いよいよAcrobatハンガー制作開始!大ピンチ?試作をするとわかること

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こんにちは、デザイナーの大村卓(Taku Omura)です。
今回は実際にハンガーの形を3Dに起こしていきます。

元になる絵を補正する

こちらが元の画像です。

まずはこのマークの部分を取り出して回転させ傾きを直してみます。

変な感じですね。
遠近感のついた形をムリクリ真っ直ぐにしているのだから当然です。
これをこのままハンガーにしたら傾いてしまうので、バランスがとれるように調整を行ってみます。

これでだいたいハンガーとしての違和感はなくなりました。

ねじれ具合を調整する

さて、薄く細いリボン状のものがどのようにねじれたり巻いたりすればこの形状になるのでしょうか。

残念ながらAdobeのソフトではこの手の3D形状は作れないのでAutodeskのFusion360という他社製品を使っています。Adobeのサイトで他社製品の宣伝になるようなこと書いていいのかよ、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、念のため両社に掲載許可をいただいているのでご安心を。ぼくはそういうところはきちんとしているのです。当たり前だけど。

まずはさきほど作った下書き用の絵をもとに基本となるパスをくるくるーっと作ってやります。

下絵から線がはみ出ていますが、重量のバランスをとるために左右対称に描いた結果です。今の段階では気にしないで進めましょう。あとで3Dにするときに調整します。このパスのとおりにそのまま作ってみるとこんな感じです。

Acrobatのマークだとは認識できるでしょうが、メリハリもなく面白みもない形状ですよね。
で、ねじってみます。これがなかなか難しいというか地道な作業なんです。

なんか違うな…。

ここまではパスを同一平面上にしたまま3Dを作っていましたが、パス自体を三次元的にずらしながらクルクルさせてみました。ねじり方も変えました。紆余曲折ありましたがなんとかそれっぽい形になりましたね。

なってない?



気づいてしまいましたね。

完全に元の絵通りに作るとハンガーの引っ掛けるところが機能しないんです。
元の絵はこの部分がねじれていてそのまま作るとクローゼットなどの棒にかけられないんです。

ハンガーを上から見下ろしてバーのところで断面にした図

というわけでここに関しては元のイメージを保ちつつもハンガーとしての機能性を失わない程度の形状にしています。それに伴って細かいところは微妙に異なっていますが、そこまでは気にしないでくださいお願いしますお願いします。2次元の絵を3次元に起こすときにはどうしても矛盾が生じるので形が破綻しない程度に修正しているのです。

最初にTwitterにアップしてたモデルと比べるとだいぶ形が進化したのがわかります。
元にした絵が違うというのもあるけれど。

見込みの甘さが裏目に

前回の記事でぼくはハンガーのフック部分をカラビナ状にしてやればマークとしても切れ目がないし、うまいこといくのでは書きました。でも万が一ということもあるし、念のためこの部分(を簡略化した形)を3Dプリンタで出力し確かめてみることにしました。ぼくの持っている安物3Dプリンタでも部分的であれば検証モデルを作ることは十分可能なのです。

うーむ、、なんか華奢だな。
下向きに荷重をかけてみると、、

うわっメッチャ開いちゃう!これはやばい。
この部分だけでなく全体を簡単にシミュレーションしてみると、、

うわっこれはヤバイ。変形がすごすぎる。

肉厚を上げて調整もしてみましたが完全には解決はできないようです。
というより肉厚を上げていけばいくほど形の伸びやかさが失われボッテリとしたカッコ悪いものになってしまいます。一般的にプラスチック製品は強度を上げるためにリブ(薄い板状の部分を補強するためにその面と直角に取り付けられる部材)を設けたりしていますが、この表裏がねじれて入れ替わるような形状でリブなんか付けたらガチャガチャになってAcrobatのマークどころの話ではなくなってしまうでしょう。

もしかして前回の記事で書いたときに読者の中には気づいていた人いるんじゃないだろうか・・?
「大村はこんなことにも気づけないなんてアホだな」
なんて思われていたのかも。。
そういうことは先に言ってくださいよ、モ~。

冷静に考えてみればこんな平板状の部材で変形なしに荷重を支えるのは無理がありました。
プロダクトデザインの仕事はやはり試作をすることでいろいろ課題が見えてきます。
人は意外と当たり前のことになかなか気づけないものなのです。
特にぼくは(泣)

物理的にひっかける構造

部材の肉厚を上げることによる強度アップはいい結果を生まないようだったので、ほんとのカラビナのように物理的に部材どうしが噛み合う構造を検討してみることにしました。実際この部分を固定してやれば全体が先のモデルのように大きく変形することもなくハンガーとしての機能を満たせそうでした。しかしこのリボン状の部材は薄いのでその構造を作るのは非常に困難です。いや作ることはできなくもないのですが、やればやるほど部分的に薄いところが出てきてさらに弱くなってしまいます。

そこで、この部分をひとつながりとするのではなく、上からの部材と下からの部材をずらして重ね合わせその部分に引っ掛ける仕掛けを設けてやることを考えてみました。元からのイメージからすると若干異なってきてはしまいますが、簡易モデルをいくつか作成し検証してみました。

やはり上下が物理的につながるととてもガッチリして安心感があります。
今度はAcrobatハンガーの形で試してみることに。
3Dプリンタで作ってみると、やはりちゃんとハマればガッチリとしています。

そして実際の使用時のように棒に引っ掛けてみるのを何度か繰り返してみると…。

ん?ん?閉じない。
部材同士が引っ掛からない。
がーん。
どうやら塑性変形してしまったようです。

変形には大きく分けて2種類あります。
バネのように力を加えてもまた元に戻る弾性変形と、力を加えると形が元に戻らない塑性変形。

前回まではこの部分が弾性変形してくれてパチっと元の位置に戻ると踏んでいたのですが、それもどうやら見込み違いだったようです。このモデルに使った樹脂は最終的に使うものじゃないにしても塑性変形は免れないでしょう。そもそも3Dプリンタで使う樹脂で強度のあるものは色が選べなかったりします。でもAdobeさんからは「赤でお願いします!」という要望が来ていたり…。ひー!

最後に

さあ大ピンチ。
見込みの甘さを全国的にさらしてしまってなんとも恥ずかしいけれどもそんなことも言っていられない。この危機をどう乗り切るか。頭を悩ます日々がいま始まる…。

POSTED ON 2018.10.30

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