危機の時代に必要な「良いサービス」をデザインするために | アドビUX道場 #UXDojo

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危機は地域社会を一つにします。COVID-19パンデミックが世界に広がり始め、各国がロックダウンを余儀なくされたとき、英国政府の土地設計・計画担当ディレクターのルー・ダウンは行動を起こすことを決意しました。ダウンは、デザイナーが集まり、皆で考えたアイデアを共有する必要性がこれまで以上に高まっていることを確信し、躊躇なく公開オンラインミーティングを開催して、危機的な状況におけるサービスのデザインについて議論しました。

「今年、私は『Good Services』という本を出版しました。これは、良いサービスデザインのための15の原則に基づいています」と、イギリス政府の先駆的なデジタルサービスのデザインをリードしたダウンは、その動機を説明します。「これらの原則は、危機に直面しているサービスにとって大いに意味があるものですが、国、そして世界が存亡に関わる状況に陥ったことで、新たな側面からのニーズが生まれています」

ルー・ダウンの『Good Services:How to design services that work』。
ダウンがGood Servicesを書いたのは、 20年近いサービスデザインの業界の成果として私たちが毎日使用しているサービスのほとんどが、未だにひどいものであることを発見したため

ユーザーのニーズに合わせたデザインの重要性

前例のない危機的状況のためのサービスをつくり出すことは、明らかに大きな挑戦です。しかし、ダウンは、サービスのデザインに過ちがあるのは、特に目新しいことではないと考えています。

「危機の際でも、過ちを犯すのはいつもと同じ理由です。自分が十分な知識を持っているという前提に立ち、ユーザーのニーズに耳を傾けたり、ユーザーのニーズに合わせてデザインをしないからです」

デザイナ-は普段から何かを素早く構築しなければならないために非常に忙しいものですが、危機の中にあるユーザの役に立つサービスをデザインすることは、さらに緊急度が高い行為です。

「危機的な状況ではデザインが不可欠です」とダウンは強調します。「それなしでは、命を危険にさらすようなミスを犯すかもしれません。最終的には、機能しないものを構築するために貴重な時間を無駄にすることになるでしょう。しかし、周りの誰もが急いでいるときに、デザインの意図を届けユーザーニーズに応えるのは容易なことではありません。私がしようと思ったことは、私たちがコミュニティとして共有し構築してきた知識のすべてに形を与え、現在のような危機的状況にユーザが対処できるようになるサービスのデザインに役立てることです」

上の動画は、ルー・ダウンが主催したDesign for Crisisの最初のオンラインミーティングです。

世界のデザインコミュニティからの参加

2020年3月23日に開催されたオンラインミーティングには、25カ国から200人を超える参加者が集まりました。この会議の目的は、危機的状況でユーザーをよりよくサポートしたり、より迅速に対応できるようになるための一連の原則を作成し、新しいサービスのデザインや既存サービスの改善に利用できるようにすることでした。

「それはすばらしい機会になりました」とダウンは回想します。「あまりにも多くの人が参加しようとしたため、私のアカウントは開始1分で最大接続数に達してしまいました。その場で得られた貢献は信じられないものでした。これこそが世界のデザインコミュニティの真の力です。協力して善い行いをするために団結し、知識と経験を共有しました。ちょうど、そのときに書いたり話したことをまとめたところです」

協力者たちは、ベストプラクティスを定義するため、共同で公開ノートを作成しました。議論されたトピックは、現在の状況でユーザーが経験するであろう段階をたどりました。まず、何が起こっているのかを理解し、何をする必要があり、どのように行動して生き残るのかを考え、変化するニーズに迅速に対応する組織を支援するという流れです。参加者たちは、この危機が人々の生活に与える影響を、明確、透明、かつ正直に伝えることがいかに重要であるかを強調しました。また、彼らは、恐怖やストレスや混乱を感じている人々が最もサービスにアクセスする可能性が高いとして、人々に過度な負荷をかけないことの重要性を指摘しました。

最後に、参加者たちは、サービス構築に24時間しかない場面で力を入れるべき、最も重要な事柄について議論しました。たとえば、やるべきことに集中して技術を優先しない(新しいアプリやサイトの構築よりシンプルな画像の方が効果的な場合もあるかもしれない)、シンプルに保ち既存のリソースを再利用する、メッセージが可能な限り幅広い層に届くように共感を持って多様性の実践をするといった話題です。

4つのチャートは、曲線の平坦化に対するソーシャルディスタンスの影響をシミュレーションしています。
「流行曲線の平坦化」という言葉はつい最近、私たちの語彙に加わったばかりですが、そのメッセージを実際に広く伝えたのは、ワシントン・ポストのような様々なソーシャルディスタンスの戦略がいかにCOVID-19の感染拡大を遅らせるかを示すビジュアルだった

危機的な状況でデザインするための10の主要な原則

ダウンは、作成されたノートを基にして、危機に直面したときの10のデザイン原則を編集しました。誰もが継続的に貢献できる一般公開されたドキュメントです。10の原則の要約は、ダウンのブログ記事に以下のようにまとめられています。

  1. 害を加えない: チームのメンバーやユーザーを危険にさらすような行動を割ける
  2. 真実を語る: 信頼できる情報源から得た検証済みの事実のみを使用して、公平で誠実であることを心掛ける
  3. 明確で実践的に: 何をすべきかについて、ユーザーに明確で実践的な指示を与える
  4. ユーザーによりそう: ユーザーが情報やサービスにアクセスしようとしている状況を把握する
  5. 脆弱な立場の人々を優先: 最も危険にさらされている人々、最も支援を必要としている人々がサービスを利用できるようにする
  6. 力を与える: 人々が自分で問題を解決することができるようなツールを提供する
  7. 適切な行動を促す :ユーザーやチームのメンバーが、本人と周囲の人々の利益になるように作業できるよう支援する
  8. 迅速に変化に対応する: 変化する危機の状況や、それに伴うユーザーのニーズの変化に迅速に対応する
  9. 範囲の拡大に備える: デザインを拡張する方法をはじめから念頭においてアフォーダンスを計画することで、より確実に要求に対応できるようにする
  10. 容易に必要な支援を求められる: ユーザーはいつ、どこで、どのような助けが必要なのかを確認して、容易に支援を依頼できるようにする

詳細については、公開されているドキュメントを参照してください。そして、それぞれの原則について、良い例と悪い例、すべきこととすべきでないことを確認して、自由に発展させて利用しましょう。これらの原則については、今後も改良したり追加するためにさらに多くのオンラインミーティングが続くことになるでしょう。

協力者のひとりであるNHS Digital(NHSは英国の国民保健サービス)の、デザイン&ユーザリサーチ担当アソシエイトディレクターであるマット・エドガーは、ユーザー体験全体を見ることが極めて重要だと指摘しています。

「私たちは、3つの主要なユーザーグループ、すなわち一般の人々、高リスクの人々、症状のある人や世帯のために、市民向けサービスの新たに発生したジャーニーマップを構築し維持しています。さまざまな医療機関で非常に多くのことが行われている状況では、ユーザーに提供されている他のサービスを把握することはとても重要になります」

危機的な状況でのデザイン言語の 「すべきこと」 と 「すべきでないこと」 は、斬新で不明瞭な用語よりも、明確で具体性な用語が推奨される。
この画像はソーシャルメディアで広まった。COVID-19危機において、具体的なメッセージは曖昧なメッセージよりもはるかに影響を持つ 出典: Reddit

デザインを始めるためのヒント

では、この原則を実践し、危機的状況に対応するサービスをデザインし始めるにはどうすればよいのでしょうか?

「まず調査をしましょう」とダウンは勧めます。「たとえ短い時間でも、いつものようにテストして学ぶことです。次に、既存のものの再利用を心がけましょう。すでに解決された問題の解決に時間を浪費するべきではありません。危機的な状況の10原則や優れたサービス設計の15の原則を参照してください。他にも、Newspeak HouseのCoronavirus Tech Handbook、英国で公共サービスを構築しているならGOV.UKのデザインシステムは有用なリソースです。そして最も重要なことは、テストを通じて自分自身が行っていることから学ぶことです」


この記事はHow to Design Services for Crisis Situations: A Global Collaborative Effort(著者:Oliver Lindberg)の抄訳です

POSTED ON 2020.04.30