コンテンツ管理は、なぜユーザーのデジタル経験に役立つのか?

Experience Cloud コンテンツ管理

アドビのコンサルタントが語る“My Experience”

私たちがwebを見ていると、時々「あれ?」という違和感を覚えることがあります。突然デザインが変わったり、フォントの大きさが変わったり……「何かが違う!」という体験をお持ちの方も多いでしょう。アドビ カスタマー ソリューションズ統括本部 プロフェッショナル サービス事業本部 AEMコンサルティング部 部長 宮崎真一が、自身のコンサルティング実績を元に、そうしたweb体験の原因と解決法を教えます。

聞き手:フリーライター 岩崎 史絵

「あれ?」と思うwebサイトはかなり多い

宮崎さんはアドビに入社されて何年目ですか?

宮崎 3年目になります。それまでは企業の全社IT戦略の企画立案・推進やIoTを活用した新規ビジネスの策定等を手がけていて、こうしてデジタルマーケティングに本格的に取り組むようになったのは、アドビに入社してからです。

アドビではどんな仕事を担当されているのでしょう?

宮崎 デジタルエクスペリエンスを管理するプラットフォーム「Adobe Experience Manager」(AEM)の導入から運用までを最適化するコンサルティング業務に従事しています。というと難しく聞こえるでしょうが、お客様に提供するさまざまなコンテンツを集約し、最適な情報を届ける環境を構築するお手伝いをしています。

企業のwebサイトやブランドサイトは、制作を外部のデザイン事務所やweb制作会社に発注していることが多いですよね。そうすると、いくらタイムリーにwebで情報を出そうとしても、どうしてもリードタイムが発生してしまいます。お客様のニーズや要件に合わせて情報を出し分けたいと思っても、社会の情報の流れが早いので、なかなか対応しきれません

もちろん、外部の協力会社に依頼することが問題というわけではありません。お客様のニーズや環境変化に即座に対応して素早くコンテンツを提供するには、そのための仕組みだったり、コンテンツ活用のルールだったり、そういうことが必要になります。私は、こうしたデジタルコンテンツ運用の現場をお手伝いしています。

以前とは、かなり内容が違いますね。いまのお仕事に従事することで、コンテンツやwebの見方は変わりましたか?

宮崎 ネットショッピングの時などは、複数のサイトを比較して見たりしますね。「こっちのサイトはどんなつくりになっているんだろう」と。時には、デザイン的にも情報導線のわかりやすさでいっても、とても優れたwebに行き着くこともあります。ところがカートに入れて発注画面に移った時に、フォントもカクカクして急に統一感がなくなるケースもあるんですよ。第二階層まではサイトのイメージが統一されていても、その下になると「あれ?」と思うことが往々にしてあります。それまで統一されていたweb体験に、急に違和感を覚える。こうした経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

違和感を感じるwebサイトはなぜ生まれるのか

確かにいろいろなwebを見ていると、たまに「あれ? 同じwebサイトなのに何か違う」と思うことがありますね。

宮崎 洗練された雰囲気から突然トーンダウンしたり、ごちゃごちゃした印象を与えたりすることがありますよね。すると、せっかくの良いブランド体験が阻害されてしまいます。こうしたことを防ぐには、やはりコンテンツを正しく管理することが必要なのです。

事業を長く続けていると、コンテンツがどんどん増えて管理工数もかかりますしね。

宮崎 いえ、コンテンツが増えることは構わないのです。いまはタッチポイントが増え、お客様の趣味嗜好も多様化しているので、企業が感動や感謝を伝えていくには、画一的なコンテンツでは足りません。常に最適な新しいコンテンツをつくりだしていくことは必要です。

ただし、無駄なコンテンツに振り回されてしまうことが問題です。たとえば過去のクリエイティブを再利用しようとしても、たくさんあり過ぎて検索できず、結果的に一からつくり直してしまう。その結果、ブランドイメージに合わないクリエイティブになってしまったり、コンテンツの提供まで時間がかかったりしてしまいます。

アドビでは、お客様のニーズや感情に合った最適なコンテンツを迅速に作り出し、届け、パフォーマンスの結果につなげるというコンセプトを「Contents Velocity」と呼んでいるのですが、コンテンツに振り回されると、これが実現できません。

Contents Velocityはマーケティング戦略を考えるうえで、いまの時代必要な取り組みです。そこで大切なポイントは、ルールに基づき、ブランドイメージを保持したコンテンツをどうやって集約管理し、運用していくかということになるわけです。

コンテンツを管理するプラットフォームはもちろんですが、コンテンツのガバナンスづくりが必要ですね。

宮崎 そうなんです。私たちのクライアント企業も、そういう課題をお持ちの方がたくさんいらっしゃいます。コンテンツの品質を保って運用するルールの整備や、コンテンツ管理者の意識改革と人材育成、コンテンツのライフサイクルマネジメントなど、ツール導入以外にすべきことは、たくさんあります。

ですが、社内だけでプラットフォームを整備して、これらも対応しようとしても、もともとそれが本業ではないので、息切れしてしまうんですよ。そのうち、ツールを入れることが目的になってしまいます。そういう事態を回避し、運用から継続までをサポートし、企業のポテンシャルを引き出すことがわれわれコンサルタントの役目です。クライアントが持つアイディアやビジョンに、それを実現するプロフェッショナルな支援を掛け合わせる。“左辺”であるクライアントの意思やビジョンに、コンサルタントのノウハウである“右辺”を掛け合わせ、市場に与える感動を倍増することがコンサルタントの存在意義と考えています。

コンテンツの最適化は、ブランドのエクスペリエンス価値を向上する

具体的に、コンテンツ管理を最適化するとどのような効果があるのでしょうか。

宮崎 ある企業では、先進性が高いため動きが極めて速く情報発信量も多い業界であるにも関わらず、webサイトがスタティックな情報掲載サイトに留まっており、また各デバイスに応じた最適なUXが提供できておらず、お客様視点での満足な情報提供ができていないといった課題をお持ちでした。さらにサービスによってサイトも分かれておりメンテナンス性となによりもブランドの統一性に欠けていた点も問題となっていました。

これらの課題を一掃するために当社のAdobe Experience Managerを導入し、サイトを統合してブランドの統一感を実現、クリエイティブの統合的な管理運用をスタートしたのです。

この結果として毎月数十ものパーソナライズされた情報提供施策が実現し、webユーザビリティ調査にて非常に高い評価を獲得されましたこの例こそコンテンツ管理を最適化する事で効果が表れ、またお客様にも評価をいただけた良例かと思います。

コンテンツ管理を改善することで、結果的にお客様のエクスペリエンス向上につながるわけですね。

宮崎 そうなんです。これは大規模な例でしたが、小さく始めるケースもあります。たとえばある統合予約サイトは、さまざまなキャンペーンをタイムリーに配信したいという課題がありました。キャンペーンは子会社の方で運用していたのですが、統合予約サイトは親会社が運用しており、情報告知にはどうしてもリードタイムが発生していたのです。そこでキャンペーン用のサテライトサイトをオープンし、こちらにタイムリーにキャンペーンコンテンツを公開するという提案をしました。統合ブッキングサイトからリンクを飛ばし、反応を見ながら徐々に大きくしていくというやり方です。こちらはまだローンチしていませんが、運用の自由度が増えるため、物理的な工数は当然削減されるはずです。それに、タイムリーな情報配信が自由にできることで、利用するお客様に与える価値は非常に大きいでしょうね。それに、小さくサテライトサイトをスタートさせ、徐々に大きくすることで、本当に必要な機能やコンテンツを絞り込む効果も生まれます。いいコンテンツを再利用しやすくなるので、より戦略的な活用ができます。

増え続けるコンテンツに振り回されない「集約管理」

必要な機能やコンテンツを絞り込むというエピソードは、断捨離や片づけにも似ていますね。私も片づけが全然できなくて、同じ本や似た服を買い込んでしまうことがあります(笑)。

宮崎 イメージとしては、小さい箱を用意し、そこに必要なコンテンツを入れて効果を見るという感じです。不要なら捨てればいいんです。そういう意味では、コンテンツの適切な管理は断捨離や片づけのノウハウと似ていますね。大きい箱をつくると、これまで再利用されなかったクリエイティブやコンテンツ、何でも入れてしまいますからね。結局、ブラックボックス化してしまいます。

耳が痛いです(笑)。

宮崎 ところで、ここまであえて分けずに一言で「コンテンツ管理」と説明してきましたが、実はコンテンツ管理を最適化するうえで複数の機能が必要であることに気が付きましたか?

え、何でしょう?

宮崎 コンテンツ管理、3文字略語で「CMS(Contents Management System)」といわれていますが、通常CMSというとテキストや画像をwebとして公開するツールと捉えられがちです。ですが、webやモバイルにてブランドイメージを維持・向上させつつ効果的に管理・配信していくには、さまざまなクリエイティブコンテンツが必要です。増え続けるクリエイティブ、つまりコンテンツの資産に振り回されないためには、先ほどから少し出ている「集約管理」の仕組みが必要になる。これが「DAM(Digital Assets Management)」といわれる仕組みです。

とはいえ、CMSとDAMがあればそれで良いわけではありません。サイトに訪れて、表示に5秒〜7秒もの時間がかかる場合、ほとんどのユーザーは離脱するといわれています。個人的には、5秒を待たずに離脱すると思いますけど、このように表示ストレスをなくすことも、ブランド体験の向上には必要ですし、表示速度が上がれば検索上位に上がってくるので、必要な情報をすぐに届けることができます。結局、こうしてトータルで「コンテンツの活用」を考えることが、お客様のエクスペリエンス向上につながるわけです。

コンテンツ戦略の成功法則とは

これまでのご経験を基に「コンテンツ戦略を立てる際の成功法則」を教えてください。

宮崎 さっきの話とかぶりますが、「コンテンツ管理」だけでは戦略的に不足です。また、タッチポイントがこれだけ多様化し、情報にあふれている現在、一人ひとりに最適な情報を適切に届けるには、従来のPDCAサイクルだと限界があるんです。なぜかといえば、企画からアクション、評価に至るまでシーケンシャルに進めていくので、刻々と変化する状況でも差し戻しができず、タームが長くなってしまうからです。

大きな視点でのPDCAはもちろん必要ですが、不確実性の世界といわれる現在に応じた運用ということを考えたら、刻々と変わる状況に応じ、局地戦的に対応できるOODAループという概念の方が適しています

OODAループとは?

宮崎 Observe(観察)、Orient(情勢判断)、Decide(決定)、Act(実行)の4つが相互フィードバックしていく有機的に絡み合った施策につなげるスキームです。「この施策を打ってみよう」「ダメなら戻ろう」「決定したけど、この判断が正しいのか、もう一度観察しよう」など、タイムリーに状況に応じて進めていく機動力重視の考えです。

先に申し上げたContents Velocityの実現にはこのOODAループの概念がマッチしています。状況に応じて配信するコンテンツをスピーディに検索/作成/配信、その結果を踏まえてまた変えていく。こうして運用し続けていく環境と体制をつくっていくことがコンテンツ戦略の肝だと考えています。


ありがとうございます。Adobe Experience Managerをベースにしたコンテンツ活用の導入・運用のコンサルティングって、思っていたよりハードで難しいことに驚きました。やりがいもあるとは思いますが、本当に奥が深いんですね。

宮崎 そうですね。ただ、煮詰まってしまうとパフォーマンスも落ちてしまいますので、しっかり切り替えはしてますよ。

私は車が好きなので、仕事モードから切り替える時には夜な夜な一人でドライブに出かけたりします。走り屋ではありませんよ(笑)。あと、日常の癒しになっているのは、家族の一員であるトイプードル。自宅に帰った時にこの子達が出迎えてくれると、本当に癒されますよ。「明日からまた頑張ろう」と。

うわ、かわいいですね! 私もトイプードルを飼っているので、ぜひ今度はプードルオーナーとしてインタビューさせてください(笑)。本日はありがとうございました。

POSTED ON 2018.05.24

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