「デザイナーの仕事」と「ビジネスの成功」の関係を示す20の手段 | アドビUX道場 #UXDojo

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これまでにDesigner Fundで、様々な業界の大企業に投資して、数百人のデザインリーダーにアドバイスを行ってきましたが、現在私がデザイナーの影響力を高める最大の機会のひとつだと考えていることは、デザイナーの仕事とビジネスの成功がいかに連動しているかを示すことです。

デザイナーとして私たちが自然に持っている傾向は、私たちのスキルの重要性を強調することで、最終的な収益に与える影響については重視しません。たとえば、マネージャーに向かって、静的なスタイルガイドからコンポーネントベースのデザインシステムへの移行を提案したら、コストがかかる割に合わない話だと受け取られることもあるでしょう。デザインシステムが長期的にどうビジネスコストを削減できるのかは、マネージャーには明確ではないからです。

デザイナーとビジネスチームの架空の会話。デザイナー「デザインシステムを構築すべきだ。だからエンジニアが必要だ」。ビジネスチーム「申し訳ないが、そのためのリソースはありません」。デザイナーは手で顔を覆う。

もうひとつのよくある例は、企業のブランドが時代遅れになり始めていて、いろいろな箇所に一貫性がなくなっている状況です。簡単なブランド更新のタスクを提案しても、製品が問題なく機能しているために、マネージャーはこの作業に優先順位を付ける必要性を認めません。多くのマネージャーは、ブランドが売上高のような指標にどのように影響するかを理解していないものです。

デザイナーとビジネスチームの架空の会話。デザイナー「ブランドを一新しましょう。一ヶ月もあればできるでしょう」。ビジネスチーム「申し訳ないが、れは優先事項ではありません」。デザイナーは手で顔を覆う。

あるいは、仮説を評価するためのリサーチを行って、新しい機能の必要性を示しとしても、すでに出来上がっているロードマップに沿ったものでなければ、何かを変えることはありません。デザイナーの革新的なアイデアは、ビジネスの戦略的な方向性に影響を与えるには遅すぎることがよくあります。

デザイナーとビジネスチームの架空の会話。デザイナー「私たちが行った調査によると、別の機能の構築が必要です」。ビジネスチーム「申し訳ないが、それはロードマップには載っていません」。デザイナーは怒った顔をする。

上に挙げた例が示しているのは、デザインはビジネスに価値を生み出すものではなく、コストが発生する作業として捉えられている場合が多いということです。それは、重要な決定を下す際にデザインチームに与えられる権限を少なくし、デザイナーが素晴らしい仕事をするためのリソースを減らします。

デザインをビジネス視点から検証する

では、デザインの価値をビジネスチームに効果的に示すにはどうすればよいのでしょうか。最もシンプルな解決策は、デザインを通じて会社の収益増経費削減にどう貢献しているか示すことです。

デザインがどのように収益を生むかを示すために使える例はたくさんあります。デザインによって可能になることには、以下のようなものがあります。

  • 平均注文数を増やすためにeコマースのフローを再設計し、売上を増やす
  • サインアップの増加、離脱の削減によりコンバージョンを促進する
  • 顧客基盤を拡大し、見込み顧客数を増やすことで収益増につなげる
  • 新製品の公開やターゲットの細分化などにより、まったく新しい価値を提供する機会をつくる
  • キャンペーンを通じてブランドの認知度を向上させ、新規登録の促進やユーザー満足度の向上を図る
  • 操作性の向上や機能追加により、ユーザーの維持と使用率の向上を実現する

デザインはビジネスコストを節約することもできます。デザインにより次のようなことができます。

  • 製品の使いやすさの向上により、サポートやトレーニングにかかるコストを削減する
  • デザインシステム導入などによりプロセスを改善し、デザインとマーケティング部門やエンジニアリング部門とのやり取りを減らす
  • 公開前に仮説をテストすることで、バグの防止とメンテナンスの軽減を実現する
  • プロセスを高速化する内部ツールをデザインし、チーム間での作業効率を向上させる
  • 企業ブランドを向上させ、技能の高い就職希望者を引き付ける

「20 Levers for Return on Design」フレームワーク

このアプローチは、私がDesigner Fundで開発している「20Levers for Return on Design」というフレームワークに実際に使われています。デザイナーが自分の仕事の価値を示し、より戦略的になるのを助けることを目的に開発されているフレームワークです。

下の図は4つの象限に手段を分類しています。上段は直接的な影響があるもの、下段は間接的な影響があるもので、左側はコスト削減できるもの、右側は収益増に関わるるものです。

「20 levers for Return on Design」フレームワークは、節約と収益という組織的成果に直接的または間接的に貢献するデザインの価値を伝える手段を示している。

直接の影響があれば、デザイナーの仕事とビジネスの収益の間には直接的な相関関係があり、因果関係さえあります。間接的な影響は、「もしこうであれば、ああなるのだが」のような文脈に関連または依存している傾向があります。例えば、「もしNPS(顧客推奨度)を改善して口コミを増やせれば、売上の増加とマーケティングコストの削減につながるのだが」といったケースです。

このフレームワークを使い、私たちは最近Design for Business Impacを立ち上げました。これは、ビジネスとデザインの関係についての無料ライブラリです。初期のスタートアップ企業から、Airbnb、Slack、Pinterest、Dropbox、Gustoなど大規模に成長した企業まで、さまざまなケーススタディが揃っています。それぞれの企業で、デザインがどのようにビジネス上の障害を取り除き、会社の業績向上に貢献したかを詳細に記述しています。

Airbnbにおける、間接的な影響による節約と収益増

意味のあるROI(投資収益率)の測定が困難なものをデザインする場合でも、デザイナーが自分たちが創出している価値を明確に示すために、 「20 levers for Return on Design」フレームワークは役立ちます。

例えば、Airbnbのデザインリードであるベンジャミン・エヴァンスは、「誰もがどこへでも」を手助けするというAirbnbのミッションの一環として、差別防止という課題に取り組みました。差別を撤廃することの価値を金銭の観点から定量化するのは困難でしたが(つまり、どこへでも行けるということを直接測定することができない)、ベンジャミンは、彼のチームの仕事で実際に存在していそうなビジネスケースをつくることができました。

  • 新たな成長市場に参入して収益を上げる
  • 不適切なカスタマーサポートの体験を減らし、解約率を下げることでコストを削減
  • ユーザーの満足度、操作性、ブランド認知、継続利用を向上させることにより、ROIに間接的な影響を与える

ベンジャミンのチームがビジネスに効果をもたらすために、どのようにデザインしたのかを紹介するケーススタディが一般公開されています。

デザイナーとして、私たちの仕事が評価され、ユーザーのニーズを解決することを望むのであれば、デザインするソリューションとビジネスニーズの間の溝を埋める必要があります。

Airbnb ベンジャミン・エヴァンス

いくつかの注意すべき点

1. 影響を考慮して、自分の仕事を位置付ける

仕事をどう位置づけるかによって、周囲からの反応は変わります。従って、与えられる権限やリソースにも影響があります。組織内のビジネスチームにアプローチすることは困難で難しく思われるかもしれません。しかし、実際には非常に単純です。やりたい仕事が重要なビジネス指標にどのように影響するかを理解して、それを相手に伝えます。例えば「登録のフローを変更したいです」と言うのではなく、「収益を増やすアイデアがあります」とビジネス側のチームメンバーに言うのです。自分がやりたい仕事を相手が重視する指標に基づいて位置づけると、自分が生み出している価値をより明確に伝えることができます。

ステークホルダーを理解し、彼らの言葉で自身の仕事の価値を伝えることが最初のステップです。彼らが気にかけている指標に影響を持つことに成功したら、すべての人向けのストーリーを取りまとめます。組織全体がデザインの影響を理解するようになれば、デザインチームの先導者として、他チームの重要なビジネスパートナーとなることができます。コスト扱いから、欠くことのできないリソースへの変身です。

2. 小さく始める

すべてのデザイン変更が、何億円もの追加収入や数千人の新規登録につながるわけではありません。フレームワークを使うときには、小さく始めて、そこから大きくすることを勧めています。「最小の変更で最大のROIを達成するにはどうすればよいか」と尋ねることから始めましょう。まず、小さなボタンや、簡単な代替リンクの設定から始めることで、迅速かつ低コストで成果を実証することができます。成功の功績が認められれば、次はさらに多くのリソースを要求することができるようになります。

3. キャッシュを最終目標にしない

この記事で言おうとしていることは、デザイナーの仕事の最終目標がお金儲けだということではありません。ほとんどの場合、私たちはより大きな目標を達成するために働いており、収益は目的を達成するための手段です。

これからも、「20 levers for Return on Design」フレームワークを使用したケーススタディを増やしていくつもりです。目標は、経営陣が意思決定を行うために必要な原因と効果の例を、デザイナーに提供することです。デザイナーは、個々のスキルだけでなく、ビジネスへの影響についての理解も進める必要があります。私の友人であるケイティ・ディルは「とにかくできることを示そう!」と言っています。


この記事は20 Levers for Communicating the Business Impact of Design(著者:Enrique Allen)の抄訳です

POSTED ON 2020.03.16