期待に応える顧客体験は、データから始まる

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ナショナルオーストラリア銀行 (NAB)が10年以上前にオンラインバンキングを導入した当時、顧客にリーチできる最先端のチャネルは、デスクトップPCでした。顧客も、ネットバンキングに関するあらゆるニーズをデスクトップPCで処理していました。しかし、現在のオンラインバンキングでは、モバイルの使用がデスクトップPCを超えています。実際、NABのデジタルアクセスの60%はモバイルです。

今日、あらゆる業界は、優れたアプリに席巻されるリスクに直面しています。なぜでしょうか? デジタルディスラプションにより、必要な時に必要な価値を提供してほしいという消費者の期待が高まり、顧客体験中心のビジネスの時代に入っているからです。

NABのような金融機関が顧客を維持するためには、他の業界以上に優れた顧客体験の提供に注力する必要があります。例えば、フォームファクターの変化について考えてみましょう。モバイルアプリとは、ポケットにATMがあるようなものであり、最高の顧客体験のひとつではあります。しかし、それだけでは機能が限定され、例えば商品のクロスセルには適しません。

取引高が利益に直結する小売業などの業態とは異なり、金融機関の利益は、顧客との持続的な関係によって生まれてきました。しかし、エンゲージメントの主導権は、常に顧客にあるのです。ビジネスが顧客体験中心の時代を迎え、どの業界の企業も、市場で競争優位性を獲得するためには、魅力的な顧客体験を創出し、顧客の期待に応える必要があります。

優れた顧客体験によって今日の顧客と新たな関係を築くには、大量のデータと強力な分析機能が必要です。しかし、今日のチャネルや顧客接点はあまりに多いため、大量の情報から正確で実効力のある顧客プロファイルを構築することは困難です。企業はデータと分析のフレームワークによって大量の情報を整理し、本当の顧客は誰かを理解し、エンタテインメントや実利性、情報などのニーズに対して顧客がどのようなつながりを求めているかを把握し、それを顧客が求めるタイミングで提供する必要があります。

小さい土台からスタートし、拡大していきましょう。あらゆる角度から見た顧客の全体像を構築するための4つのステップについて解説します。

縦割り組織の弊害を解消し、あらゆるデータを統合

これは言うほど容易なことではありませんが、顧客インテリジェンスを支援するシステムを構築するためには不可欠です。企業の組織は、業務に関する専門知識や関連情報を集約するために縦割りになりやすく、自組織の外には目を向けない傾向があります。その結果、カスタマージャーニー全体を形作る、シームレスで磨かれた顧客体験を創出するのために必要な、包括的なビジョンを持てなくなってしまいます。また、組織ごとにデータを抱え込むため、コンテンツや広告を最適化するために必要となる、正確な顧客プロファイルが作成できません。

米ゼネラルモーターズ(GM)のデジタル広告および分析担当ディレクターを務めるJohn Beebe氏は、縦割り組織の弊害について、「マーケティングの成果をGMと顧客の間の行動と反応と定義し、その分析に着手しました。しかし、当時の社内組織は、驚くほどの縦割りでした」と述べています。優れた顧客体験を創出するためには、体験のあらゆる面を支えるために、マーケティング、セールス、サービス、ITなど、組織をまたぐ専門性を必要とします。縦割り組織では実現できません。

データ統合の障害を取り除くことにより、GMは顧客の全体像を手に入れました。「顧客の全体像によって、社内のあらゆる関係者がビジネス上の意思決定を最適化できました」とBeebe氏は語ります。それ以前は、社内の各チームが生み出す膨大なデータが統合されておらず、顧客の全体像を把握できなかったとBeebe氏は述べています。

これは、新しいソリューションを導入した企業に共通する問題です。統合されたひとつの基盤を導入したとしても、各チームがそれぞれ異なるニーズにおいて使用し、次第にチームごとの縦割り化が進みます。その後、数年から数十年を経て、縦割り組織が完成するのです。その結果、不適切なエクスペリエンス、マーケティング予算の浪費、チームごとに個別に顧客対応する不完全なカスタマージャーニーが生まれます。

Beebe氏はこの問題を解決するため、グローバルな分析チームを結成し、各組織からデータを集めることで、次のような結論にたどり着きました。あらゆるデータを取り込んで統合できるオープンな基盤を持つことが、顧客プロファイルを描くためには不可欠だということです。その結果、以前はリーチが難しかったオーディエンスにも、魅力的なコンテンツを容易に提供できるようになりました。

加えて、GMは最も効果的なメディアとコンテンツを特定し、鍵となる顧客を高度にターゲティングした25種類のマルチチャネルメッセージを開発しました。

実効力のあるインサイトを得るために必要なデータソースレイヤーとは

多くの企業は、データは多ければ多いほどよいという仮説の下に行動しています。これは必ずしも間違いとは言えませんが、戦略的ではなく、余計な問題を引き起こす可能性があります。可能な限り多くの情報を集めようと努力する結果、意味のないデータに悩まされ、データにもとづく意思決定に支障が出てしまうのです。

一方、収集するデータを適切に制限し、オーバーロードしないように配慮している企業もあります。こちらの場合は、実効力のあるインサイトを生み出すのに必要かつ十分なデータを収集できない恐れがありますが、それでも、役に立たない情報を手当たり次第に集めるようなことはせず、少ないデータから構築していくのが賢明です。

まず、すでに自社が所有しているファーストパーティのデジタルデータを使用して、プロセスを始めます。例えば、webサイトと電子メールの2つのデータセットを組み合わせます。クリック前のキャンペーンデータとクリック後のサイトアクティビティを関連付ければ、新しいデータを収集する必要なく、新しいインサイトを引き出せます。

NABはデジタルアセットのポートフォリオを見直すことにより、このプロセスを小規模にスタートしました。その過程で、オンラインとモバイルを利用し、顧客はどこでどのようにやり取りしているかを理解しました。2つのデータセットを組み合わせ、その知識にもとづいて新しいアセットを構築したことにより、NABはより顧客の期待に応えるコンテンツを提供し、コンテンツの定期的な差し替えや更新ができるようになりました。例えば、オンラインアプリケーションのデザインをテストし、最適化した結果、コンバージョンは45%増加し、クレジットカードの申し込みは完了ベースで年間3,000%も増加しています。

組織の内外に目を向け、価値あるデータを収集

最初のデータ基盤を構築したら、ソースを広げていきます。最初は、顧客管理ソフトウェア、webサイト分析、顧客満足度調査、各種データベースのほか、社内ですでに所有しているファーストパーティデータを追加します。

次のデータレイヤーは、パートナー企業や関連会社などを含むセカンドパーティのソースから取得します。例えば、航空会社ならクレジットカード会社などと、共通する顧客への興味に即したデータ共有が可能でしょう。もちろん、自社で独自に収集したデータではないので、使用に制限はありますが、既存の顧客像に加えることによって顧客の行動をより深く、広く理解できるようになり、さらに有用なインサイトが得られます。これを活用して優れた顧客体験を創出し、顧客との持続的な関係を構築できます。

最後のレイヤーはサードパーティ、すなわちAcxiomやAd Networksなどといったビッグデータを収集している企業から取得します。これにより、顧客の住む地域や属性に関する特徴を理解できるほか、顧客の行動を、自社やパートナー企業とやり取りしていない時間帯においても詳しく学ぶことができます。サードパーティデータは、ターゲティングした顧客の未知の興味関心に即したコンテンツの提供を可能にし、コンテンツの価値を高めることができます。

Scottradeの事例は、あらゆる角度から見た顧客像によって顧客ニーズを発掘し、それに応えるためのデータレイヤーを構築した好例です。Scottradeは、データ管理ソリューションを統合する過程で、ペイド、アーンド、共有およびオウンドの各チャネルの垣根を取り払い、そこに外部から取得したデータを統合し、マーケティング成果をあらゆる角度から評価できるようにしました。

その結果、Scottradeはマーケティング接点の95%をアセットの動きと関連付け、各活動のビジネス的な成果を、より正確に予測できるようになりました。Scottradeはあらゆる角度から見た顧客の全体像を構築し、顧客に価値を提供できる適切なコンテンツを創出して、持続的な関係を強化しています。

最適な顧客体験を提供するためにデータを活用

NABはデータを活用して、顧客が期待するコンテンツ内容と、最適な提供頻度を把握しました。GMは縦割り組織の弊害を解消してデータを統合し、顧客の全体像を構築して、従来はリーチできなかった顧客セグメントにもリーチできる基盤を整えました。Scottradeは、個々の活動がマーケティング成果にどう影響しているかを評価するために、データを利用しています。

これらの企業は、同じデータで同じことをしたわけではありませんが、目標を明確に設定し、社内外の有効なデータソースを活用してそれを達成しました。顧客の全体像を構築するために最適化されたデータ収集フレームワークは、顧客体験の目標を達成するための道筋を提供し、顧客との継続的な関係を構築します。

パーソナライズされたエクスペリエンスによって顧客との関係を構築するためには、刻々と変化する顧客の興味関心を、正確かつリアルタイムに理解する必要があります。組織の垣根を越え、様々なソースからデータを統合し、あらゆる角度から見た顧客の全体像を構築すれば、質の高いエクスペリエンスを創出して顧客に真の価値を提供し、持続的な関係を構築できます。

POSTED ON 2018.02.23

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