CIOとデータサイエンティスト

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顧客体験の戦略を向上させるために、組織とそのCIOがデータサイエンティストの理想的な役割を支援

McKinsey Global Instituteの最近の調査によれば、データ主導型の組織は、評価指標の広い範囲で高評価を得ている。データ主導型の企業は、そうでない企業に比べて顧客を獲得できる可能性が23倍も高く、顧客が定着する可能性は6倍ほど高い。その結果として、売上を向上させる可能性が19倍も高いのだ。

この調査結果は、多くの企業がデータ主導型の組織を目指している理由を明確に示している。今や全体の81%に上る企業が、あらゆるビジネス行動をデータ中心に進めるべきだと考えているのだ。

データが事業戦略とROIを促進する鍵となるにつれて、企業内のデータサイエンティストの数も増えている。例えば、先進的な小売事業者はマシンラーニング(機械学習)のようなテクノロジーを活用するために、今後数年間に雇用するデータサイエンティストの数を1.5倍に増やすことを計画している。

しかし、そうした企業には、データサイエンティストを迎えることに伴う課題も存在している。企業間で有能な人材を奪い合う熾烈な競争だけでなく、多くの企業には、データサイエンティストが最高の仕事をし、企業で働くメリットを感じられるようにするためのテクノロジーやプロセス、カルチャーなどが整備されていないのだ。

データサイエンティストには、特にテクノロジーに詳しくない事業部門のために、データを情報や実行可能なビジネスインテリジェンスに変換するための適切なリソースが必要になる。

データサイエンティストが必要なデータを必要な形式で利用できるようにするためには、組織の変革が必要だ。それは、CIOのビジョンとリーダーシップから始まる。

ビジネスを抜本的に見直す重要性

データや人工知能(AI)の恩恵を受けるためには、今日の最も重要かつ知的な財産であるデータを評価、管理し、共有する方法を抜本的に見直すことが求められる。

私たちは長年にわたり、新たなテクノロジーによって古い仕事のやり方を改善してきた。現在の職務デザイン、ワークフロー、仕組みの管理方法や組織構造などは、テクノロジーの進化に伴う様々な企業競争の中で培われてきたものだ。

どれも効率と管理の向上を目指したものではあったが、今後10年における合言葉は、イノベーション、スピード、サービス、クオリティである。

時代遅れのプロセスをコンピューターやソフトウェアに組み込むのではなく、それらを排除することが必要だ。これは、CIOにとっては社内の他の部門、特にマーケティングや営業部門との連携を強化することを意味する。

Adobe Experience Platformの製品責任者を務めるJim Riveraは、「CIOは他の事業部門と協力し、ビジネスに必要なものは何かを理解しなければなりません。CIOのあらゆる行動は、ビジネスを先に進めるための必要性に根づいているべきです。テクノロジーに限らず、ビジネスの課題を解決できるツール全体が含まれます」と語っている。

CIOとデータサイエンティストの協力

今日、多くのデータ部門は、データを利用できるようにするための準備に時間をかけ過ぎている。データサイエンティストの能力を発揮させるのに、CIOほど適した役職はない。

CIOはデータのパイプラインを管理できるだけでなく、テクノロジーに関する最終的な意思決定の責任を負う。データサイエンティストが、顧客体験に良い影響を与えながらビジネスの課題を解決できるかどうかは、CIOの肩にかかっているわけだ。

アドビのテクノロジー部門バイスプレジデントを務めているAnil Kamathは、「優秀なデータサイエンティストなら、どのようなアルゴリズムを使用すればよいかを理解しています。

彼らの主な課題は、利用できるデータの種類とその入手方法が不明だったり、共通の言語が用いられていなかったり、データがクリーンであるとは限らなかったりして、すぐに利用できる状態になっていないことが原因で生じているのです」と述べる。

最初の課題、すなわち、利用できるデータの種類とその入手方法がわからないという問題は、多くの企業のデータ基盤が、異なるテクノロジースタックの継ぎはぎでできていることが原因で生じている。

部門ごとに異なるポイントソリューションを備えていて、それらを連携させることができず、データの分断化を起こしている。

従来、CIOは部門ごとに異なるテクノロジースタックの最適化に注力し、成功させてきた。これを企業全体で最適化させる戦略へと転換するためには、企業全体のマインドセットを変革する必要がある。

データ主導型の意思決定を企業のカルチャーとして定着させることは、企業のあらゆる組織をまたいでデータをひとつに統合するために重要な役割を果たす。

さらに重要になるのは、データの統合により、あらゆる顧客に個人的なブランドエクスペリエンスやプライバシー、セキュリティの向上をもたらすことだ。

Riveraは、「これまでの多くの事例において、企業ごとのビジネスに特有な課題を解決できるテクノロジー基盤を構築できるのは、大企業だけでした。

しかし、状況は変化しています。ツールセットは改善され、基盤の性能も日増しに向上しています。今日、あらゆる企業が課題を解決できる基盤を容易に活用できるようになりました。異なるシステムをつなぎ合わせて構築する必要は、もうありません」と語る。

エクスペリエンスがビジネスの中心となっている今日、企業のデジタル基盤は人工知能やマシンラーニングを備えている必要がある。

そうした基盤だからこそ、企業のデータをひとつの言語で標準化し、データ収集と分析を民主化して、データサイエンティストやテクノロジーに詳しくない担当者がデータからインサイトを容易に導出できる環境整備が可能になる。

マーケティングや広告に関する固有の課題を解決できるインテリジェントなサービスに根差したデジタル基盤があれば、構造化および非構造化データの活用を促進し、ビジネスにより大きな影響を与える業務にデータサイエンティストを集中させることができる。

Kamathによれば、そうしたツールとそれを使いこなせる人材を確保できれば、企業の業務とワークフローを再構築し、データサイエンスをより適切で優れたリアルタイムの意思決定を促進するために活用できるようになる。

人工知能やマシンラーニングは、企業を後ろ向きで記述的なデータ利用から、自律的な意思決定を可能にする前向きで規範的なアプローチへと導く。これにより、時間と場所を問わず、あらゆる顧客のニーズに適切に応えることができるようになる。

CIOは、企業データの価値と可用性を向上させる鍵としての役割を担っている。IT部門、特にデータサイエンティストは、こうしたテクノロジーを活用して、顧客エンゲージメントや顧客の維持とロイヤルティを促進することができる。

データサイエンティストは変革の立役者

テクノロジーと顧客体験の重要性に対する理解が進むにつれて、そこに送り込まれるデータを特定し、活用できる人材のスキルも進化している。

今日、データはまさにエクスペリエンス経済における主要通貨となっており、企業はテクノロジーとカルチャーの両方の転換を経て自身が所有するデータをうまく活用し、顧客との関係を向上させる必要がある。

その意味で、データサイエンティストはあらゆる企業における顧客体験の戦略を推進するために不可欠な存在となっている。そして、CIOはデータサイエンティストが自身の価値とビジネス全体に与えるインパクトを向上させるためのリソースを提供し、支援できる。

Kamathは、「データサイエンティストを、単にアルゴリズムを使用したりインサイトを提供する専門家として扱うだけではなく、どうすれば社内の変革者にできるかを考える必要があります」と語っている。

POSTED ON 2019.03.2