に留めておくべきことがあります。率直なコミュニケーションと仕事に対する正しい理解を維持できれば、ポジティブなコラボレーションが生まれます。必ずしも意見が一致しない開発者や他のチームと仕事をすることについて、デザイナーのLuke Jones氏がMediumに書いているのは、チームがひとつになるにはお互いを尊重して仕事に責任をもつことが絶対に必要ということです。「お互いを尊重しあえば、敵と味方という考え方から抜け出すことができます」とLuke Jones氏は書いています5

Hooper氏は、自分自身の壁を超え、目に見える成功に向かって様々なチームとしっかりパートナーシップを築くことも推奨しています。プロジェクトに関わる他の人たちと連帯して信頼関係を築くことは、経営陣とのつながりを構築することと同じぐらい重要であり、それがチームとしての価値を高めることになるとHooper氏は言います。

「足並みをそろえなければ、他の人たちに関心を持ってもらうことはできません」と言うHooper氏。「それ相応のレベルの信頼関係を構築し、自分は本当に正しいことをするためにここにいるのだという情熱と本気を見せなくてはなりません。グループやチームの問題解決に役立とうとしていることを示す必要があるのです」

デザインを単なる美しい最終仕上げと定義してしまったら、限定的な効果しか得られないばかりか、多層的に大きな成功を収められるビジネスチャンスを拒むことになってしまいます。顧客満足から足並みのそろったコラボレーションによるコスト削減まで、経営陣はもはや、デザイン的な観点を取り入れる必要性と影響力を無視することはできません。デザイナーが示すのは、強固で持続的なパートナーシップを構築すること、ビジネス目標を理解してその達成に向けて取り組むこと、他のリーダーやチームとの関係を構築すること、顧客が本当に求めているものを理解することによって、ビジネスの成功を醸成し、先導できるということです。

1Westcott, Michael『Design-Driven Companies Outperform S&P by 228% over Ten Years』Design Management Institute 2014年3月10日 http://www.dmi.org/blogpost/1093220/182956/Design-Driven-Companies-Outperform-S-P-by-228-Over-Ten-Years–The-DMI-Design-Value-Index

24『What is ‘design-led’?』Adobe Creative Cloud for Enterprise https://video.tv.adobe.com/v/18495t1/

3Benton, Dave『How Designers Get a Seat at the CEO Table』99U http://99u.com/articles/33909/christopher-simmons-designers-incharge

5Jones, Luke『Designers.Work Better with Developers』Medium 2016年3月17日 https://medium.com/swlh/designers-work-better-with-developers-ecd509a00d30

POSTED ON 2019.02.15