#Illustrator30_30 #Ai30th 記念連載 | Vol.8 グラフィックデザイナー 一ノ瀬雄太さん

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photo: Taio Konishi Photography

「Illustratorと私」の制作作品

Illustrator30周年(#Ai30th)を記念し、Illustratorをクリエイティブの味方として活用する若手クリエイター30人をご紹介する本企画。第8回にご登場いただくのは、グラフィックデザイナーの一ノ瀬雄太さん。原宿ラフォーレの「Laforet Halloween!」キャンペーンや雑誌「GINZA」のアートディレクションを手がけるほか、 ロックバンド「快速東京」のギタリストという多彩な活動を繰り広げるクリエイターです。そんな一ノ瀬雄太さんとIllustratorの関係とは?



一ノ瀬さんの仕事場があるクリエイティブチーム「CEKAI(世界)」アトリエにて

横尾忠則に衝撃を受けた中学時代

ーークリエイターになったきっかけは?
ichinose:両親が多摩美術大学卒で、母は油絵卒、父は書籍の装丁や雑誌でグラフィックデザイナーをしています。なので、旅行先でもよく美術館に連れていかれるような家でした。美術館は「ふーん」という感じだったんですが、デザイナーになろうと思ったのは中学生の頃に見た横尾忠則さんの個展がきっかけです。当時組んでいたバンドのメンバーに誘われて、たまたま東京都現代美術館で開催されていた「横尾忠則森羅万象」という大規模な展覧会に行って、ものすごく衝撃を受けて。

ーーどんなところに衝撃を受けたんですか?
ichinose:横尾さんの手掛けたポスターを見て、稲妻に打たれました。カルチャーショックというか。それまで見ていた美術作品は「きれいだな」という感じで、メッセージ性を感じれるほど理解できていなかったように思うのですが、横尾さんの作品はものすごくロックだった。それで美大に興味を持ちました。

ーー普段使ってるツールを教えてください。
ichinose:Illustrator、Photoshop、最近は雑誌のレイアウトが多いのでInDesign。最初に使ったIllustratorのバージョンはIllustrator 8か7でした。父がデザイナーなので小学校二年生くらいの時にPower Mac 8100が家に来て、学校から帰ったら「教えて!」って触らせてもらってたんです。最初は「キッドピクス」で遊ぶくらいだったんですが、中学生になってバンドのチラシやデモCDのジャケットを作るために本格的に使い始めました。ほかにも、生徒会や文化祭実行委員でプリントを作ったり。

ーーそれはうらやましい環境!すごい英才教育ですね。

劇団ドラマティックゆうや 第1回公演「魂の行方」 photo: TAGAWA YUTARO

デザイナーの「イラレ脳」とは?!



メインツールはIllustrator、Photoshop、InDesign

ーーIllustratorにはどんな思い入れがありますか?
ichinose:雑誌や書籍など、何百ページもあるレイアウトをする時にはInDesignがすごく優秀なので、最近はレイアウトのほとんどにInDesignを使っています。たとえばフォントの変更を全てのページに反映することも一瞬で出来てしまうので。でもやっぱり、デザイン的におしゃれなものを作りたい時はIllustratorじゃないとちょっと鈍るというか、Illustratorの方が細かいディティールの作業がしやすいんです。「見た目を整える」という点においては、すごくIllustratorが優れていると思います。Photoshopも猛勉強して最近レタッチが上達しましたが、僕は根本的に「イラレ脳」なんですよね。

ーー「イラレ脳」とは何ですか?
ichinose:僕が思うに、Photoshopはピクセルだから、デザインをしていても「キャンバスに絵を描いている」のと一緒なんです。Illustratorは「設計図」なんですよ。僕はデザインをするときに文字の大きさや図形をミリ単位でイメージしているんですが、それは日本の判型がミリ単位で出来ているから。1Qが0.25ミリだから、4Qで1ミリになる。Illustratorではそうしたサイズの表示も細かくできるので、判型の中の「設計図」をイメージ通りに作れるんです。どう切り分けて、斜めの線を引くと色面がいくつになるとか、そういうふうに考えるのが好きなんです。

雑誌「走る福岡」

ーー思い入れのあるお仕事を教えてください。
ichinose:「ロックがわかるデザイナーに頼みたい」ということでお話をいただいた「Laforet Halloween!」キャンペーンでは、KISSの撮り下ろしの写真を使って大きなキャンペーンが出来たことがすごくよかったですね。他にもPOLYSICS(ポリシックス)のCDジャケットをデザインしたり、今は口ロロ(クチロロ)のアルバムジャケットをデザイン中です。


「Laforet Halloween!」キャンペーン

グラデーション表現がデスクトップで出来る喜び

ichinose:クライアントワーク以外では、昨年「CALM & PUNK GALLERY」で行った「謎のグラフィック」展が思い出深いですね。多摩美術大学の恩師である佐藤晃一先生が亡くなって、仲間内の教え子が集まって企画した展示です。


「謎のグラフィック」展 at Calm & Punk Gallery出展作品 『日の光』

ーー佐藤晃一さんはポスター作品などで世界的に知られて、MoMAでも作品がコレクションされているグラフィックデザイナーですね。
ichinose:佐藤先生はいちはやくグラデーションの表現を取り入れて世界的に評価されたデザイナーだったそうです。1970年代からグラデーションの表現を取り入れていて、当時はシルクスクリーンだからそれがすごく難しかったんですね。その後オフセットに移行していくわけですが、当時はIllustratorもないし、きれいなグラデーションを制作することは難しかった。印刷所に色指定をして、網掛けを指定して、色校が出てきて初めて確認できる。そんな時代にエアブラシで描いたものを撮影したり、いろいろな工夫で、すごく巧みにグラデーションを作った作家なんです。

ーーそれが今やパソコン上で出来てしまうと。
ichinose:今、僕らは当たり前のようにやっていますが、繊細なグラデーションが画面上で確認しながら作れるというのは、やっぱり凄いことなんですよ。僕は普段あまりグラデーションを使わないデザインなので、僕なりにやってみようということで作ってみたのが「謎のグラフィック」展の作品なんです。先生へのオマージュです。

音楽☓デザイン


撃鉄 対 快速東京 フライヤー

ーーノ瀬さんの活動のもう一つの軸である、音楽活動のルーツは?
ichinose:ニルヴァーナとか、いわゆるかっこいいロックじゃないんですよ。小学生の時に「レコード大賞」で「王様」を見て、カッコイイ! とショックを受けたのがロックをやりたいと思ったきっかけでした。お年玉で王様のCDを買ったのを覚えてますね。なんとなくギターがやりたいと両親に相談したことがあったような気がしますが、中学校に入ってからバンドを始めました。友達とバンドを組んで、スタジオに入って。夢中になりましたね。「快速東京」は多魔美の軽音部で後輩たちと結成したバンドで、もう10年くらい同じ四人で活動しています。メンバーも映像ディレクターやインターフェースデザイナーなど、自分の仕事をしながら活動しています。

ーー音楽活動に専念する予定はありますか?
ichinose:みんな活躍しているし、そもそも最初から全員が「クリエイティブな仕事につきたい」と思って大学に通っていたわけですから。音楽的に「この方向性を突き詰める!」みたいなこだわりがあるわけでもなく、「楽しくやりたい」ということが一番なので、これからもこのペースで活動していくと思います。

ーー最後に、座右の銘を教えてください。
ichinose:「明るく楽しく元気よく」。毎日楽しいです。

一ノ瀬雄太
http://ichinoseyuta.tumblr.com/
グラフィックデザイナー / ギタリスト。フリーランスのグラフィックデザイナーとして活動しており、クリエイティブチームCEKAIにも所属。快速東京のジャケットアートワークなどを手掛けつつ、クライアントワークもこなしている。

◾️この企画について
いまやデザインに欠かせないツールとなったAdobe Illustrator CC。1987年3月19日に初めてPostScript専用ベクターツール「Adobe Illustrator 1.0」がリリースされて30年。いまでは世界中で、毎月1億8000万点以上のグラフィックがIllustratorを使って作成されています。

本企画「Illustrator30_30(イラストレーター サーティー サーティー)」は、Illustrator30周年(#Ai30th)を記念して、さまざまなジャンルでIllustratorをクリエイティブの味方として活用する、30代までの若手クリエイター30人を連載でご紹介します。本企画では、クリエイターのみなさんのポートレートを撮影し、その上に自由にイメージを描いていただくビジュアル・コラボレーション「Illustratorと私」も毎回お届けします。インタビューと合わせてお楽しみください。

POSTED ON 2017.05.26