書類のデジタル化はこれからが本番。デジタルトランスフォーメーションを進める工夫と顧客体験の重要性 #AcrobatDC

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社会のデジタル化はより一層深化し、消費者はいち早くそれに対応したことで、様々な分野で既存の事業を破壊する革新的なサービスが生まれ始めている。それでも、デジタル化に踏み出せない企業が少なくないのはなぜなのか。デジタルトランスフォーメーションを進めるための工夫や顧客体験の重要性などについて、慶應義塾大学環境情報学部教授の武田圭史氏にお話を伺った。

日本におけるデジタル化の現状

― インターネットの黎明期から様々な研究をされている武田先生から見て、現在のデジタルトランスフォーメーションについてどのようにお考えでしょうか。

まだまだ遅れていると思います。大学に限らず一般企業の会議で資料が紙で配布されることは多いです。紙という物理的な制約によって人間は、本来必要のない作業を強いられ、拘束されるという状況が生まれます。例えば、印刷する、受け取る、持って帰る、シュレッダーにかける、押印した申請書の提出のためだけに、特定の場所に出向く、わざわざ出社するなど。

デジタル化により情報が漏えいしやすくなる言う人もいらっしゃいますが、私からすると紙でもらう方が怖い気がします。紙を落とすこともあればどこに行ったか所在不明になることがあるからです。今後は、スマートフォンを日常生活の中で活用している人が企業や組織の中に入ってくることで、紙での作業に不満を感じる人がますます増えると考えられます。働き方改革や生産性向上の議論が進むにつれて、従来のやり方にこだわることなく、便利なものを採用していくという姿勢が組織の中で求められていくと考えています。

― 企業が新しいことに踏み出せない大きな原因はどこにあるとお考えですか。

責任を負いたくない、リスクを取りたくないということではないでしょうか。新しいやり方やテクノロジーの採用に際して組織内では必ず抵抗が起こりますが、メリットが十分に伝えきれていない事も多いように思います。顧客の成功体験がもっと紹介されていれば「私もやってみよう」と賛同する方も出てくるはずです。アメリカに住んでいた際、さまざまな契約がPDFのやり取りだけで済んでしまうというのを目の当たりにすると、確かに便利だなと感じました。でも日本に戻ると、何で紙に書いてやり取りしないと進まないのかという疑問が生まれてくるわけです。知らなければそれが当たり前と感じてしまうものです。

顧客体験の重要性

― 顧客体験が重要だというお話がありましたが、武田先生が実感している、デジタル化の恩恵や先進事例などについて教えてください。
最近感心したのは、マイナンバーカードでコンビエンスストアの複合機から住民票の写しが取得できることでしょうか。もちろん、住民票の写しを紙で出している時点でどうなのかという議論はありますが、それでもコンビニエンスストアでいつでも取得できます。わざわざ役所に出向かなければならなった手続きが、カード内の証明書を利用していつでも引き出せるようになっています。

マイナンバーについては反対の方も少なからず存在しています。個人番号や税金の話ばかりが先行し、利便性についてのアピールができていないのです。利用シーンや利点がアピールできていない理由の一つとして、ユーザーエクスペリエンス(UX)の設計や利用者視点でのプロセス設計などが十分ではないと考えています。顧客体験を意識して設計が行わないと、使ってもらえるようなサービスにはならないと思います。

例えば政府がさまざまな電子申請の仕組みを用意していますが、せっかく電子申請しても、承認印を押した書類を返送するための返信封筒を郵送しないといけない。結局、紙がいまだに介在してきます。たとえ電子申請できるようになったとしても、申請部分しかデジタル化できていません。これこそ、全体の顧客体験の設計ができていないわけです。利用者視点に立った制度設計をしっかり行う必要があるのです。

逆に利用者が増えればサービスも向上しますし、それがまた他の人に魅力が伝わっていくという形で広がっていきます。使っていな人からすると、苦労していることが解消できると聞けば、ちょっと使ってみようという気持ちになる。このようにポジティブインセンティブで仕組みを利用する人の輪が広がっていくのが一番良い流れだと感じています。昔は電子マネーを普及させなきゃ、といった思惑がありましたが、今は多くの人がSuicaなどで電子決済を行っています。それは強制ではなく、皆さんにメリットが伝わっているわけです。メリットを具体化したうえで、それに惹かれる人が自由に使っていくというのが理想的です。

デジタルトランスフォーメーションを進めるための工夫

― 急激なデジタルトランスフォーメーションは現場から反発を招くこともあろうかと思いますが、そのあたりで工夫すべきことはどんなことでしょうか。

劇的に変わったということを意識させないアプローチが必要です。学内で行われている出張旅費申請などの業務プロセスをデジタル化するプロジェクトを進めていますが、従来の仕組みを急激に変えることなく、うまく移行できるように工夫しています。例えば、紙のフォーマットをPDFで用意し、入力するフィールドに必要事項を入力してもらう。見た目は従来の申請書と変わりませんが、共通の入力項目があれば一度入力するだけで他のページにも反映されるようになり、大きく運用を変えることなくデジタル化への第一歩が踏み出せます。この辺はPDFを持つアドビさんの強みにもなってくるのではないでしょうか。

― 先生が今後挑戦してみたいことはありますか。
大学の教室を使う際に申請書を提出する必要があるなど、まだ紙がいたるところで利用されています。これは、社会的な競争に晒される機会が少ないためで、昔からのプロセスが脈々と受け継がれている状況も影響していると思います。これは、大学に限ったことではなく、小中高の学校などさまざまな教育機関や公共機関などでも同様のことが行われているのです。様々な組織での紙での業務プロセスが改善できるような環境づくりに貢献できればと思っています。ぜひこういったプロセスをアドビさんが変えてくれるとうれしいですね。

武田圭史教授略歴
防衛庁で情報セキュリティがあまり注目されていなかった黎明期よりその研究に携わる。現在、應義塾大学環境情報学部において情報セキュリティ分野の研究を行いながら、Webによっていかに社会問題が解決できるのかをテーマに、Webにおけるマーケティングやデータ解析、UI/UX解析などを手掛ける。

POSTED ON 2017.06.26