人工知能の支援によって顧客への理解を深め、ベストなタイミングでやり取りするために

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旅行&観光業界の企業が、顧客と1対1のパーソナライゼーションを実現するためのパワフルなツールとは?

旅行でリラックスできたという旅行者は、ほとんどいない。休暇でも出張でも、旅行者は様々な障害を乗り越えなければならない。航空券やホテルを予約し、レンタカーを借り、滞在中の行動を計画したりと、その苦労は旅行を思いついた瞬間に始まり、帰宅するまで続く。その過程でトラブルがひとつでもあると、すでに高まっているストレスが爆発することも少なくない。

だが、まるで旅行者が求めている内容とタイミングを正確に把握しているかのように、旅行&観光業界の企業とのやり取りが、滞在地にいるのと同じくらい心地よいものになるとしたら、どうだろうか。

旅行&観光業界の企業が、旅行者の体験を構成するあらゆる要素をパーソナライズして、旅行者のストレスを和らげてくれるとしたら……その時こそ、旅行が真のバケーションとなるに違いない。

旅行&観光業界も、他の業界と同じように、膨大な量の顧客データに接している。この業界の特徴は、競合しない業界他社と共有できるセカンドパーティデータが多いことだ。

信頼できるパートナーとお互いのファーストパーティデータを共有することにより、顧客の全体像を把握し、顧客ニーズを理解し、顧客セグメントの興味関心や傾向を見定め、詳しく理解するために必要な基盤を手に入れることができる。

しかし、そうしたインサイトを自分だけの力で引き出すことは不可能であり、また、企業競争力の源泉となる差別化要因をタイムリーに獲得することも難しい。そこで頼りになるのが、人工知能(AI)だ。

Adobe Analyticsのディレクターを務めるジョン・ベイツは、次のように述べている。

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「消費者の体験から収集される大量のデータの中に、深く埋もれている秘密があります。データが正しく統合されたならば、人工知能はその秘密に命を吹き込み、より優れた顧客体験を提供するのに役立ちます」( ジョン・ベイツ)。

リアルタイムのインサイトにより、タイムリーな顧客体験を提供

アドビで旅行&観光業界戦略のリードを務めているジュリー・ホフマンは、フォーチュン500にリストされるホテル会社のマーケティングを担当した経験から、リアルタイムのデータから得られるインサイトの威力を理解している。

観光事業に携わる旅行会社は、顧客に長く滞在してもらえるように、また、願わくば財布の紐を大幅に緩めてもらうために、顧客を誘い、部屋や食事、エンターテインメントなど、時間とともに価値が下がっていく商品を、最大限に活用したいと考えている。

旅行者の平均滞在時間は2.6日。その中で、顧客からの利益を最大化したいのだ。

顧客体験を提供するための統合されたデジタル基盤が無かった時代は、キャンペーンをひとつ変更するのにも、最長で4週間ほどかかった。キャンペーンには、パーソナライズできない固定的な内容が組み込まれ、従業員に手作業でリゾート地のデジタル画像を更新させることも珍しくなかった。

こんな状態では、顧客体験をリアルタイムかつ自動的に提供することは不可能だ。

ホフマンは次のように述べている。

優れた顧客体験
「新たなキャンペーンの準備に4週間も要することが、どの業界でも大問題に発展するわけではありません。しかし、旅行&観光業界においては、顧客が施設に滞在する期間が限られます。つまり、4週間もかかるのでは、施設の中で消費してもらいたいオファーをパーソナライズできる機会は失われるということです」(ジュリー・ホフマン)。

パーソナライズされたオファーで収益を向上できる、データ中心の組織へと変革するためには、まず、顧客データの収集と統合が必要になる。その後、人工知能を活用して、顧客のインテリジェンスを獲得する。

顧客セグメントの実像と、旅行プランに追加する可能性が高いアイテムを把握できたなら、そのインサイトを顧客が施設に滞在している期間、顧客ごとに活用できる。

また、顧客との接触に最適なチャネルが何か、デジタルサイネージなのか、アプリのメッセージなのか、部屋内の音声デバイスなのか、紙のクーポンなのかを、顧客ごとに把握できるようになる。

ホフマンは、「動的なキャンペーンをリアルタイムに実行できるということは、例えば、レストランの客が少ないとき、近くで開催しているショーが終わりに近づくタイミングで、顧客ごとにパーソナライズされた特典やプロモーションを提供し、ショーの客をレストランに誘導できるということです」と述べる。

それこそが、敷地内にある施設の収益管理を向上させる鍵になるという。

人工知能は、心のこもったパーソナライゼーションを支援

パーソナライゼーションに人工知能を活用するマーケターが増えている。Evergageが2017年に実施した調査によれば、マーケターの96%が、パーソナライゼーションによって顧客体験が向上したと回答した。

マーケターは、人工知能を活用して顧客体験をパーソナライズすることの効果についても同意している。また、web体験のパーソナライズとコンテンツの作成に人工知能を利用していると答えたマーケターは、全体の3分の1を超えた。

パーソナライズされた顧客体験を提供するためには、誰にどのようなメッセージを提供すべきかを判断するために、膨大な量のデータをつなぎ合わせる必要がある。最近では、テクノロジーによって情報の格納と収集、処理性能が向上し、ビッグデータが爆発的に増え始めている。

情報の流れに意味をもたせるのは人間の仕事 だと言われれば、その通りだ。しかし今日、人工知能は、顧客データや地理情報、人口動態、デバイス情報、webサイトでのやり取りなどの情報を自動的にフィルタリングし、極めてインテリジェントなアルゴリズムを構築できる。

これを利用することで、マーケターはメッセージの究極的なカスタマイズが可能になる。

顧客はパーソナライゼーションを切望している。Evergageの調査によれば、企業とのやり取りにおいて、自分の興味関心に合わせてほしいと述べた回答者が88%に上った。また、Adobe Targetのディレクターを務めるケビン・リンジーによれば、人工知能とマシンラーニング(機械学習)によって、マーケターはそのような要求に応えることができる。

リンジーは、「今日のマーケターには、顧客ニーズを理解することが求められていますが、それはかなりの難題です。わずか数年前、マーケターは分析データを確認し、様々なオンライン行動やデジタルでのやり取りをもとに行動していました。

しかし現在では、人工知能とマシンラーニングがリアルタイムな行動を支援します。人工知能は、マーケティングのベテランでも思いつけない要因や、分析データや過去のパターンを見ても容易には見つけられない要素を考慮できます。

さらに、それを大多数の顧客に対して同時に適用するとなれば、もはや人間の手作業では不可能なレベルの仕事なのです」と語る。

多くのマーケターが、人工知能によるキャンペーンの最適化を始めているが、人工知能をもっと効果的に使うべきだという意見もある。マーケターの55%が、産業界はまだパーソナライゼーションを正しく実施しているとは思えないと回答している。やるべきことはまだ数多くあり、それにいち早く取り組んだ企業から、競争力を確立していくことになる。

特に、旅行&観光業界で仕事をしているマーケターには、旅行の前後、およびその最中に、顧客とのリアルタイムなやり取りを実現するために人工知能を活用できる機会が豊富にある。

人工知能でデータからメッセージを引き出す

顧客の旅は、計画の段階や、滞在地について調べる段階や、航空券やホテルを検索する段階から始まっている。旅には数多くのチェックポイントがあり、それは予約が完了した後にも存在する。

データを最大限に活用し、旅のあらゆるチェックポイントをパーソナライズしている旅行&観光企業がある。例えば、Marriottは少し趣の異なるデータを利用している。それは、顧客が特定の目的地へ行く際によく利用する航空会社や、コーヒーを飲むためによく訪れる店などのデータだが、Marriottはそうしたデータを活用し、顧客に言われなくても、顧客ごとに好みのコーヒーを出すことなどを可能にしている。

旅行&観光業界のパーソナライゼーション

これは、旅行&観光業界のパーソナライゼーションにおいて、人工知能がどのように活用されているかを示すほんの一例に過ぎない。

ほかにも、スケジュールや天気情報を教えてくれる音声式のパーソナルアシスタントや、パーソナライズされたコンテンツや提案を作成できる顧客サービス向けのボット、人工知能によるエージェント、オンサイト行動をもとにメールをパーソナライズするアルゴリズムなど、様々な使い方がある。

マーケターは、人工知能をソーシャルリスニングに利用したり、オンラインやSMSでトレンドになっている話題を特定する目的に利用することで、関連するメッセージをタイムリーに提供し、顧客とのつながりを構築している。

ビッグデータは、使用に伴う責任もビッグ

人工知能は、ブランドが特定のオーディエンスセグメント、特に旅行好きのミレニアル世代のターゲティングに役立つ。American Expressの調査によれば、旅行好きなミレニアル世代の83%が、顧客体験をパーソナライズする目的であれば、自身のデジタル行動を追跡されても構わないと答えている。

いくら顧客がパーソナライゼーションを求めているといっても、企業は顧客データを保護し、プライバシーに介入しない方法で使用するように心がけなければならない。

人工知能はデータを必要とするアルゴリズムにその仕事を委ねており、それはマーケターが消費者のプライバシーを犠牲にすることなく、パーソナライズした顧客体験を届けることにも役立っているとリンジーは述べる。

リンジーは、「情報を個人的なレベルまで掘り下げ、顧客と1対1のパーソナライゼーションに限りなく近づけることはできますが、それでも、その個人が誰かを特定する必要はありません。興味深い多くの情報をつなぎ合わせて顧客のモチベーションを把握し、それに従う行動を理解するだけで、1対1のパーソナライゼーションは実現できます」と語っている。

リンジーによれば、企業にとって鍵になるのは、顧客との信頼関係を築き、データを活用して価値と利便性を提供することだ。

リンジーは、「私たちは、企業活動がより顧客体験中心へとシフトするように支援していますが、それは必ず消費者の出す条件の下に進められる必要があります。消費者は、自分に関して収集されている情報やデータの内容と、その使い道を管理できることを求めています。

情報のコントロールを消費者の手に戻すことによって、消費者は企業を信用するようになり、より多くの情報を共有して、より優れた顧客体験を提供できるようになるでしょう」と語る。

機械は人間を代替するものではなく、人間性を高めるもの

人工知能を活用したパーソナライゼーションが重要なのは、単に消費者がそれを望んでいるからだけではなく、マーケティングキャンペーンのROIを向上させるからでもある。顧客は、大量の情報をうまく取拾選択できない場合、選択のパラドックスに陥って購入の判断を延期したり、判断自体を避ける行動を取りやすい。

しかし、人工知能は顧客ごとに最適な内容だけを提案できるため、相手に確信を与え、購買行動を促し、予約完了までの時間を短縮させることができる。

調査によれば、パーソナライズされた提案はコンバージョン率を353%も向上させる。また、 マーケターの64%が、人工知能によってコンバージョン率が向上したとし、61%が顧客体験が向上したとし、57%がテクノロジーのおかげでサイト訪問者のエンゲージメントが向上したと回答している。

ホフマンは、「14ヶ国にまたがる旅行会社のネットワークを運営する欧州で第3位の旅行会社、DER Tourstikグループは、提案を洗練させることによってコンバージョン率を270%も向上させました。また、デジタル体験をテストし、最適化することにより、webサイト訪問者の滞在時間を20%ほど伸ばすことに成功しました」と述べている。

しかし、企業は人工知能によって1対1のパーソナライゼーションを実現していく中で、消費者が企業とのやり取りに期待している人間性を忘れてはならない。特に、旅行&観光業界では、このような期待は消費者が最も重視しているものだ。

この場面でも、やはり人工知能が役に立つ。人工知能は人間のインテリジェンスを増幅させる存在であり、置き替わるものではないとリンジーは語る。旅行者にとって、機械は企業とのやり取りを支配する存在ではなく、旅行者ごとの興味関心に合わせてやり取りを支援する存在であることを意味している。

aiコンテンツパーソナライゼーション
「人工知能とは、心のこもった顧客体験を増幅させる存在です。顧客理解をより深めることにより、こうしたデジタル体験における共感を高め、顧客体験をよりパーソナライズさせて提供することが可能になります」( ケビン・リンジー)。

リンジーによれば、「人と人との体験を成功させる鍵は、共感を生み出すことです。それはすなわち、相手の身になって考えるということです。私たちは皆、顧客が経験する困難を理解しようと努力していますが、今日、それはとても難しいことになっています」という。

旅行&観光業界の企業が、人工知能を導入し、顧客体験のパーソナライゼーションをそのレベルにまで高めることができれば、旅行者が計画通りにいかなかった際に感じるストレスも、記憶の彼方に消え去ることだろう。そして、顧客は旅行をまさにバケーションという気分で楽しめるようになるのではないだろうか。

旅行&観光業界に関するアドビのソリューションについては、こちらをご覧ください。

POSTED ON 2018.08.22

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