効果的な共感マップを作成するための10のヒント | アドビUX道場 #UXDojo

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もしプロジェクトを成功させたければ、デザインの対象となる人々の十分な理解は不可欠です。そのためにデザイナーが使用できるテクニックはたくさんありますが、中でも共感マップの作成はメリットの多いテクニックのひとつです。名前からもわかるように、共感マップはチームがエンドユーザーにに対する共感を築く上で役立ちます。チームメンバーにユーザー中心の視点から物事を見つめさせ、ユーザーのニーズや要望を理解させてくれる手法だと言えるでしょう。

この記事では、共感マップとは何かを定義し、活用できる共感マップを作成するのに役立つ、実用的な10のヒントを紹介します。

共感とは何か?

共感とは、相手の状況や感情を特定し理解することです。「共感」という言葉を、「相手の立場になって考える」の同義語として耳にすることがよくあります。共感はデザイナーの中核的なスキルであり、ユーザーの立場になって、その視点を受け入れる能力です。

共感マップとは何か?

共感マップは、チームがユーザーに関して知っていることを明確にするために使う視覚化ツールです。このツールは、チームがユーザーのニーズや要望の根底にある「理由」をより広く理解する役に立ち、それにより、構築するモノからそれを使用するヒトに視点を移すことができるようになります。ユーザーに関して理解していることを特定し、その情報を図上に配置していくにつれ、ユーザーの日常や問題点や機会を、より総合的に把握できるようになります。

製品を使用する際のユーザーの意見、考え方、行動、感情を示す共感マップのビジュアル。
共感マップは、ユーザーの意見、考え方、行動、感情を示す

共感マップの形式や規模はさまざまです。典型的な共感マップには次の4つのカテゴリがあります。

  • 意見 – このセクションには、ユーザーが製品に関して発言していることが含まれます。インタビューやユーザーテストのセッション中に記録されたユーザーの実際のコメントが含まれているのが理想です。
  • 考え方 – ユーザーの頭を占めているものは何か?ユーザーにとって重要なことは何か?など、製品を使用する際にユーザーが考えていることが含まれます。
  • 感情 – ユーザーは何に悩んでいるのか?何が彼らを興奮させるのか?体験についてどう感じているのか?など、ユーザーの感情に関する情報が含まれます。
  • 行動 – ユーザーはどのようなアクションをとるか?ユーザーの行動について気付いたことは何か?などの情報が含まれます。

上に記述された共感マップは、初期の分析においては役立つものの、ユーザー体験のデザインに関するブレインストーミングを行うには、少々一般的すぎます。そこで、共感マップをUXデザインにより特化したものにするるために、ポール・ボーグはプロダクトデザインを念頭に置いた形式を提案しました。そのマップは異なるカテゴリの組み合わせから構成されます。

  • 感情 – ユーザーは体験についてどのように感じているのか?何が本人にとって重要であるのか?
  • タスク – ユーザーはどのようなタスクを完了しようとしているのか?
  • 影響 – どのような人物、物事、または場所がユーザーの行動に影響を与えているのか?
  • 問題 – ユーザーが直面しており解消したいと考えているかもしれない問題は何か?どのような恐れ、葛藤、不安を抱えているのか?
  • 目標 – ユーザーの最終目標は何か?ユーザーは何を達成しようとしているのか?
タスク、影響、目標、問題、感情の5つの区画に分割された共感マップ。
タスク、影響、目標、問題、感情の5つの区画に分割された共感マップ。

共感マップを使うと、ペルソナについて知っていることを整理して視覚化することができる 出典: ポール・ボーグ

共感マップとユーザーペルソナ

共感マップとユーザーペルソナは緊密な関係にあるコンセプトです。通常、共感マップはユーザーペルソナの基礎を構成するものとして使われます。ユーザーに関する総合的な情報を把握したら、その情報をペルソナのモデルに変換できます。ペルソナは実際の人(エンドユーザー)を表すべきで、したがって、名前、年齢、動機、個性、性格といったより人間味のある特徴を備えます。

ユーザーペルソナには、デモグラフィックデータ、動機、性格のタイプ、好みのメディアといった情報が含まれる。
ユーザーペルソナの例 出典:Xtensio

共感マップを使用するタイミング

UXデザインプロセスにおいて、そのはじの段階から共感マップを使用するのが最適です。理想的には、最初のユーザー調査が完了した直後に作成されるべきものです。そうすることで、製品の要件に大きな影響を与えられ、プロダクトチームが有意義な価値提案を行えるようになります。

共感マップを制作する前に行う5つの作業

1. 共感マップ作成の主要な目的を定義する

共感マップを作成する前に、なぜ作成する必要があるのかを明確に理解しておくことが必要です。マップを作成する必要がある一般的なケースとして、次の2つが挙げられます。ひとつはユーザーを大まかに理解するため、もうひとつは特定のタスクや状況を把握するためです。例えば、特定のユーザーの行動を理解するのであれば(ある種の購入決定プロセスなど)、タスクを基準とした共感マップか、あるいは、ある決定を基準とした共感マップを作成することになるでしょう。

2. 調査を実施する

最も価値のある共感マップは、実際のデータに基づいて作成されます。ユーザーインタービューやダイアリースタディなどの質的調査から結果を集めて、共感マップ作成に参加する各メンバーに、事前にその調査結果を通読してもらいます。チームメンバー全員が調査データを把握したら、マップ作成に着手することができます。

ヒント: アイデアの価値の高さは、通常、ユーザーの声に耳を傾けた時間によって決まります。まずは、現ユーザーと潜在的なユーザーへのインタービューと観察を行い、彼らの問題や要望をよく理解することから始めましょう。

3. 一人で実行しない

共感マップ一人で作成することもできますが、チームで作業するほうが良い結果を生み出します。共感デザインは団体スポーツのようなもので、チームの各メンバーがユーザーのことを考えて製品を作り出すことが欠かせません。共感マップの作成は素晴らしいチーム演習であり、メンバーが集結してユーザーに関する情報を持ち寄ります。チームの中心メンバーを全員(プロダクトマネージャー、デザイナー、開発者、マーケティング担当)をセッションに招待しましょう。

ヒント: セッションにはステークホルダーも招待するとよいでしょう。ステークホルダーがセッションに参加することには2つのメリットがあります。まず、ビジネスゴールとユーザーのニーズのバランスを取りながら、より詳細な共感マップを作成することができます。また、チームとステークホルダーの理解が一致しているか確認することもできます。

4.セッションには十分な時間を確保する

セッションにはあまり時間をかけるべきではありませんが(通常、約30~60分)、部屋を予約するときはそれに30分を追加しておきましょう。セッション開始前の15分間で、ホワイトボード、付箋、マーカーなどの道具を準備します。セッション後の15分間は、セッションの結果をまとめる時間です。

ヒント: セッション中に手掛かりとなるようなプロジェクト関連の情報を印刷しておくようにしましょう。印刷した情報を渡すことで、会議中にメンバーがデジタル端末に手を伸ばすことを防げます。

5. 経験のあるモデレーターをセッションに招待する

モデレーターは、セッションの進行役を務める人です。モデレーターの役割の一部は、チームメンバーにユーザーの特徴についてのブレインストーミングを促す質問を投げかけることです。経験豊かなモデレーターとは次のような人を指します。

  • 回答を誘導する質問をしない。回答の一部をうっかり質問に含めたり、独自の意見を無意識に質問に刷り込むことで、参加者の思考を特定の回答に導く質問をしてしまうことのない人
  • 独自の意見を述べない。常に自身の反応を抑制することができる人
  • すべての人が参加するように仕向けられる。

共感マップ制作セッション中に行う5つの作業

1. ペルソナごとにマップを作成する

「マップごとに1つのペルソナ」というルールに従います。つまり、ペルソナが複数存在する場合は、共感マップも同数存在するということです。複数のペルソナからひとつのマップを作成すると、意味のある見識を得られなくなります。

2. 文脈を設定する

共感マップの対象となる人物、またはペルソナを定義することから始め、彼らが実行または達成しようとしている目標を定めます。目標を達成しようとしている対象者の所在地に言及するのは価値があることです。例えば、「空港にいる旅行客が、モバイルアプリを使ってタクシーを呼ぼうとしている」とすることです。文脈を設定する目的は、チームが対象者の状況を理解して共感できるようにすることです。

3. ペルソナの基本情報を追加する

チームに質問をする前に、チームがユーザーペルソナの立場になって考えられるような準備ができていることが重要です。チームのムードを切り替えてペルソナをよりリアルに感じられるようにするには、次のようなちょっとしたコツがあります。

  • ペルソナに名前と役職名を与える。
  • 詳細な特徴をいくつか追加する。目、口、鼻、耳、ヘアスタイルなど、他のプロファイルとは異なる特徴を描き加える。

4. チームメンバーが発言しやすい状況を作る

ペルソナの基本的な特徴を定義したら、セッション本番の時間です。「製品を使用する際にユーザーが体験する問題は何か?」といった質問に答えながら、チームはユーザーの特徴についてブレインストーミングを行います。それぞれのメンバーは、その回答を付箋に書き込み、マップに貼り付けます。共感マップに貼り付ける時に、それぞれの付箋についてチーム内で話し合うことが重要です。質問を通じて、なぜあるメンバーがそのように考えているのかなど、他のメンバーにとって有益とな知見を得ることができます。

ヒント: マップに直接書き込むのではなく、付箋を使いセクションごとに貼り付けます。付箋は簡単に、取り外し、変更、グループ化を行えます。そのため、同じ区分に属する似た考えを一か所ににまとめることができます。また、色付きの付箋を使って、メンバーごとに色分けするのもよいでしょう。そうすれば、作業プロセスや結果のマップをより良いものにできます。

色付きの付箋が共感マップ作成セッション中にホワイトボードでグループ化された。
デザイン思考のセッションで作成された共感マップ。参加者はユーザーに関するアイデアを書き込んだ付箋を共感マップの該当セクションに貼り付けた 出典: IBM

5. 結果をまとめる

セッションの最後には、完成した共感マップを確認し、見つかったパターンについて話し合います。チームメンバーがセッションに関する考えを共有しやすい雰囲気をつくりましょう。そして、セッションから得られたプロダクト開発に役立つ新しい見識は何か?またはユーザーに関する検証したい仮説は何か?などを尋ねます。すべての情報を集めたら、整理してまとめ、チームメンバーと共有します。

共感マップ制作セッション後に行う作業

共感マップを作成するメリットは、ワークショップで得られるものだけに限りません。デザイン資料としての共感マップは、開発サイクルの過程で、デザインの中間成果物として使用できます。

共感マップを参照する

共感マップは資料として使用することができます。はっきりとした方向性がつかめないときの指針としてチームを導き、ユーザーについての前提の確認が必要な時にも使えます。ただし、ユーザーについて新しい情報を学ぶたびに共感マップを修正し、常に最新の状態に維持しておくことが重要です。

共感マップをポスター化する

共感マップをポスターにして、ユーザーの考えていることや感じていることを思い出させるきっかけとして活用できます。ポスターをいくつか作成し、チームが集まるエリアの壁に掛けておけば、作業をする際にユーザーの考えや気持ちを意識しやすくなるでしょう。

ブライアンと名づけられたユーザーについての詳細が各区画に書き込まれた共感マップをまとめたポスター。
共感マップをポスターにして、オフィスの人が多く通る場所に掛けておく 出典: ポール・ボーグ

おわりに

共感マップは、顧客優先の考え方をチームに意識させることができる優れた手段です。上手につくることができれば、共感マップは連鎖反応を引き起こして、プロジェクト全体に良い影響を与えることができます。共感マップを通じてユーザーをより深く理解できれば、製品の要件が明確化され、それが製品戦略に影響を与え、プロトタイプにも影響を与え、その結果、最終的なデザインがより良いものになるでしょう。


この記事は10 Tips to Develop Better Empathy Maps(著者:Lindsay Munro)の抄訳です

POSTED ON 2020.03.2