Adobe Experience Cloudの戦略を解説

Experience Cloud

先日、Adobe SUMMITが実施されました。今回は昨今の状況もあり、全てがオンラインでの開催です。日本語キャプションも付いていますので、ぜひご覧頂ければと思います。

さて、このエントリでは、このオンラインで公開されたAdobe SUMMITのセッションの1つであるExperience Cloud Strategyについて、製品の観点で補足をしながらご紹介したいと思います。

Experience Cloud Strategy

このセッションはExperience Cloud事業のトップに就任したAnil Chakravarthyがその戦略について解説しているもので、セッションの中心となるのは昨年のAdobe SUMMITでリリースされたAdobe Experience Platformとなっています。

Experience Cloud Strategy Point

Adobe Experience Platformは、Anilもセッションの冒頭で触れている通り、次世代のCXM(Customer Experience Management:顧客体験管理)基盤として、現在のAdobe Experience Cloudの戦略でもっとも重要な部分となっています。

セッションではAdobe Experience Platformのポイントとして「リアルタイムCDP」「AI&機械学習」「オープンエコシステム」が挙げられています。ここからは、このポイントごとに、製品-アップデートの補足も入れながらご紹介をしていこうと思います。

オープンエコシステム

ブランドが顧客にコミュニケーションをする時代から、顧客がブランドとのコミュニケーションを好きなタイミングで、好きなチャネルを通してコミュニケーションを実施するようになり、カスタマージャーニーは複雑化してきています。これに合わせて企業はよりフレキシブルに、その状況に応じた顧客体験の提供やカスタマージャーニーを描くことが求められるようになってきています。

また、昨年、アドビは自身の取り組みとして発表したDDOM(Data-Driven Operating Model)のような取り組みも発表しています。これはExperience Businessを実現する中で、全て<顧客>を中心に据え、ビジネス指標なども顧客中心に設計・管理していく手法です。これを実現していくためには、ビジネスに関わるあらゆるデータをCXM基盤と連携していく必要があります。

次世代のCXM基盤としては、このような状況に対応していけるよう、さまざまなパートナーとよりオープンに連携し、ブランドに必要なエコシステムを作れるようにすることは非常に重要となります。

Open Eco System

Adobe Experience Platformは、顧客の<体験>を管理するために、新たにデータスキーマ(XDM:Experience Data Model)を開発し、公開しています。これにより、Adobe Experience Platformに統合されたデータは、それぞれの項目にデータの意味を持ち、データセキュリティも管理されます。

また、 APIファーストで作成されているため、様々なシステムとの連携についても、非常に柔軟に実施できるようになっています。このXDMやAPIファーストの設計もあり、様々なパートナーとデータ連携し、各ブランドに合わせたCXM基盤を作っていくことができるようになっています。

セッションでは、MicrosoftやServiceNow について触れられていました。Microsoftとは、2018年に発表されたOpen Data Initiative(ODI)の取り組みを中心に、Adobe Experience Platformとの連携が進んでいます。また、ServiceNow は、昨年のAdobe SUMMITにて提携が発表されましたが、改めてAdobe Experience Platformとの顧客データの連携について触れられた形です。

アドビ、マイクロソフトおよびSAP、 新世代の顧客体験を実現するOpen Data Initiativeを発表
アドビとServiceNow、企業の顧客体験管理(CXM)におけるパートナーシップを発表

リアルタイムCDP

今後の顧客体験を深化させていく中で重要なキーワードの1つが<リアルタイム性>です。複雑化するカスタマージャーニーを管理していく中において、顧客のアクションに対し、すぐにブランド側が顧客に合わせた反応をできるようにしていくことです。

店舗に来店した際にそれに合わせてアプリにパーソナライズされたメッセージを展開していく、また、アプリを起動したタイミングで、その人に合わせたコミュニケーションを行う、などもそうでしょう。コミュニケーションは一方通行ではなく双方向かつリアルタイムに実現し、企業としてはそれにスケーラビリティを持たせて対応していく必要があります。

様々なテクノロジーが乱立する中において、昨今、非常にその重要性を増しているCDP(Customer Data Platform)に、このリアルタイム性を持たせたリアルタイムCDPを実現していくためには、いくつかの要素が必要です。

その1つに「一貫したプラットフォームでのデータ管理」があります。いくつかのテクノロジーを組み合わせたCDPを設計した場合、システム間の処理が入るため、リアルタイム性が担保しづらくなってしまいます。Adobe Experience Platformは、自身が一貫したプラットフォームとして展開し、リアルタイム性を考慮した設計を行うことでそれを担保しています。

Experience Platform Architecture

こちらはInnovation TrackのData & Insightsのセッションで触れられている図ですが、このように、データ連携(In)、データガバナンス、プロファイルの生成、AI・機械学習の活用、アクティベーション(Out)を全て持つことでリアルタイムCDPとしてのシステムを実現しています。

そして、このリアルタイムCDPの要素としてもう1つ重要なのが、データのIn/Outにスケーラビリティを持たせていくことです。より多チャネル化していく現在において、リアルタイム性をもってデータを全世界から効率的に収集・処理できるようにする必要があります。 また、処理されたデータやセグメント情報を、最終的に活用するためには、全世界にミリセカンドでセグメントデータ反映していく必要があります。

そこで今回アップデートがあったのが、Modernized Data CollectionとExperience Platform Edge Networkの発表です。Modernized Data Collectionにおいては、これまで提供していたコード自体を大きく見直すことで、より軽く、シンプルに処理できるようになったSDKにより、データ収集をしやすくなっています。

Experience Edge

また、Experience Platform Edge Networkを利用することで、データの収集をより効率的かつリアルタイムに行えるようにし、セグメントの反映を全世界にミリセカンドで提供できるようになっています。Adobe Experience Platform内で管理されるXDMとも連携をすることで、収集するデータを直接スキーマとマッピングすることが出来るようになっています。

リアルタイムCDPに関わる部分でもう1つ重要なアップデートがあります。今回のAdobe SUMMITにおいて、Adobe Experience Platformの基盤として処理される部分に加え、「サービス」というレイヤーが追加されました。

このレイヤーが加えられたことにより、Adobe Experience Platformへ統合されたデータを、これまでのAdobe Experience Cloudの製品への連携やオープンエコシステムへの連携をよりしやすくし、データ自体の活用を最大化することが可能になりました。

Experience Platform Application Services

このサービスレイヤーはApplication ServicesとIntelligent Servicesの2つに大きく分かれています。 アプリケーションサービスについては、今回、リアリタイムにデータを統合し活用できるようにする「Real-time Customer Data Platform」、統合された全てのデータを繋ぎ合わせ分析を可能とする「Customer Journey Analytics」、統合されたデータにシナリオを連携し活用できるようにする「Journey Orchestration」の3つのサービスが発表されました。これらサービスについては、Data & InsightsJourney ManagementのInnovation Trackで詳細も触れられていますのでぜひご参照ください。

AI&機械学習

データを利活用していく中で、AIや機械学習は日々重要性を増しています。Adobe Experience Platformに統合されたデータにおいても、そのデータを最大限活用していくためにAIや機械学習は重要な要素です。

実際にAIや機械学習を利用していくうえでは、インプットするデータ自体を意味づけし正しく活用できるようにしておく必要があります。ここについては先程ご紹介したXDMを利用することで、効果的にデータを活用できるようになっています。

また、顧客データを統合し利用していくということは、様々なプライバシーに関わるデータなども含まれることとなり、内容に応じてはAIや機械学習のデータとして利用するには好ましくないものもあります。このようなデータについても、データガバナンス機能として提供されているDULE機能の中で制限をかけていくことも可能です。 ここまでは、昨年発表されているAdobe Experience Platformの機能として既に提供している部分となっています。

さて、これまでAdobe Experience Cloudでは、AIや機械学習のテクノロジーであるAdobe Senseiを、機能の裏側で活用し提供してきました。この提供方法は、より簡単に、高いベネフィットを生むことができるものの、全体最適されていることも多く、自社へのカスタマイズができないという課題もあります。

Intelligent Services

ここに対し、今回はもう1つのサービスレイヤーである、Intelligent Servicesとして、いくつかの目的に合わせ、かつ、カスタマイズ可能なサービスを提供していくことで、Adobe Experience Platformに統合されたデータを、効果的に活用し、アプリケーションに連携し使えるようになりました。

ここで処理されたデータは、Adobe Experience Cloudの各製品はもちろんのこと、外部にも連携を行うことで、連携先のシステムにもセグメントデータとして活用可能となります。

次世代のCXM基盤に向けて

今回の様々なアップデートを通し、改めてAdobe Experience Cloudの全体像は以下となります。これまでの製品ごとの展開はもちろんのこと、次世代のCXMを提供していくためには、Adobe Experience Platformが大きなポイントになることをご理解いただけたかと思います。

Adobe Experience Cloud

今回、キーノートセッションに加えて、本文中でも少し触れた6つのInnovation Trackにおいて、これまでの既存製品のアップデートから、Adobe Experience Platformのそれぞれの視点で重要となる部分について深堀りされ紹介されています。こちらもぜひご覧頂ければと思います。

少々長くなりましたが、今回のAdobe SUMMITのExperience Cloud Strategyにて紹介されている内容を製品軸で解説をさせて頂きました。それぞれ製品の日本展開については、順次このブログでもご紹介できるようにしていきますので、引き続きよろしくお願い致します。

また、SUMMITをオンラインに切り替えた舞台裏についても、ブログが公開されています。こちらもぜひご参考頂ければと思います。

POSTED ON 2020.04.16