PDF(Acrobat)ハンガー実現への高いハードル

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こんにちは、デザイナーの大村卓(Taku Omura)です。
前回の記事「Acrobatの真の姿を探ってみる」では、あのAcrobatマークが実は「A」に由来することをお伝えしました。これでモヤモヤが晴れたのでいよいよ実際のハンガーとして使えるデザインに落とし込んでいく作業にかかっていきます。

なんやかんやありましたが、現状正しいAcrobatマークはこちら。

AdobeさんよりIllustratorのベクターデータを頂きました。
うーむ、、、やはりぼくが作っていた形状とはけっこう違っていますね…。
つまり最初から考え直さなければならないということ…テキトーに作ったツケが回ってきてしまいました。

単純にこの形を輪郭線として厚みを持たせただけのハンガーとすることもできますが、それではさすがに手抜き感がアリアリです。この絵を元にしてどんなふうにねじれた形状が出来上がっているのかを想像で補っていく作業が必要になります。しかしこのねじれた形状が製造する上で大きなハードルなのです。

量産が難しいワケ

以前の記事で、今回のハンガーは量産が難しく数量限定となるということを書きました。それはいったいどういうことなのでしょうか。ものづくりに詳しい方には当たり前の話かもしれませんが少し説明させてください。

一般的に樹脂で物を作ろうとする場合、量産するのであれば射出成形という方法をとります。金型という鉄の塊でできた型の中にドロドロに溶かした樹脂を流し込んで作るイメージです。

今回のハンガーのサイズならばその金型を作るだけでもウン百万円してしまうでしょう。高いんですよ金型って。ましてやこのねじれた形状だと金型の構造が複雑になったり、複数パーツの組み合わせになるのでさらに金額が跳ね上がってしまうことが容易に想像つきます。

つくるにはやっかいなねじれ具合(最終形状ではありません)

プッチンプリンを想像してみてください。
容器は抜ける方向に開いた形状をしていますよね。

予想外のプリンの出現にテンション上がる息子をなだめつつ撮影

つまりそういった形じゃないと金型から取り出せません。
全く方法がないわけではないですが、エライ高いものとなってしまいます。

そういうことを踏まえると世界のAdobeさんでも「バンバン作ろうぜ!」というわけにもいかないようです。ぼく自身、自社のオリジナル樹脂製品(下画像)のために小さな金型を作ったことがありますが、発注するときにはその金額に心臓がバクバクしたものです。

水に浮かべる一輪挿し Floating Vase / RIPPLEとその金型

Acrobatにピッタリの作り方

そしてAdobeさんと話し合った結果、3Dプリンタで作ることになりました。これであれば金型は必要ありません。作れる形の制約もありませんのでねじれ形状にはもってこいです。製品の単価自体はそれなりに高くなりますが、数量限定であればトータルの金額はそこまでにはならないでしょう。

ハイそこ!
「えー3Dプリンタで作るの〜?」みたいなこと言わない!
でください。。

もちろんぼくが自分で使っているような安物3Dプリンタではありません。
然るべき作り方をすればけっこういいものができるようになってきているのですよ。
むしろ極めて現代的なものづくりとも言えるはず…です。

金型を作れば量産は容易になりますが、形の変更や修正がとても難しくなります。
Acrobat自体はどんどんバージョンアップされ、マークもどんどん更新されていくことを考えると、むしろ金型を作らないほうがハンガー自体も更新できていいんじゃないか、とすら思えてきます。思いますよね?そう思いましょう。

3Dプリンタによるハンガーの評判がよく、みなさんの「欲しい!」という後押しがあれば将来的にはちゃんとした製品化もあるのかも、、それはわかりません。希望的観測です。

Adobeの中の人が取材を受けていた!

そんな感じでこの記事をせっせと書いていたら、件のAdobeの中の人がこのハンガーについて取材を受けている記事がアップされていました!Adobe側からのリアルな視点で書かれているのでぼくが読んでもドキドキします。

金型のことも触れられていますね。

切れ目は大事

先の記事を読んでいくと、

しかし、念のため本社のブランディングチームに確認してもらったところ、「ハンガーのフック部分が欠けているので承認できない」という何ともおもしろみのない回答が返ってきました。

そんな話があったのか…ふむふむ。
確かに切れ目を入れるかどうかの葛藤はありました。
ぼくの制作環境ではミニチュアモデルしか作れないので、ハンガーであるということを認識させるためにあえて切れ目を入れることにした経緯があります。Acrobatのロゴを画像検索すると形状のねじれを切れ目で表現しているものも多く見受けられたので、その部分を「ハンガーとしてのフックなのだ」とぼくは都合よく解釈していました。

公式のものかわからないが確かにこんな感じに切れているマークの記憶があった

でもそれは現在のバージョンではなかったということなのか、Adobe本社的にはダメだったようです。じゃあ欠けずにハンガーとして成立していれば承認してくれるということなのでしょうか?

切れてなさそうだけど切れてる

というわけでこの部分は再考することにしました。
普段は閉じていて使うときだけ開くカラビナみたいな構造にしてみたらどうだろう?
閉じていればほぼ見えないわずかな切れ込みが入っているだけ。
ヒンジなどは付けなくとも樹脂のバネ性でうまく機能してくれるはず。

これであれば全体として形が欠けることもないし、いったん掛ければ落ちないのでハンガーとしても機能的。よし、この方向性で行こう。

まとめ

今回はちょっと説明的で堅い内容になってしまいました。
おい大村!なかなか形にならないじゃないか早くしろ、と思われる方もいらっしゃるでしょう。しかしながらものづくりをする上で大事な話だったのでちゃんと書かせてもらったのです。

飽きずにもう少しお付き合いください。
次からはきっとちゃんとしますから!

POSTED ON 2018.10.2

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